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産業医の職場巡視は義務!2ヶ月に1回でもOKな理由、罰則、チェックリストを確認

職場巡視は産業医による月1回以上、衛生管理者による週1回以上の実施が法律で定められています。職場巡視は、従業員の健康を維持する上でとても重要な業務です。

産業医による職場巡視は月1回以上の実施が義務付けられていましたが、2017年の法改正により、所定の条件を満たせば「産業医のよる職場巡視は2ヶ月に1回でも可能」になりました。

今回は、主に産業医がどのような点に注意して職場巡視を行えばいいのか、2ヶ月に1回以上の実施でもいい理由、巡視のポイントなどについて解説します。

職場巡視とは

職場巡視とは、産業医が事業場を巡視して、安全面・衛生面において、問題の有無を確認することを指します。

具体的な内容は後述しますが、室内の照度、騒音レベル、非常経路の確認などで、産業医による月1回以上、衛生管理者による週1回以上の実施が定められています。

産業医による職場巡視の目的とは

職場巡視の目的は、作業環境を実際に見てまわり、安全衛生上の問題点を見出し、改善していくことです。

事業者は、職場巡視を実施する機会と情報を産業医に対して提供することになっています。
産業医が定期的に職場を訪れ、巡視することで、従業員と産業医とがお互いにとって身近な存在となりますし、産業医が職場環境や業務内容、企業自体を深く理解することにも役立ちます。

コロナ禍の影響により、一定の条件を満たすことで産業保健業務のオンライン対応も可能になりました。しかしながら、職場巡視の目的は上述の通り、「産業医が従業員の作業環境を直接見て、安全衛生上の問題点を見出し、改善していくこと」です。スマホなどを使って職場の様子を映すことはできても、労働環境を直接確認できないため、職場巡視のオンライン対応は難しいといえるでしょう。

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産業医の職場巡視は義務

産業医には法令業務がありますが、そのうちの1つが職場巡視です。労働安全衛生規則第15条により、以下のように産業医の定期巡視が定められています。

(産業医の定期巡視)
第十五条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

出典:e-GOV 法令検索 労働安全衛生規則
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衛生管理者による職場巡視は義務なのか?労働環境改善に役立つポイントを徹底解説

職場巡視を実施しない場合の罰則

前述の通り、産業医による職場巡視は労働安全衛生規則で義務付けられています。そのため、職場巡視を実施しなかった場合は法令違反と見なされ、50万円以下の罰金もしくは6ヶ月以下の懲役に科されます。事業主が産業医に職場巡視を依頼し、産業医が職場巡視を怠った場合も同様です。
職場巡視を行わず、事業場で労災が発生してしまった場合、安全配慮義務違反と判断される可能性もあります。従業員の健康や安全を守ることはもちろん、法令遵守をするためにも、職場巡視を必ず実施しましょう。

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産業医による職場巡視の頻度は?

労働安全衛生規則の第15条により、産業医は少なくとも月1回、衛生管理者は週1回の職場巡視が規定されています。2017年に行われた労働安全衛生規則の改定により、特定の条件を満たした場合、産業医による職場巡視は2ヶ月に1回の実施頻度でも可能になりました。

産業医の職場巡視、2ヶ月に1回でも可能!

この法改正の背景としては、従業員の過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルス対策等が事業場における重要な課題であり、より効率的かつ効果的な産業医の職務の実施が求められているためです。つまり、産業医による職場巡視の頻度を減らす代わりに、過重労働やメンタルヘルス対策の強化に時間を割くことを目指した法改正といえます。

産業医による職場巡視が2か月に1回の職場巡視が可能になるのは、以下の2つの条件が満たされている事業場です。

職場巡視が2ヶ月に1回になる条件

(1)事業者から産業医に所定の情報が毎月提供されている
産業医の職場巡視の頻度を2か月に1回にした場合に必要になる「毎月提供する一定の情報」は以下となります。

  • 衛生管理者が少なくとも週1回行う作業等の巡視の結果・巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所

    ・巡視を行った衛生管理者が「設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項と、それに講じた措置の内容

    ・その他、労働衛生対策の推進にとって参考となる事項

  • 衛生委員会等の調査審議を経て、事業者が産業医に提供することとしたもの
    ・労働安全衛生法第66条の9に規定する健康への配慮が必要な労働者の氏名と、その労働時間数
    ・新規に使用される予定の化学物質や設備名と、これらにかかわる作業条件や業務内容
    ・労働者の休業状況など
  • 休憩時間を除いて1週間あたり40時間を超えて労働し、その超えた当道時間が1ヶ月あたり100時間を超えた従業員の氏名と、超えた時間に関する情報

(2)事業者の同意を得られている
産業医の意見に基づき、衛生委員会等において調査審議を行った上で、事業者の同意を得ることが必要です。
また、巡視頻度を変更する一定の期間を定め、期間ごとに産業医の意見に基づいて調査審議を行わなければなりません。
例えば、4月から9月までの間は巡視頻度を2か月に1回にすると決まった場合は、10月の衛生委員会で再度、巡視頻度が2か月に1回で十分だったかを話し合いましょう。

出典:厚生労働省「産業医制度に係る見直しについて」

産業医による職場巡視のチェックポイント

職場巡視を行うにあたり、チェックしたいのは作業環境、従業員の様子です。事業場の特徴や状況を把握したうえで、起こりうる労働災害を想定しながら作業環境を確認することが重要です。建設現場とオフィスでは作業環境が違うように、企業ごとにチェックポイントは異なりますが、一例として以下のような項目が挙げられます

●オフィスの環境

  • 4S(整理、整頓、清掃、清潔)
  • 室内の照明、換気、気温、湿度が適切か
  • トイレ、洗面所、給湯室、休憩室などの衛生環境
  • 騒音箇所の有無などの音環境
  • 受動喫煙対策がなされているか

●VDT作業環境

  • 1日の作業時間の長さ
  • 作業を行う際の姿勢
  • 机の高さや椅子などの状態

●安全管理

  • 地震、防災対策が適切か
  • 救急用具の内容、AEDの設置、その有無

出典:厚生労働省「安全衛生関係リーフレット等一覧」
関連資料:職場巡視チェックシート

職場巡視の流れ

職場巡視を実施するには、大まかな流れがあります。

職場巡視は実施して終わりではなく、職場巡視を通じて見つかった問題点を安全衛生の改善にしっかりと活かして、それを繰り返していくことが大切です。次に、職場巡視の流れについて解説していきます。

1.職場巡視の事前準備

まずは職場巡視の関係者(産業医、衛生管理者、労務担当者など)で、年間の巡視計画を立てましょう。

その計画内容を衛生委員会で審議し、重点的に巡視する内容、臨時的な内容(作業環境測定結果、リスク低減対策の確認、新規作業開始時等)まで決めておくと、スムーズに職場巡視を行うことができます。

次に、職場巡視前の事前準備として、以下の内容を産業医と一緒にまとめておきましょう。

・作業工程や作業内容の確認
・有害物取り扱いの確認
・作業用の各種機械の確認
・巡視用チェックリスト

2.職場巡視の実施

職場巡視当日は、まず、参加者間で巡視する場所、現在の状況について情報共有をしましょう。事前に準備したチェックシートを活用して事業場を巡視しながら、産業医と従業員とが積極的にコミュニケーションを図れる工夫をしましょう。自社の産業医を知らない従業員に、産業医を覚えてもらうチャンスです。職場巡視を通じて接点を持っておくことで、気軽な相談をしたり、産業医面談を受けてもらえたりすることが期待できます。

なお、工場など作業現場を巡視する際は、作業着や保護具などを必ず身につけて、安全を確保してください。

3.職場巡視報告書の作成

職場巡視後は、産業医に職場巡視報告書を作成してもらいましょう。

職場巡視の記録を残す法的義務はありません。しかし、安全衛生委員会で職場巡視の様子を共有する必要があるため、職場巡視報告書があると共有がスムーズです。また、労災の発生、臨検があった際には労働基準監督署から職場巡視の記録提出を求められることがあります。いざという場合に備えて、職場巡視後にはその記録を残し、一定期間保管しておくとよいでしょう。

4.職場巡視の結果をもとに、安全衛生委員会で審議

職場巡視報告書をもとに、安全衛生委員会で審議します。
企業側は、産業医からのフィードバックを踏まえて改善措置を検討していきましょう。職場巡視で明らかになった問題点や改善点、対応すべき点については、すぐできそうなものは応急処置を講じましょう。中長期的に取り組むべきものについては、今後の対応について衛生委員会で議題にしていきましょう。

出典:労働者健康安全機構「産業保健21」第80号

産業医の職場巡視は義務!しっかり対応しよう

職場巡視は企業に課されている義務です。従業員の安全を守り、法令遵守を実現するためにも、しっかり対応していきましょう。職場巡視を有意義なものにするためには、頻繁に現場をまわることができる衛生管理者等と産業医との連携、人事労務担当者への共有が非常に重要となります。

職場巡視を実施したら都度振り返り、職場巡視を通じて明らかになった課題点や改善点に対して、どのように対応するか検討していきましょう。同時に、適切に対応や管理ができている部分もグッド・プラクティスとして前向きに評価することを心掛けましょう。

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