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経営戦略を考える中で、人的資本経営や人材版伊藤レポートという言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。もしくは、人的資本の情報開示を求められ、企業として対応に悩む人もいるかもしれません。
本記事では、人的資本経営とは何かを分かりやすく解説します。人的資本経営の重要性や、企業がすべき対応も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
経済産業省は、人的資本経営を以下のように定義しています。
『人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です』
【出典】経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」
つまり、人材はコストを抑えて消費する「資源」ではなく、適切な投資を行うことで利益を生み出す「資本」であるという考えです。この考えのもと、人材を資本と考え経営を行うことを、人的資本経営といいます。人的資本経営では人材を資本と捉えて育成し、経営戦略と人材戦略を連動させることで、中長期的な企業の成長を目指します。
2023年3月期決算から、人的資本における情報開示が義務化されました。開示義務の対象となったのは、金融商品取引法第24条における「有価証券報告書」を発行する約4,000社の大手企業です。人的資本の情報は、統合報告書や企業のホームページ、有価証券報告書で開示します。
人的資本の情報とは、簡単にいうと人的資本経営を行うために企業がどういった取り組みをしているかが分かる情報です。この人的資本の情報は、投資家が投資する企業を決める際にも参考にされる重要な要素とされています。
【参考】e-Gov法令検索「金融商品取引法第24条」
「人件費削減」という考え方もある中、なぜ人的資本経営が重要視され、情報開示が求められるようになったのでしょうか。ここでは、人的資本の情報開示が求められるようになった背景を3つ解説します。
ESGとは「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)」を指す言葉です。その中でも人的資本はSocialに分類されています。
人材の成長は企業の成長を促すものと考え、投資家が投資先を決める判断材料の一つとして重要視されるようになりました。投資の情報提供として、人的資本の情報開示が求められています。
欧米では人的資本の情報開示が2020年から始まっており、日本よりも早くESG投資への関心が高まっています。その流れを汲み、日本でも人的資本に関する記載が、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードに盛り込まれました。さらに2022年5月には、経済産業省が設置した「人的資本経営の実現に向けた検討会」の報告書である「人材版伊藤レポート2.0」も公表されています。
近年では働き方改革や感染症対策により、多くの企業で働き方が多様化しました。また、雇用拡大により働く人材も多様化しています。ワークライフバランスの重視や女性管理職の増加、男性の育休取得推進など、従来の人材管理では限界を感じる企業も少なくないでしょう。
時代とともに変化する働き方や人に合わせた経営を行う上で、人的資本の情報が重視されるようになったと考えられます。
【参考】
株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」
経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~」
人材版伊藤レポート2.0とは、経済産業省が設置した「人的資本経営の実現に向けた検討会」の成果として、2020年9月に公表された報告書の改定版です。
改定前の人材版伊藤レポートには企業価値の向上のための人材戦略として、経営陣・取締役会・投資家のそれぞれの役割についてまとめられていました。
人材版伊藤レポートの影響もあり人材への関心が高まる中、コーポレート・ガバナンスコードに人的資本の記載が盛り込まれました。これらが形式的なもので終わらぬよう、また、人事改革の問題解決に向けさらなる具体化をはかり、2022年5月に人材版伊藤レポート2.0として改訂されたのです。
【参考】
経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」
経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~」
人的資本において情報開示が望ましいとされている項目には、以下の7分野19項目があげられています。
【出典】内閣官房 非財務情報可視化研究会「人的資本可視化指針」
図にあるように左側の項目ほど「価値向上」に関する情報、右側の項目ほど「リスク」の情報が濃くなります。「価値向上」の項目は投資家から評価を得るため、「リスク」の項目は投資家がリスクを回避するために企業のリスクマネジメント能力を評価するものです。
開示する情報を選定する際は、ステークホルダーへ企業のどういった点をアピールしたいかを踏まえ、企業理念を絡めて選定するとよいでしょう。
育成分野で求められる項目は「リーダーシップ」「育成」「スキル/経験」です。具体的には、人材育成に関する研修・教育プログラムなどが該当します。人材に対し、どのように「投資」を行っているかを示すことのできる分野です。
エンゲージメント分野で求められる情報は「従業員満足度」です。従業員がやりがいを感じているか、労働環境は適正かなどの情報が求められます。企業が従業員から高い満足度を得られれば、定着率も上がりやすく長期的な育成も見込めるため、重要な分野と言えるでしょう。
流動性分野の項目は「採用」「維持」「サクセッション」です。ここでは採用人数・定着および離職率の情報が求められます。採用人数が多くても、離職率が高い企業では人材は成長できません。流動性分野では、採用した人材がいかに留まる企業であるかを示せるとよいでしょう。
ダイバーシティ分野には「ダイバーシティ」「非差別」「育児休暇」の項目があります。女性管理職の比率や、男性の育児休暇取得率、男女間の給与格差、年齢や障害の有無に関する差別が無いかなどの情報開示が該当します。
健康・安全分野の項目は「精神的健康」「身体的健康」「安全」です。従業員の心身の健康・安全が守られているかどうかの情報開示が求められ、健康管理・安全管理のために企業が行う具体的な施策を提示します。
労働慣行分野には「労働慣行」「児童労働/強制労働」「賃金の公平性」「福利厚生」「組合との関係」の項目があります。強制労働など不適切な労働が行われていないか、賃金は公平か、福利厚生の種類・内容などが対象です。
コンプライアンス/論理分野では、法令順守についての情報が求められます。法令だけでなく、社会的な論理から外れない活動を行えているかも開示対象です。他には、コンプライアンス研修の取り組みや、内部通報制度についての情報を提示します。
人的資本の情報開示を求められた際は、ただ指定の情報を開示するだけではなく、自社をアピールすることを意識して準備をするとよいでしょう。ここでは、人的資本の情報開示に向けて企業がどのような対応をすべきかを3つの観点で解説します。
人的資本の情報開示をする際は、企業としてどのような意図をもって情報を伝えたいか指標を定めておくとよいでしょう。その指標に沿って、開示を求められる情報にストーリー性を持たせます。
箇条書きのように結果のみ淡々と報告するだけではなく、「〇〇の状況を打破するため、□□をした」というように、物語のように表現すると効果的です。
こうしたストーリーテリングと呼ばれる手法を用いることで、受け手がより情報が理解しやすくなるとともに記憶に残り、ステークホルダーへのアプローチへとつながります。
数字に表せる情報は、できるだけ明確に数値化しましょう。たとえば流動性分野の離職率や、ダイバーシティ分野の女性の管理職率などは数値化したほうがよい項目です。数値化することで、状況を正確かつ分かりやすく伝えられます。
人的資本の情報開示は、投資家をはじめステークホルダーへの効果的なアプローチになります。情報開示の上でよりよい印象を残すためには、他企業との差別化は非常に重要です。自社の企業理念やビジョンに則った情報を開示すると、独自性のある自社唯一のアピールポイントにできます。
人材版伊藤レポート2.0では、経営陣が主導して行える人材戦略を以下の3つの視点で提示しています。
【出典】経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~」
これらの3つの視点からは、共通した要素が5つ抽出できるとされています。
企業がこうした3つの視点と5つの要素を意識し、具体的な戦略を練ることが人的資本経営に有効であるとされています。
5つの要素は情報開示が求められる7つの分野に通じるものがあります。育成・エンゲージメント・ダイバーシティなど、開示情報を整理する中で企業のすべきことを改めて振り返ることが人材戦略のヒントにつながるでしょう。
人的資本経営は、人材を成長させるにとどまらず、ステークホルダーへのアプローチにつながり、企業を発展へ導きます。
今後も人材の価値に重きを置く流れは深まっていくでしょう。企業の成長を見据え、人的資本経営を戦略の1つに取り組んではいかがでしょうか。
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