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ストレスチェックの集団分析を行うと、従業員のメンタルヘルス不調のリスクや組織のストレス状態を把握できます。
しかし、集団分析の具体的なやり方が分からず実施すべきか悩んでいる企業担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ストレスチェック集団分析の具体的な方法や、集団分析の結果別の対処方法について解説します。ストレスチェック集団分析を活用した職場環境の改善事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
ストレスチェックの集団分析とは、ストレスチェックの結果を事業場や部署ごとなど、一定の集団ごとに集計し、組織のストレス状態や傾向について分析することです。
ストレスチェックの集団分析は、法律では努力義務とされています。そのため、ストレスチェックの集団分析を実施していなくても罰則は科されません。
厚生労働省が公表しているデータによると、2020年度のストレスチェック集団分析の実施率は85%で、そのうち49.2%の事業場が集団分析後に職場改善に取り組んでいます。
(参考)厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
この調査結果から、努力義務とされていながらも、多くの企業がストレスチェックの集団分析を行っていることが分かります。
【関連記事】【産業医が解説】自社に適したストレスチェック調査票は? 23項目・57項目・80項目版の違い
ストレスチェックの集団分析を行うメリットは、以下の2つが挙げられます。
ストレスチェックの集団分析をすれば、属性別のデータが統計的に可視化できるため、職場の課題をピンポイントで明確にできます。
高ストレスを抱える従業員が多い部署を把握できれば、メンタルヘルス不調者の発生を未然に防げます。
また、ストレスチェック集団分析は、課題だけでなく各部署の強みを明確にできる点もメリットです。それぞれの部署の強みを取り入れることで職場環境が整いやすくなり、業務の生産性向上につながります。
ストレスチェックの集団分析結果をもとに、効率的に従業員のメンタルヘルス対策ができる点もメリットです。ストレスチェック集団分析のデータを可視化できれば、共通の認識をもったうえで効果的な対策を検討できるからです。
高ストレス者が多い対象部署へ指導をすれば、離職率の低下にもつながります。
ストレスチェックの集団分析は、原則10人以上のグループ単位で集計し分析を行います。1部署や事業部が10人未満の小規模事業場は、以下のような単位ごとに分けて集計・分析が可能です。
また、ストレスチェックの集団分析を実施する際は、どの集団単位で集計および分析するのか衛生委員会などで事前に審議しましょう。
【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
ストレスチェック集団分析では、量ーコントロール判定図、職場の支援判定図といった2つの判定図を用いてストレスの度合いを評価します。評価方法について詳しく見ていきましょう。
量ーコントロール判定図では、仕事の量的負担と仕事のコントロール(裁量権)のバランスを見てストレス判定が可能です。
【出典】厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票を用いた ストレスの現状把握のためのマニュアル」
仕事の量的負担(横軸)と仕事のコントロール(縦軸)が交わる点でストレス状態を判定します。「100」の斜線部分が全国平均ラインです。判定図の右下に向かうほど高ストレス、左上に向かうほど低ストレスと判定します。
一般的に、仕事上の裁量権が大きければ満足度が高くなりやすいため、ストレスを感じにくい傾向にあります。
それに対し仕事の量的負担が大きく、かつ裁量権が小さいと高ストレスになりやすいので注意が必要です。
職場の支援判定図では、上司や同僚の支援状態の評価が可能です。支援状態は「上司の支援」の縦軸と「同僚の支援」の横軸が交わる点で判定します。
【出典】厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票を用いた ストレスの現状把握のためのマニュアル」
職場の支援判定図も量ーコントロール判定図と同様、「100」の斜線が全国平均ラインです。左下に向かうほどストレスが生じやすい環境で、支援の度合いの低さを意味します。
必要に応じて部下との面談を実施している事業所などは、上司の支援の数値が高く仕事上のストレスは少なくなりやすい傾向にあります。
一方、上司の支援の数値が低い場合は、上司の指導が不十分、もしくは上司と部下が一緒に仕事をする環境が整っていない可能性が高いです。
また、仕事で困っているときに同僚が助言してくれたり、相談に応じてくれたりする部署は、同僚支援の数値が高くなります。
同僚間の意思の疎通がうまくできていない場合や、人間関係に問題があり協力体制が整っていない場合は、数値が低くなりやすいです。
ストレスチェック集団分析結果は、従業員の同意を得なくても実施者から企業側に結果を提供できます。通常、集団分析結果からは個人を特定できず、個人の評価に影響をおよばさないと考えられているためです。
ただし、10人未満の事業場は、個人が特定される可能性が高いため、ストレスチェックの集団分析結果の提供は認められていません。
ここでは、ストレスチェックの集団分析結果ごとの対処方法について解説します。
仕事の量的負担が多い場合、生産性に結びついていない余計な作業を削減しましょう。作業量だけでなく、仕事の進め方に問題がある場合も仕事の量的負担は増加します。
業務内容や仕事の進め方を見直し、仕事量が多いにもかかわらず仕事の量的負担の数値が低くなった場合は、作業効率がよい職場に改善したと評価できます。
仕事の量的負担に対し、仕事のコントロールの点数が低い場合は、仕事のコントロールを高めるのが有効な方法です。
仕事の進め方の自由度や裁量権が高まれば、個人の満足度も高まり、能力を発揮できる機会が増えます。また、OJTや技能研修の機会を増やすのもおすすめです。
上司や同僚の支援が低い場合は、従業員が支援を必要としたときにすぐに相談できる環境を設けることが有効です。具体的な対策方法には、部署ごとにグループを設け情報共有の機会を増やす、リーダー以外に相談できるサブリーダー職を作るなどが挙げられます。
また、社内のレイアウトによって上司や同僚の支援が低下するケースもあります。デスクの配置や作業動線などにも気を配りましょう。
ストレスチェック集団分析を活用した職場環境の改善事例を2つ紹介します。自社に活かせる部分があるか参考にしてください。
オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社では、産業保健スタッフ部門と人事部門が連携し、管理監督者主導型アプローチによる職場環境改善活動を実施しています。疲労度チェックの結果、健康リスクが高いと診断された従業員に対して必ず面談を行っています。
主に面談の対象となるのは、時間外労働時間が月40時間を超えた従業員などです。面談では、一人あたり30~45分程度かけて話を聞きます。そのため、健康状態だけでなく、従業員の労働環境を詳しく把握できる機会にもなっています。
ストレスチェックの集団分析を活用した職場環境改善には、産業医や産業保健師と管理職が一体となって進めていく必要があるといえるでしょう。
【参考】厚生労働省「オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社(東京都港区):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
カルビーポテト株式会社では、ストレスチェックの結果とコンプライアンス意識調査の結果の両方をもとに組織分析を行い、職場環境改善のグループワークにつなげています。
また、セルフケア研修やハラスメント防止研修なども実施するようになりました。職場環境改善のグループワーク後は、部署ごとに意識改革行動宣言を示し、目立つ場所に掲示し行動化につなげています。
職場環境改善のためのグループワークを行えば、従業員の意見を広く取り入れられるので、効果的な改善を目指せるでしょう。また、意識改革宣言を明確に周知し継続的な実践につなげるのも重要なポイントといえます。
【参考】厚生労働省「カルビーポテト株式会社(北海道帯広市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
ストレスチェック集団分析の実施は努力義務なので、実施しなくても罰せられません。しかし、実施すれば部署ごとの課題や強みを明確に把握でき、より効果的な職場環境改善の対策を立てられます。
従業員の健康を守り、よりよい職場環境を実現するためにストレスチェックの集団分析を実施しましょう。
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