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EAPとは、従業員のメンタルヘルス問題をサポートするプログラムのことです。企業がEAPを導入することで、従業員のメンタルヘルスケアができ、働きやすい職場環境の実現につながります。
しかし、EAPを効果的に運用するには、さまざまな取り組みを実施しなければなりません。
本記事では、EAPが必要とされる理由や、導入するメリットなどについて解説します。
EAPとは、産業医や臨床心理士などのメンタルヘルスケアの専門知識のある者が相談窓口となり、メンタルヘルスの問題を抱える従業員を支援するプログラムです。
EAPの発祥はアメリカです。1960年代のアメリカでは、アルコールや薬物依存者、うつ病患者の増加により社会全体の生産力が落ちていました。そこで生産性の維持・向上を目的に、企業のメンタルヘルス対策としてEAPが広がっていきました。
日本でEAPが導入され始めたのは、1980年代以降です。しかし、日本とアメリカのEAPでは、対象範囲が異なります。
アメリカでは、EAPの支援対象がメンタルヘルス問題に加えて資産運用から法律問題、家庭問題までと幅広いのに対して、日本ではメンタルヘルスケアが中心です。
【関連記事】【産業医寄稿】事業場外資源によるケアの種類と役割を知っておこう
EAPが必要とされる主な理由には、以下などが挙げられます。
それぞれの理由について解説します。
企業にEAPが必要な理由は、ストレスを抱えている労働者が多いためです。
厚生労働省の調査によると、仕事で悩みやストレスを感じている労働者の割合は82.7%との結果で、多くの人がストレスを抱えています。ストレスの理由で多かったのは、仕事の失敗や責任の発生、業務過多などです。
過度なストレスを抱えてしまうと、過労死や精神疾患を招く恐れがあります。EAPの導入により従業員の悩みに対してサポートできるため、ストレス軽減につながります。
【参考】厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 (個人調査)」
厚生労働省が推奨する4つのメンタルヘルスケア(4つのケア)にEAPも含まれているため、企業ではEAPの導入が求められています。4つのケアとは、以下のことを指します。
セルフケア | 従業員自身で取り組むメンタルヘルスケア |
ラインによるケア | 企業の管理職が部下に対して実施するメンタルヘルスケア |
事業場内産業保健スタッフ等によるケア | 事業場内の産業医や保健師などが行うメンタルヘルスケア |
事業場外資源によるケア | 外部の相談機関や専門家を活用してサポートを受けるメンタルヘルスケア |
4つのケアを継続的かつ計画的に取り組むことで、実効性のあるメンタルヘルスケアができるため、EAPが必要とされています。
4つのケアに関する具体的な取り組み方は、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
【関連記事】
4つのケアでメンタルヘルスケアを推進しよう!具体的な取り組み方法を解説
セルフケアとは?種類や具体例を紹介
ラインケアとは?基本の進め方、推進するメリットを解説
【参考】厚生労働省「職場における心の健康づくり 労働者の心の健康の保持増進のための指針」
実際にEAPで行う従業員支援の内容は企業により異なりますが、主に以下のような内容が挙げられます。
EAPの一次的な目的はメンタルヘルス対策です。メンタルヘルス不調となる従業員を増やさないことで、最終的には企業の生産性の向上につなげられると考えられているからです。
そのため、現在では企業のリスクマネジメントや企業の社会的責任(CSR)の一環としてEAPを導入している企業が増えています。
ここからはEAPで行う従業員支援の主な内容について、詳しく見ていきましょう。
EAPの支援内容の一つは、社内外の相談窓口です。具体的には、面談・出張面談・電話・メール相談などを行います。
社外の相談窓口としては、弁護士や社会保険労務士、医師や臨床心理士の他、EAPの外部相談窓口を専門とするサービスを活用するとよいでしょう。
メンタルヘルスの相談だけでなくハラスメントや病気、家族間の問題などさまざまな問題の相談に応じ、解決に取り組める体制が理想的です。
【関連資料】『こころとカラダの相談室』 サービス資料
定期的にストレスチェックを行い、高ストレス者に対しフォローを行うことも支援内容の一つです。
労働安全衛生法により、常時50人以上の従業員を雇用している事業者は、1年ごとのストレスチェックの実施が義務付けられています。
しかし、50人未満の小規模な事業所であっても、EAPの対応としてストレスチェックは有効です。
ストレスチェックでは従業員が記載した質問票に点数をつけ、合計点数の高い人を高ストレス者として判断します。定期的なストレスチェックによって、メンタルヘルスに重大な問題を抱える前に対策を打つことが目的です。
高ストレス者の従業員には、以下のようなアフターフォローを行いましょう。
状態によっては休職を検討する必要も出てくるかもしれません。また、従業員本人へのフォローに留まらず、ストレスの原因となった職場環境の改善を進めることも大切です。
【参考】厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
【関連記事】
ストレスチェックで高ストレス者を選定する際の方法や注意点
ストレスチェックにおける産業医の役割は?面談指導の内容や注意点も解説
メンタルヘルス研修とは、メンタルヘルス(心の健康)について理解を深め、正しいストレス対策やセルフケアを身につけることを目的とした研修です。メンタルヘルス研修で学ぶ内容例には、以下などが挙げられます。
従業員がストレスを感じる原因を洗い出すことで、効果的な対策を講じやすくなります。
また、ストレスを抱えた従業員の行動(欠勤や遅刻、集中力の欠如など)を早期に察知できるようになると、メンタルヘルス不調を未然に防げます。
さらに、アサーショントレーニングにより互いの意見を尊重できる自己表現を身につけられると、人間関係を原因とするメンタルヘルス不調に陥りにくくなるでしょう。
内部EAPと外部EAPの違いは、EAPを社内に設置するか、社外に設置するかです。ここでは、内部EAPと外部EAPの違いを解説します。
内部EAPは、企業内に相談窓口となるカウンセラーや心理士などの専門家を置く方法です。
内部EAPのメリットは、専門家が社内の事情や仕事内容、社風、人間関係などを理解していることです。そのため、悩みを抱えた従業員の状況を把握しやすく、より適切な対応やケア体制の整備が期待できます。
加えて、職場内で相談でき、相談から問題への対応をスムーズに進めやすい点もメリットです。事前に予約を取る必要がない場合もあり、比較的気軽に相談できるでしょう。
外部EAPとは、企業外に従業員が相談できる機関・サービスを設置する方法です。
外部EAPのメリットは、従業員が社内で相談しにくい内容を話しやすいことです。相談内容の漏洩、職場内で過剰な気遣いを受けるのではないかという心配もなくなります。
また、企業にとっては、相談員を常駐させる必要がある内部EAPに比べて、コストを抑えやすい点もメリットです。
テレワーク勤務が多い企業の場合、内部EAPでは十分に成果を得られない可能性があるため、外部EAPを活用するとよいでしょう。ただし、従業員が通いやすい距離かどうか配慮が必要です。
EAPを含めた4つのケアと予防医療の「3段階の予防」は相互に関係しており、4つのケアを推進することで3段階の予防を円滑に行えます。3段階の予防についても理解しておきましょう。
【参考】厚生労働省「職場における心の健康づくり」
一次予防は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。従業員が各自で行うセルフケアやメンタルヘルスに関する教育、労働環境の改善が一次予防に該当します。
一次予防の具体的な取り組みには、以下などが挙げられます。
とくに、管理職に対するメンタルヘルスの教育は、職場環境の改善や部下のストレス要因の把握と管理を徹底するために重要です。
二次予防とは、メンタルヘルス不調の従業員を早期発見して適切な措置を行うことです。ラインケアや事業場内産業保健スタッフ等によるケアが2次予防に該当します。
企業が行うべき取り組みには、以下などが挙げられます。
三次予防とは、メンタルヘルスの不調によって休職した従業員の職場復帰を支援することです。事業場内産業保健スタッフ等によるケアや、事業場外資源によるケアと関連しています。
三次予防の取り組みには、休職による不安や焦りを和らげるためのフォローや、復帰後に無理をさせないようなケアなどが挙げられます。
必要に応じて、医師の判断にもとづいた業務量や勤務時間、配属先の変更、リハビリなどが行われることもあるでしょう。
三次予防が疎かになってしまうと、メンタルヘルス不調の再発や離職を招く恐れがあります。そのような事態を避けるためにも、三次予防は慎重に取り組むことが重要です。
EAPを導入した際の主なメリットには、以下の3つが挙げられます。
それぞれのメリットについて解説します。
【参考】厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査」
EAPを導入してメンタルヘルスヘアをすれば、従業員が本来の能力を発揮しやすくなり、生産性の向上につながります。
人間関係や業務によるストレスは、集中力を妨げパフォーマンスを低下させます。早期にメンタルヘルスケアができればストレスの原因を把握でき、うつ病などの精神疾患を予防できるでしょう。
EAP導入によってメンタルヘルスケアを行い、従業員のストレスを未然に防ぐことで、うつ病などの精神疾患による休職率の低下が見込めます。
EAPによる面談やカウンセリングを受けたうえで、病状に応じた医療機関を受診できると早期に治療を行うことが可能です。早期に治療を行うことで病状の悪化を防ぎ、従業員の休職・離職率の低下につながります。
EAPの導入により従業員のメンタルヘルスケアに取り組んでいることをアピールすれば、企業イメージの向上につながります。従業員の心の健康維持に努めている企業として良い印象をもたれやすくなるからです。企業イメージが向上すれば、優秀な人材の確保が期待できます。
加えて、企業イメージの向上は顧客や投資家からの支持を集めることにもつながり、経営に良い影響をもたらします。
外部EAPを導入する際には、以下のことを確認しましょう。
それぞれの確認項目について解説します。
外部EAPを導入する際は、サービスや相談できる内容が幅広いかを確認しましょう。EAPを提供している企業によって、利用できるサービスや相談できる内容が異なるためです。
対面によるカウンセリング以外に、電話・メール・オンライン相談に対応しているEAPを導入すると、リモートワークの従業員も利用しやすいでしょう。
労務系に特化したEAPの場合は、職場復帰支援や介護の両立支援に関するプラン作成のサポートが可能です。また、医療系に特化したEAPであれば、ストレスチェックや産業医と連携できるサービスもあります。
自社に合うサービスや相談内容を選択することが大切です。
外部EAPを選ぶ際は、さまざまな分野の専門家が在籍しているかも確認しましょう。専門家による助言やサポートを受けられると、従業員も安心して利用できます。
たとえば、医師や看護師などが在籍していると、医療機関でのサポートを受けられる場合もあります。社労士が在籍している場合は、人事や労務の手続きやトラブルなどを相談することも可能です。
従業員の個人情報を守るために、管理体制が整っている外部EAPを選ぶことが大切です。個人や企業情報の流出を防ぐ体制が整っていると、安心・安全に外部EAPを利用できます。
EAPを提供している企業のホームページなどでプライバシーマークの設置有無や、プライバシーポリシーを提示しているかを確認しましょう。
外部EAPを選ぶ際は、曜日を問わず利用できるかも確認しましょう。いつでも相談できるサービスであれば、従業員が気軽に利用しやすいためです。
従業員が悩みや不安を早めに相談できると、メンタルヘルス不調に陥るのを未然に防げます。そのため、平日、土日祝、繁忙期などを問わずに利用できるのが望ましいです。
また、夜間まで利用できるサービスであれば従業員が勤務後に利用できるため、利用率の向上につながります。
外部EAPを選ぶ際は、従業員の家族も利用できるか確認しましょう。従業員本人が自覚していない症状を相談できるため、早い段階で対策を講じられます。
また、介護や育児などの家庭内で発生した問題が、従業員のメンタルヘルス不調につながる可能性もあります。
家庭環境に悩みをもつ従業員がいる場合は、従業員とその家族が利用できる外部EAPの導入も検討しましょう。
EAPを効果的に運用するために、事業者は以下のことを行いましょう。
各項目について詳しく解説します。
なぜEAPを自社に導入するのか、導入により何を実現したいのかを明確にしましょう。導入目的を明確にすることで、具体的な取り組みを検討できるためです。
また、目的の明確化と同時に、EAP導入により当初の目的が達成されたかを確認するための指標を決めることも大切です。それぞれの目標に対して成果をどのように評価するのかまで決めておきましょう。
たとえば、「従業員のメンタルヘルス不調防止」の目的でEAPを導入した場合には、導入時に不調者や休職者の人数を集計しておき、EAP導入後に数値に変化があったのかを定期的に測定します。
導入したEAPを有効に活用するために、社内へ周知しましょう。全従業員が利用できるサービスである旨を伝えれば、EAPの利用率向上につながります。
従業員へ周知する際は、EAPを設置した事実だけではなく、以下のような内容もあわせて周知しましょう。
EAPの導入後は、従業員の利用率を踏まえて運用方法を見直し、問題点の改善策を検討しましょう。従業員の利用率を向上・維持するには、従業員が求めているサービスであるか確認することが必要です。
アンケートを実施し、EAPを利用した感想や満足度などを調査すると、従業員の求めているサービスやニーズを把握できます。従業員の意見を踏まえたうえで、新しいサービスの導入や利用率の低いサービスの削除を検討しましょう。
EAPを導入してメンタルヘルス対策に取り組んでいる企業事例を紹介します。EAPの導入に向けて参考にしてください。
株式会社友伸エンジニアリングは、配電盤などの開発および産業用のソフトウェアを開発している企業です。
同社では、震災の影響でメンタルヘルス不調になった従業員がいたため、外部EAPを活用し、ストレスチェックやカウンセラーによる面談などのメンタルヘルス対策を開始しました。
外部EAPの導入は、従業員の仕事に対する不安を取り除くことにつながっています。
また、メンタルヘルス不調者への早期対応と職場復帰支援により、休職しても当該従業員の多くは1ヶ月程度で職場復帰できています。
【参考】
厚生労働省「株式会社友伸エンジニアリング(東京都府中市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
厚生労働省「株式会社友伸エンジニアリング(東京都府中市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
アルビス株式会社は、北陸を中心に食品スーパーマーケットを54店舗展開している企業です。
同社では、社内窓口として人事部の担当者が当該従業員と面談をしたのち、専門的なサポートが必要と判断した場合は、外部EAPのカウンセラーに引き継ぎをしています。
休職者が職場復帰をする際は、外部EAPの機関が窓口となって休職者のカウンセリングを実施。復帰後の働き方についてカウンセラーから報告を受け、店長や各部署と連携をとりながら円滑に復帰支援を行っています。
【参考】厚生労働省「アルビス株式会社(富山県射水市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
株式会社ジェイアール西日本メンテックは、JR西日本エリアの鉄道や商業施設のメンテナンス事業を行っている企業です。
同社は、以前から従業員が管理者に相談しやすい環境でしたが、2010年頃に社内外の相談体制を整えました。
2013年からはハラスメントとメンタルヘルスの窓口を一本化し、外部EAPカウンセラーによる相談を社外ではなく、月1回社内に相談室を設置。社内に相談室を設置したことで、従業員が相談しやすい環境が整いました。
さらに、ラインケア・セルフケア研修や、メンタルヘルス・マネジメント検定の取り組みを実施。研修や検定を学習できる機会が増加したことで、部下の不調に気づく管理者が増えました。
その結果、部下の不調に関する相談を社内相談室で受けることが増えています。
【参考】厚生労働省「株式会社ジェイアール西日本メンテック(大阪府大阪市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
EAPの導入には、生産性の向上や休職・離職率の低下などのメリットがあります。さらに、従業員の健康維持に努めている企業と認識されるため、企業イメージの向上も期待できます。
EAPを効果的に活用するには、導入する目的や指標を定めたうえで、全従業員が利用できるように社内へ周知することが大切です。EAPを導入し、従業員のメンタルヘルスケアを行いましょう。
従業員相談の一次窓口として、産業医と貴社産業保健スタッフを連携しやすくする外部相談窓口サービスの資料です。 下記のようなお困りごとがあれば、ぜひ一度ご覧ください。 ・メンタル・フィジカル不調者が複数いる ・契約中の相談窓口の費用対効果が低い ・何かあった時の相談窓口を持っておきたい
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け