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常勤の専属産業医とは? 専属産業医の定義や選任基準などを解説

企業は、事業場で常時使用する従業員数が一定数を超えると、産業医を選任しなければなりません。産業医は「専属産業医」と「嘱託産業医」と2つの勤務形態があり、従業員数が50~999人以下の場合は専属産業医または嘱託産業医、1,000人以上になると専属産業医を選任する義務があります。

ただし、有害業務を取り扱う事業場の場合、常時使用する従業員数が500人以上になると、嘱託ではなく専属産業医を選任しなければならないため注意が必要です。事業場ごとに選任すべき産業医の種類は異なりますが、いずれのケースでも産業医が従業員の健康を守るために欠かせない存在であることに変わりはありません。

ただ、「なぜ専属産業医が必要なのか」「嘱託産業医と何が違うのか」など、疑問に感じている方もいるでしょう。今回は、専属産業医に関する基礎知識を踏まえ、嘱託との違いや選任するメリット、選ぶ際のポイントなどについて詳しく解説していきます。

専属産業医とは? その定義

専属産業医とは、企業専属の産業医として常勤で勤務する医師のことです。本項では、専属産業医について具体的に解説していきます。産業医全般については以下の記事をご覧ください。

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専属産業医とは? 嘱託産業医との違い

専属産業医は、特定の企業と契約した産業医であり、従業員のように事業場に常駐して働くのが特徴です。従業員数が常時1000人以上の事業場、または500人以上の有害業務を扱う事業場では、法律により専属産業医の選任が義務付けられています。
専属産業医、嘱託産業医の違いは勤務形態で、職務内容は同じです。その一方で、以下のような違いもあるので確認しておきましょう。

専属産業医

嘱託産業医
事業場の労働者数

常時1,000人以上で1名

常時3,000人以上で2名

(有害業務を行う事業場は500人以上)

50~999人
事業場への訪問日数

週に3~5日

月に1~数回
契約形態

直接契約が多い

業務委託契約が多い
報酬
専属かつ訪問日数が多いため高価
訪問日数に応じて変動
  • 【従業員500人以上で専属産業医を選任する必要がある業務内容】
  • イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
  • ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • ホ 異常気圧下における業務
  • ヘ さく岩機、鋲びよう打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
  • ト 重量物の取扱い等重激な業務
  • チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • リ 坑内における業務
  • ヌ 深夜業を含む業務
  • ル 水銀、砒ひ素、黄りん、弗ふつ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • ヲ 鉛、水銀、クロム、砒ひ素、黄りん、弗ふつ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
  • カ その他厚生労働大臣が定める業務
  • 【出典】e-Gov法令検索「労働安全衛生規則(第13条第1項第2号)」

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「専属」の定義はない?専属産業医は兼務できる?

専属産業医の「専属」について、明確に定義する通達等はありません。専属産業医は、契約した事業場の専属として業務にあたるのが基本ですが、産業医の兼務が禁じられているわけではありません。

以下の要件を満たすことで、専属産業医は産業医を兼務することが可能となります。

① 専属産業医の所属する事業場と非専属事業場とが、
・労働衛生管理が相互に密接し関連して行われていること(労働衛生に関する協議組織が設置されている等)
・一体として産業保健活動を行うことが効率的であること(労働の態様が類似している等)
② 専属産業医としての業務に支障をきたさないこと
③ 労働安全衛生規則第 13 条第 1 項第 3 号の規定に準じ、対象労働者の総数が3000人を超えないこと

【出典】
労政時報 第3974号/19. 6.28 相談室Q
厚生労働省 専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務する場合の事業場間の地理的関係について」の廃止について

常勤、週5日勤務が必要というわけではない

専属産業医の勤務形態が常勤だからといって、週5日勤務しなければならない決まりはありません。なぜなら、法令上では専属産業医の明確な勤務日数が示されていないためです。医師は職務の性質上、週1日は研究日を設けたり、空き時間にアルバイトをしたりする働き方が一般的です。そのため、専属産業医でも企業で働くのは週5日以下というケースが多いようです。週5日、オフィスに常駐するケースは珍しいと考えられます。

専属産業医の業務内容

産業医は、一般的な医師のように診察や薬の処方を行うわけではありません。従業員が健康かつ快適に働けるよう、専門的立場を生かした助言・指導を行うのが主な仕事です。
専属産業医に求められるのは統括管理、健康管理、作業管理、作業環境管理、労働衛生教育です。具体的には以下のような業務を任せられますが、ここに挙げたのは一部であり、ほかにもさまざまな業務があります。

業務
内容
衛生委員会・安全衛生委員会への出席
委員会の構成員として出席し、安全衛生に関するアドバイスなどを行う
衛生講話
従業員に対し、健康・衛生管理のための研修を行う
健康診断結果の確認
従業員の健康診断結果を確認し、異常が見つかった従業員の就業判定を行う
健康相談
健康に不安を抱える従業員の相談を受ける
休職・復職面談
休職・復職を希望する従業員と面談を行い、休職・復職が適切かどうかを判断する
ストレスチェック実施者
ストレスチェックの計画から実施、終了まですべてに関わる
高ストレス者への面接指導

ストレスチェックの結果、高ストレス状態にあると判明した従業員へ面接指導を行う

長時間労働者への面接指導
長時間労働や疲労が認められる従業員に対して面接指導を行う
職場巡視
事業場を巡視し、環境に問題がないかどうか確認する

【出典】厚生労働省「産業医の職務」

専属産業医との契約形態

産業医との契約形態には、直接契約と業務委託契約があります。次に、それぞれの契約形態について解説していきます。

直接雇用契約

直接雇用は、企業と産業医が契約書を取り交わして直接的に雇用契約を結ぶ方法です。この場合、産業医は企業の社員として扱われます。ただし、医師の働き方の性質上、嘱託社員や契約社員として契約を結ぶケースが多いようです。
人材紹介会社などを介さないため紹介手数料が掛からない反面、企業が産業医と勤務日数や報酬といった細かい条件交渉をしたり、契約後にトラブルが発生した場合に自社で対応したりする必要があります。

業務委託契約

業務委託契約は、産業医と企業の間に仲介会社が入って契約を結ぶ方法です。仕組みとしては、企業が業務の一部または全てを仲介会社や産業医に委託し、業務の対価を支払うものです。

業務委託契約の場合は、契約内容に基づく業務に対して報酬を支払います。そのため、業務委託契約書に記載がない業務を拒否されることもあります。突発的な依頼が発生して想定外の報酬を支払うことになった、ということを防ぐためにも、契約時に業務内容をしっかり話し合って決めておくことが重要です。なお、人材紹介会社を介して業務委託契約を結ぶ場合、産業医への報酬に加えて仲介手数料が発生しますが、契約後の管理やサポートが手厚いことが多いため、企業担当者の業務負荷を軽減できる可能性があります。

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専属産業医選任のメリットとデメリット

専属産業医は、週3~5日ほど事業場に勤務することが一般的です。多くの時間を事業場で過ごすことによるメリット、デメリットが生じます。

常駐しているので、従業員の状態を把握しやすい

専属産業医は企業に常駐しているため、従業員の状況を把握しやすい点がメリットです。
嘱託産業医の職場巡視は最低月1回かつ時間もそれほど長くはないですが、専属産業医の場合は事業場で過ごす時間が長いため、従業員ひとりひとりの様子に目が届きやすく、従業員との信頼関係も構築しやすくなります。何か問題があったときに、常駐する専属産業医に情報を伝えるスキームを整備していれば、より早く対処することも可能です。うまくいけば、従業員のメンタルヘルスの悪化、休職・退職のリスクを大幅に軽減できるでしょう。従業員が休職・退職すれば、生産性が低下するのはもちろん、新たな人材の確保や教育にもコストがかかります。専属産業医が常駐することで従業員の様子を把握しやすくなり、あらゆるリスクを軽減することにつながります。

経営層との連携を取りやすい

産業医の業務内容は、衛生委員会への出席や職場の巡視、ストレスチェックの実施、休職・復職面談など多岐にわたります。このような業務をスムーズに行うには、従業員だけでなく経営側との連携も必要不可欠です。

嘱託産業医の場合、事業場への訪問頻度が低いため経営側との連絡が取りにくく、問題解決に必要なプロセスがなかなか進まないケースも少なくありません。
この点、専属産業医はほぼ毎日事業場にいるため、経営層とすぐに連絡を取ることができます。何か問題が生じたときに迅速に対応できれば、その深刻化を防げる可能性が高まるでしょう。また、経営側との連携を密に取ることで、専属産業医が経営的な視点も持ちながら事業場の健康管理を行えるようになります。

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16社の産業医を務める人気産業医のキャリア・仕事の流儀

デメリットとして考えられるのは

専属産業医は企業と直接契約することが多いため、それがデメリットになることもあります。

まず、報酬が高い点です。具体的な報酬相場は次項で解説しますが、勤務日数に応じた金額を支払うため、月1回程度の勤務である嘱託産業医と比較すると高額になってしまいます。
また、直接契約であるため、そう簡単に他の産業医に交代するわけにもいきません。専属産業医と従業員の相性がよくなかった場合、従業員が相談をためらってしまい、後に大きな問題に発展する可能性も否めません。このため、コミュニケーション能力が高く、関係改善の努力などができる専属産業医を選任することが大切です。

産業医は医師としての専門分野、産業保健や労働衛生の知識を有しています。しかしながら、専門外や苦手分野がある可能性も少なからずあります。例えば、メンタルヘルスの相談をしたいので精神科専門医かつ産業医の医師を選任したくても、条件に当てはまる医師が必ずしも見つかるとは限りません。こうしたミスマッチを防ぐためには、産業医に求める条件を考えてから探すことが望ましいでしょう。

専属産業医の報酬・相場は

専属産業医の報酬・相場は、医師のキャリア、事業場の所在地、事業内容によっても変動があります。例えば、専属産業医でも統括産業医のポジション、有害物質を取り扱う事業場の場合は相場より高い報酬になります。一般的な専属産業医の年俸は、以下の計算式を用いて算出できます。本段落の下部にある関連記事も併せてご確認ください。

年俸 =(300~400万円)×(週あたりの勤務日数)

契約形態によっても変動する

直接雇用契約の場合、契約書で取り交わした金額が報酬になります。しかし、業務委託では別途、仲介・紹介手数料が必要になる場合があるのでよく確認しておきましょう。

依頼する業務内容によっても変動する

契約内容にもよりますが、健康診断やストレスチェックは別料金になることがあります。あらかじめ業務として依頼したい場合は、雇用契約を結ぶ際に相談しておきましょう。

メンタルヘルス対策は報酬相場がやや上がる

精神科・心療内科をメインに活動している医師は1.7万人程度で、このうち産業医として活動している医師はさらに絞られます。これは、50人以上の事業場が約16万件あることをふまえると非常に少ない人数といえます。そして精神科・心療内科メインの医師のうち、産業医の資格を持つ医師はさらに少なくなります。そのため、メンタルヘルス対策を専門にできる産業医に業務を依頼する場合、報酬相場はやや高くなるでしょう。

【出典】
・厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
厚生労働省「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」

【関連記事】
産業医への報酬相場はどのくらい? 嘱託産業医、専属産業医別に解説!

優秀な産業医を見つけるためのポイント

産業医を選ぶ際、産業医資格を保有していれば誰でもよいわけではありません。
事業場の環境や従業員の健康を良好に保つためにも、以下の点にも注意し、産業医と信頼関係を築くことが大切です。

優秀であるとはどういうこと?

“企業目線”で対応してくれる産業医は優秀であると言えるでしょう。豊富な経験、専門知識を持ち合わせていたとしても、企業に寄り添って課題解決に取り組んでもらえないのであれば、優秀な産業医とは言い難いでしょう。また、産業医としてのキャリアが浅くとも、厚生労働省が認定する国家資格「労働衛生コンサルタント」を保有しているかも1つの目安になります。

責任感と自発的な業務遂行を行ってくれること

産業医の職務の中には、いくつかの法定業務が存在します。企業から依頼される業務はさまざまですが、仮に法定業務が含まれていなかった場合、「これをしないと法令違反になってしまうので、従業員や企業のためにもやりましょう」と提案してくれるような責任感のある産業医は優秀であると言えるでしょう。

コミュニケーション能力に優れ、従業員と経営双方との調整ができること

企業にはさまざまなタイプの従業員がいます。いつ、どんな従業員と接点を持つかわからないため、コミュニケーションスキルが高い産業医は重宝されるでしょう。業務を通じて、物事を調整する機会も多々あるため、調整能力にも優れているとなおよいでしょう。

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産業医の斡旋サービス3タイプと選び方
産業医選任に掛かる費用は?報酬以外に見落としがちなコストや手間も解説

専属産業医を探すのは難しい? ニーズに合う産業医に出会うには

自社に合う産業医を探すには、自社の状況や課題を整理するところから始めましょう。自社のニーズがわかれば、自ずと自社が求める産業医像が明確になってくるはずです。
産業医を探すには、主に4つの相談先があります。具体的な相談先、各所に依頼するメリット・デメリットについては、こちらの記事をご確認ください。

厚生労働省による、産業医活動に対するアンケート調査によると、産業医の資格を持つ医師4,153名のうち、67%が産業医活動を行っていると回答しています。しかし、その67%のうち、専属産業医として活動している産業医はわずか5%に過ぎず、嘱託産業医として活動している医師は77%と対照的な結果となっています。このアンケート結果からは、産業医として活動をする多くの医師達は、本業が多忙のため専属として活動することが難しく、嘱託という形態を選択していることが考えられます。そのため、質の高い専属産業医を探したいなら、専門の産業医紹介会社に依頼することも考えましょう。

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