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改正労働安全衛生規則等や、働き方改革関連法により産業医の役割は強化されています。これまでに選任した産業医が新たな役割や方針に対応してくれない、連携がうまくとれない場合には、産業医の変更・交代に踏み切らざるをえないケースも出るかもしれません。では、産業医を変更・交代する場合、どのように対応すべきでしょうか。
任期が残っている状態でも、産業医の変更は可能です。企業との相性がよくない産業医を雇い続けると人事労務担当者の負担が増える、企業や従業員のためにならないなど、不幸な結果を招きかねません。
もちろん、産業医を変更するにあたって、お互いに見解の相違がある可能性を考慮して綿密な話し合いをする必要はあります。しかし、それでも状況の改善が見込めない場合は速やかに産業医を変更しましょう。
注意点として、労働安全衛生規則においては、産業医の助言と企業の意見の不一致を理由に産業医を変更することは認められていません。従業員を守るのが産業医の仕事のため、企業利益を追求する会社側と意見が合わないケースは珍しくありませんが、それを理由に変更や解任はできないため注意してください。
産業保健に関して、産業医の選任をはじめ、安全衛生委員会の実施や健康診断など、法律で定められている義務がいくつかあります。実施しないことで法令違反となる事項もあり、なかには職場巡視など産業医が担う業務も含まれています。産業保健における産業医の役割が不十分であるなら、産業医の変更を検討する必要が出てきます。具体的に、どのような産業医が役割不足に該当するのでしょうか。
法定の産業医業務、企業から要請された業務を行わない産業医の場合、変更を検討してよいでしょう。産業医に課される主な業務は以下です。
・安全衛生委員会への出席
・月1回あるいは2ヶ月に1回の職場巡視
・健康診断の結果確認、その結果に基づく措置
・長時間労働者への対応
・健康相談
・(疾病を抱える従業員の)治療と仕事の両立支援
・休職・復職面談
・ストレスチェックの実施者
・高ストレス者の面談
・衛生講話
産業医の業務は多岐にわたるため、産業医自身が業務内容を把握していないケースもあります。また、法改正に伴い産業医業務の負担が増えたものの、長年産業医を務めている方の中には、産業医の職務についてアップデートがされていないこともあります。もしも自社の産業医が該当する場合、業務内容について産業医としっかり話し合いましょう。
なかには、契約内容に含まれていないことを理由に業務を断る産業医もいます。契約時間が短いため、企業が求める産業医業務に全て対応するのが難しい場合もあります。また、従業員が健康に就労できるための環境を整備していくうちに、業務量が増えてしまうことも少なくありません。このような場合には、契約時間を増やす、産業看護職を雇うことも検討しましょう。
関連資料:「一目でわかる!人事労務担当が産業保健で法令違反しないためのチェックシート」
【関連記事】産業保健師と産業看護師の違いは? 上手に活用して健康経営を推進しよう
健康診断の実施は企業の義務ですが、健康診断結果を確認して就労判定、「要精査」「要医療」の所見がある場合には、受診勧奨、医療機関へつなげるサポートは産業医の仕事です。しかし、健康診断結果をチェックしない、チェックしても受診勧奨はノータッチのままのケースも少なくありません。従業員が健康に働けるサポートをするためにも、健康診断後に適切な対応をしてくれる産業医を選任することが望ましいといえます。
ストレスチェックの施行が義務化され、産業医がストレスチェックの実施者を担うことが求められるケースもあります。ストレスチェック後の高ストレス者への面談も産業医業務です。企業によってはストレスチェックの施行から面談まで外注しており、その際には産業医が実施者になること、高ストレス者への面談業務は求められません。
ストレスチェックをどのような体制で行うかは企業の方針によりますが、自社の依頼に応じてもらえない場合は、産業医の変更を検討してもよいでしょう。
企業には面接指導実施の義務があり、産業医には専門性に基づき面接指導をすることが求められています。しかし、「精神科は専門外なので、メンタルヘルス関連の面接指導は難しい」という理由で、高ストレス者への面接指導、メンタル不調者との面談を避ける産業医もいます。メンタルヘルス関連の面接指導を行うのは、精神科を専門とする産業医である必要はないため、面接指導に応じてくれない場合は産業医の変更を検討してよいでしょう。
【関連記事】精神科医ではない産業医でも、メンタルヘルス対応できる? 各自の役割と対応を解説
産業医には、事業所で産業医の業務を担う傍ら、臨床現場で業務を行っている医師も多くいます。会社における健康診断やストレスチェックの役割、36(サブロク)協定、安全衛生委員会を含む労働基準法や労働安全衛生法など法令の知識、理解などが産業医にとって必要なスキルといえます。しかしながら、産業医の経験が浅い医師は、産業医の業務内容の理解、スキルが乏しい可能性があります。
産業医は資格を取得、および更新するために一定時間以上の研修を受ける必要がありますが、従業員との面談などでは、臨床での経験に裏打ちされた引き出しの違いの差が出てしまうのはある程度致しかたありません。たとえば、臨床で精神科を専門としている医師はメンタルヘルスケアの分野に強く、主に内科に従事している人では健康診断後の保健指導や健康診断に強い面があるのです。
しかし、臨床医と産業医では役割が異なります。臨床医は患者の不調について診断、治療を行いますが、産業医は従業員の安全に配慮しながら就労の可否や配慮を判断します。このように、産業医は臨床の経験とはまったく違う見地が求められますが、内科医がメンタルヘルスケア、精神科医が身体の健康相談を避けるなど臨床での経験がないといって面談指導を渋るケースもあるようです。復職や病気を抱えながらの就業など、主治医の意見を参考にしながら専門的な見地から従業員と企業をつないでいくのも産業医として必要なスキルといえるでしょう。
産業医業務のなかで大きな割合を占めるのは面談です。そのため、コミュニケーションスキルがとても大切になってきます。産業医は企業側のものとして従業員と面談を行い、内容を会社にフィードバックしますが、すべての内容を開示するわけではありません。
従業員にとっての産業医は、企業の人でありながら第三者であり、中立的な立場です。産業医面談は会社に言えない心の内を打ち明けることのできる貴重な時間といえます。
また、企業側に従業員の健康に関わることを勧告すること、安全衛生委員会への出席、企業の健康経営に携わることも産業医の役割です。専門的な立場から産業保健の取り組みを提案していくためにも、的確なアドバイスを適切なタイミングで伝える能力、企業の担当者と密に連携をとれることが求められます。。また、産業保健師を設置している会社では、産業保健師と二人三脚で産業保健を担っていくことになるため、やはりコミュニケーションスキルは欠かせません。
労働安全衛生規則の改正により、法人の代表者等を産業医として選任することは禁になりました。代表取締役、医療法人や社会福祉法人の理事長、医療機関の院長や老人福祉施設の施設長などが産業医を兼任している場合には、産業医の変更が必須です。
これは、従業員の健康管理が事業経営上の利益に一致しない場合も想定されるためです。産業医が経営に関わっている場合、従業員の健康管理がされず、産業医としての職務が適切に遂行されない可能性があります。万が一、心当たりがある場合には、早期に新たな産業医を選任しましょう。
参考:独立行政法人 労働者健康安全機構「中小企業事業者の為に産業医ができること」
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「産業医を選任していますか? 代表者が産業医を兼務していませんか?」
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「産業医について~その役割を知ってもらうために~」
【関連記事】院長の産業医兼任が禁止に いま医療機関が検討すべき選任方法とは
産業医の解任、および後任者をどうするかを検討するにあたり、そもそも産業医には何が求められるのか知っておく必要があります。産業医に求められる能力は多々ありますが、その中から4つピックアップします。産業医選びのポイントにもなるため、1つずつ順番にチェックしていきましょう。
問題解決能力は、産業医にとって必要不可欠な能力の1つです。産業医の仕事は、従業員から相談を受けて終わりではありません。従業員を守るために、職場の問題点を見つけ、解決するための手助けをする必要があります。
問題の根元原因を見つけ、適切な解決方法を提示したあと、その解決方法を実行するのは事業主や従業員本人です。優秀な産業医は、その点も踏まえて合理的な対策、そして実行するための方法まで考えられます。問題を解決するための手段やヒントが提供できない産業医は、変更する必要があるでしょう。
産業医は会社で働く多くの従業員を相手にする仕事です。当然ですが、従業員はそれぞれ異なった性格や気質を持ち合わせており、人によってアプローチの仕方を変更しなければなりません。そのため、産業医のコミュニケーション能力の有無は仕事の質にも影響します。
産業医との面談を希望する従業員の多くは身体的、そして精神的に問題を抱えているケースが多いです。そして、すべての従業員が自身の身体に起きている症状や心の状態を完璧に言葉に変換できるわけではありません。中には、口にせずとも察して欲しいと考える人もいます。
従業員の本音を理解するための傾聴力、そして心の声を引き出すための共感力は大切です。従業員との信頼関係を構築できれば、問題解決の大きな手助けとなるでしょう。
産業医の仕事は、必ずしもすぐに結果が出るものではありません。従業員の事情で面談がスムーズに行えないケースや、従業員が抱えている問題が複雑で解決方法の提示に時間がかかるケースがあります。そのため、産業医には問題が解決するまで従業員に寄り添う献身性、そして人当たりのよさが必要です。
産業医の中には、従業員の話を聞いてあげればそれで十分と考えている人もいますが、適切な解決方法を提案するためには従業員との相互理解が重要です。どんなに小さな問題に対しても真摯に向き合ってくれる産業医に対しては、従業員も心を開きやすくなるでしょう。
産業医を変更したいと思っても、さまざまな事情ですんなりと変更するのが難しいこともあるかもしれません。その場合、2人目の産業医を選任することを検討してもよいでしょう。現在依頼している産業医に支払っている報酬を確認したうえで、2人目の産業医を選任する理由やメリットを説明できると、上層部の承認を得やすくなる可能性があります。
従業員50名以上の事業所では、産業医を選任することが義務づけられています。この場合、選任する産業医は「1名以上」なので、産業医の人数にとくに上限は設けられていません。50~999名までの事業所は1名以上の嘱託産業医を、1000人以上の事業所では1名以上、3001人以上は2名以上の専属産業医を選任する必要があります。また、50人未満の事業所でも、従業員の安全衛生の面から産業医を選任するところもあります。
嘱託産業医は月に1~数回、1回に数時間程度の訪問が一般的であり、2名以上の嘱託産業医で業務をシェアすることも可能です。とくに人数の多い事業所では、産業医の業務、面談が増えることが必須であり、2名以上で役割を分けることも少なくありません。
たとえば、産業医を2人雇い入れて、1名は安全衛生委員会への出席や職場巡視、健康診断およびその事後措置などメンタルヘルスに関わらない業務をする。もう1名は精神科に強い産業医を雇い、メンタルヘルス不調の方の相談や対応、復職面談やその後のフォローアップ面談などをお願いするなど、、業務を分けて依頼している企業もあるのです。女性従業員が多い事業所では、健康診断結果のチェックや男性従業員の保健指導、面談、紹介状作成などを男性の産業医が、女性特有の疾病で治療と業務を両立されている従業員のフォロー面談を女性の産業医が担うケースもありました。
事業者サイドが新たな産業医を選任するにあたって、主要な方法を4つご紹介します。それぞれの方法にメリットとデメリットがあるため、状況に応じて適切な手段で産業医が選べるようにしましょう。
医師会を利用する
産業医を探すにあたって、まずは地元にある医師会に相談してみましょう。地元の産業医を紹介してもらえる可能性がありますし、地域の産業医リストにもとづく紹介であれば、地方でも探しやすいためおすすめの方法です。
ただし、医師会の中には産業医の紹介を行っていないところもあります。また、医師会は開業医の組織です。通常の産業医の報酬を統一しているケースもあり、報酬が割高になる可能性もあります。
紹介会社を利用する
近年は産業医の紹介会社を利用するケースも増えています。産業医の紹介会社は、業務形態や課題を企業サイドに聞き取り調査して、ニーズに合った産業医を紹介してくれます。そのため、企業サイドと産業医のミスマッチが発生しづらく、お互いにとって良好な関係を築きやすいです。
ただし、産業医の紹介会社の中には、サービス提供エリアが限られているところもあるため、地域によってはサービス対象外の可能性があります。また、紹介料やサービス料など各種手数料がかかる点も考慮する必要があります。
健診機構を利用する
健康診断の運営機関が、産業医紹介の相談先になるケースも珍しくありません。健診機関には産業医の資格を持つ医師がいる可能性が少なからずあります。その場合、産業医の紹介や契約を行っている場合があります。
健診機関を利用して産業医を探すのであれば、健診とセットで依頼すると交渉次第では全体のコストを下げられるケースがあります。ただし、健診機関に所属している産業医の数は決して多くありません。そのため、繁忙期には産業医としての仕事が満足に行えない可能性もあります。
地域産業保健センターを活用する
地域産業保健センター(通称「地さんぽ」)は産業医の選任義務がない小規模事業者向けに、無料で産業保険のサービスを提供しています。産業医がいない企業でこれから産業医を探す場合、積極的に利用するとよいでしょう。
ただし、地域産業保健センターのサービスを受けられるのは従業員50人未満の小規模事業場のみで、利用回数や人数に制限が設けられているます。また、利用する場合、事前申込が必要になるため利用を希望する際は注意しましょう。
新しい産業医を探すにあたって、産業医探しに失敗してしまうケースもあります。あらためて新しい産業医を探すのは手間も時間もかかりますし、産業医がいない状況が続くのは従業員にとっても企業にとってもよくありません。産業医を探す際は、以下のポイントを押さえて探しましょう。
産業医を選ぶ際、条件のみで採用を決定するのはやめましょう。条件に合っていても、職場に合っている産業医かどうかは別の話です。事前書類のみで産業医の人となりを知ったつもりにならず、面接を通じて産業医に必要なコミュニケーション能力や経験、知識を有しているか判断しましょう。
産業医探しの際は、専門分野にこだわりすぎないようにしましょう。職員のメンタルヘルスを産業医に任せたい場合、精神科専門医のようなメンタルヘルスに詳しい医師を探したくなるものです。しかし、その人物が産業医としての職務を全うできるかは話が別です。
産業医のスキルは、専門科だけでは決まりません。もちろん専門性が高いに越したことはありませんが、あくまで産業医の適性が高い人物を採用できるように、専門分野にこだわりすぎないようにしましょう。
産業医を変更する場合、所定の手続きが伴うので、しっかり確認していきましょう。
産業医を変更する場合、新任者の選任は前任者の解任から14日以内に行わなくてはなりません。選任が終わったら、次は様式第3号「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」による報告書を、自身の企業の所轄である労働基準監督署に提出します。産業医の選任届は遅延せずに提出する必要があるため、期限に気を配るようにしましょう。
【参考】厚生労働省「安全衛生に関するQ&A」
産業医を変更・選任する際には、労働基準監督署への報告も義務づけられています。必要な書類は、①産業医選任報告書、②産業医の医師免許証のコピー、③産業医の資格証明書のコピーです。産業医選任報告書の記入例については、関連記事「産業医選任報告(選任届)の書き方と記入例」を参考にしてください。
報告様式については、厚生労働省の公式ホームページにてダウンロードが可能です。また、報告書の作成はオンライン上でも可能ですが、電子申請システムは依然として採用されていないため、選任報告書は印刷したうえで労働基準監督署に提出してください。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「産業医を選任していますか? 代表者が産業医を兼務していませんか?」
産業医を変更するにあたって必要な書類が準備できたら、管轄内の労働基準監督署に届けましょう。
自社の管轄は、厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」で確認できます。自社の届出先に迷う場合は、県の労働局に問い合わせてみましょう。
産業医の変更を検討する場合には、まずは産業保健総合支援センターや紹介会社などへ相談することをおすすめします。
独立行政法人労働者健康安全機構が設置する産業保健総合支援センター(さんぽセンター)は、職場の健康管理への啓発を行うことを目的とした団体です。産業保健に関するさまざまな問題についての相談を担っており、産業医の変更、選任の要否についても相談が可能です。
紹介会社ではさまざまな事例の蓄積もあり、その事業所にとって現在の産業医があっているか、変更を検討すべきかなどの相談にのれます。また、企業の要望を伺い、そのニーズにあった産業医の紹介が可能ですので、迷った場合には相談してみるとよいでしょう。
【関連記事】産業保健総合支援センター(さんぽセンター)とは? 役割や地さんぽとの違いを解説
産業医の探し方 産業医紹介4つの相談先と選び方のポイント
産業医の業務は、従業員が健康に就労できるよう支援を行っていくことです。
健康診断やストレスチェックなど産業医業務を理解したうえで業務を担える産業医を選任することが好ましいといえます。また、企業担当者や従業員と円滑なコミュニケーションができる能力も不可欠です。しかし、それらを満たしていても、企業が期待する産業医業務を請け負うことのできない場合は、産業医の変更を検討すべきでしょう。
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