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VDT作業による健康障害と対策│新ガイドラインから見る安全な作業環境づくりとは

急速なIT化により、私たちの働く環境は大きく変化しました。
オフィスではもちろん、自宅での作業やオフの時間もあわせると、1日中パソコンやスマホ・タブレットの画面を見ている、という方も珍しくないのではないでしょうか。

その中で懸念されるのが、情報機器を用いた作業による健康被害です。

厚生労働省は、労働者の健康を守るため、パソコンなどを使う事業場における作業管理・健康管理についてのガイドラインを2019年に大幅にリニューアルしました。

今回は、新ガイドラインから、健康被害を減らすための作業環境づくりのポイントについて、具体的に紹介します。

VDT作業とは

VDTとは「visual display terminals」の略で、文字や図形等の情報を表示する出力装置(液晶ディスプレイ、ブラウン管)と入力装置(キーボード、マウス、スキャナーなど)で構成される機器、つまりパソコンやスマホ、タブレットなどを指します。

これらのデバイスを使って、データの入力や検索、文章や画像等の作成・編集、プログラミングなどを行う作業を「VDT作業」といいます。

VDT作業は1980年代半ばからコンピュータが普及したことにより、様々な現場で導入されるようになりました。

IT化の進展に伴い、身体的疲労や精神的疲労を感じる作業従事者が増加したことから、厚生労働省は1985年に「VDT作業のための労働衛生上の指針について」を定め、行政指導を開始して安全な労働環境の整備に取り組みました。

その後、ノート型パソコンや携帯情報端末、様々なソフトウェアが普及したことにより、多くの職場でVDT機器を使用されるようになったことに伴い、2002年に「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が定められました。

しかしその後、スマートフォンやタブレット、ウェアラブル端末などの普及により、デスクトップやノート型パソコンなどのように机に向かって集中的に行う作業を想定した労働衛生管理では網羅できない部分が出てきました。

そこで、従来のガイドラインをベースにしつつ、対象となる作業区分を見直し、情報端末・働き方の多様化に対応した「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」として2019年にリニューアルされたのです。

なお、旧ガイドラインでは「VDT」という名称が使用されていましたが、一般的になじみのないことや情報端末が多様化していることから、新ガイドラインでは「情報機器」で統一されることとなりました。

VDT作業が従業員の健康に与える影響

PC作業中の女性
パソコンなど情報機器を使う作業は、従業員の心身にどのような影響を与えるのでしょうか。
新ガイドラインの内容をチェックする前に、VDT作業がもたらす健康リスクをおさえておきましょう。

身体への影響

  • 視機能に関する症状:文章や画像の作成・編集、モニターによる監視、データの集計や管理など長時間画面を見ることにより、眼疲労や眼精疲労、ドライアイ、一時的な調節機能低下などが起こる可能性があります。
  • 筋骨格系に関する症状:デスクワークなど長時間同じ姿勢での作業や、キーボード・タッチパネルでの入力作業により、首や肩のこり、腰痛、背部痛、腱鞘炎、頚肩腕症候群などが起こる可能性があります。

 

精神への影響

身体への影響がストレスとなり、疲労感や不安感、イライラ、憂うつ感、不眠症状など精神・心理的な症状を引き起こすことがあります。

最悪の場合、労災につながるリスクも

眼疲労や腱鞘炎などVDT作業による影響が労災につながる事例もまれではありますが、報告されています。また、疲労感や不眠などは生産性の低下に直結します。 

そのような事態を防ぐためにも、企業が適切な作業管理や健康管理を行う必要があります。
それでは、新ガイドラインにまとめられている注意点を見ていきましょう。

リニューアル版「VDTガイドライン」から読みとく、予防・対策

ルール

対象者

「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は、一般正社員、パートタイマー、派遣労働者、臨時職員など就業形態の区別なく、作業者が情報機器を使用する場合はすべて対象となります。

なお、目安の1つとして、過去の調査結果から「1日の作業時間が4時間以上」の場合は疲労が蓄積されやすいことが示されています。該当する作業者に対しては、特に作業時間や健康管理への配慮が求められるでしょう。

また、最近ではテレワークの普及により自宅などで情報機器を使用する割合が増加しつつありますが、これらについてもできる限りガイドラインに準じて労働衛生管理を行うことが必要とされています。

なお、テレワーク導入時の注意点については、厚労省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」に詳しいので、こちらも併せて確認しておきたいところです。

 

眼精疲労を防ぐ作業環境づくりが重要

眼精疲労はパソコンなどを使用するうえで多くの方が抱える悩みです。
少しでも軽減できるよう、適切な作業環境管理が求められます。ガイドラインには、以下の通り注意点と対策が示されています。

採光・照明の注意点

室内はできる限り明暗の対照を減らし、まぶしさを生じさせないように努めましょう。
ディスプレイ画面上の照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上を目安とし、ディスプレイ画面や書類・キーボード面と、周辺の明るさの差をなるべく減らすことが推奨されています。

太陽光などを室内に取り込むことは健康上メリットもありますが、光が強い場所・暗い場所が生じるなど、明暗の対照が著しくなると目に負担をかけてしまいます。

また、太陽光や照明の光がディスプレイを介して反射することで「グレア」の原因にもなります。必要に応じて窓にブラインドやカーテンを設置するなどの対策をとりましょう。

 グレアの防止方法

「グレア」とは、太陽光や照明などによる、物が見えづらいような不快なまぶしさのことです。目の保護には、この「グレア」を減らすことが重要です。ガイドラインには、以下のような対策が挙げられています。

  • 照明が明るすぎる場合はカバーをとりつけてまぶしさをおさえる
  • グレアを低減するための間接照明を用いる
  • 太陽光や照明の光が作業画面に反射しないよう、ディスプレイの位置・傾きを調整する
  • グレア対策が施されているディスプレイや、反射を防ぐフィルムなどを使用する

 

作業内容にあわせた情報機器や机・椅子の選び方

情報機器を使用した作業は多岐にわたるため、それぞれの作業内容に適したデバイスを選択する必要があります。

たとえば、データの集計作業と、ディスプレイを用いた監視業務では、必要な画面のサイズが異なります。

また、文章のみの作業と画像や映像を使った作業では、求めるスペックが異なるでしょう。
パソコンはノート型・デスクトップ型のどちらがいいのか、マウスやキーボードなどの入力機器は使いやすいか、ソフトウェアは作業者の能力にあっているかなど、必要に応じて作業者の意見も取り入れながら、情報機器を選ぶことが大切です。

また、作業する人や作業時の環境によって、周辺との明暗差や負担にならない体勢などが異なります。
そのため、ディスプレイ画面の輝度やコントラスト、ディスプレイの位置やキーボードの位置などが作業者によって容易に変更できるものが良いでしょう。

机・椅子も同様で、作業者自身が使いやすいように高さなど調整しやすいものが推奨されています。

作業中の注意点

仕事に没頭していると、長時間にわたりディスプレイ画面を見続けながら作業してしまいがちです。

このような状況を避けるため、企業は、従業員の作業状況を把握し、適切な時間・業務量かどうかを管理・指導する必要があります。ガイドラインでは作業管理について、以下の通り定められています。

一連続作業時間は1時間以内に

1回の作業時間を1時間以内に収めましょう。1時間を超える場合は、次の連続作業に取り掛かる前に10~15分程度の休息時間を設けるように指導してください。

また、連続作業中も、1~2回は小休憩を行いましょう。

こりや痛み、疲労感を軽減できる姿勢をとる

座って作業をする場合はしっかりと深く座り、背もたれに背を十分当てて、足が地面に接する環境で行いましょう。また、なるべく作業スペースを広くとり、ゆとりある環境が望ましいです。

こうした姿勢をキープするためにも、管理者は作業者に合わせた椅子や机、調整しやすい情報機器を提供する必要があります。

ディスプレイ画面との視距離は40cm以上あけて

ガイドラインでは、ディスプレイ画面との視距離はおおむね40㎝以上が望ましいとされています。この距離で見えやすくなるようメガネなどで矯正することをおすすめします。

ディスプレイの高さはディスプレイの上端が目を同じ高さかやや下になるように、またキーボードは自然に手が届く位置に配置しましょう。

従業員の健康を守るために、労務担当がやるべきこと

いまやあらゆる職種・世代でパソコンなどの情報機器が用いられており、また作業負担は個人差も大きいため、こうした対策を行っていても、健康への影響を完全に予防することは難しいと言えるでしょう。

従業員の健康被害を最低限におさえるため、企業は何をするべきなのでしょうか。ガイドラインでは以下の措置をとることが推奨されています。

作業内容・時間を把握し、必要な健康診断の実施を

各部署における作業内容や作業時間を把握し、適切な勤務体制の構築に努めましょう。

また、配置前の健康診断や1年に1回の定期健康診断を実施し、必要に応じて追加の診断を勧めるとともに、適切な対策を講じる必要があります。

自己管理を促すためにも、健康相談の機会を設けて

作業者が自身の健康について気軽に相談し、適切なアドバイスを受けられるような健康相談の機会を設けましょう。

その際、プライバシーの保護に十分配慮することや、パートタイマーなど正社員以外の方も相談できる環境を整えることが重要です。

作業者だけでなく、管理者への周知・啓発が必要

情報機器を用いた作業がもたらす健康リスクや、その効果的な防止方法については、作業者への周知徹底はもちろん、管理者が適切に指導・マネジメントできるような教育が必要です。

どのような作業内容なのか、どういった問題が発生しているのか、環境の整備が必要そうな部署に対してどのような指導を行うべきかなど管理者に認識してもらい、職場環境の改善をサポートしましょう。

環境改善には、産業医の活用が有効

PC
とはいえ、これまで見てきた注意点・対策を、作業者・管理者が各自で把握・改善していくことはとても難しいでしょう。

情報機器の利用環境については継続的な点検やケアが求められますし、個人差も大きいからです。そのような場合に最も有効なのが、産業医の活用です

産業医による職場巡視を行うことで、客観的かつ専門的な立場から、たとえばディスプレイの照度やオフィスの照明、一連続作業時間が適切に保たれているかなど、チェック・指導してもらうことができます。

ガイドラインでも、健康診断後に適正な措置を講じることや、健康への影響が懸念される従業員に対して専門家の指導を仰ぐことが推奨されています。医療の専門家のサポートを受けながら、安全かつ生産性の高い職場環境へと改善を図りましょう。

まずはガイドラインに沿って対策を!

本
急速なIT化に伴い、様々な情報機器が生み出され、働き方や生活スタイルも多様化が進んでいます。
もはや、パソコンやスマホ、タブレットといったデバイスなくして私たちの仕事・生活は成り立ちません。

だからこそ、情報機器がもたらす健康リスクを正しく理解し、適切な予防・対策をとることが、今後ますます重要になっていくでしょう。

従業員1人1人の健康を守り、生産性の高い企業活動を行うためには、新ガイドラインに沿って着実に職場環境を改善していくことが大切です。

本記事でご紹介した注意点・予防方法を参考に、自社に合った環境づくりに取り組んでみましょう。

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