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院長の産業医兼任が禁止に いま医療機関が検討すべき選任方法とは

菅野隼人(すがの・はやと)

菅野隼人(すがの・はやと)

産業医顧問チーム プロジェクトマネージャー / エムスリーキャリア株式会社

大和証券、ネット広告代理店オプトでの法人営業、事業開発を経て、2016年2月にエムスリーキャリアへ入社。医師の地域偏在解決を目的とした短期・地域医療プログラム「ふるさとドクター」、サーチ型医師採用サービス「プレミアムサーチサービス」プロジェクトマネージャーを経て2017年4月より現職。

過重労働による健康被害や過労死をなくそうという社会的な要請を受け、産業医にはメンタルヘルス対策などへの貢献がますます求められています。
この流れは企業のみならず、医療機関でも同様です。これまで法人代表者などが自らの事業場で産業医を兼務するケースがありましたが、利益相反の観点から、2017年4月より禁止されました。


今後、医療機関と産業医はどのような関係性を築いていくことが望ましいのでしょうか。エムスリーキャリアにて「産業医顧問サービス」を担当する菅野隼人氏に、お話を伺いました。

過労対策で外来縮小の衝撃 医療機関に動き

2017年4月、労働安全衛生法に基づく省令が改正され、院長が自院の産業医も兼ねるといった対応ができなくなりました。この改正以降、変化は見られますか。

産業医選任について、医療機関からお問い合わせをいただくことが増えています。
省令改正に加えて、ある有名病院の発表も影響しているのではないかと思います。その有名病院は勤務医の長時間労働について労働基準監督署から指摘を受け、今年の半ば以降、土曜の外来診療を34科から14科に減らすと発表しました。

これは医療関係者に衝撃を与えました。安全衛生管理に本腰を入れないと、経営に大きなダメージを与えることが明らかになったわけですから。

 

菅野隼人氏

 

産業医をしっかり選任して経営リスクの低減を図る病院が増えているということですね。産業医の求職動向はいかがでしょうか。

医療機関同様に、産業医の動きも活発になっています。
近年、ストレスチェック制度の義務化や、国による「働き方改革」など、医師が安全衛生に目を向ける機会も多くなりました。そのためか、産業医求人を探している医師からのご相談が増えています。


もう一つの変化として、ご相談を寄せる産業医の多くは一般企業での勤務を想定していますが、今後は医療機関に目を向ける機会も増えていくのではないかと考えています。

 

その理由は何でしょうか。

日本医師会の調査(※1)では、産業医活動を行っていない“潜在産業医”は約40%です。
活動を行っていない理由について、半数以上が産業医として働く事業所がないためまたは経験がなくやり方が分からないためと答え、産業医活動をしたくてもその機会に恵まれないのが実情です。

これを全国に当てはめた場合、約9万人の産業医のうち約1.8万人もの方々が「就労意欲のある潜在産業医」になる計算です。

そして視線を医療現場に移せば、産業医の活躍する余地が大いにあるのです。
たとえば、ある企業のストレスチェック代行サービスで高ストレス者の割合を分析したところ、ほとんどの医療機関で目安となる10%を超えていることが明らかになっています(※2)。

なお、ここで言う高ストレス者とは「自覚症状が高い者や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い者」とされており、かなり危険な状態の方々です。

【参考】
「産業医活動に対するアンケート調査結果について」(日本医師会、2015年)
「医療機関の9割以上で高ストレス者の割合が10%を超える結果に」(株式会社エス・エム・エスキャリア、2016年)

 

実効的な安全衛生を実現するために

採用する側だけでなく、産業医の就労意欲も高まっているということですね。医療機関には実効性のある安全衛生管理体制が求められているわけですが、産業医を選任する際、どんな点に留意すべきでしょうか。

医療機関は選任にあたって2つのルートのうち、いずれかを迫られます。
一つは自院から代表者などではない医師の選任、そしてもう一つは外部からの招聘です。

採用側の心理として、まずは関係を築いている自院医師から選任しようと思うでしょう。これなら法的な問題も避けられますし、採用コストも掛かりません。ただ、別の理由からリスクを抱えている可能性もあります。

実効性のある安全衛生管理を実現するには、産業医が第三者の立場で事業者と労働者の間に立ち、物事を公平に判断できなければなりません。

医療機関との間にしがらみのない産業医の方が従業員も相談しやすいでしょうし、医療機関に対して指摘や提案もしてくれるでしょう。

つまり、より適切な安全衛生サポートができるのではないでしょうか。

もちろん外部の産業医を選任することがリスクゼロだとは言えませんが、経営リスクも含めてトータルで考えると、外部からの招聘をおすすめします。

 

菅野隼人氏

 

外部の産業医を選任するには、どうすればいいのでしょうか。

地域医師会に問い合わせたり、人材紹介会社を利用したりするのがメジャーな手段だと思います。
​​​​​​​医療機関にとっては、地域医師会に依頼するのが最も敷居は低いでしょう。

ただ、産業医候補者の選択肢を広げるという視点で、人材紹介会社の活用も検討していただくと良いのではないでしょうか。

 

嘱託産業医なら業務委託も要検討

地域医師会への依頼に比べると、人材紹介会社はコストが掛かってしまうケースもあるのではないでしょうか。

たしかに、民間企業からの紹介方式だと、年収に対して一定割合の手数料が掛かります。
初期費用の掛からない成功報酬型とはいえ、入職月に費用支出が集中してしまいます。

そうした点がネックになる場合、実はもうひとつの手があります。
企業と契約した嘱託産業医に来てもらう業務委託方式です。月額定額制で、一回あたりの費用を紹介よりも抑えられます。

業務委託方式には、紹介方式のような直接雇用でないからこそのメリットもあります。
たとえば、委託先の企業が産業医との交渉や、訪問日時・業務内容の調整などを担ってくれます。

また、多くの医療機関は嘱託で産業医を採用していると思いますが、業務委託方式なら現任者が辞めざるを得なくなった場合に、委託先が次の産業医を探してくれます。

エムスリーキャリアでも紹介方式業務委託方式(または顧問形式)を提供していますから、産業医の選任について課題を感じているようでしたらお声掛けいただければと思います。

産業医に特化したサービスにかかわって改めて感じるのは、医療現場における産業医の重要性です。

産業医が機能すればイキイキと働く医療者が増えるはずですし、その方が患者さんにとっても安心で、気持ちいいと思うんです。今後も、医療機関と産業医がベストマッチングできるよう尽力していきたいですね。

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