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会社の規模が大きくなると、選任義務が生じる「産業医」。いざ採用しようとする際に経営層や管理部門が気になるのが、「産業医に支払う料金」ではないでしょうか。
初めて産業医を選任する事業場では、自社が採用するべき産業医に関する適正な勤務体系や報酬などがわからないという意見も多いです。
今回は、産業医について、産業医を採用したときの報酬の相場や決まりなどについてご紹介します。
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産業医の報酬体系は、嘱託産業医と専属産業医で大きく異なります。また、事業場の規模や訪問回数によって報酬に大きな差がつきます。次に、詳しく解説していきます。
嘱託産業医の報酬について、公益社団法人日本橋医師会(本部・東京都中央区)が興味深い資料(※1)を公表しています。同会所属の嘱託産業医にヒヤリングを行い、基本報酬月額を集計した結果、相場としては以下のような傾向が見られたそうです。
勤務先企業の
労働者数
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基本報酬月額
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---|---|
50人未満
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75,000円
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50~199人
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100,000円
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200~399人
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150,000円
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400~599人
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200,000円
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600~999人
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250,000円
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上記はあくまでも、東京・日本橋あたりの相場です。ある程度地域差はあり、例えば愛知県医師会も同類の資料(※2)を公表していますが、それによると、労働者数が100人以下は50,000円、901~999人は185,000円となっています。
具体的な金額に差こそあれ、両者に共通しているのは、「従業員数が多いほど、産業医に支払う料金は高くなる」傾向にあるということ。従業員数が多いほど面談等の時間がかかることや、目を配らなければならない社員の人数が増えることからも、こうした傾向が見られるのも納得と言えるでしょう。
産業医に支払う料金については、「他社では産業医にこのくらい払っているらしいから自社でもこのくらい」と杓子定規で対応するのではなく、従業員数を考慮に入れた上で検討したほうが良さそうです。
※1…参考:産業医報酬基準額について(公益社団法人日本橋医師会)
※2…参考:嘱託産業医報酬の目安(愛知県医師会)
なお、実際に多くの企業の実情を見てみると、嘱託産業医の料金に影響を及ぼすのは、「従業員数」だけではありません。「嘱託産業医にどこまでの業務を望むか」によっても支払い額は変わってくるため、注意が必要です。
嘱託産業医の報酬が最も低くなるのは、いわば「法で定められている、最低限の産業医業務を依頼した場合」と言えます。具体的には、産業医に月1回、1回数時間、会社に来てもらい、職場巡視や安全衛生委員会への出席、健康管理のアドバイスをしてもらうケース。当然ながら訪問頻度を増やしてもらったり、健康経営を意識してプラスルアルファの業務をしてもらったりするような場合は、その分の対価を支払う必要があるでしょう。
たとえば、昨今増えているのが「法で定めた産業医業務に加えて、メンタルケアにも注力してほしい」というようなケースです。最低限の産業医業務だけならば応じられるという医師は多い一方、メンタルケアは精神疾患の臨床経験や職場のストレスの知識が必要になります。こうした事情もあり、精神科医の産業医に支払う報酬は、一般内科医の産業医の報酬より1~2割ほど高くなることも珍しくありません。
一般的な専属産業医の年俸の算出式は以下のようになります。
年俸 =(300万~400万円) × (週あたりの勤務日数)
この計算式から出した、勤務日数による年俸の相場は以下の表のようになります。専属産業医の勤務日数については法令や通達には明確な定めはありません。労働安全衛生規則第13条第1項に「その事業場に専属の者」という記載に基づき、社会保険加入対象となる週3.5日以上の勤務としている事業場が大半です。実際には、臨床能力の維持などのため週1日程度を研究日に当てることを希望する専属産業医も多いため、週4日程度の勤務が一般的です。
勤務日数
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年俸
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---|---|
週1日
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300万~400万円
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週2日
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600万~800万円
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週3日
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900万~1200万円
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週4日
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1200万~1500万円
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週5日
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1500万~2000万円
|
産業医のスポット契約とは、必要に応じて業務依頼・対応をする契約方法です。具体的な業務対応としては、高ストレス者面接指導、長時間労働者面接指導、メンタルヘルス不調者の就業判定のような突発的な内容が多い傾向にあります。
スポット契約の産業医への報酬は、嘱託や専属契約と比較すると、1件あたりの報酬は割高になるケースが多いです。依頼方法、業務内容、契約回数や時間、地域によって報酬が変動するので一概には言えませんが、1件あたり3万円前後からのところが多いようです。報酬額については、直接問い合わせて確認することをおすすめします。なかには初期費用がかかる場合もあるため、契約時にしっかり確認しておきましょう。
スポット契約の利用頻度が高い場合、前述のように割高になってしまいがちです。嘱託契約の方がコストを抑えられるケースがあるため、自社の状況に合わせて契約方法を検討していきましょう。
これまで産業医の報酬の相場について簡単に説明してきましたが、産業医の報酬は様々なオプションや事情で大きく変動します。当然ながら、産業医に求めるものが多くなればなるほど産業医に支払う報酬が高くなります。
産業医への報酬を左右する要素は、主に以下となります。
①面談やストレスチェックを含むか?
健康診断やストレスチェックへの対応は別料金のことが多いです。そのため、これらを依頼に含めると、報酬は上がっていきます。
また嘱託産業医の面談は、一定の回数・時間を超えると報酬や交通費が上乗せされます。その場合、時給換算で費用がかかります。
②事業場の状況
産業医の報酬には地域差もあります。事業所が都心から離れていると産業医のなり手が少なく、報酬を上げないと見つからない場合があります。
また、有害物質を取り扱う事業場では3割増しになることが多くあります。
③産業医のキャリア・経歴
医師の経験年数によっても報酬が左右されます。基本的にはベテランほど報酬が上がります。ほかにも、精神科を専門とする産業医は数少ないため、報酬相場が高くなる傾向にあります。
また専属産業医の場合、統括産業医を依頼すると料金が上がる要因になります。
④産業医との契約方法
ご自身で産業医を探したり交渉したりする手間はあるものの、産業医との直接契約であれば、支払いは基本的に産業医個人への報酬のみになります。人材紹介会社を介して業務委託契約などにする場合、仲介・紹介料等の手数料がかかります。
詳しくは次の章で解説します。
【関連記事】【産業医との契約 基礎知識】契約形態や書類手続き 徹底解説
産業医を派遣してもらうには?産業医の業務内容や報酬についても解説
ここまで、産業医に支払う報酬は、事業場の規模や求める業務内容によって異なることについて解説してきました。
「産業医に報酬をどのくらい支払うか」を決定するためには、まず「産業医に何をどこまで求めるか」について社内で検討することが大切です。そのためには、自社が抱えている労働環境上の課題や、今後抱えうるリスクについて吟味することが必要とも言えるでしょう。
多くの企業にとって、産業医採用はそう何度も起こることではないからこそ、労働環境に対する意識を高めたり、課題認識をはっきりさせたりするきっかけの一つになる可能性もあります。担当者が一人で悩んでいても先に進まない場合は、外部に相談を仰ぐのも一手です。
なお、これまで産業医などを雇用するにあたり活用できていた「産業保健関係助成金」は、2021年度で廃止となっています。これに代わり、「団体経由産業保健活動推進助成金」が導入されました。詳しくは、以下の関連記事をご確認ください。
【関連記事】団体経由産業保健活動推進助成金とは? 補助内容や支給要件を解説
前段でご紹介したように、産業医との契約方法、いいかえれば産業医の探し方・選び方でも支払う報酬が変わってきます。ここでは、その探し方について詳しく見ていきます。
医師会は都道府県や市区町村の単位で運営されていて、そうした地域医師会によっては産業医を紹介しています。地域医師会によっては、産業医の養成や、能力の向上に取り組んでいる場合もありますので、地域のことをよくわかっている産業医を紹介してもらえる可能性があります。地域に根差していることを最優先とする場合であれば、まずは医師会に相談してみるのも一つの手です。
ただし医師会が行っているのは紹介のみで、産業医とは直接契約になります。職務内容・報酬額などの交渉は企業側で行わなければならない点は注意が必要です。
近隣に大学医学部があり、公衆衛生分野などが専門の医師がいるなら相談してみてもいいかもしれません。大学の医師同士でつながりが強いため、知り合いを紹介してもらったり、求人を共有してもらえる可能性があります。
専属産業医を探しているのであれば、産業医科大学に求人を預けることもできます。産業保健を専門的に学んだ同大卒業生からの応募を得られるかもしれません。
ただし、産業医とは直接契約になります。医師会への相談と同様の注意が必要です。
定期健康診断を依頼している病院・健診団体に、産業医の紹介もお願いできないか相談するという方法もあります。健診でコンタクトを取っているので、相談しやすいののが利点です。病院・健診団体によっては、産業医が所属していますので、そのまま産業医を紹介してもらえることもあります。
一方で、産業医報酬や業務内容については事前によく確認してから交渉する必要があります。
企業によっては経営陣や管理部門の知り合いなどを通じ、既に産業医を選任している企業などに相談しているようです。この方法なら、相談先で選任している産業医を紹介してくれる可能性があります。
しかし、紹介された産業医が自社とはマッチしない可能性もあります。それでも紹介してくれた相手との関係上、簡単には断りにくいといったデメリットが出てくることもあるようです。
従業員50人未満の事業場に限りますが、地域産業保健センター(地さんぽ)を活用することで産業保健サービスを無料で受けることができます。産業医の選任義務がない事業場で、産業医に突発的な相談・対応を依頼したい場合に利用することをおすすめします。詳しくは、以下の関連記事をご確認ください。
【関連記事】地域産業保健センター(地さんぽ)とは?役割や利用時の注意点を解説
産業医の紹介サービスが以前よりも存在感を増しています。多数の産業医が登録している紹介会社を利用すれば、事業場の事情に合った産業医を紹介してもらえる可能性が高いでしょう。
人間同士ですので、産業医と事業場の間にも相性があります。産業医との間でトラブルが起こった場合、紹介サービスの担当者が間に入って対応してくれます。そして、もしも後任が必要になったときは、大手の紹介サービスなら追加料金なしで後任の産業医を探してくれるケースがほとんどかと思います。
一方でデメリットを挙げるとするなら、手数料が掛かる点です。
次に考えなくてはならないコストが、産業医を探し、見つけるまでにかかる人的・時間的なコストです。
日本医師会認定の産業医は70,208人(2022年時点、有効な資格保持者のみ)いますが、そのうち産業医として活動しているのは半分以下の34,166人です。一方で産業医の選任が必要な事業所数は約16万事業所ですので、新たに産業医を見つけるのは決して簡単なことではありません。
また、安衛法や労働安全衛生規則では、従業員数が50人を超えるなど、産業医を選任しなければならない状況になってから14日以内の選任を求めています。遵守しない事業者への罰則も規定しているため、場合によっては時間的猶予もなく、担当の方が集中して対応しなければならず、さらに人的・時間的コストが必要になります。
嘱託産業医を選任したら、定期的に来社日の調整や業務内容を伝達するなどのコミュニケーションが必要になります。その際に、産業医との調整・コミュニケーションを煩雑に感じる場合があるかもしれません。請求書の発行依頼、報酬額の支払い対応など、事務的な作業も発生します。契約を結んだものの、産業医の都合で契約更新がされない、辞めたいと申し出があった場合、再度産業医を選任するコストがかかってしまいます。
その他に忘れられがちですが、選任後に産業医の仕事ぶりが自社に合わない、求めていた業務に対応してもらえない可能性という隠れたコストがあります。これは単に社風に合わないということだけでなく、業種の事情に慣れていないケースもあります。産業医にも得意分野・専門分野がありますので、それら以外の対応を求められると「期待に応えられるか保証できない」などと考えるのです。
産業医面談の費用や、会社が診断書を求めた場合の受診料は、会社の負担になるのでしょうか。
会社には安全配慮義務があり、休職・復職面談や面接指導のように、産業医としての対応であれば会社負担が一般的でしょう。また、会社が診断書を求めた場合、産業医には診断が認められていませんから、保険医(主治医)に診断してもらう必要があり、その費用は基本的に会社負担になると考えられるでしょう。
ただ、こうした費用負担は法律に明記されていません。そのため、労使トラブルの火種にもなりえることでもあります。
たとえば、従業員が自主判断で受診して主治医から休職を勧められば場合、その受診料を後から会社に求められるでしょうか。あるいは、産業医面談、会社が診断書を求めて受診したときは労働時間にあたり、時間外であれば割増賃金は支払われるのでしょうか。
こうした事柄について、会社と個人のどちらが負担するのかあらかじめ社内ルールを設けおき、しっかりと周知しておくことで、労使トラブルへの発展は避けたいところです。
本項では、産業医に支払う報酬の会計処理について解説します。ひとくちに産業医選任と言っても、依頼先によって勘定科目や消費税の取り扱いが異なるため注意が必要です。
産業医に支払う報酬の勘定科目は、支払先が医療法人であれば「福利厚生費」、個人であれば「給与」として分類されることが一般的です。
医療法人と契約して勤務医に来てもらう場合、その対価は医療法人の収入となり、給与には該当しません。また、依頼元の企業からすると、従業員の健康管理にかかわるサービスとして契約しているため福利厚生費として処理するのが妥当といえるでしょう。
個人の医師(法人化していない開業医など)に産業医として来てもらう場合は、所得税法上は原則として給与として扱われます。そのため、勘定科目も給与とするのが妥当でしょう。
なお、開業医の中には法人化しているケースと、法人化していない個人のケースがあるため、契約する際には確認しておきたい点です。
※参考
産業医の報酬(国税庁)
産業医報酬の消費税は、支払先が法人であれば課税対象、個人であれば不課税です。また、源泉徴収は支払先が法人であれば不要で、個人であれば必要です。
医療法人から産業医を派遣してもらう場合、その対価は医療法人の「その他の医業収入」となり、消費税の課税対象になります。そして源泉徴収は、法人への支払いに対しては不要です。
個人の医師(法人化していない開業医など)に産業医として来てもらう場合には、報酬は原則「給与収入」となるため、消費税は不課税です。そして、源泉徴収が原則として必要になります。支払調書の交付も必要になります。
なお、前述の通り、開業医の中には法人化しているケースと、法人化していない個人のケースがあるため、契約する際には確認しておきたい点です。
表にまとめると、以下のとおりです。
医療法人
|
個人医師
|
|
---|---|---|
勘定科目
|
福利厚生費
|
給与
|
消費税
|
課税
|
不課税
|
源泉徴収
|
不要
|
必要
|
最近ではメンタル不調の従業員が急増していることもあり、メンタル面での対応を求めがちですが、産業医の業務はメンタル不調の対応以外にも多岐にわたります。したがって、自社の業務内容にマッチした産業医を専任することは、非常に重要です。
産業医に適切な報酬を支払うことで、自社の抱える課題を解消し、健康経営に貢献してくれる自社に合った産業医と契約することが可能です。産業医の選任や報酬面など、産業医についてお困りの方は、下記の問い合わせフォームからぜひご相談ください。
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