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産業医に関係する法律「労働安全衛生法」とは?義務や罰則について解説

産業医の選任に関する基準や、企業が果たすべき義務が記載されているのが「労働安全衛生法」です。産業医を適切に選任するためには、労働安全衛生法の内容をしっかりと把握する必要があります。

しかし、労働安全衛生法の記載内容は、法律を読み慣れていないと把握しにくい部分も少なくありません。本記事では、労働安全衛生法に定められている産業医の選定基準や企業が守るべき義務、違反時の罰則などについて分かりやすく解説します。

産業医制度に関する法律「労働安全衛生法」とは

労働安全衛生法は、従業員が安全かつ健康に働けるよう、快適な職場環境を形成するために定められた法律です。

労働安全衛生法には、目標を達成するための手段として次の3点が規定されています。

危険防止基準の確立 ・従業員の健康を守るためのリスクマネジメントを行う

・健康診断を実施し健康状態を確認し必要に応じて対策する

責任体制の明確化 安全管理者や安全衛生管理者、産業医などを選任する
自主的活動の促進 安全衛生委員会の設置や快適な職場環境づくりに取り組み、従業員の安全や健康をサポートする

法律が制定された当初は、危険な作業をともなう業務において、従業員に健康障害が起きるのを防ぐのが主な目的となっていました。しかし近年では、働き方に対する安全意識の高まりにあわせて、従業員の心身の健康管理にも配慮した規定へと改正されています。

その中で、従業員の健康管理を実現するために、一定の条件を満たす企業に義務付けられているのが「産業医」の選任です。

【参考】厚生労働省「労働安全衛生法」

労働安全衛生法で定められている産業医関係法案の具体的内容

労働安全衛生法で定められている産業医の関連法には、次のようなものが挙げられます。

産業医の関連法令 内容
労働安全衛生法第13条         事業者は事業場の規模ごとに産業医を選任し、産業医に労働者の健康管理を行わせる

産業医は厚生労働省で定める要件を備えた者でなければならない

産業医は労働者の健康確保のために事業者に勧告を行い、事業者はその勧告内容や対応を衛生委員会等に報告する

労働安全衛生規則第13条         産業医は、選任する理由ができた日から14日以内に選任する

常時雇用する労働者数が50人以上の事業場は、1人以上の専属産業医もしくは嘱託産業医を選任する

常時雇用する労働者数が1000人以上(特定の業務を扱う場合は500人以上)の事業場は、専属産業医を選任する

常時雇用する労働者数が3000人を超える事業場は、2人以上の専属産業医を選任する

労働安全衛生規則第14条         産業医の職務内容について
労働安全衛生規則第15条         産業医は月に1回以上事業場を巡視し、有害の恐れのあるときは、必要に応じた措置を講ずる
労働安全衛生法第18条・19条         衛生委員会・安全衛生委員会に構成メンバーとしての活動

このように、産業医に関してさまざまな規定があるため、企業として正しく理解しておくことが大切です。
特に、産業医の職務内容については多岐にわたり、企業のニーズに合わせた柔軟な対応も必要になるので、しっかり確認しておきましょう。

具体的には、「健康診断結果の確認・面接指導の実施」「職場巡視」「健康教育・衛生教育」「衛生委員会・安全衛生委員会の構成メンバーとしての活動」「作業環境の維持管理」などが定められています。

いずれも労働者の安全や健康を守るために欠かせない職務なので、産業医と連携して適切に行いましょう。

【関連記事】産業医とは? 企業での役割、仕事内容、病院の医師との違いを解説

労働安全衛生法において企業が果たすべき義務

労働安全衛生法の規定により、常時使用する労働者数が50人以上となる事業所が果たすべき義務は次の5つです。

  • 産業医の選任
  • 衛生委員会・安全衛生委員会の設置
  • 衛生管理者の選任
  • 定期健診の実施
  • ストレスチェックの実施

それぞれについて詳しく解説します。

産業医の選任

1つ目の「産業医の選任」については、事業場の規模に応じた産業医を選ばなければなりません。詳しい選任基準については後述しますが、たとえば50~999人以下の事業場の場合、産業医を1人以上選任することが定められています。

労働者数が50人に達した日から14日以内に選任しなければならないので、スピーディーな対処が必要です。

産業医には専属と嘱託の2種類があり、専属が1週間のうちほとんどを事業場に出勤するのに対し、嘱託は月に1~数回しか出勤しません。出勤日数が異なることで、健康管理の効果などで違いが出ることもあります。

産業医と契約するには、専門の産業医紹介サービスを利用するか、事業場のある地区の医師会に紹介してもらうといった方法、健診期間に依頼する方法などが一般的です。契約形態は個々のケースで異なり、直接契約をすることもあれば、業務委託契約になる場合もあります。

【関連記事】産業医の選任義務とは?設置基準や選任届について解説

衛生委員会・安全衛生委員会の設置

2つ目の「衛生委員会・安全衛生委員会の設置」は、労使が一体となって健康・安全について話し合い、労働者の意見を事業者側に伝えるために必要とされています。

委員会は基本的に毎月1回以上行われ、議事録は3年間保存しなければなりません。

議長を除く半数を労働組合、または労働者の過半数の推薦により選ばれた人で構成し、産業医も構成メンバーの1人に含まれます。ただし委員の人数についての定めはありません。

【関連記事】産業医が衛生委員会に出席するのは義務?役割や注意点を解説

衛生管理者の選任

3つ目の「衛生管理者の選任」は、労働環境の改善や疾病予防など、衛生面全般の管理を任せる担当者を選ぶものです。

衛生管理者になれるのは国家資格を有した者で、産業医と同様に、50人以上の労働者がいる事業場で選任が義務付けられています。産業医と連携して職務にあたることも多いので、産業医と同時に選任しましょう。

【関連記事】衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説

定期健診の実施

4つ目の「定期健診」は、気や危険因子を早期に発見・治療するために、定期的に行われる健康診断です。

事業者には、1年に1回以上の実施が義務付けられており、50人以上従業員が在籍する企業の場合は、健診結果を労働基準監督署に提出しなければなりません。

対象者は常時使用する従業員で、正社員に限らず一定時間以上働いている派遣社員やパート・アルバイトも対象です。

また、企業が行うべき健康診断には、定期健診以外にも次のようなものがあります。

  • 雇入時の健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断
  • 海外派遣労働者の健康診断
  • 給食従業員の検便

【参考】厚生労働省職場のあんぜんサイト:定期健康診断」
【関連記事】健康診断は企業の義務! 会社で実施される健康診断の種類、対象者などを解説

ストレスチェックの実施

5つ目の「ストレスチェックの実施」は、労働者が抱えるメンタルヘルスの問題を早期発見するために行うものです。

従業員50人以上の事業場には1年に1回の実施が義務付けられており、対象者には正社員をはじめ、一定時間以上働いているパートなども含まれます。

実施方法は「ストレスチェック義務化法案」に対応した調査票に従業員が解答する形式で、紙やオンラインなどの方法で行われます。

ストレスチェックにより高ストレスと判断された従業員から、面談の申し出があった場合は面接指導を行わなければいけません。また、面談後にストレスチェックに関するすべての事項を労働基準監督署へ報告する必要があります。

産業医が実施者となることが多いので、うまく連携して行いましょう。

【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度に関する法令」
【関連記事】ストレスチェック制度とは?導入された背景や目的、実施時の流れを解説

労働安全衛生法で定められた義務を怠った場合の罰則

産業医に関して定められた義務を怠った場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金となる場合があります。

とくに、産業医選任のタイミングには注意が必要です。

労働安全衛生法に定められた「常時雇用する従業員」には、一定以上の時間働いているパートやアルバイトも含まれます。そのため「いつの間にか従業員数が50人以上になっていた」などのケースも少なくありません。

また、産業医を選任し届出を提出していたとしても、産業医が健康管理を怠っていれば罰則の対象になります。

産業医が事業場に訪問しないケースだけでなく、企業側の理解不足で必要な業務をさせなかった場合も、罰則の対象となるので注意が必要です。

【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法

法改正に伴い、既に産業医を選任している企業も対処が必要

働き方改革関連法の改正で産業医の職務や権限が拡大・強化されているため、すでに産業医を選任している企業も新たな対処が必要です。たとえば、重要な改正ポイントである「労働時間の把握」のために、管理職まで含めた労働時間を正確に記録し、産業医へ報告しなければなりません。

また、産業医が労働者と面談などをした場合、その内容に応じて必要な措置を事業者側に意見することがあります。この意見に対してどのような措置を実施したか、結果を産業医に報告しなければなりません。

産業医がさらなる措置を求めて勧告を行えば、勧告内容を衛生委員会等へ報告したり、議事録へ記録したりする必要もあります。

このほか、長時間労働者への面接指導が強化されたことに対応するべく、労働者が産業医に相談しやすい環境を整えることも大切です。相談窓口を労働者へ周知徹底する、過重労働状態にある労働者に相談を促すなど、積極的な対応が求められます。

それと同時に、不要な業務の見直しや、限られた時間で生産性を向上させるアイデアの募集など、長時間労働を是正する取り組みも行うと良いでしょう。

労働安全衛生法で定められた産業医の守秘義務とは

産業医は「労働安全衛生法」の第105条によって守秘義務が課せられているため、面談で知り得た従業員の情報を他人に漏らしてはなりません。

産業医の守秘義務があれば、従業員が面談を受ける心理的ハードルを下げることにもつながります。そのため、産業医に相談した内容は漏れはない旨を、面談を受ける側の従業員にも積極的に伝えていくべきでしょう

【参考】厚生労働省「労働安全衛生法」

産業医の選任数は労働者数によって異なる

常時雇用する労働者数が50人以上になると産業医の選任が必要ですが、労働者数によって産業医の人数や種類に違いがあるので注意しなければなりません。

詳しい選任基準は以下のとおりなので、どこに該当するか正しく確認しておきましょう。

常時雇用する労働者数(事業場ごと) 産業医の選任義務
必要な産業医の数 産業医の種類
~49人 なし
50~499人 1人 嘱託産業医でも可
500~999人 1人 嘱託産業医でも可(ただし、有害業務を扱う場合は専属産業医が必須)
1000~3000人 1人 専属産業医
3001人~ 2人 専属産業医

有害業務を扱う事業場は選任義務が通常と異なるので注意が必要

なお、500人以上の労働者を雇用する事業場のうち、有害業務を扱う場合は嘱託ではなく専属産業医を設置しなければなりません。

以下のような業務は有害業務に該当するので、産業医を探す際は注意しましょう。

  • 多量の高熱物体を取扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務
  • 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物の取扱い等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 坑内における業務
  • 深夜業を含む業務
  • 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベン ゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
  • その他厚生労働大臣が定める業務

【出典】e-Gov法令検索「労働安全衛生規則
【関連記事】特殊健康診断とは?有害業務に従事する社員を守る大事なポイントは?

法律に沿って産業医を選任し安全な職場づくりをしよう

労働安全衛生法には、産業医に関する法律が定められています。産業医を適切に選任し職務を行ってもらうためには、企業側も規定を把握しておかなければなりません。

従業員が50人以上となった企業には、次に挙げる5つの義務が課せられます。

  • 産業医の選任
  • 衛生委員会・安全衛生委員会の設置
  • 衛生管理者の選任
  • 定期健診の実施
  • ストレスチェックの実施

もし、上記の義務を怠ってしまった場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

従業員の健康はもちろん、自身が所属する企業を守るためにも、労働安全衛生法に沿って産業医を選任し安全な職場を築きましょう。

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