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ストレスチェックは、2015年にスタートした健康を促進するための制度の一つです。従業員の健康を向上させ、労働環境を改善するには、専門の知識を備えた産業医が重要な役割を果たします。
しかし、ストレスチェックの際にどのように産業医と連携したらいいのか分からない企業もあるでしょう。また、ストレスチェック実施後に高ストレス者に対して行う面接指導も重要なポイントです。
本記事では、ストレスチェックにおける産業医の役割と面接指導の内容や注意点を解説します。産業医の探し方や、選定する際のポイントも解説しているのでぜひ参考にしてください。
まずは、ストレスチェックの概要と、その目的について解説していきます。
ストレスチェックとは、常時50人以上の従業員を抱える事業場での実施が義務付けられている検査の一つです。
労働基準法第66条の10に基づいており、2015年12月より施行されています。対象となった事業場は対象者に対し、毎年1回のストレスチェックを行わなければなりません。また、50人未満の事業場においては2023年現在、努力義務と位置付けられています。
ストレスチェックの対象者は厚生労働省により、以下のとおり規定されています。
期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
このように、正社員はもちろん、条件を満たしていればパートやアルバイトも対象です。ただし、経営者や役員、派遣労働者は対象に含まれません。
ストレスチェックの結果、心身のストレス反応に関する項目の評価点が高いと、高ストレス者と判定されます。また、評価点の合計が一定以上でかつ、仕事のストレス要因や周囲のサポートに関する項目の合計点が著しく高い人も同様です。
【関連記事】従業員、常時使用(雇用)する労働者の定義とは? 社労士が解説!
ストレスチェックを実施する目的は、労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐことです。労働者のストレスの程度を労働者自身も把握することで、うつなどを予防できます。
また、ストレスチェックの実施結果を分析することで、高ストレス者となっている社員を見極めることも可能です。ストレスが引き金となって体調不良が生じるケースもあるため、
高ストレスかどうかを早期に発見することは、本人のみならず、企業にとっても非常にメリットがあるといえます。分析結果に基づき、職場改善を図ることも可能です。ストレスチェックは実施して終わりではありません。トライアンドエラーで職場の改善を図ることで、企業としての信頼を獲得していくことにもつながるといえるでしょう。
【関連記事】ストレスチェックで高ストレス者を選定する際の方法や注意点
ストレスチェックを実施する際には、労働者のストレス状態を把握するための調査票を配布します。質問票に含まれている必要のある質問は、以下の3点です。
その後、質問票の結果から高ストレス者を選定し、面接指導などの必要なフォローを行います。また集団分析を実施することで、高ストレス者が発生しやすい環境なのかを把握でき、働きやすい職場に改善していくことも可能です。
【関連記事】【産業医が解説】自社に適したストレスチェック調査票は? 23項目・57項目・80項目版の違い
一般の社員はストレスチェックの実施者になれず、医師や保健師、一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士に依頼しなくてはいけません。日ごろから職場の状況を把握している産業医がいると望ましいでしょう。ストレスチェックにおける産業医の役割は以下の4つです。
以下、それぞれにおいて産業医が担う役割を解説します。産業医にストレスチェックを依頼する際には、企業側と産業医で役割分担して進めましょう。
ストレスチェックにおける産業医の役割は、まず簡易調査の実施です。
厚生労働省は「職業性ストレス簡易調査票」による調査を推奨しています。簡易調査票は57項目で構成され、5~10分程度の調査で個人のストレス状態を把握できます。
産業医は労働環境が適切に把握できるよう、専門的な立場から質問票の選定・質問事項の追加を行います。また、調査票の配布・回収を行う実施事務従事者に指示を出すことも、実施者である産業医の役割です。
【参考】厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」
労働者に回答してもらった後、その結果を分析して高ストレス者を判定することも産業医の役割です。判定基準は厚生労働省の「ストレスチェック実施マニュアル」に次のように記載されています。
最終的な判定基準は社内の衛生委員会で審議する必要があります。その際は産業医による専門的な意見をもらって、自社の労働環境に即した判定基準を設定しましょう。
【参考】厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
ストレスチェックを実施した際には、集団分析を実施することが努力義務となっています。集団分析をすることのメリットは、高ストレス者が発生しやすい職場かどうか、組織の状況を把握できることです。
集団分析は個人情報が特定されないよう、10人以上の組織で評価します。評価方法や基準、分析する組織の単位については、産業医のアドバイスを受けつつ企業側で決定しましょう。
ストレスチェック実施後の面接指導も産業医の役割です。本人から要望があった場合、産業医が高ストレス者に面接指導を実施して、その結果を報告します。
ただし、面接指導の前後の以下のような業務は企業側の役割です。
面談(面接指導)で産業医が確認するのは、次の3つの内容です。
これらを従業員にヒアリングしたり、資料のデータを確認したりすることで総合的に評価します。
面接指導の目的は、高ストレス者がメンタルヘルスの不調などに陥るのを未然に防ぐことです。面接指導の結果をもとに産業医から指導をもらい、従業員個人だけでなく職場全体として適切な就業措置を実施しましょう。
高ストレス者の面接指導の際には、会社は何を準備すればいいか迷う担当者も多いのではないでしょうか。ここでは、面接指導の際に準備するものについて紹介していきます。
面接指導の際には、まず、厚生労働省が定めた、医師が参考にする情報を準備する必要があります。たとえば、氏名や年齢はもちろん、部署や役職、所属する事業場名なども含んだ対象となる労働者の個人情報です。
事業場によって行われる作業は異なる場合があります。それらを把握することで何がストレスの要因になっているかを、より詳細に把握できます。
加えて、定期健康診断などの結果も準備しなければなりません。
また、ストレスチェックを実施する前1ヶ月分の労働時間や日数の他、業務の内容なども情報として準備しておく必要があります。
さらに、ストレスチェックをした時期の仕事の忙しさに関する情報も必要です。その業務自体の忙しさが原因で高ストレスとなっているのかを把握できます。
また、定期的な職場巡視による職場環境についての情報も添えておく必要があります。
企業には、医師から提出してもらった面接指導の記録を、5年間保管する義務があります。そのため面談の前には、報告書や意見書用の用紙をあらかじめ準備しておくとスムーズです。
報告書・意見書には、労働者の氏名や医師の氏名の他、実施年月日、労働者の現在の心身の負担状況、医師の意見を含む面談の結果などを、面談を実施した医師が記載する必要があります。厚生労働省がフォーマットを公表しているので、参考にしてみるのもいいでしょう。
面接指導は実施して終わりではありません。面接指導をしたあとには、会社がするべきことや注意点などがいくつかあります。どのようなことが挙げられるか、その詳細を解説していきます。
面接指導の実施後、遅くとも1ヶ月以内には医師からの意見を聴取し、従業員のストレスの程度に応じて対応を始めることが大切です。
必要に応じて、緊急の措置を取らなければならないケースも十分に考えられます。就業上の具体的な措置としては、勤務場所の変更、労働時間の短縮、場合によっては休職などの対応が挙げられます。
何かしら措置を取った方がいいと判断した場合、産業医同席のうえ、事業者が該当の従業員に対して、措置の内容とその理由について説明を行うことが大切です。
該当の従業員や産業医だけでなく、現場の管理者や関係者ともしっかり連携をとり、理解を得ることも必要です。
迅速に対応することは、企業としての信頼を得ることにもつながるでしょう。また、前述の通り、面談時の記録を作成したうえで、5年間保存する必要もあります。
面接指導後に注意するべきこととしては、面接指導の申し出を理由に、従業員に対して不利な扱いを行うことは禁止されている点が挙げられます。
これは、労働安全衛生法第66条にて明確に禁止されています。
加えて、面接指導の結果による解雇や退職を勧めること、また、不当な配転なども行えません。しかしながら、うつ病の疑いがあり、緊急的な休養など、従業員の健康確保の必要性が高い場合は、その限りでは無いといえます。
もちろん法的手続きを適正にとったうえで、措置の内容によっては合理的扱いになることもあります。
面接指導の結果については、人事労務部門内のみで保有します。ただし、就業上の措置といった業務をする上で必要な情報に限り、該当の従業員の上司に報告されます。
また、産業医(面接担当医)が必要と判断した範囲内で、会社に対して意見提示、助言指導等を行う場合があります。
面接指導の具体的な内容・記録が第三者に漏れるようなことがあってはなりません。書類の場合はカギのついたロッカーなどで厳重に保管しましょう。パソコン上でデータとして保管する場合には、パスワードを設定することはもちろん、アクセス権限のある者を限定するなどセキュリティ対策をしたうえで保管しましょう。
面接指導を実施した後には、ストレスチェックの結果とあわせて、厚生労働省が指定する書式(※)で報告書を作成し、労働基準監督署に提出する義務が発生します。
労働基準監督署への報告書を提出する時期については、各事業場における事業年度の終了後など、事業場ごとに自由に設定できます。
ただし、労働基準監督署への報告書の提出は、1年以内に1回と決められているので、注意が必要です。また、ストレスチェックを実施したにもかかわらず、労働基準管理署に報告書を提出しなかった場合は、50万円以下の罰金に科せられます。対応漏れがないように、実施後は速やかに作成書を報告し、提出するようにしましょう。
【参考記事】
厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」
厚生労働省「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル」
面接指導の結果をもとに就業措置などを実施した場合、事業者は産業医に措置内容を報告する必要があります。また、指示された措置を講じない場合には、実施しなかった旨とその理由も報告しなくてはいけません(労働安全衛生規則第十四条の二「産業医に対する情報の提供」)。
ストレスチェックや面談指導の結果によっては、勤務時間の制限など緊急に措置を講じる必要もあります。産業医だけではなく現場の担当者などとも連携して、納得してもらったうえで措置を実施しましょう。
【参考記事】厚生労働省「労働安全衛生規則」
企業は、ストレスチェックやその後の面談指導、集団分析の結果を5年間保管する必要があります。ストレスチェックの報告書には、次の内容を記入します。
以上の内容がきちんと記録されるように、報告書や意見書を事前に用意しておく必要があります。厚生労働省が報告書のフォーマットを公開しているので、参考にしてみてください。
【参考】厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」
面接指導を受けるかどうかは、あくまでも労働者に選択権があります。しかし、事業者側としては、本人のためにも面接指導を受けてほしいのが本音でしょう。面接指導を受けてもらいやすくするために、どのようなことに取り組めばよいのかを解説します。
【関連記事】従業員が産業医の面談を拒否した場合はどうする?
高ストレス者と判定された従業員に対しては、結果を通知する際に、個人情報の取り扱いとあわせて面接指導の具体例等について示し、面接指導に対する安心感を持てるような配慮が必要です。
まず、面接指導を申し出た高ストレス者が、事業者側から不利益な扱いを受けることが無いことをしっかり伝えましょう。
あわせて、面接指導の結果を理由とした解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うことが無い旨も伝えておくと、より安心できるでしょう。
面接指導に要する費用についても、事業者が負担するため、高ストレス者の従業員が負担する必要は無いことも案内しておきましょう。
また、面接指導の手続きを簡素にすることも有効です。面接指導を受ける気になっても、その手続きや申し込み方法が分かりにくい場合、「面倒だからいいや」とせっかくの機会を損ねてしまいかねません。
事業者側は申し込み窓口を明確にし、従業員が迷わないように配慮しましょう。
面接指導の際には、高ストレス者の従業員が一時的に離席したり、現場を離れたりすることになります。認識を合わせるためにも、現場の管理者と面接指導の日時を共有しておくことも必要です。
【関連記事】ストレスチェックの対応できていますか?導入から実施までの流れを徹底解説
ストレスチェックを受けて、高ストレス者と判定された従業員の中には、「面接指導を受けたくない」人もいることでしょう。しかし、高ストレス者と判定された従業員は強いストレスを受けている状況下にあるため、適切な対応をせずにいると、メンタルヘルス不調に陥ってしまう可能性が少なくありません。
このような場合、高ストレス者の従業員に面接指導を受けてもらうように、産業医に協力を仰ぎましょう。あるいは、従業員から産業医に連絡を取れるようにして、事業者側に通知することなく面談を受けることのできる仕組みを整えることを検討することも一手です。
高ストレス者の従業員は、「同僚や上司に高ストレス者だと知られたくない」、「業務が忙しく、業務時間内に面接指導を受ける時間が無い」などの理由から、面接指導を受けるハードルが高いことが考えられます。
このようなハードルを下げるために、社外に相談窓口を設置することもおすすめです。社外に相談窓口を設けることで、会社関係者に知られずに相談できるためです。勤務先の産業医は企業の内情や組織について把握しているため、本音を話しにくい側面もあるでしょう。
しかし、第三者であれば、気兼ねなく話したり、本音を伝えやすかったりするのではないでしょうか。
「同僚や上司に高ストレス者だと知られたくない」、「業務が忙しく、業務時間内に面接指導を受ける時間が無い」などの懸念を払拭するためにも、電話やメールなどを活用して相談できる仕組みを作ることをおすすめします。高ストレス者の従業員が都合のいい時間に相談できるうえ、よっぽどのことがない限り、職場に知られることがないためです。
【関連記事】EAPとは?メンタルヘルス対策としての概要や導入メリットを解説
ストレスチェックを実施するには、厚生労働省が定める要件を満たした産業医を選定しなくてはいけません。産業医の探し方には次の4つがあります。
以上の方法について、それぞれのポイントを解説します。自社の状況にあわせて、適した方法で産業医を探しましょう。
【関連記事】【まとめ】産業医の探し方 産業医紹介4つの相談先と選び方のポイント
1つ目の方法は地域の医師会に頼んで、産業医を希望している医師を紹介してもらうことです。地元で産業医を探したい場合には有効でしょう。
しかし、紹介してもらったあとの職務内容や給与の交渉などは自社で行わなくてはいけません。このため、交渉がまとまらずに産業医が決まらないことや、割高で契約しなければいけないこともあるので注意しましょう。
2つ目の方法は、定期健康診断を依頼している医療機関などに産業医を紹介してもらう方法です。以前から付き合いがあれば企業の事情をよく知っていることも多く、複数の医療機関などに依頼する手間も省けます。
一方で、その医療機関にて、自社にあった産業医を必ず選定できるとは限りません。また、産業医の派遣を行っていない医療機関もあるので、事前に確認が必要でしょう。
3つ目の方法は、産業医を紹介してくれる医師紹介会社を利用することです。企業の状況や求める条件などにあわせて、特徴にあった産業医を紹介してもらえます。また、給与や仕事内容の交渉なども仲介してもらえることもメリットです。
ただし紹介サービスを通すことによって紹介手数料がかかるので、直接選任するよりも費用が高くなる可能性がある点に注意しましょう。
小規模な企業の場合は、地域産業保健センターを利用するのも手段の一つです。本来、労働者が50人未満の企業には産業医の選任が義務付けられていません。そういった小規模企業が従業員の健康を維持するため、サポートをするのが地域産業保健センターです。
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【関連記事】
地域産業保健センター(地さんぽ)とは?役割や利用時の注意点を解説
ストレスチェックでは、質問票の作成や面接指導などにおいて、産業医は重要な役割を果たします。
企業と産業医が協力してストレスチェックを実施することで、職場環境の改善や従業員のメンタルのケアが可能です。このため、自社のストレスチェックの目的にあわせて適した人材を選定しましょう。
しかし、健康管理体制を整えるには企業としての経験も必要です。産業医に任せっきりにするだけでなく、面接指導を受けやすい環境整備、社外窓口の設置などに取り組みましょう。
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50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け