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産業医による職場巡視は法令で定められており、従業員の安全や健康を守るために実施しなければなりません。
しかし、「職場巡視を行う頻度や流れがよく分からない」「どんな点をチェックするのか?」などの疑問を持つ企業担当者の方は多いのではないでしょうか。
本記事では、産業医による職場巡視の目的や頻度、職場巡視でチェックするポイントなどを紹介します。
法改正により、所定の条件を満たせば職場巡視の頻度を変更できるようになったことも詳しく解説していますので、しっかりと理解しておきましょう。
産業医による職場巡視とは、産業医が事業場を巡視して、安全面・衛生面における問題の有無を確認することです。
定期巡視は産業医の法定業務の1つであり、労働安全衛生規則第15条において次のように定められています。
(産業医の定期巡視)
第十五条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
【出典】e-GOV 法令検索 「労働安全衛生規則」
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産業医による職場巡視の目的は、作業環境を実際に見てまわり、安全衛生上の問題点を見出し、改善していくことです。
事業者は、職場巡視を実施する機会と情報を産業医に対して提供することになっています。
産業医が定期的に職場を訪れ巡視することで、従業員と産業医がお互いにとって身近な存在となるほか、産業医が職場環境や業務内容、企業自体を深く理解することにも役立ちます。
事業主が、産業医による職場巡視を実施しなかった場合は、法令違反とみなされ、50万円以下の罰金もしくは6ヶ月以下の懲役に科されます。
また、事業主が産業医に職場巡視を依頼し、産業医が職場巡視を怠った場合も同様です。
職場巡視を行わず、事業場で労災が発生してしまった場合、安全配慮義務違反と判断される可能性もあります。従業員の健康や安全を守ることはもちろん、法令遵守をするためにも、職場巡視を必ず実施しましょう。
【関連記事】安全配慮義務違反に該当する基準とは?企業が取り組むべき対策も解説
労働安全衛生規則の第15条には、産業医は少なくとも月1回、職場巡視を実施するよう規定されています。
しかし、2017年に労働安全衛生規則が改正され、特定の条件を満たした場合、産業医による職場巡視は2ヶ月に1回の実施頻度でも可能になりました。
この法改正の背景としては、従業員の過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルス対策などが事業場における重要な課題で、より効率的かつ効果的な産業医の職務の実施が求められているためです。
つまり、産業医による職場巡視の頻度を減らす代わりに、過重労働やメンタルヘルス対策の強化に時間を割くことを目指した法改正といえます。
【参考】厚生労働省「産業医制度の在り方に関する検討会報告書」
産業医による職場巡視が2ヶ月に1回でもよいのは、以下2つの条件を満たしている事業場です。
それぞれの条件について詳しく解説します。
【参考】厚生労働省「産業医制度に係る見直しについて」
産業医の職場巡視の頻度を2ヶ月に1回にする場合に必要な「毎月提供する所定の情報」とは以下の内容です。
所定の情報 | 情報の内容 |
衛生管理者が行う巡視の結果 | 巡視を行った衛生管理者の氏名 |
巡視の日時 | |
巡視した場所 | |
設備、作業方法、衛生状態に有害の恐れがあると判断した場合の有害事項と措置内容 | |
その他労働衛生対策の推進にとって参考となる事項 | |
(安全)衛生委員会の調査審議を経て産業医に提供することとした情報 | (例)健康への配慮が必要な従業員の氏名と、その労働時間数 |
(例)新規使用予定の化学物質・設備名、これらに関する作業条件と業務内容 | |
(例)従業員の休業状況 | |
週40時間(休憩時間を除く)を超過した労働時間が累計で月100時間を超えた従業員の氏名と、超過時間に関する情報 |
【参考】厚生労働省「産業医制度に係る見直しについて労働安全衛生規則等が改正されました」
産業医の職場巡視を月1回から2ヶ月に1回に変える場合は、事業者と産業医の双方が同意していなければなりません。
そのためには、衛生委員会などで産業医の意見をもとに調査審議をして、産業医と事業者が同意して決定する手順が必要になります。
また、2ヶ月に1回の職場巡視の頻度をどのくらいの期間実施するのかを決め、定めた期間が終了したら、2ヶ月に1回が適切な頻度なのかを調査審議する必要もあります。
産業医による職場巡視でチェックするのは、作業環境と従業員の心身の健康面に関してです。産業医は事業場や従業員の状況を把握した上で、起こり得る労働災害を想定しながらチェックしていきます。
産業医による職場巡視では、具体的にどのような点をチェックしているのか把握しておきましょう。
従業員の心身の健康を守り安全に働いてもらうために、産業医による職場巡視では、以下のチェックが行われます。
【参考】茨城県医師会「産業医巡視記録」
オフィスと工場では作業環境が違うため、チェックすべきポイントが異なります。それぞれの環境面におけるチェックポイントについて見ていきましょう。
オフィスの職場巡視では、労働衛生環境について定めた事務所衛生基準規則にもとづいて以下などをチェックします。
【参考】茨城産業保健推進センター「職場の衛生管理チェックリスト集」
工場の職場巡視では、作業環境の安全か確保されているかがとくに重視されます。産業医がチェックする主なポイントは、以下などが挙げられます。
【参考】茨城県医師会「産業医巡視記録」
産業医による職場巡視チェックリストは、独自に作成するのが基本です。インターネット上でもサンプルが多く提供されているので、それらを参考にして職場に沿った内容に調整して利用するのもよいでしょう。
関連資料:職場巡視チェックシート
産業医による職場巡視の流れは、以下のとおりです。
産業医による職場巡視は実施して終わりではなく、職場巡視を通じて見つかった問題点を安全衛生の改善にしっかりと活かして、それを繰り返していくことが大切です。職場巡視の流れを理解しておきましょう。
【参考】労働者健康安全機構「産業保健21 第80号」
まずは職場巡視の関係者(産業医、衛生管理者、労務担当者など)で、年間の巡視計画を立てましょう。
その計画内容を衛生委員会で審議し、重点的に巡視する内容、臨時的な内容(作業環境測定結果、リスク低減対策の確認、新規作業開始時等)まで決めておくと、スムーズに職場巡視を行えます。
次に、職場巡視前の事前準備として、以下の内容を産業医と一緒にまとめておきましょう。
・作業工程や作業内容の確認
・有害物取り扱いの確認
・作業用の各種機械の確認
・巡視用チェックリスト
職場巡視当日は、まず参加者間で巡視する場所、現在の状況について情報共有をしましょう。事前に準備したチェックシートを活用して事業場を巡視しながら、産業医と従業員とが積極的にコミュニケーションを図れる工夫をしましょう。
自社の産業医を知らない従業員に、産業医を覚えてもらうチャンスです。職場巡視を通じて接点を持っておくことで、気軽な相談をしたり、産業医面談を受けてもらえたりすることが期待できます。
なお、工場など作業現場を巡視する際は、作業着や保護具などを必ず身につけて、安全を確保してください。
職場巡視後は、産業医に職場巡視報告書を作成してもらいましょう。職場巡視の記録・保管は、法的義務ではありません。
しかし、安全衛生委員会で職場巡視の様子を共有する必要があるため、職場巡視報告書があると共有がスムーズです。
また、労災の発生や臨検があった際には、労働基準監督署から職場巡視の記録提出を求められることがあります。いざという場合に備えて、職場巡視後にはその記録を残し、一定期間保管しておくとよいでしょう。
職場巡視報告書をもとに、安全衛生委員会で審議します。企業側は、産業医からのフィードバックを踏まえて改善措置を検討します。
職場巡視で明らかになった問題点や改善点、対応すべき点は、すぐできそうなものは応急処置を講じましょう。中長期的に取り組むべきものについては、今後の対応について衛生委員会で議題にしていきましょう。
産業医の職場巡視についてよくある質問とその回答もチェックしておきましょう。
職場巡視は、産業医が作業方法や衛生状態に有害の恐れがあるか実地で確認しなければならないため、オンラインでの実施は認められていません。
【参考】厚生労働省「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」
【関連記事】産業保健活動、オンライン対応がOK、NGなものは?―今さら聞けない産業保健vol.4
産業医による職場巡視の記録について、法令で保管義務は定められていません。しかし、職場巡視の実施を証明するためにも、保管しておくとよいでしょう。
産業医による職場巡視の記録の保管期間は、(安全)衛生委員会議事録の3年間、健康診断個人票や面接指導結果記録の5年間などを参考に設定することをおすすめします。
【参考】e-GOV法令「労働安全衛生規則」
産業医による職場巡視は、企業に課されている義務です。従業員の安全を守り、法令遵守を実現するためにも、しっかり対応していきましょう。
職場巡視を有意義なものにするためには、頻繁に現場をまわることができる衛生管理者等と産業医との連携、人事労務担当者への共有が非常に重要となります。
職場巡視を実施したら都度振り返り、職場巡視を通じて明らかになった課題点や改善点に対して、どのように対応するか検討していきましょう。
同時に、適切に対応や管理ができている部分もグッド・プラクティスとして前向きに評価することを心掛けましょう。
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