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職場におけるパワハラの定義とは?企業が知っておくべきポイント

健康経営コラム編集部

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政府の働き方改革関連法案の大々的な法改正が2019年4月1日から始まりました。
そんな中、長時間労働・過労死問題が大きな課題とされ、それらの影に隠れているパワハラ問題がクローズアップされました。

パワハラによって生じた長時間労働の結果、過剰労働による心身の疾病だけでなく最悪の場合、自殺のようなあってはならない結果を招いてしまうことにもなりかねないからです。

2020年6月1日には「パワハラ防止法」が施行されました。
しかし、パワハラについてきちんと理解されている方はまだまだ少ないのではないでしょうか?

この記事では、企業担当者が知っておくべきパワハラのポイントについて詳しく解説していきます。
 

職場におけるパワハラとは

厚生労働省が認める職場における代表的なパワハラは、以下の通り大きく6つに分けられます。

パワハラ行為
パワハラの具体的な例
精神的な攻撃
同僚の前での叱責。CCに他の職員が含まれたメールで罵倒される。
必要以上に長時間、繰り返し叱責や説教を行う。
大声で日常的に罵倒される。
身体的な攻撃
叩く・殴る・蹴るのわかりやすい暴行だけでなく、指導に熱が入りすぎて頭を小突く、丸めたポスターや定規や物で頭を叩くような思わずやってしまった怪我をするほどでない軽い暴力も含む。
過大な要求
該当者の能力では到底勤務時間内に終わらないような仕事量を本人の意思に反して独りで行わせる。
休日出勤を強いられる。
英語が出来ない社員に外国人クライアントの接待をさせる。
過小な要求
事務職なのに掃除ばかりさせる等、本来の仕事以外の誰でもできる雑用ばかりさせる。
あるいは、理不尽な降格人事や仕事を与えなかったりする。
人間関係からの切り離し
ひとり別室で仕事をさせる。
考え方や信条・思想のち外から、無視や仲間外れ等、コミュニケーションの軸から外す。
個の侵害
交際相手や家族や配偶者に対して執拗に干渉する。プライバシー全体に鑑賞したり否定したりする。

【参考】厚生労働省:NOパワハラ 事業主の皆様へ(明るい職場応援団発行パンフレット)

 
このようにパワハラ6類型を厚生労働省は挙げていますが、どんな状況においてもこれらが該当するわけではありません。
 

パワハラの定義(パワハラの3要素)

厚生労働省は、パワハラの概念を次のように定めています。

① 優越的な関係を背景として
② 業務の適正な範囲を超えて
③ 心身・精神的な苦痛を与えること、あるいは就業環境を悪化させること

厚生労働省がまとめた「パワーハラスメントの定義について」以下表が具体例を含めてわかりやすくまとめられていますので、参考にしていただければと思います。

表内の各項目については次より詳しく解説していきます。

[図1]
職場のパワーハラスメントの概念
【出典】厚生労働省:パワーハラスメントの定義について(平成30年10月17日 雇用環境・均等局)

 

パワハラ3要素の具体的な内容

[図1]にまとめられたパワハラの3要素について、その意味を含めて詳しく解説します。

優越的な関係に基づいて行われること

パワハラ被害者となった労働者にとって、優越的な関係にあるパワハラ加害者となり得る人とは、その人の言動に対して、拒絶・抵抗できない状況に置かれているケースをいいます。

そのため、上司がパワハラ加害者、部下がパワハラ被害者となる状況が一般的です。

業務の適正な範囲を超えて行われること

 
(1)「業務の適正な範囲」は常識の違いによっても相違が生まれる?
「業務の適正な範囲」とは、受け手の感情によって非常に大きく異なります。
上司が期待している部下に、教育の一環として厳しく指導していたつもりが、ある日突然部下から「パワハラを受けた」と訴えられるケースも考えられます。

言葉の発する側と受ける側の育った環境や世代による常識の違いによって、「業務の適正な範囲」は大きく異なります。部下の受け取り方どうなのか、部下の能力や上司に対する感情・体調等々、管理職は的確な観察が必要ともいえます。
 
(2)「業務の適正な範囲」というのは、職務によっても異なる
例えば掃除や飲み会が業務の適正な範囲かというと、「業務契約書の職務」によって異なります。
しかし、全てが労働契約書通りとは行かないケースもあります。

例えば、真夏にエアコンの無い倉庫の掃除を部下ひとりでさせることになったとしても、手が空いた人が入れ替わり立ち替わり手伝ったり、終わった時に十分なねぎらいがあったり、周囲の思いやりが充実していれば、部下はパワハラだと感じないこともあります。

このように、「業務の適正な範囲内」は、会社の一般的な通念と照らし合わせて客観的に、一般常識に照らし合わせて判断されますので、一概にはいえないのです。
 
(3)飲み会や行事の参加については?
昔は飲み会によって親交を図る風習がありましたが、今は「業務の適正な範囲」を超えた終業時間以外の強制的な飲み会への参加要請は、別名「飲みハラ」とも呼ばれるパワハラ行為となります。

しかし、会社の「飲み会」「行事」の参加が、「業務の適正な範囲」になるかどうかが判断の難しいところとなるともいえますが、一般的にはその会社の通念と照らし合わせて客観的な判断が基準となります。
 

身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

 
身体的な苦痛はもちろんですが、精神的苦痛も心身に与える「障害」に該当します。
これも、育った環境や世代によって個人差があります。

また、無視や別室で仕事をさせる等、本人が「働きづらい」と思う環境に追い込むことも就業環境を害して心身の障害に追い込むことになります。

パワハラの法的責任や罰則について

壁ドンされる女性社員
パワハラの法的責任はパワハラを行った個人と会社としての責任の2つがあります。
それぞれ解説していきましょう。
 

パワハラを行った人に対する責任・罰則

パワハラ被害を受けた人が、パワハラを行った人に対して責任を取らせるとしたら、どのような方法があるのでしょうか。

一般的には、就業規則で定められている懲罰規定によるもの、あるいはパワハラによって被った被害の損害賠償や慰謝料を請求するという形になります。

また、6月からパワハラ防止法が施行されましたが、直接的な罰則はありませんので、法的拘束力のある民法で不法行為(民法709条)による損害賠償請求を行うことになります。

その中でも、極めて悪質な場合は、刑法(侮辱罪/刑法231条・名誉毀損/刑法230条・暴行罪/刑法208条・傷害罪/刑法204条)で起訴されることもあります。
 

パワハラを放置してしまった場合に企業が問われる責任・罰則

パワハラ防止法は義務規定ではありますが、罰則規定がないので法的拘束力無く、パワハラに違反しても企業側が問われる責任については不透明であるかのように思えます。

しかし、多くの場合は「不法行為責任(民法709条)」において賠償責任が問われているケースが多いのが実情です。

他にもパワハラ防止法に企業側が負うべき責任の罰則規定を明記した法律があります。

  • 使用者責任違反 (民法715条)
  • 安全配慮義務違反(労働契約法第5条)
  • 債務不履行責任 (民法415条)
  • 労働基準法違反 (労働基準法には罰則規定があり、刑罰に処せられた判例もあります)

パワハラ防止法に違反した場合、これらの法律によって企業側はどのような責任が問われるのか、具体的な内容については以下表を参考にして下さい。

該当する法律
違反となる具体例
不法行為責任
(民法709条)
同僚の前での叱責。CCに他の職員が含まれたメールで罵倒される。
必要以上に長時間、繰り返し叱責や説教を行う。
目の前でデスクをバンと叩き大きな音を立てられる。大声で日常的に罵倒される。舌打ちされる。
使用者責任違反
(民法715条)
叩く・殴る・蹴るのわかりやすい暴行だけでなく、指導に熱が入りすぎて頭を小突く、丸めたポスターや定規や物で頭を叩くような思わずやってしまった怪我をするほどでない軽い暴力も含む。
安全配慮義務違反
(労働契約法第5条)
他人の仕事を押しつけられる等、該当者の能力では到底勤務時間内に終わらないような仕事量を本人の意思に反して独りで行わせる。
休日出勤を強いられる。
英語が出来ない社員に外国人クライアントの接待をさせる。
債務不履行責任
(民法415条)
営業職なのに1日じゅう草むしりをさせたり、事務職なのに掃除ばかりさせる等、本来の仕事以外の誰でもできる雑用ばかりさせる。あるいは、理不尽な降格人事や仕事を与えなかったりする。
労働基準法違反
ひとり別室で仕事をさせる。考え方や信条・思想のち外から、無視や仲間外れ等、コミュニケーションの軸から外す。送別会に誘わない。

パワハラがもたらす企業のリスク

 

従業員のやる気喪失

パワハラ被害者は、パワハラ行為によって精神的に萎縮してしまいます。
そのため、職場での仕事に対する意欲やモチベーションというプラスの精神を失ってしまいます。

また、直接パワハラ被害者本人でなくても、パワハラ問題に無関心な職場(自分が勤務している企業の企業体質)に対して、周囲の労働者も会社への将来の希望や期待を喪失してしまいます。

そのため、パワハラは、パワハラ被害者だけでなく、その周囲の多くの社員のモチベーションを低下させ、それがそのまま会社の生産性の低下を引き起こすきっかけとなってしまうのです。
 

人材流失

パワハラが横行している企業では、有能な人材ほど流出しやすいといっても過言ではありません。

人材流失の原因には、パワハラ環境にある企業体質等の職場への漠然とした不安です。
パワハラ環境にある会社は、生産性の低下、モチベーションの低下、将来的な会社のイメージダウン等々、社員にマイナスイメージしか抱かせません。

このマイナスイメージ、すなわち、「会社に対して将来的に希望が持てない」という気持ちから、機会さえあればより良い職場への転職を希望する社員が増えてしまうのです。
 

生産性低下など企業経営へのダメージ

パワハラが横行して、優秀な人材が流出する、あるいは社員のモチベーションが停滞してしまうような会社では、当然生産性も低下してしまいます。
 

社会的なイメージダウン

パワハラが原因の訴訟問題が生じたり、パワハラが原因で自殺者が出たりすると、メディアだけでなく、SNSによっても問題が表面化しやすく、社会的なイメージダウンに繋がります。

一流企業として名高い「電通」でさえ、女性社員の自殺事件の裁判で世間に注目されました。

さらに、上司の不起訴や企業側へのあまりにも軽い罰金刑(50万円)という裁判の判決に、世の中の批判があまりにも大きく、企業として経済的にも致命的ともいえるほどの大きなダメージを被ったといえるでしょう。
 

職場におけるパワハラをどうやって予防解決したらよい?

それでは、パワハラを具体的に防止し対策するにはどのようにしたら良いのでしょうか。

パワハラがおきない社内環境をつくる

まず、パワハラが起きない社内環境づくりが必要です。

パワハラとは何か、会社全体の取り組みとして全社員に、どういう言動がパワハラになるのかを周知させる必要があります。

そのためには、経営陣自らがハラスメントに関して発言し、企業として厳しい姿勢を示していくことが非常に重要であり理想です。 

また、パワハラを禁止する企業意識を明確にするために、就業規則にパワハラ禁止の文言とその罰則について具体的に明記するようにしましょう。
 

管理職・従業員研修の実施

パワハラは本人が自覚なく行ってしまっている場合も少なくありません。
そのため、経営陣と従業員共に社員研修を行い、パワハラとは何か、パワハラ行為をしないためには、という意識を高めていくことが有効です。

パワハラとなる要素の一つに「優越的な関係を背景として」とありますが、最もイメージしやすい関係は「上司と部下」です。

つまり、上司が部下にパワハラを行う可能性が最も高いので、加害者となりやすい管理職の以下のような研修からまずは始めましょう。

  • 管理職・中間管理職向けのパワハラ研修
  • パワハラにならないためのコミュニケーション研修
  • パワハラの認識を深める社風を作るための人事・経営陣に向けた研修

なお、研修を行った後は、研修内容の理解度の確認テストも重要です。
具体事例を設けて、相手にどのように回答するかの問題、あるいは、パワハラ問題が発生しているかどうかを解答させる問題等を作成して、パワハラ認識度を自覚させましょう。
 

ハラスメント専門対応部署を設置

新入社員等、パワハラ被害者になり安い立場に配慮して、具体的対策を講じることのできる専門部署の設置も重要です。

また、相談の敷居を低くするために、会社の公式HP、社内報掲示だけでなく、メール・チラシやポスターを作成し相談窓口の存在を周知するとともに、そこに相談しても不利益な取り扱いをされない安心できる環境だという認識を持ってもらえるように工夫しましょう。
 

パワハラの相談を受けた時の対応方法

パワハラ予防・対策の専門部署を設けても、相談しにくい、上手く機能しない、というようでは存在していないも同然です。

では、労働者からパワハラ被害の相談を受けたとき、どのように対処していけばよいでしょうか。

適切に対処するには対応の流れをマニュアル化しておくことが重要です。
以下の流れを基本として対応は、5W1Hを基本に行いましょう。

①    相談者をリラックスさせる。
②    この部署で話したことは秘密厳守である事を約束する。
③    5W1Hに基づくヒアリングする。
④    可能な対応策を相談者に説明する。
⑤    相談者の希望を聞く。
⑥    相談者の希望に添った対応策を検討し、相談者の了解を必ず得る。
⑦    二次被害に遭うようなことになったときは、そのフォローも約束する。
 

5W1Hに基づくヒアリング方法

被害者を受けた相談者は非常に傷ついている状況です。
そのため、被害状況を聞き出すときに相談者が威圧的に感じて萎縮してしまいうことのないよう、焦らず、相談者の不安を解きほぐしてからゆっくりと聞いていくことが大切です。

When:いつ起こったのか?
パワハラだと感じたことが起った日時、またはいつから。

Who①:パワハラの加害者
原則的に、職務的に優越関係にある上司、あるいは同僚や部下であったとしても人間関係の上で優越関係にある人物が、パワハラ加害者対象となります。そのため、加害者が被害者にとって優越関係にある人物であるかどうかの確認をする。

Where:何処で起きたのか?
業務の範囲内の状況下で起ったことなのかどうかを確認する。

How:どのようなパワハラを受けたのか?
どのように言われたのか?どのように強要されたのか?パワハラ被害の程度を明確にする。

What:被害に遭った人が何を思ったか?
被害者が、明確にパワハラ行為だと思っていることを確認して、加害者の聴取の時に加害者の言い分と比較する。

Who②:誰がみていたのか?証人は?
証人がいるかどうかは、事実関係の確認のために重要。
 

再発防止のためのアフターフォローも

育った環境や世代の違いによって、本当に悪気のないパワハラ加害者もいます。
そのようなパワハラ加害者にパワハラの意識改善をさせる等の、再発防止のための具体策を講じることも必要です。

また、意図せずしてパワハラ加害者になってしまった者の心のケアも必要です。
パワハラになるのではないかという恐れから、パワハラ加害者が一転パワハラ被害者となって、心の病になってしまうこともあるからです。
 

パワハラ予防・対策の定期的な見直し

経営陣がパワハラ対策に本気で取り組んでいても、まだまだ隠れた被害者が要るかもしれません。

また、全従業員に「パワハラがなくなって労働環境が良くなった」と感じてもらえないと意味がありません。
そのためには、パワハラ予防・対策が効果を上げていると実感しているかどうか、労働者の要望、生の声を知る必要があります。

定期的に社内アンケートを行って、パワハラ対策部署がちゃんと機能しているのか、相談者への接し方に問題は無いのか見直しを随時行い、会社に即した実行力のあるパワハラ防止策にすることが重要です。
 

産業医をもっと活用してパワハラのない会社に!

相談にのる女性
パワハラによる職場環境の悪化は、精神面のみならず身体的不調にも影響を及ぼします。
重篤なうつ状態になる前に、「仮面うつ」といって、うつ症状が精神面ではなく、身体の苦痛(不眠・肩こり・頭痛・胃痛・身体の何かしらの慢性的な不調)にでることもあります。

普段から明るく元気で、かつ、真面目で責任感の強い人ほど、仮面うつにかかる可能性が高いです。

身体に症状が現れる仮面うつは、うつ状態でも、まだ軽症の段階です。
この段階で精神が蝕まれていることを早期発見できれば、心の病を快方に向かわせることも比較的容易です。
慢性的な身体の不調や不眠が思い当たる人は、会社の産業医への早めの相談をお勧めします。

しかし、身体の異変がパワハラによるストレス状況にあるのか、身体の疾病なのか、診察しただけではわかりません。
​​​​​​​そこを見極めるのは、企業のパワハラ対策の専門部署のスタッフです。

労働者の気軽な相談窓口になって職場環境の実態を正確に把握できてこそ、産業医も活躍できるというものです。

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