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コーピングとは?意味や種類、ストレス緩和につながるやり方を紹介

従業員のメンタルヘルス対策が重要視される中、ストレス対処法としてコーピングが注目されています。誰でも実践可能なコーピングは、個人がストレスに対処する方法としてはもちろん、従業員を守る施策としても近年企業で広がっています

コーピングはメンタルヘルスに関連する用語として、心理学の分野では以前から知られていますが、一般の会社員には馴染み深い言葉とはいえません。本記事では、コーピングが企業でどのように取り入れられるかを詳しく解説します。

コーピングとは

コーピングは、アメリカの心理学者ラザルスが考えたストレス対処法です。1984年に発表された論文をもとに研究が重ねられ、現在では有効性が世界的に認知されていますラザルスの理論では、ストレスの原因をストレッサーと呼び、対処の方法を探ります。

適度なストレスは、業務を遂行する上でよい意味で緊張感を生む場合もあり、必ずしもマイナスではありません。

しかし、過度なストレスは精神的に負担がかかり、メンタルヘルス上の問題が発生する可能性が高まります。コーピングを使ったストレスのコントロールが周知されれば、従業員を守れるだけでなく、生産性の向上にも効果が望めるでしょう。

各企業がコーピングに注目する背景

コーピングが企業に注目されている理由は、ストレスを抱えながら働いている従業員が多いためです。近年ではメンタルヘルス上の問題で休職や退職につながる人が増えています。

令和4年に行われた厚生労働省の調査では、従業員がメンタルヘルス不調で休職、または退職した人がいると回答した事業所の割合は13.3%です。

仕事や職業生活においてストレスを感じている人の割合も多く、厚生労働省が毎年実施する調査では50%以上が、なんらかのストレスを抱えていると回答しています。現代社会において、従業員のメンタルヘルス対策は企業にとっては喫緊の課題です。

従業員がストレスにうまく対処できなければ休職や退職、労災リスクが高まります。さまざまなストレスに対して自発的に対策できるコーピングは、企業で取り入れるメンタルヘルス対策として注目されています。

【参考】
厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(事業所調査)」
厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の状況」

ストレスの仕組み

ストレス反応を抑えるためには、ストレスの原因(ストレッサー)を理解し対処できるかどうかにかかっています。コーピングを有効活用するためにも、ストレスの仕組みを理解しておきましょう

【参考】文部科学省「在外教育施設安全対策資料【心のケア編】 第2章 心のケア 各論」

ストレスの原因

ストレッサーとなる事柄は、大きく分けて以下の3種類です。

  • 物理的ストレッサー
  • 化学的ストレッサー
  • 心理的・社会的ストレッサー

ストレスの原因は必ずしも一つとは限らず、複合的に絡み合って大きなストレスになる場合もあります

物理的ストレッサー

物理的ストレッサーとは、温度や騒音などの環境刺激のことです。室内であればエアコンの温度設定、屋外なら外気温や天候などが該当します。

1日中騒音がひどい職場だったり、パソコンのディスプレイを長時間見ている必要があったりと、音や光も程度によってはストレッサーになります。

いずれも職場環境は他の従業員と条件は同じように思えますが、感じ方は人によって異なるため、ストレスの原因になる場合があるのです。

化学的ストレッサー

職場の臭いや埃、たばこの副流煙をはじめとした化学物質を原因とする刺激が、化学的ストレッサーです。たばこの場合は喫煙する本人にとっても、身体へのストレス要因となります。

また、粉じん作業や坑内作業のように、人体に有害な物質を扱う職場の場合、化学的ストレッサーは大きくなる場合があります

心理的・社会的ストレッサー

心理的ストレッサーとは、悲しみや不安を代表とする感情の揺れ動きを指します。社会的ストレッサーは恋愛や家族、職場の人間関係をはじめとした、人との関わりの中で生じる不安です。

職場内では、社会的ストレッサーと心理的ストレッサーは重なり合う部分が多いです。社会生活の中では、昇進や異動、転勤とストレス要因が多く、心理的な揺れ動きを伴うシーンが次々と発生します。

物理的ストレッサー、化学的ストレッサーは原因が明確で対処しやすいですが、心理的・社会的ストレッサーは対処が容易でないため、コーピングが効果的です。

ストレスの認知

数あるストレッサーを、ストレスと感じるかどうかは人によって違いますコーピングを考えたラザルスは、人がストレッサーを認知し、評価する際には2つの段階があるとしました。

まず第一段階では、ストレッサーが自分にとってストレスになり得るかどうかを評価します。評価方法は、無関係か、肯定的か、ストレスフルかの3種類です。

たとえば職場で人事異動を命じられた場合、新しい環境に対する不安でストレスフルと評価する場合もあれば、昇進のきっかけになると肯定的に評価する人もいるでしょう。

第二段階では、ストレスフルと評価したストレッサーに対し、対処方法を考えます。ストレッサーに対して具体的な対処方法が分かっていれば、ストレス反応を小さくできたり、回避したりできます。

実際にストレス反応が出るまでの間は、意識するかしないかに関わらず、ストレッサーの認知と評価が行われているのです。

ストレス反応

ストレスの認知においてストレスフルと評価されたストレッサーに対処しきれないと、具体的なストレス反応が現れます

ストレス反応は人によってさまざまです。イライラや不安をはじめとした心理的な反応に限らず、腰痛や腹痛、睡眠障害をはじめとした身体的な反応として現れる人もいます。

また、アルコール依存、過食などの行動面でも現れる場合もあります。どのようなストレス反応にせよ、コーピングの目的はストレス反応をいかに抑えられるかどうかです。

コーピングの種類

コーピングは、アプローチの方法によって3つに分類されます。ストレッサーの種類ごとに適した方法を選べるよう、それぞれ理解を深めておきましょう

【参考】厚生労働省e-ヘルスネット「セルフメンタルヘルス」

問題焦点型

ストレッサー自体を取り除いたり、離したりする方法で問題解決を図るのが問題焦点型コーピングです。たとえば、人間関係でストレッサーを抱えているなら、配置換えや異動ができないかを検討する方法です。

問題焦点型の中でも、周りの力を借りながら問題解決を探る方法は、社会的支援探索型と呼ばれる場合もあります。たとえば難しい仕事を抱えていたり、納期に間に合わない可能性があったりした際、上司に相談して問題解決法を探る方法が社会的支援探索型コーピングに該当します。

ストレスの原因そのものにアプローチする分かりやすい方法で、問題を直接的に解決できる可能性があるのが問題焦点型の特徴です。

しかし、そもそもストレッサーを取り除けない場合や、ストレッサーから離れるのが難しいと効果がありません

ストレス解消型

ストレス解消型は、ストレッサーに直接アプローチせず、気分転換でストレス反応を抑える方法です。たとえば、休日にしっかり休んだり、好きなことをしてストレッサーから一時的に遠ざかる時間を作ったりするなどです。

ストレス解消型には、リラクゼーション型と気晴らし型があります。それぞれの内容と具体例を以下に示します。

ストレス解消型の種類 内容 具体例
リラクゼーション型 心身ともにリラックスできる状況を作る方法 マッサージ・ヨガ・音楽鑑賞・ストレッチ・瞑想・森林浴・アロマセラピーなど
気晴らし型 気分転換できる状況を作る方法 運動・レジャー・映画鑑賞・ショッピング・友人との会話・飲食・カラオケなど

情動焦点型

情動焦点型は、ストレッサーの捉え方にアプローチする方法で、情動処理型と認知的再評価型に分けられます。いずれも、問題焦点型でストレッサーを取り除けないようなケースにも有効です。

情動処理型

自分自身の考え方を客観的に観察し、意識の転換を図る方法を情動処理型コーピングと呼びます

たとえば、自分の担当業務に対し、業務量が人よりも多く不平等だと感じるか、他の従業員よりも多くの業務を任されていると感じるかは人によって違います。ストレッサーに関係なく、自分がどう考えるのかにアプローチする方法が、情動処理型コーピングです。

認知的再評価型

情動焦点型でも周囲に助言を求める方法は、認知的再評価型コーピングと呼ばれる場合もあります。

自分の考え方にアプローチする点は情動処理型と変わりませんが、先輩や医師などの意見により、自分にない新しい考え方の気づきを得てストレッサーの解決を図る方法です。

企業が実施すべきコーピング

従業員をストレスから守るために、社内で実践できるコーピングを解説します。コーピングを使って、職場環境の健全化を目指しましょう

【関連記事】心理的安全性を高めてチームの生産性を向上――人事労務ができる4つの行動

メンター制度の導入

メンター制度は直属の上司ではなく、社歴が少し上の従業員をサポート役とし、相談しやすい体制を作る制度です。

新しい環境でストレッサーの多い新入社員に対して採用される場合が多く、上司には相談しづらい事柄を相談したり、不安を聞いてもらったりできます。

先輩に相談しやすい環境を作れるため、社会的支援探索型や認知的再評価型コーピングにつなげやすいです。

専門家によるカウンセリングを提供

相談窓口を設け、産業医などの専門家によるカウンセリングを受けられるようにしましょう

専門的な見地から意見をもらえるため、相談者にとって新しい気づきも得られやすく、情動焦点型コーピングにつなげやすいといえます。また、社外の第三者が相談に応じてくれるため、従業員は安心して利用できます。

詳しくは下記ページで解説しているので参考にしてください。

【関連記事】
産業医はハラスメント防止にも対応できる?相談窓口における役割や注意点
新入社員が陥りやすいメンタル不調を回避するには?―産業医のメンタルヘルス事件簿vol.7

定期的な1on1面談の実施

1on1面談とは、上司と部下による1対1での面談です。評価面談とは違い、1ヶ月程度の単位で頻繁に実施し、部下の悩みや問題を共有して業務課題をクリアにしたり、部下の成長につなげたりする目的で実施されます。

1on1面談は上司と部下、双方向で業務上の問題を共有できる体制につながるため、ストレッサーの要因となる問題を早期に発見し対処できます

また、部下が上司に相談しやすい関係を築ければ、メンター制度と同じような効果も望めるでしょう。

1on1を実施する際は、単なる面談にならないよう、上司側が部下の悩みを引き出したり、話をしやすい関係性を作ったりするスキルも求められます

ストレスマネジメント研修の実施

コーピングに関する研修開催は、従業員のストレスマネジメント力向上が望めます

企業としてメンタルヘルス上の問題が発生しないように努力する必要はありますが、仕事におけるストレッサーはゼロにはできません。定期的な研修やe-ラーニングを使用した学びの機会を提供するとよいでしょう。

従業員交流の促進

部門や部署、チーム内に偏らない風通しのよい企業風土の構築は、コーピングを実践しやすい環境につながるだけでなくストレッサーの抑制にも効果があります。

たとえばランチ会の実施は、普段関わりの少ない社員との交流が図れ、ストレス解消型のコーピングに直結します。部門間で交流しやすいオフィス作りや交流スペースの設置、社員旅行の実施などもよいでしょう。

コミュニケーションを部門横断的に取れる雰囲気が作れれば、自分だけでは解決できないストレッサーが現れた際も、相談しやすくストレス解消につながります。また、上司や同僚と就業時間外の交流が持てると、相手の考え方やプライベートを知れる機会にもなり、人間関係におけるストレッサーの発生自体を抑制できます。

ただし、従業員のプライベートな時間を使うことになるため、交流自体がストレッサーにならないような配慮も必要です。

リラクゼーションサービスの導入

ストレス解消型のコーピングとして、リラクゼーションサービスの導入もおすすめです。福利厚生の一環として、出張マッサージや整体サービス、ヨガを導入すれば、従業員がリフレッシュする時間を提供できます。

職場環境の配慮

職場環境の配慮は、物理的ストレッサーの抑制につながります。たとえば、空調や採光への配慮が考えられます。

従業員からの不満や希望を聞いてから取り組むと、より実効性のある職場環境を作りやすいです。

従業員に推進したいコーピングの手軽な実践方法

企業として大きなリソースを割かずとも、従業員自身で行えるコーピングもあります。ここでは、従業員に推進したいコーピングの手軽な実践方法を紹介します。

コーピングリストの作成と実践

コーピングリストの作成とは、ストレスを感じたシーンやストレス反応が出た際の効果的な対処法をリスト化する方法です。具体的には、ストレッサーごとにどんな対処法がどれくらい有効かを、体験をもとにリスト化してもらいます。

ストレッサーに対する対処法を多く持っていれば持っているほど、あらゆる状況に柔軟に対応できるようになります

また、コーピングリストを作成する過程で、自身が影響を受けやすいストレッサーのタイプや、有効な対処方法の傾向が分かってくるため、ストレスが生じてもスムーズに解決にいたれるでしょう。

輪ゴムテクニック

輪ゴムテクニックとは、手首にあらかじめ輪ゴムをはめておき、ストレッサーによって気分が落ち込んだと認識したタイミングで輪ゴムを弾く方法です。痛みと同時にストレッサーに関する事柄を頭から排除し、気持ちを切り替えるように習慣づけます。

アメリカの精神学者が開発した手法で、痛みを転換点として考え方をリセットする情動焦点型コーピングの一種です。簡単な方法なので、従業員が職場でストレスを感じたときにすぐに実践でき、ストレス軽減を図れます。

コーピングを広めて従業員のストレスに対処しよう

ストレスに対して自発的に対処するコーピングは、企業におけるメンタルヘルス対策として注目されています。

メンタルヘルス不調の予防策として活用できるコーピングは、従業員を守る意味ではもちろん、高いパフォーマンスを維持してもらう観点からも有効です。コーピングの考え方や実践法を企業内で広め、従業員が適度なストレスの中で働ける環境づくりを目指しましょう。

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