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労働安全衛生法により、事業者は労働者に対して健康診断を受けさせる義務があります。健康診断を受けさせないと、法令違反になります。場合によっては労働基準監督署から指導が入り、50万円以下の罰金を支払わなければなければなりません。
また、企業には安全配慮義務が課せられています。これは、従業員が安全で健康に働けるよう企業が配慮することです。健康診断を実施しないと、法令違反だけでなく、安全配慮義務にも違反していると見なされる可能性が大いにあります。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法第120条」
従業員の労働時間や労働条件によって、健康診断の受診義務の有無が決まります。対象となる人を雇った場合には、会社の規模に関わらず健康診断を受けさせなくてはなりません。
次に、従業員の種類別に説明していきます。
正社員はフルタイムで勤務することが一般的であり、常時雇用する従業員に該当します。
このため、正社員は健康診断の対象となります。
以下2つの条件を満たし、常時雇用されている場合、パートやアルバイトも健康診断の受診対象者となります。
・週の労働時間が正社員の4分の3以上
・契約期間が1年以上
派遣社員の雇用主は、派遣元の企業になります。このため、派遣先の企業には、派遣社員に対して健康診断の実施義務がありません。派遣社員が労働契約を締結している先で健康診断の実施義務が生じます。
ただし、特殊健康診断と呼ばれる一定の業務に従事する従業員への健康診断については、派遣先に実施義務が発生します。特殊健康診断とは、健康に有害な影響を及ぼす可能性のある業務についている従業員に対して行われる健康診断です。たとえば高気圧が伴う業務や、エックス線などを扱う電離放射線の発生を伴う業務、特定の化学物質を扱う業務などが該当します。
このように、派遣社員の健康診断は実施する健康診断の種類によって実施義務者が変わるため、各派遣社員に合わせた対応が必要です。
【参考】厚生労働省「派遣元が実施すべき事項」
【関連記事】特殊健康診断とは?有害業務に従事する社員を守る大事なポイントは?
役員の健康診断の実施義務の有無は、働き方によって左右されます。
役員であっても、工場長や支店長など、労働者性がある役員の場合は、健康診断を受診する義務が発生します。一方で、代表取締役や社長は事業主になるため、健康診断の実施対象からは外れます。健康診断を実施するか否かは、労働者性があるかないかによって判断します。
【関連記事】従業員、常時使用(雇用)する労働者の定義とは? 社労士が解説!
平成24年に厚生労働省が実施した「労働者健康状況調査」によると、事業所の規模が小さくなるほど実施率・受診率ともに下がっていく傾向があると分かります。この結果から、人数が少なければ管理しやすくなるというわけではないと言えるでしょう。
従業員数が多ければ多いほど、健康診断の報知が行き渡りづらい、業務調整が難しいなど、受診しづらい状況になる可能性も高まります。すべての対象者が健康診断を受けるには実施方法や期限の報知を工夫したり、受診する時間を確保できるよう業務調整をしたりなど、受診しやすい環境をつくることが大切です。
区分 | 事業所 | 常用労働者 | |
実施率 | 受診率 | 有所見率 | |
平成24年
(事業所規模) |
91.9 | 81.5 | 41.7 |
5,000人以上 | 100.0 | 87.8 | 45.4 |
1,000~4,999人 | 100.0 | 85.6 | 46.4 |
500~999人 | 100.0 | 82.6 | 46.8 |
300~499人 | 99.7 | 85.8 | 47.4 |
100~299人 | 99.5 | 83.9 | 45.9 |
50~99人 | 98.2 | 82.5 | 45.8 |
30~49人 | 96.8 | 80.9 | 38.0 |
10~29人 | 89.4 | 77.0 | 33.3 |
【出典】厚生労働省「平成24年 労働者健康状況調査-結果の概要」
健康診断は、大きくは一般健康診断、特殊健康診断に分類されます。一般健康診断の中にもいくつか種類があるので解説していきます。
一般健康診断は、全職種を対象に実施される健康診断です。常時使用する従業員の健康状態を把握し、就業上の配慮を適切に行うこと、各種疾患や生活習慣病等の予防を目的としています。具体的には、以下の5つがあります。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」
一般健康診断は、雇い入れ時には血液検査などが必須検査項目にあります。しかし労働安全衛生法第44条の定めにより、定期健康診断であれば医師が必要でないと認める場合に一部検査項目の省略が可能です。
条件として対象者の年齢や別検査の結果によるものがありますが、本人の自覚症状や健康状態の変化に応じて判断することが重要とされています。また、省略の判断は医師が行うもののため、企業で独自に判断しないよう注意が必要です。
検査必須項目
医師に判断により省略可能な項目
【参考】
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります」
厚生労働省 東京労働局「健康診断による健康管理を進めよう」
e-Gov法令検索「労働安全衛生規則第44条第2項」
一般財団法人 日本健康倶楽部
特定の化学物質を扱う職種など、厚生労働大臣が定めた健康上に有害な影響を与える可能性のある業務に従事する従業員については、特殊健康診断を実施しなければなりません。
特殊健康診断は、以下のような作業や物質を取り扱う業務7つが該当します。
詳細については、以下の関連記事をご確認ください。
【関連記事】特殊健康診断とは?有害業務に従事する社員を守る大事なポイントは?
健康診断を企業が行ううえでは、注意したいポイントがいくつかあります。ここではその気を付けたいポイントを紹介していきます。
会社での実施が義務付けられている健康診断費用は、事業者に負担義務があります。ただし、たとえばオプション検査や人間ドックなど、労働安全衛生法で義務化されていない検査については事業者に費用負担の義務はありません。トラブルを回避するためにも、あらかじめ従業員にその旨を通知するとスムーズでしょう。義務外の費用を事業者側で負担する場合は、会社が負担する上限額を事前に伝えておくとトラブル回避につながります。
受診時間分の賃金については、事業者に支払い義務はありません。しかし、従業員の不満などを考慮すると支払うことが望ましいと考えられています。双方が納得いく形で健康維持に努めることが大切です。
特殊健康診断は業務遂行に関して必ず実施しなければならない健康診断のため、賃金の支払い義務が発生します。また、前述の通り特殊健康診断の対象者が派遣社員の場合は実施義務が派遣先の企業にあるため、費用の支払い義務も同様に発生します。
既出の「従業員の健康診断は企業の義務」の段落でも触れている通り、従業員が健康診断を受けていない場合、罰金50万円以下の罰則が生じることがあります。
従業員に健康診断を受けさせる意味は、従業員の健康や安全を担保するだけに留まりません。企業イメージや信頼の獲得にもつながります。従業員の健康を維持すると共に、企業がリスクを負わないためにも従業員の健康診断実施状況の管理を徹底することが重要です。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法第120条」
健康診断の結果は個人情報に該当します。そのため、第三者へ提供する場合には本人の同意が必要になります。2015年の個人情報保護法改正により、健康診断の結果は「要配慮個人情報」として定義されました。このため、より慎重に取り扱うことが求められます。
前項の通り、健康診断結果は個人情報に該当するため取り扱いに十分注意しましょう。
一方で、健康診断の結果をふまえて、企業は就業上の措置をとる必要があります。このため、企業は従業員の健康状態を把握する必要があり、関係者(健康診断実務従事者、産業保健スタッフ、人事労務担当者、管理監督者など)に健康情報を提供する場合は、就業上の措置を実施する上で必要最小限とすることが定められています。なお、法定項目の結果に関しては、企業は従業員本人の同意がなくても健康診断結果を取得できます。
【参考】
厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」
「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」
健康診断を実施した後にも、健康診断結果にまつわる対応義務があります。それぞれ解説していきます。
常時50人以上の従業員を雇用する事業者には、所轄の労働基準監督署に対して健康診断結果を報告する義務が生じます。この報告義務も労働安全衛生法によって定められているため、守らないと違法行為とみなされてしまいます。
従業員数が50人未満の場合、報告義務はありませんが健康診断を受けさせる義務がなくなるわけではないので注意しましょう。
会社側には、健康診断の結果から個人票を作成して、5年間保管する義務があります。その際には、本人の承諾が必要です。病院側から本人用と事業所保管用の結果が送られてくる場合も多いです。
それを保管しておけば問題ありません。また、個人で受けた場合など、一般健康診断の必須項目以外の診断結果については、保管義務は特にありません。
派遣労働者の場合は、一般健康診断に関する健康情報の取り扱いを、派遣元事業者の責任において行うのが一般的です。派遣元の事業者は、派遣労働者の同意を得ずに取り扱ってはいけません。
たとえば、同意なしに派遣先事業者に健康情報を渡すことなどは禁止されています。
健康診断は受けさせて終わりではありません。その後、結果が送られてきてからのフォローも企業側には重要なことの1つです。診断結果に異常がみられた従業員がいれば、医師に聴取するなどしなくてはなりません。さらに産業医などと連携し、場合によっては保健指導、あるいは休職などをすすめることも必要になります。
勤務形態や労働時間に対する考え方は、変化の一途をたどっています。ワークライフバランスが重要視される社会においては、従業員の負担や悩みは肉体的なものに限りません。
ときには精神面でのフォローがもっとも大切になります。そのフォローは結果的に会社のパフォーマンスを上げることにもつながります。従業員の健康管理には、肉体的にも精神的にも、十分に気を使う必要があるといえるでしょう。
【関連記事】
【産業医監修】健康診断後、産業医と事業者に求められる対応とは
【産業医寄稿】健康診断の後は、産業医から意見を聞いてますか?!
労働安全衛生法に基づき、企業は従業員に健康診断を実施する義務があります。しかしながら、仕事の忙しさなどを理由に、健康診断を拒否する従業員が一定数存在する実情もあります。このような場合、企業はどのような対応をとるべきなのか解説していきます。
従業員が健康診断を拒否する場合、まずは理由を確認しましょう。例えば、業務が多忙で受けられない場合、業務量の調整をする必要が生じます。企業側には従業員が健康診断を受診しやすいように、健康診断の実施日程を複数設定する、自宅付近での医療機関で健康診断を受診できるようにする、繁忙期を避けて健康診断を設定する、といった配慮も求められます。
健康診断を受ける意義について繰り返し説明することも重要です。早期に病気を発見・対処することで得られるメリットや、健康診断を受けないことで被りうる健康上の問題を説くことで、従業員の受診に対する内発的な動機を促すことができます。
前述の通り、企業には従業員に対して健康診断を実施する義務が、従業員には健康診断を受診する義務が労働安全衛生法に定められています。健康診断の受診は任意だと考えている従業員に対して、健康診断の受診は義務であることを説明しましょう。
就業規則として健康診断に関するルールを定めておくと、従業員にとっても身近なルールとして理解を得やすくなるでしょう。
会社で健康診断を実施するにあたって疑問を感じやすい内容を紹介いたします。企業側だけではなく、従業員から質問を受けやすい内容でもあるので、ぜひ回答する際の参考にしてください。
従業員の配偶者や家族は、会社で実施する健康診断実施義務の対象ではありません。健康診断の実施義務は雇用関係にある従業員に対して発生するためです。自身が雇用されている会社で健康診断を行うか、個人で受診する必要があります。
血液検査は雇い入れ時の健康診断では必須の検査項目ですが、定期健康診断であれば医師が必要無いと認めた場合に省略可能です。医師から不要と判断される際は、対象者が35歳未満かつ36歳から39歳の年齢の場合に限ります。
【参考】
厚生労働省「定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります」
e-Gov法令検索「労働安全衛生法第44条第2項」
小規模な企業であっても、「健康診断を受ける義務がある従業員とは」の項目に当てはまる従業員が一人でもいれば健康診断の実施義務が発生します。ただし、所轄の労働基準監督署への報告義務が発生するのは、常時雇用する従業員が50人以上いる場合からです。従業員数が少なくても雇用形態がパート・アルバイトであっても、必ず会社で健康診断を実施しましょう。
従業員が妊婦でも、健康診断は会社で実施する必要があります。ただし、体調の配慮や、かかりつけ医との相談が必要です。
かかりつけ医が受診不可と判断した場合は、健康診断を免除できます。健康診断を実施する場合でも、一般的に胸部エックス線検査や腹囲測定などの一部検査については実施しないほうがよいとされています。妊婦の健康診断項目は、必ず事前にかかりつけ医の意見を仰ぐようにしましょう。
健康診断は、従業員を一人でも雇えば発生する、知らないでは済まされない企業側の重大な義務の1つです。注意点やポイントを正しく理解したうえで、適切に行う必要があります。企業のパフォーマンスを向上させていくためにも、健康診断は適切に行いましょう。そのうえで、従業員の健康管理には常に目を向けておくことが大切です。
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50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け