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衛生管理者による職場巡視は義務なのか?労働環境改善に役立つポイントを徹底解説

労働安全衛生法により、50名以上の労働者がいる事業場への選任が義務付けられている「衛生管理者」。従業員が健康に働けるよう、職場の労働衛生面を全般的に管理するのが衛生管理者の主な役割です。従業員の健康面に関する処置のほか、作業環境の衛生面における調査や改善、衛生教育など、その職務は多岐にわたります。
その中でも、特に重要な職務として挙げられるのが「職場巡視」です。職場における労働衛生面の問題を早期発見するためにも、定期的な職場巡視は欠かせません。今回は、衛生管理者による職場巡視の基礎知識を踏まえ、職場巡視の流れや必要な事後措置などについて解説していきます。


衛生管理者による職場巡視は企業の義務!実施の目的や内容は?

職場巡視とは、従業員が働く作業現場を実際にその目で見て回り、安全衛生上の問題がないかどうかをチェックする作業のことです。
問題が見つかった場合は、内容に応じて必要な改善措置を講じます。チェックする項目は企業ごとに異なりますが、たとえば以下のようなものが挙げられます。

  • 室内の照明、換気、気温、湿度が適切か
  • トイレ及び洗面所が清潔か
  • 職場が清掃されているか
  • 地震、防災対策が適切に講じられているか
  • 長時間労働対策が講じられているか
  • 安全衛生の保護具の保管が適切か

衛生管理者自らが巡視することで、より正確な状況把握が可能となり、健康管理を積極的かつ的確に行えるようになります。現場で発生しているストレスの要因などを発見するためにも、非常に重要な職務だと言えるでしょう。
なお、衛生管理者による職場巡視は労働安全衛生規則により実施が義務付けられており、衛生管理者は1週間に1回以上、巡視を行わなければなりません。
また、職場巡視は、衛生管理者と同じく従業員の健康管理を担う「産業医」に対しても実施が義務付けられています。職場巡視の目的や内容は共通していますが、巡視を行う頻度は同じではありません。衛生管理者が1週間に1回以上の職場巡視を義務付けられているのに対し、産業医は原則1カ月に1回以上とされています。

担当者
頻度
衛生管理者
週1回以上
産業医
原則は1カ月に1回以上(条件付きで2ヶ月に1回)
安全管理者
頻度に関する規定はなし
(建設業関係)統括安全衛生責任者
毎作業日1回以上
(建設業関係)店社安全衛生管理者
月1回以上を義務付け

ただし、2017年の労働衛生規則改正により、一定の条件を満たせば産業医による職場巡視は2カ月に1回以上でも可と認められました。産業医には、近年問題視されつつある過重労働・メンタルヘルスの対策強化に時間を割いてもらいたいというのが、改正の理由のひとつです。
産業医の職場巡視が減った分、衛生管理者が行う巡視の重要性は高まりました。頻繁に職場巡視を行うことで得た新鮮な情報は、産業医が指導や助言をする際に大いに役立ちます。効果的な健康管理を行うためにも、産業医と密に連携し、職場巡視の実施や結果報告を行うことが大切です。
【関連記事】健康経営に欠かせない衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説

衛生管理者による職場巡視の流れ

衛生管理者による職場巡視を実施する場合、「事前準備」「実施」「事後措置」というステップを踏むのが一般的です。それぞれどのように進めていくのか、詳しく見ていきましょう。

職場巡視の事前準備

前述の通り、50名以上の労働者がいる事業場では、衛生管理者による職場巡視を1週間に1回以上実施する義務があります。産業医と比べれば頻度が多いとはいえ、限られた機会で効率良く巡視するためには、事前準備が欠かせません。
重点的にチェックする項目のリストを作成する、巡視対象となる現場の情報を集めておくなど、スムーズに進めるために必要なことを考えましょう。
職場巡視の最中も、従業員は日常の業務を行っているため、邪魔をしないことも大切です。
優先度の高い場所から巡視が行えるようにマップを作成する、繁忙期や締め切り前を避けるなど、スムーズに実施出来るようタイミングにも配慮しましょう。

職場巡視の実施

実際に職場巡視に回る際、ただ漫然と現場を眺めるだけではいけません。従業員の健康障害につながるリスクを早期発見するために、厳しい目でチェックすることが大切です。具体的には、以下のようなポイントを心がけると良いでしょう。
(1) 「この現場ならどのような労働災害が起り得るか」をイメージする
(2)従業員の服装の汚れなどから、普段どのように業務を行っているかを想像する
(3)発生した現象の背景を考える
(4)悪い部分だけでなく誉めるべき部分も見つけ、従業員との関係を良好に保つ
(5)巡視中に転倒などのトラブルが起きては本末転倒なので、安全には十分配慮する
(6)事務所や休憩室、トイレ、喫煙室などの作業以外で使うスペースもチェックする
この中で、特に注意したいのが(1)です。労働災害が起きると、従業員の心身に深刻な障害が及ぶ恐れがあります。
損害賠償金の支払いや社会的信用の失墜など、企業も深刻なダメージを受ける可能性もあるでしょう。このような事態を避けるためにも、職場巡視で労働災害発生の可能性をイメージし、必要な措置を講じることが大切なのです。
たとえば、パソコンやレジスターなど、卓上で電子機器を使う現場の場合、機器から伸びるコードには注意しなければなりません。コードが無造作に垂らされたり、床を這ってコンセントにつながっていたりすると、足を引っかけて転倒してしまうかもしれません。
コードをまとめて机や床に固定するなど、足を引っかけにくくする工夫が必要です。
また、消毒や清掃作業で薬品を使用する現場の場合、正しく取り扱わないと深刻な健康被害が発生する恐れがあります。
過去には、本来500倍に希釈して使用するべき薬品を原液のまま使用し、中毒を起こした労働災害の事例もあります。
職場の目立つところに正しい使用方法を掲示する、業務のリスクを従業員に周知徹底させるなどの対策が欠かせません。
職場巡視を行うに当たり、参考になるホームページとして、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」があります。
こちらでは過去に発生した労働災害について「業種」や「事故の型」、またなぜその労働災害が発生したのか?という「起因物」などから調べることが出来ます。
巡視する事業場の環境に合わせて、発生の可能性がありそうな労働災害を調べて、参考にすると良いでしょう。

職場巡視の事後措置

職場巡視が終わったら、巡視を行ったメンバーで内容をまとめる会議などを行いましょう。チェックリストの結果や、巡視した際に気になったポイントなどをお互いに確認し、解決すべき問題があれば現場に指摘します。内容がまとまったら、チェック結果の記録作成やリスク評価などを行い、関係各所への報告を行いましょう。
また、間違いなく職場巡視を行ったことを証明するためにも、記録は必ず作成し、一定期間保管しておきましょう。なお、職場巡視と同様に企業の産業衛生に関わる、衛生委員会の議事録や健康診断結果については、法律で保管が義務付けられています。それぞれ3年、5年の保管が必要なので、職場巡視の記録もそれに準じた保管期間を設けると良いでしょう。

職場巡視の事後措置として大切なこと

どれほど丁寧に職場巡視をしても、チェックしただけでは意味がありません。職場巡視でわかったことは必ず記録として残し、リスク評価も行いましょう。
リスク評価では、職場巡視で見つかった問題について、労働災害につながる可能性や影響の大きさなどを考え、どのリスクから優先的に対応するべきかを判断します。
問題が多く見つかった現場の場合、どれから取りかかれば良いか判断に迷っているうちに、労働災害が発生してしまう可能性があります。
これでは、せっかくの職場巡視が無駄になりかねません。このような事態を防ぐためにも、リスク評価は非常に重要な役割を果たすのです。
リスク評価を行うことで、すぐに改善措置が必要な問題がわかりやすくなり、重大な労働災害の発生を防げる可能性が高まるでしょう。

職場巡視で把握した内容を改善するため、現場への適切なフィードバックを

職場巡視で見つかった問題は、衛生管理者と産業医で把握するだけでは不十分です。実際にそこで働く従業員にフィードバックすることで、危険予知にもつながり、効果的な改善措置が可能になります。
ただ、単純にフィードバックするだけでは、うまく改善につながるとは限りません。特に、規模の小さい事業場の場合、労働衛生の担当者がいないことも多く、フィードバックや改善指摘が放置されてしまうケースも考えられます。
うまくフィードバックが活かされていないと感じた場合は、外部の専門家へ相談してみるのも選択肢のひとつです。
各地域に設置されている産業保健総合支援センターには、職場巡視をはじめとした産業保健に関するプロが在籍しています。自社の現状や効果的な改善策などについて相談することで、プロの適切なアドバイスにより、打開策が見つかる可能性もあるでしょう。
また、改善をすべて現場任せにするのではなく、企業全体の問題として取り組む姿勢を持つことも大切です。安全衛生委員会で議題として取り上げることにより、より効果的な改善策をとれる可能性もあります。
現場の意見も聞いたうえで検討することで、衛生管理者や産業医の意見を押し付けてしまう心配もなくなります。
職場巡視で把握した内容の改善は、従業員の健康を守るために必要不可欠なことです。関係各所とうまく連携し、労働災害や健康障害の発生を防いでいきましょう。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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