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産業医とは? 企業での役割、仕事内容、病院の医師との違いを解説

一定規模以上の事業場には産業医を選任することが義務付けられています。しかし、産業医とは職場で何をしてくれる人なのか曖昧になっているかもしれません。また、何を相談したらよいのか?何を相談できるのか?について、分からないこともあると思います。ここでは、産業医の役割や相談できること、病院やクリニック勤務の医師との違いについて説明します。

産業医とは?

産業医とは、職場において従業員の安全や健康を守るための医師です。そのため、同じ医師でも、病院やクリニックで患者の病気を診断・治療する医師とは職務が異なります。
産業医には、従業員が安全かつ健康に働くことができる職場環境となるように、専門的観点から指導や助言を行う役割があります。この役割を担うために、従業員の健康情報などを取得する必要があります。そのため、産業医には守秘義務が課せられているのです(労働安全衛生法第105条、刑法134条第1項)。

なお、厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、全国の届出「医師数」は339,623人となっています。「医師会が関わる産業保健の現状」によると、2022年10月時点の認定産業医有効者数は70,208人です。そのうち、産業医として活動している人の割合が48.7%、活動していない人が51.3%となっており、産業医として活動しているのは医師全体の10%弱、およそ33,600人というのが現状です。

参考:厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
「医師会が関わる産業保健の現状」

産業医の要件

産業医は医師免許を有していることを前提に、厚生労働省令で定める要件を備えている者である必要があります。具体的には、労働安全衛生規則第14条第2項により以下のように定められています。

  1. ① 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する法人が行うものを修了した者
  2. ② 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修したもの
  3. ③ 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
  4. ④ 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授または講師(常時勤務する者に限る)の職にあり、またはあった者
  5. ⑤ このほか、厚生労働大臣が定める者

参考:厚生労働省「産業医の関係法令」

産業医と一般的な医師の違い

産業医には、事業場で従業員の安全や健康管理を行うための専門性が必要です。医師であることに加えて、産業医学の専門知識について一定の要件を満たしていることが必要です。また、産業医は病院やクリニックに勤務する医師(臨床医)とは役割が異なります。具体的には、産業医は従業員を対象に健康に働けるか/働けないかを判断、臨床医は患者を対象に病気の治療・診断をする点です。詳しくは、以下の表をご参照ください。

産業医 臨床医
活動する場所 企業などの事業場 病院・クリニック・診療所
契約する相手 事業者 患者
活動の対象 従業員 患者
活動の目的 事業場の安全と健康の保持・増進 検査・診断・治療
事業者への勧告権 あり なし

この表の中では、事業者への勧告権という聞き慣れない言葉が出てきます。この「勧告権」によって、職場の安全や従業員への健康影響について特に大きな問題点がある場合には、産業医は事業者に対して改善のための勧告を行うことができます(労働安全衛生法第13条)。このような事業者に対する権限も、産業医と臨床医の大きな相違点です。

【関連記事】
産業医の勧告権とは?無視した場合のリスク

産業医と産業カウンセラーの違い

産業医と似た言葉で、産業カウンセラーと呼ばれる職業があります。両者はどちらも企業に勤めますが、産業医と産業カウンセラーでは国家資格の有無が最大の違いです。

産業医として活動するには国家資格である医師免許が必要であるのに対し、産業カウンセラーは一般社団法人日本産業カウンセラー協会(JAICO)が認定する民間資格に合格・登録手続きをした後に活動することができます。

産業カウンセラーはこの資格をもって企業で従業員のカウンセリングを行い、メンタルヘルスをサポートしています。このように産業医と産業カウンセラーは似た役割を担っていますが、産業医は国家資格、産業カウンセラーは民間資格と、それぞれ異なる資格を所持して勤務していることが大きな違いです。

産業医は「中立的な立場」

産業医の特徴のひとつは、企業と従業員の中立の立場であることです。従業員が心身ともに健康かつ安全に働くことができるよう、専門知識を持った第三者という立場から、企業と従業員の両方に助言などをします。

「産業医は企業からお金をもらって働いているため、企業にとって好都合な対応が取られるのではないか」と考えてしまう人もいるかもしれません。確かに産業医は企業と契約して働いていますが、その役割は企業を効果的に機能させることです。そのため、常に中立の立場で指導を行うことが求められます。

注意! 産業医の兼務が禁止の場合も

産業医の要件を満たしていても、なかには産業医の兼務ができない場合があります。それは、法人代表者等を産業医に選任するケースです。これは、2017年4月1日の労働安全衛生規則の改正により禁止されています。病院やクリニックを経営する医療法人等は注意が必要です。詳しくは、以下の記事をご確認ください。

【関連記事】
院長の産業医兼任が禁止に 病院が検討すべき選任方法とは

産業医の選任義務

産業医の選任義務は、すべての企業に科せられているわけではありません。事業場の規模によって、選任すべき人数や契約形態が異なります。詳しく見ていきましょう。

産業医の設置基準とは

産業医の設置人数は、業種を問わず事業場の規模によって変わってきます。「事業場」の定義や、その規模をどのように測るかなど詳細については、以下の関連記事で解説しています。

【関連記事】
産業医の設置基準 何人以上から?自社に必要な人数は?

産業医には「嘱託産業医」と「専属産業医」がある

産業医には勤務や契約形態の異なる「嘱託産業医」と「専属産業医」の2種類があります。

嘱託産業医とは、非常勤で働く産業医です。企業と業務委託契約を結び、月に1~数回、1回あたり1~数時間程度、事業場を訪問します。常時使用する労働者数が50人を超えると、嘱託産業医の選任義務が発生します。

一方で、専属産業医は原則1つの事業場で常勤として働く産業医です。従業員数が常時1,000人以上の事業場、または500人以上の労働者を特定業務に従事させる事業場では、法律により専属産業医の選任が義務付けられています。

【関連記事】
嘱託産業医とは?専属産業医との違いや報酬相場、選び方のポイント
常勤の専属産業医とは? 専属産業医の定義や選任基準などを解説

産業医を設置するメリット

産業医の選任は企業の義務ですが、産業医を設置することは企業のメリットにもつながります。

産業医を設置することによるメリットの1点目は、従業員の心身の健康を維持できることです。従業員との面談や健康診断・指導を行うことでメンタルヘルスの不調をいち早く察知し、業務が身体への負担になっていないかを確認できます。また、事業場の巡視により従事するうえでの身の安全を確保します。

2点目は、従業員の満足度向上です。産業医が企業に対し労働環境に関する指導・助言を行い働きやすい環境を整えることで、従業員の満足度が向上します。また、従業員が安心して業務にあたり企業を信頼することは、休職や退職を減らすことにもつながります。

健康経営を考える企業にとって、産業医は頼もしいパートナーになり得ます。選任義務のない中小企業も産業医設置を検討してみるとよいでしょう。

【関連記事】
産業医とは?選任が必要な企業やチェックポイントを紹介

注意! 産業医選任を怠ると罰則あり

事業場において常時使用する労働者数が50人以上になった場合、その時点から14日以内に産業医の選任を行うことが法律で義務付けられています。

具体的には、労働安全衛生規則第13条第1項において「産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること」と定められています。違反した場合、事業者には50万円以下の罰金が課せられます。

産業医の選任には時間がかかることも多いため、労働者が50人を超えそうな場合は、早めに準備を進めておきましょう。

産業医の雇用形態と契約期間

産業医を選任した際は、雇用形態や契約期間を決定する必要があります。ここでは、産業医に選任に関して契約上の決まりはあるのかなどを説明します。

雇用形態

選任した産業医について雇用形態の決まりはありませんが、専属産業医であれば直接雇用、嘱託産業医であれば非常勤であることから業務委託が一般的です。

嘱託産業医は先述のとおり、従業員数が999人までの事業場に限ります。また、1訪問ごとや繁忙期など限定的に産業医を雇用したい場合は、スポット契約をするという手段もあります。

契約期間

契約期間についても決められた期間はありませんが、1年ごとの契約が一般的とされています。1年の期限を設定し、双方合意があれば契約を更新していきますが、選任を解除する場合は早急に次の産業医を選任しなければなりません。契約期限が近付いた場合は、更新意思の確認を早めに行ったほうがよいでしょう。

【関連記事】
産業医との契約、何をどうする? 契約形態や契約書作成など徹底解説
産業医との業務委託とは?契約形態の種類と特徴を詳しく解説!

産業医の主な業務内容

産業医の職務はさまざまですが、法令上、以下のように分類ができます。

【産業医の職務(安衛則第14条第1項)】

  1. ①健康診断の実施とその結果に基づく措置
  2. ②長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
  3. ③ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
  4. ④作業環境の維持管理
  5. ⑤作業管理
  6. ⑥上記以外の労働者の健康管理
  7. ⑦健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
  8. ⑧衛生教育
  9. ⑨労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

このように、産業医の業務内容は多岐にわたっています。それは、事業場ごとで業種や作業内容が異なるため、それぞれの事業場に合った産業医業務を行っているためです。
次に、多くの事業場で共通している産業医の業務内容について説明します。

健康診断の実施とその結果に基づく措置

1つ目は、健康診断の実施とその結果に基づく措置です。労働安全衛生法により、企業は労働者に対して定期的な健康診断を実施することが義務付けられています。

健康診断における産業医の役割は、その結果を確認し、異常所見があった労働者に対して保健指導を行ったり、事業場に対して休業や就業場所の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など必要な措置について助言したりすることです。

長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置

2つ目は、長時間労働者に対する面接指導や、その結果に基づく措置です。

時間外労働や休日労働時間が1ヶ月に80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合、産業医は面接指導を行います。また、「研究開発業務従事者」「高度プロフェッショナル制度適用者」の時間外労働や休日労働時間が1ヶ月に100時間を超えた場合については、申し出の有無を問わず面接指導が行われます。

産業医は面談を通じ、従業員のストレスや心身の状態、労働環境や労働時間を確認します。それにより、従業員の健康面でのリスクを評価し、本人に指導を行ったり、必要に応じて専門医を紹介したりします。また、事業者が取るべき措置について意見や指導も行います

長時間労働者に対する面談について、安全衛生規則では義務・努力義務を以下のように定めています。

義務 努力義務
労働者(裁量労働制・管理監督者含む) 月80時間超の時間外・休日労働を行い、披露蓄積があり面接を申し出た者 事業主が自主的に定めた基準に該当する者
研究開発業務従事者 ①月100時間超の時間外・休日労働を行ったもの

②月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接を申し出た者

事業主が自主的に定めた基準に該当する者
高度プロフェッショナル制度適用者 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間超を行った者 左記の義務の者以外で面接を申し出た者

【出典】
厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」

【関連記事】
過重労働者に産業医面談は必要! 長時間労働の基準、面接指導の対象者や流れを解説

ストレスチェック実施者、高ストレス者への面接指導・その結果に基づく措置

3つ目は、ストレスチェックの実施や高ストレス者への面接指導、その結果に基づく措置です。

50人以上の従業員がいる事業場では、従業員自身が自己のストレス状態を知り、適切に対応するためにストレスチェックが義務付けられています。こちらは、年に1回以上の実施が義務付けられています。

産業医はストレスチェック実施者として、専門的な立場から助言、指導を行ったり、ストレスチェックの結果、高ストレス状態と判断された従業員に対して面接指導を実施したりします。

ただし、高ストレスと診断された場合でも、本人が希望しない場合には面接は行われません。

職場巡視と職場環境に関する助言・指導

4つ目は、職場巡視と職場環境に関する助言・指導です。

産業医は原則として最低毎月1回(条件付きで2ヵ月に1回以上)、事業場を巡視することで労働環境や業務内容をチェックします。これは労働者の危険や健康障害を未然に防ぐために行われるものであり、主に労働者の健康や安全が守られている職場であるか、適切に従業員が配置されているかといった点を確認します。

また、2ヶ月に1回以上でよい条件とは「事業者から産業医に所定の情報を毎月提供すること」かつ「事業者の同意を得られること」です。この2点を満たした場合に限り、事業場の巡視が毎月ではなく2ヶ月に1回以上でよいと定義されています。

所定の情報

①衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果

  • ●      巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所

●      巡視を行った衛生管理者が「設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項および講じた措置の内容

●     その他労働衛生対策の推進にとって参考となる事項

 

②①に掲げるものの他、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供すること

としたもの

 

③休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が、1ヶ月当たり100時間を超えた労働者の氏名および当該労働者に係る超えた時間に関する情報

職場巡視で労働災害に繋がるリスクのある問題などが発見された場合は、専門的な視点から改善するよう事業者に指導を行います。確認観点は主に以下のような観点です。

  • 4S(整理・整頓・清掃・清潔)
  • 温熱環境は適切か
  • 事業場の明るさ(照度)が適切か
  • コンピュータを用いた作業環境は適切か(VDT作業)
  • 洗面所・トイレ・休憩室などの衛生環境は適切か
  • AED・消火器は設置されているか、設置場所は適切か

【出典】
厚生労働省「産業医制度に係る見直しについて」

【関連記事】
産業医の職場巡視は法律上の義務!目的や頻度、チェック項目を解説

【関連資料】
職場巡視チェックシート

衛生委員会への出席

5つ目は、衛生委員会への出席です。

衛生委員会とは、従業員人数が50人以上いる事業場に設置が義務付けられている組織です。これに加えて、製造業をはじめとするいくつかの特定の業種については、安全委員会の設置も必要とされています。

産業医は毎月1回以上開催される衛生委員会および安全衛生委員会への構成員として出席し、事業場に対して意見を述べることが望ましいとされています。出席は義務ではありませんが、求められる役割を考えると出席してもらうことが望ましいといえるでしょう。

休職・復職における面談

6つ目は、休職・復職における面談です。

従業員がメンタルヘルスの不調などを原因に業務に支障をきたしている場合や、欠勤、遅刻、早退が続いている場合、本人が休職を希望している場合などに、産業医による面談が実施されます。産業医は、面談の結果や医療機関の診断書をもとに休職の必要性や労働環境改善についての意見書を作成します。

意見書には労働環境の改善を強制するなどの効力はありません。しかし、意見書を無視したうえで従業員が健康被害を被った場合は、安全配慮義務違反となる場合があります。そのため、事業者は産業医の意見書をもとに必要に応じて適切な対処を行いましょう。

休職中の従業員が復職を希望した場合にも、産業医による面談が実施されます。復職面談では、通院状況、生活リズム、通勤状況、就労意欲、業務内容などをヒアリングした上で、従業員の職場復帰の可否を判断します。

また、復職するにあたって勤務の軽減や業務内容の変更などが必要な場合には、その期間を定めた上で就業制限を指示し、職場復帰のサポートをします。
なお、従業員の復職可否についての最終決定は事業者が行います。

【関連記事】
産業医は診断できない? 産業医の意見書と主治医の診断書、役割別の対応を解説
もしも、人事が「主治医への手紙」を書いていたら―産業医のメンタルヘルス事件簿vol.2

健康相談・保健指導

7つ目は、健康相談・保健指導です。

健康相談とは、健康診断の後に従業員が希望した場合や、ストレスチェックの高ストレス者や長時間労働面談の対象者に対して、産業医が健康面についての相談に応じるものです。

保健指導とは、継続的な健康管理が必要な従業員に対して行う指導のことです。従業員一人ひとりの健康診断の結果や勤務状況や作業内容、生活習慣に合わせて、健康に働き続けられるようアドバイスを行います。

健康教育・衛生教育

8つ目は、健康教育・衛生教育です。

健康教育・衛生教育とは、産業医が安全衛生委員会や事業場において、健康管理や衛生管理のために従業員を対象に研修や講話などを開催することです。

健康教育や衛生教育は、企業の希望に応じて実施するものであり、頻度や内容が法律で定められているわけではありません。従業員の健康維持を目的に、企業の自発的な要望により行われます。企業は、自社に必要な健康教育はどのようなものかを産業医と話し合った上で、適切な研修や講話を実施することが大切です。

産業医の報酬相場

産業医は専属産業医や嘱託産業医に分けられますが、両者は稼働日の他にも報酬相場や報酬の決定方法が異なります。産業医の報酬相場としてくくるのではなく、選任した産業医が専属か嘱託かなども考慮して報酬を決定するとよいでしょう。

専属産業医

一般的に専属産業医の給与は、1週間の勤務日数がどの程度であるかで算出される場合が多いようです。勤務日数が多いほど年収が上がるように設定されており、算出式は以下のとおりです。専属産業医を選任する際に、稼働日を検討する材料の1つにできるのではないでしょうか。

専属産業医の給与=(300~400万円)×(1週間の勤務日数)

嘱託産業医

嘱託産業医は専属産業医とは異なり、事業所の従業員数により基本報酬月額が変動する傾向にあります。公益社団法人日本橋医師会の資料によると、東京・日本橋付近の報酬相場は以下になっており、従業員数に応じて報酬も上がっていることが分かります。

従業員数 基本報酬月額
50人未満 75,000円
50~199人 100,000円
200~399人 150,000円
400~599人 200,000円
600~999人 250,000円

【関連記事】
産業医に支払う費用はどれくらい?報酬相場と報酬以外にかかる費用を解説

産業医に相談できること

産業医と一緒に職場の安全・健康について進めていくのは、人事労務担当者や衛生管理者などです。事業場側の担当者からスムーズに相談ができると、企業の健康経営にもプラスになります。ここでは、そのような担当者が産業医に相談したいと思っているけれど、相談してよいか不安に思っている主なことについて説明します。

健康相談

体調不良による突発的な休みが多い等、健康上の懸念がある従業員について、上司や人事労務担当の方が心配になっている(困っている)場合には、産業医に相談できます。産業医からは、体調不調者の状態や就業状況などを考慮して、必要な措置・対策について専門的な立場からの意見や指導が行われます。特に体調不調が重大な場合には、専門医への受診や休職についての意見が出されます。一方で、症状が軽症であり、環境改善で対応できるような場合には、改善のための指導が行われます。

メンタルヘルスの相談

メンタルヘルスに関する相談も、健康相談とほぼ同様です。メンタルヘルス不良による突発的な休みが多いなどの理由で、安定継続した就業に懸念がある従業員について、産業医に相談することで、必要な対応について意見・指導が行われます。特に、メンタルヘルス不調では、上司や人事担当の方が「どのように対応すれば良いか分からない(下手に触れない方が良いのでは)」と考え、部署内で抱え込むことにならないように、早期に産業医に相談した方が良いでしょう。

【関連記事】華麗なる連携プレーで、メンタル不調の兆しをキャッチ!―産業医のメンタルヘルス事件簿vol.4

職場環境

騒音、空気環境などの職場環境について従業員から訴え・苦情がある際に、産業医に相談できます。客観的な情報収集のための調査や結果に基づく対応について検討したり、衛生委員会に付議したりして、具体的な対応を実施するためにも、まずは産業医に相談することが有効です。

面談を受けてくれない従業員への対応方法

なんらかの理由によって産業医面談が必要と判断し、産業医に相談したにもかかわらず、従業員側が産業医面談を受けてくれない場合もあります。このような場合では、産業医だけでなく、関係者(上司、人事担当者など)も含めて相談し、対応を検討することが重要です。

従業員が産業医面談を受けたくない理由は、ケースバイケースです。そのため、一概に上手い方法があるわけではありませんが、同意を取った上で外部の関係者(従業員家族・主治医等)との情報共有、および、面談を受けないことによる不利益を説明するなどの対応を産業医に依頼することができます。

【関連記事】
「産業医面談は意味ない」と従業員が拒否したら?人事のための対処法を紹介

産業医にできないこと

産業医は医師免許を持っていますが、医療行為・診断書作成などは産業医としての業務内容外のため対応不可となります。

産業医はあくまで相談・指導・医者の紹介が業務であると考えておくとよいでしょう。ただし、院内産業医など職場内に医療を行う環境がある場合などは、その限りではありません。

【関連記事】産業医は診断できない? 産業医の意見書と主治医の診断書、役割別の対応を解説

産業医に関するよくある質問

産業医を選任しているものの、うまく健康経営に繋がっていない事業場もあります。そのような事業場では、産業医に対してスムーズに相談できていないことも要因にあるようです。ここでは、相談を円滑に行うためにはどうすればいいか、説明していきます。

産業医訪問日以外で、相談したいことがある場合どうすればいい?

専属産業医であれば、ほぼ事業場に常駐していますので、この点が問題になることはないかと思います。一方で、嘱託産業医の場合は、「1ヶ月に○日の訪問、1回○時間」といった契約内容になっていますので、訪問日以外の日が圧倒的に多くなります。「産業医訪問日以外で相談したいこと」が想定される場合は、後々トラブルの元になる可能性がありますので、産業医との契約時に訪問日以外の対応についてあらかじめ決めておく必要があります。

まず、「ちょっとしたことを相談したいが、どのレベルだとお金が発生するのか。メールで相談していいものなのか」といった疑問もあるかと思います。この場合は、一般的にメール相談で大丈夫である旨を記載します。このような軽微な相談対応の例として、「社内書類の確認・押印をお願いしたいが、郵送してOKか?」、「復帰後の従業員の体調確認を次回訪問時に予定した方が良いか?」といったものがあります。
ただし、「ちょっとしたこと」の範囲が大きかったり、回数が多かったりすると、産業医側も負担になるため、次に示すような別対応になると考えた方がよいでしょう。

また、軽微な相談対応の範囲を超えそうな場合としては、「緊急度が高い案件が発生し、訪問日以外にオンライン含めて対面で話したいことが出てきた場合、どうすればいいのか」といった内容が考えられます。このようなメールだけで対応することが困難な場合では、追加日程での対応が必要になります。この場合の例としては「重大事故により死傷者が発生した。事故で助かった従業員がメンタルヘルスを悪くしているので、予定訪問日以外で対応をお願いしたい」という状況で面談対応するような場合です。
どのような場合であっても、産業医は契約内容を踏まえながら、できるだけ対応しますが、定期外訪問やオンラインミーティングとなると、予定調整が難しいこともあります。

産業医への相談ごとがあっても、なかなかできない

産業医への相談があっても、さまざまな理由によってなかなかできない、という声もあります。どのように対処していけば良いのか、相談しにくい理由を踏まえて説明していきます。

相談しにくい障壁は、事業場側の担当者が持っている不安と産業医由来のものがあります。主な理由を列挙すると、下記の①~④に大別できるかと思います。

①企業担当者が産業医に相談するのにためらいを感じている
②相談内容が産業医に答えてもらえる内容なのかわからない
③産業医の専門外の事かもしれないという不安
④産業医が乗り気ではない(いわゆる名ばかり産業医)

このなかで、事業場の担当者が持っている障壁(①~③)を払拭するためには、企業担当者と産業医とのコミュニケーションが必要です。最初の相談時には不安に思うことがあるかもしれませんが、まずは相談することで対応して貰えることが多いと気づくはずです。また、あらかじめ訪問時以外にメール相談も可能かどうかを確認しておくと良いでしょう。
一方で、産業医由来の障壁(④)については、対応が困難です。一朝一夕には対応ができませんが、定期訪問時にできるだけコミュニケーションをとり、定期外の突発事項の相談ができる繋がり・環境を(やや気長にであっても)徐々に築くことが必要です。

オンライン対応がOKなものは、オンライン対応してもらいたい

コロナ禍以降、在宅ワークが定着しているという企業も少なくありません。そのような場合は、産業医による業務も一部をオンライン化することが可能です。具体的には、以下についてはオンライン対応が可能とされています。

  • 産業医面談
  • 保健指導、健康相談
  • 安全衛生委員会の参加
  • ストレスチェックの実施

オンライン対応とすることで、産業医面談の実施率が向上したり、安全衛生委員会の日程調整がしやすくなったりといったメリットも報告されています。

【関連記事】産業保健活動、オンライン対応がOK、NGなものは?―今さら聞けない産業保健vol.4

産業医を変更したい

産業医を選任したものの、要請した業務をきちんと遂行してくれなかったり、産業医としてのスキルが乏しいと感じたりするケースもあるかもしれません。

そのような場合には、「産業医選任報告書」など必要な書類を用意して労働基準監督署に届け出ることで、解任することができます。なお、産業医を変更する場合には前任者を解任した日から14日以内に新たな産業医を選任しなければなりません。

また、産業医を変更することが難しい場合には、2人目の産業医を選任することも検討してよいでしょう。

【関連記事】
産業医の変更はいつでも可能? 必要な手続き、届け出について解説

産業医に相談しやすい環境を作ろう

産業医の業務は、病院やクリニック勤務の医師の業務と異なり、従業員の安全や健康に関するものです。産業医とうまく連携をとることで、企業の健康経営にも繋がります。「産業医に相談したいことがあるけど、こんなことを相談していいかわからない」と思わずに、まずは産業医とコミュニケーションをとって、必要に応じて相談してみると良いでしょう。
産業医と連携を図るためには、事業場担当者から相談しやすい環境を作っておくことが必要です。このような環境を作るためには、定期訪問時にコミュニケーションを取り、契約時にどのような連絡手段が可能か、また、定期外の対応はどこまで可能かについて、あらかじめ決めておくことが重要です。

三橋 利晴 (みつはし としはる)

産業医・労働衛生コンサルタント

岡山大学にて産業衛生・疫学・予防医学の実務や研究を行う。 平行して2008年からは嘱託産業医として様々な業種の事業所を担当。 大学病院では疫学や研究倫理の観点から院内の臨床研究支援を行う。

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