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会社の規模が大きくなると、選任義務が生じる「産業医」。いざ採用しようとする際に経営層や管理部門が気になるのが、「産業医に支払う料金」ではないでしょうか。
初めて産業医を選任する事業場では、自社が採用するべき産業医に関する適正な勤務体系や報酬などがわからないという意見も多いです。
今回は、産業医について、産業医を採用したときの報酬の相場や決まりなどについてご紹介します。
また、格安で産業医を依頼する方法も紹介しますので、できるだけコストを抑えて産業医を起用したいと考えている企業担当者の方は、参考にしてください。
産業医の報酬体系は、嘱託産業医と専属産業医で大きく異なります。また、事業場の規模や訪問回数によって報酬に大きな差がつきます。次に、詳しく解説していきます。
公益社団法人日本橋医師会によるヒアリングでは、嘱託(非常勤)産業医の基本報酬月額の相場は以下の通りでした。
勤務先企業の
労働者数 |
基本報酬月額 |
50人未満 | 75,000円 |
50~199人 | 100,000円 |
200~399人 | 150,000円 |
400~599人 | 200,000円 |
600~999人 | 250,000円 |
【出典】公益社団法人日本橋医師会「産業医報酬基準額について」
これに加えて、2023年4月にエムスリーキャリアが従業員500人以上の企業に調査を行った結果は、以下の通りです。
金額自体には差がありますが、いずれの調査でも従業員が多い企業の方が高い費用を産業医に支払っている傾向にあります。産業医に支払う費用は相場にあわせるのではなく、自社の従業員数を考慮して検討する必要があるでしょう。
また、産業医に依頼する業務内容や訪問回数でも費用は変わってきます。費用が最も低くなるのは、以下のような法で定められている最低限の業務を依頼した場合です。
健康経営を意識して訪問回数を増やしたり、追加で業務を依頼したりする場合には、その分の費用を支払う必要があります。
たとえば昨今では嘱託産業医に従業員のメンタルケアを依頼するケースがありますが、これにはメンタルヘルス対応やストレスの知識が必要です。このため、面談指導が行える産業医に支払う費用は、一般の産業医よりも割高になります。
一般的な専属産業医の年俸の算出式は以下のようになります。
年俸 =(300万~400万円) × (週あたりの勤務日数)
この計算式から出した、勤務日数による年俸の相場は以下の表のようになります。
勤務日数 | 年俸 |
週1日 | 300万~400万円 |
週2日 | 600万~800万円 |
週3日 | 900万~1200万円 |
週4日 | 1200万~1500万円 |
週5日 | 1500万~2000万円 |
専属産業医の勤務日数については法令や通達には明確な定めはありません。労働安全衛生規則第13条第1項に「その事業場に専属の者」という記載に基づき、社会保険加入対象となる週3.5日以上の勤務としている事業場が大半です。
実際には、臨床能力の維持などのため週1日程度を研究日に当てることを希望する専属産業医も多いため、週4日程度の勤務が一般的です。
また、2023年4月にエムスリーキャリアが500人以上の企業に調査した結果は以下のとおりです。
とくに「年間1,500万円以上」の割合は従業員数が多くなるほど高くなる傾向が見られます。これは従業員数が増えるほど産業医の稼働日数が増え、支払う費用が高くなっているためでしょう。
以上のデータも参考にしつつ、自社の状況や従業員数にあわせた稼働日数や業務から、産業医に支払う費用を検討しましょう。
これまで産業医の報酬の相場について簡単に説明してきましたが、産業医の報酬は様々なオプションや事情で大きく変動します。当然ながら、産業医に求めるものが多くなればなるほど産業医に支払う報酬が高くなります。
産業医への報酬を左右する要素は、主に以下とおりです。
健康診断やストレスチェックへの対応は別料金のことが多いです。そのため、これらを依頼に含めると、報酬は上がっていきます。
また嘱託産業医の面談は、一定の回数・時間を超えると報酬や交通費が上乗せされます。その場合、時給換算で費用がかかります。
産業医の報酬には地域差もあります。事業所が都心から離れていると産業医のなり手が少なく、報酬を上げないと見つからない場合があります。
また、有害物質を取り扱う事業場では3割増しになることが多くあります。
医師の経験年数によっても報酬が左右されます。基本的にはベテランほど報酬が上がります。ほかにも、精神科を専門とする産業医は数少ないため、報酬相場が高くなる傾向にあります。
また専属産業医の場合、統括産業医を依頼すると料金が上がる要因になります。
産業医に支払う報酬が変動するポイントとして、産業医に来てもらう頻度も関係しています。
専属産業医は企業に常勤で雇用されているため、週3〜5日勤務し従業員と定期的に面談を行えます。産業医の業務量が多くなりやすいため、その分費用は高くなる傾向にあります。
一方、嘱託産業医は医師のスケジュールに合わせて月1回程度、1〜5時間の訪問が一般的です。専属産業医に比べると産業医の業務量は少ないため、それに比例して費用は安くなります。
企業の状況や目的に合わせて、産業医の訪問回数を設定しましょう。
ご自身で産業医を探したり交渉したりする手間はあるものの、産業医との直接契約であれば、支払いは基本的に産業医個人への報酬のみになります。人材紹介会社を介して業務委託契約などにする場合、仲介・紹介料等の手数料がかかります。
詳しくは次の章で解説します。
【関連記事】
・産業医との契約、何をどうする? 契約形態や契約書作成など徹底解説
・産業医の派遣を依頼するには?報酬や業務内容についても解説
産業医に適正な報酬を支払うためのポイントは、以下の3つです。
産業医に支払う費用を決める際には、以上の項目について検討を進めましょう。それぞれのポイントを解説します。
産業医に支払う費用を決めるためには、まず産業医に求める要件(勤務日数、通常の業務範囲、緊急時の対応業務など)を決めることが大切です。そのためには、自社における労働環境の課題やリスクを正しく把握する必要があります。
産業医の選定は、企業において労働環境を見直し、従業員の健康に関する意識を高めるきっかけになります。社内の安全衛生委員会で話題に出すなど、この機会に多くの社員で議論を重ねましょう。
産業医を選任する際、どんな業務をどの程度の費用で依頼したらいいのか見当がつかないこともあります。この場合、人材紹介会社に見積もりを依頼すれば費用感を出してもらえるでしょう。
ただし、企業の抱える課題次第で産業医に依頼する業務は変わることには注意が必要です。最終的には労働環境の状況を考慮したうえで費用を決定しましょう。
今後、産業医に依頼する費用を決める場合には、助成金の扱いにも注意する必要があります。これまで活用できていた「産業保健関係助成金」が2021年で廃止になったためです。
これに代わり、小規模事業所の支援を目的とした「団体経由産業保健活動推進助成金」が導入されています。大きな違いは、事業所ごとの申請から、活動を支援する事業所団体ごとの申請に変わった点です。
団体経由産業保健活動推進助成金については、以下の関連記事も参照してください。
【関連記事】
団体経由産業保健活動推進助成金とは? 補助内容や支給要件を解説
前段でご紹介したように、産業医との契約方法、いいかえれば産業医の探し方・選び方でも支払う報酬が変わってきます。
医師会は都道府県や市区町村の単位で運営されていて、そうした地域医師会によっては産業医を紹介しています。地域医師会によっては、産業医の養成や、能力の向上に取り組んでいる場合もありますので、地域のことをよくわかっている産業医を紹介してもらえる可能性があります。地域に根差していることを最優先とする場合であれば、まずは医師会に相談してみるのも一つの手です。
医師会が行っているのは紹介のみで、無料と考えていいでしょう。ただし、産業医との交渉・契約は直接おこなう必要があり、産業医に支払う費用が発生します。職務内容・報酬額などの交渉は企業側で行わなければならない点は注意が必要です。
近隣に大学医学部があり、公衆衛生分野などが専門の医師がいるなら相談してみてもいいかもしれません。大学の医師同士でつながりが強いため、知り合いを紹介してもらったり、求人を共有してもらえる可能性があります。
専属産業医を探しているのであれば、産業医科大学に求人を預けることもできます。産業保健を専門的に学んだ同大卒業生からの応募があるかもしれません。
費用は産業医に支払う報酬のみで、金額の交渉などは自社でおこなう必要があります。
定期健康診断を依頼している病院・健診団体に、産業医の紹介もお願いできないか相談するという方法もあります。健診でコンタクトを取っているので、相談しやすいことが利点です。
病院・健診団体によっては、産業医が所属していますので、そのまま産業医を紹介してもらえることもあります。
相場から大きく乖離した金額提示はないと思われますが、産業医報酬や業務内容については事前によく確認してから交渉する必要があります。
企業によっては経営陣や管理部門の知り合いなどを通じ、既に産業医を選任している企業などに相談しているようです。この方法なら、費用は産業医への報酬のみで済みます。
しかし、紹介してくれた相手との関係上、金額交渉がしにくい、あるいは簡単には断りにくいといったデメリットもあるようです。
従業員50人未満の事業場に限りますが、地域産業保健センター(地さんぽ)を活用することで、無料の産業保健サービスを受けられます。
産業医の選任義務がない事業場で、産業医に突発的な相談・対応を依頼したい場合に利用することをおすすめします。詳しくは、以下の関連記事をご確認ください。
【関連記事】
地域産業保健センター(地さんぽ)とは?役割や利用時の注意点を解説
多数の産業医が登録している紹介会社を利用すれば、事業場の状況に合った産業医を紹介してもらえる可能性が高いでしょう。
人間同士ですので、産業医と事業場の間にも相性があります。産業医との間でトラブルが起こった場合、紹介サービスの担当者が間に入って対応してくれます。
そして、もしも後任が必要になったときは、大手の紹介サービスなら追加料金なしで後任の産業医を探してくれるケースがほとんどかと思います。
一方、デメリットを挙げるとするなら、手数料が掛かる点です。手数料は紹介会社によって異なりますが、専属産業医の場合は想定年収の30%程度が相場です。
たとえば、想定年収が1,000万円の産業医を専属で雇用する場合、紹介手数料は300万円程度になると想定されます。
産業医の紹介サービスを利用する際には手数料の相場を把握し、予算を立てておきましょう。
産業医を探すときのポイントは次の2つです。
上記の2点に考慮して、自社にあった人材を選びましょう。
産業医を探すときの1つ目のポイントは、目的を決めてから人材を選ぶことです。
たとえば、高ストレス者と判定された社員の面談を依頼する場合には、カウンセリングの経験が豊富な人材を選びましょう。
また、安全衛生委員会に専門家としてアドバイスをもらいたいときには、安全衛生に関する知識に精通している人材を選ぶ必要があります。
このように、産業医を選定するうえで重視するポイントは、企業が解決したい健康課題によって異なります。自社の課題を解決する上で、適切な知識や経験を備えた産業医に依頼しましょう。
産業医を選定する際には、円滑なコミュニケーションが取れる人材を選ぶことも重要なポイントです。
産業医は嘱託・専属のどちらであっても、面接指導や安全衛生委員会などで現場の従業員と会話をする機会が多くあります。その際に人当たりがよく、話しやすい人材のほうが従業員からも信頼を得やすいでしょう。
また、言われたことをやるだけの人よりも、自社の労働環境の改善に主体的に取り組んでくれることも重要です。このように、医師としてのスキル以外の人間性も産業医選定には重要になるでしょう。
産業医の報酬以外でかかる費用は、おもに次の3点です。
自社で産業医を選定する際には、これらのコストを事前に想定し、必要な費用は提案の時点で計上しておくといいでしょう。
次に考えなくてはならないコストが、産業医を探し、見つけるまでにかかる人的・時間的なコストです。
日本医師会認定の産業医は70,208人(2022年時点、有効な資格保持者のみ)いますが、そのうち産業医として活動しているのは半分以下の34,166人です。
一方で産業医の選任が必要な事業所数は約16万事業所ですので、新たに産業医を見つけるのは決して簡単なことではありません。
また、安衛法や労働安全衛生規則では、従業員数が50人を超えるなど、産業医を選任しなければならない状況になってから14日以内の選任を求めています。
遵守しない事業者への罰則も規定しているため、場合によっては時間的猶予もなく、担当の方が集中して対応しなければならず、さらに人的・時間的コストが必要になります。
嘱託産業医を選任したら、定期的に来社日の調整や業務内容を伝達するなどのコミュニケーションが必要になります。その際に、産業医との調整・コミュニケーションを煩雑に感じる場合があるかもしれません。
請求書の発行依頼、報酬額の支払い対応など、事務的な作業も発生します。契約を結んだものの、産業医の都合で契約更新がされない、辞めたいと申し出があった場合、再度産業医を選任するコストがかかってしまいます。
その他に忘れられがちですが、選任後に産業医の仕事ぶりが自社に合わない、求めていた業務に対応してもらえない可能性という隠れたコストがあります。
これは単に社風に合わないということだけでなく、業種の事情に慣れていないケースもあります。産業医にも得意分野・専門分野がありますので、それら以外の対応を求められると「期待に応えられるか保証できない」などと考えるのです。
産業医にかかる費用について、負担者ごとに次の2種類に分けて説明します。
費用の負担者は法律に明記されていないため、労使トラブルのもとになりえます。事前に社内ルールを決めておき、周知しておくことでトラブルを回避しましょう。
産業医による対応については、事業者側である会社負担となるのが一般的となっています。労働契約法や労働安全衛生法により、会社には安全配慮義務が課されているためです。
産業医にかかる費用として、会社負担になるものは以下があげられます。
なお、産業医には診断が認められていないため、診断書が必要な場合にはその従業員の主治医に診断してもらう必要があります。この場合、会社側が従業員に対して診断書の提出を求めるのであれば、費用自体は会社負担となるでしょう。
先述の通り、産業医にかかる費用は、基本的に事業者による負担です。ただし、以下にあげる健康診断については個人負担となる場合があります。
ただしこれらの費用についても、一部が会社負担になる場合があるでしょう。事前に取り決めやルールを作っておき、周知しておく必要があります。
選定する産業医が決定したら、契約書を作成して契約を交わします。具体的なフォーマットは日本医師会などにおいて公開されていますが、とくに確認しておくべきなのは次の3つです。
それぞれのポイントで注意する部分を解説します。適正な契約を交わせるようにチェックしておきましょう。
【参照】日本医師会「産業医契約書の手引き」
産業医に依頼する職務内容は確実に確認しておきましょう。ベースとなるのは労働安全衛生規則第14条第1項および第15条第1項が規定する職務です。
ただし、これらの業務のなかでも企業の状況や従業員数によって、優先的に対応してほしい職務は異なります。また、労働安全規則に規定されていないイレギュラーな業務が発生する可能性もあるので、これらも含めて確認しましょう。
契約書には、産業医に依頼する報酬の金額や条件についても明記します。金額が職務内容と照らし合わせて適正かどうか、支払い期限がいつになっているかなどを確認しておきましょう。
トラブルが発生しやすい事項として、契約の有効期限もチェックポイントです。とくに契約更新を行うタイミングや、契約解除となりうる注意事項については慎重に確認しておきましょう。
本項では、産業医に支払う報酬の会計処理について解説します。ひとくちに産業医選任といっても、依頼先によって勘定科目や消費税の取り扱いが異なるため注意が必要です。
産業医に支払う報酬の勘定科目は、支払先が医療法人であれば「福利厚生費」、個人であれば「給与」として分類されることが一般的です。
医療法人と契約して勤務医に来てもらう場合、その対価は医療法人の収入となり、給与には該当しません。また、依頼元の企業からすると、従業員の健康管理にかかわるサービスとして契約しているため福利厚生費として処理するのが妥当といえるでしょう。
個人の医師(法人化していない開業医など)に産業医として来てもらう場合は、所得税法上は原則として給与として扱われます。そのため、勘定科目も給与とするのが妥当でしょう。
なお、開業医の中には法人化しているケースと、法人化していない個人のケースがあるため、契約する際には確認しておきたい点です。
【参照】国税庁「産業医の報酬」
産業医報酬の消費税は、支払先が法人であれば課税対象、個人であれば非課税です。また、源泉徴収は支払先が法人であれば不要で、個人であれば必要です。
医療法人から産業医を派遣してもらう場合、その対価は医療法人の「その他の医業収入」となり、消費税の課税対象になります。そして源泉徴収は、法人への支払いに対しては不要です。
個人の医師(法人化していない開業医など)に産業医として来てもらう場合には、報酬は原則「給与収入」となるため、消費税は不課税です。そして、源泉徴収が原則として必要になります。支払調書の交付も必要になります。
なお、前述の通り、開業医の中には法人化しているケースと、法人化していない個人のケースがあるため、契約する際には確認しておきたい点です。
表にまとめると、以下のとおりです。
医療法人 | 個人医師 | |
勘定科目 | 福利厚生費 | 給与 |
消費税 | 課税 | 不課税 |
源泉徴収 | 不要 | 必要 |
最近ではメンタル不調の従業員が急増していることもあり、メンタル面での対応を求めがちですが、産業医の業務は多岐にわたります。したがって、自社の業務内容にマッチした産業医を選任することは、非常に重要です。
産業医に適切な報酬を支払うことで、自社の抱える課題を解消し、健康経営に貢献してくれる自社に合った産業医と契約することが可能です。
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