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従業員の健康管理を経営課題としてとらえ、積極的に取り組むことで組織全体のパフォーマンスを向上する「健康経営」を目指す企業が増えてきました。
そこで注目を集めているのが、経済産業省が実施する「ホワイト500」という認定制度です。
ホワイト500に認定されると「健康経営に熱心な企業」と周知されるため、企業イメージの大幅な向上が期待できます。そのほかにも社内外でさまざまなメリットがあるため、健康経営の実現を目指す場合はぜひとも認定を受けたいところです。
今回は、そんなホワイト500について、制度の概要やメリット、認定を受けるための基準や申請方法などを詳しく紹介していきます。
ホワイト500とは、「健康経営優良法人制度」の大規模法人部門で認定された企業のうち、健康経営度調査結果の上位500法人を示す通称のことです。
健康経営優良法人制度は経済産業省が2016年に新設した制度で、健康経営に積極的に取り組んでいる企業・団体を顕彰するために設けられました。
健康経営を推進する企業は、「従業員を大切にしている」「働き方改革への意識が高い」など、企業イメージが向上しやすくなります。
健康経営優良法人認定制度では、このような企業を「見える化」することで社会に周知し、企業が適切な社会的評価を受けられるよう環境を整えることを主な目的としています。
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健康経営とは?企業が取り入れるメリットや取り組み方法を徹底解説
健康経営優良法人制度は、以下の表のように「中小規模法人部門」と「大規模法人部門」に分かれているので注意が必要です。
たとえば従業員数が60人の企業の場合、小売業なら大規模法人部門となりますが、サービス業だと中小規模法人部門になります。
ホワイト500の対象となるのは大規模法人部門だけなので、認定を目指す場合は、まず自社が大規模法人部門に該当するかどうか確認しておきましょう。
業種 | ホワイト500・大規模法人部門 | 中小規模法人部門
(①②いずれか) |
|
従業員数 | ①従業員数 | ②資本金の額
または 出資の総額 |
|
卸売 | 101人以上 | 1~100人以下 | 1億円以下 |
小売 | 51人以上 | 1~50人以下 | 5000万円以下 |
サービス業 | 101人以上 | 1~100人以下 | 5000万円以下 |
製造業・その他 | 301人以上 | 1~300人以下 | 3億円以下 |
※会社法上の会社等及び士業法人の場合
ホワイト500の認定を受けると、経済産業省のホームページで企業名が公表されます。
健康経営に積極的な企業として周知されることで、さまざまなメリットが期待できます。
どのようなメリットがあるのか、社内と社外それぞれの面で詳しく見てみましょう。
ホワイト500に認定されると、社内的にもさまざまなメリットがありますが、とりわけ従業員に関連したメリットは大きいです。ここからは社内に期待できるホワイト500認定の主なメリットを解説します。
ホワイト500の認定を受けるためには、従業員の健康を守るためのさまざまな取り組みを実施しなければなりません。健康課題の把握やワークライフバランスの推進、過重労働対策やメンタルヘルス対策など、幅広い分野での取り組みが必要です。
これらが積極的に行われると、必然的に従業員の健康が良好に保たれます。
ホワイト500に認定されるほど健康経営が実現できているなら、従業員が健康を損なって休職・離職に至るリスクも軽減できます。
労働力の喪失による生産性低下や、新たな人材確保のためのコスト増加といったダメージを避けられるのは、企業にとって大きな魅力です。また、従業員が心身ともに充実した状態で働けることで、モチベーションや生産性の向上といった組織の活性化も見込めるでしょう。
企業が従業員を大切にしていることが伝われば、従業員のエンゲージメントも向上し、労使間の関係改善や、さらなるモチベーションの向上につながる可能性もあります。
従業員ひとりひとりが意欲的・能動的に業務に取り組んだ結果、個々のパフォーマンスが最大限に発揮され、企業の業績が上がるといったメリットも期待できるでしょう。
社外に期待できるホワイト500認定のメリットは、主に「イメージの向上」です。会社の印象がよくなることは、投資や採用の面でも大きな影響があります。ここからはそれぞれのメリットについて解説します。
ホワイト500は、公的機関である経済産業省が企画運営する制度です。
そのため信頼性が高く、認定を受けると「従業員を大切にしている企業」として、社会的に高い評価を受けることができます。健全な企業イメージが広まるだけでなく、健康経営による業績向上が期待されるなどして投資家から好まれ、株価が上昇するケースも少なくありません。
近年、投資や購買行動でも、企業の倫理性や社会的な取り組みが重視されるようになりました。実際、健康経営銘柄2021に選定された企業の株価は東証株価指数を上回る形で推移しています。
また、経済産業研究所の研究で健康経営施策と利益率には正の相関があることが明らかになりました。
【参考】経済産業省「健康経営の推進について」
企業イメージが向上することで、より多くの人材が集まりやすくなる効果も期待できます。
長時間労働や過労死が社会問題として注目される昨今では、従業員の健康に配慮する企業の人気が高いため、ホワイト500の認定を受けていることは大きなアピールポイントになるでしょう。
メリットが多いホワイト500ですが、認定されるためには多くの認定要件をクリアしなければなりません。ホワイト500に選ばれるためには、まず健康経営度調査に回答し、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定企業となる必要があります。
そして、健康経営優良法人(大規模法人部門)の上位500社がホワイト500に認定されます。つまり、認定要件をクリアしていても、他社のほうが優れた健康経営を行っていれば、上位500社には入れない可能性があるのです。
健康経営優良法人の上位を目指すなら、単に認定要件を満たすだけでなく、他社と比べて健康経営の方針や取り組みが優れていることをアピールしなければなりません。
とはいえ、まずは認定要件を確認し、十分にクリアできる体制づくりをするのが先決でしょう。ここからは、参考として以下の表にまとめた「健康経営優良法人2024」の認定要件を大項目ごとに紹介します。
大項目 | 中項目 | 小項目 | 評価項目 | 大規模 | 銘柄・ホワイト500 |
経営理念・方針 | 健康経営の戦略、社内外への情報開示 | 健康経営の方針等の社内外への発信 | 必須 | ||
従業員パフォーマンス指標及び測定方法の開示 | ー | 必須 | |||
自社従業員を超えた健康増進に関する取組 | ①トップランナーとして健康経営の普及に 取り組んでいること | 左記①~ ⑯のうち13 項目以上 | |||
組織体制 | 経営層の体制 | 健康づくり責任者が役員以上 | 必須 | ||
実施体制 | 産業医・保健師の関与 | ||||
健保組合等保険者との連携 | 健保組合等保険者との協議・連携 | ||||
制度・ 施策実行 | 従業員の健康 課題の把握と 必要な対策の 検討 | 健康課題に基づいた具体 的な目標の設定 | 健康経営の具体的な推進計画 | 必須 | |
健診・検診等の活用・推 進 | ②従業員の健康診断の実施(受診率100%) | 左 記 ① ~ ⑯ の う ち 1 3 項 目 以 上 | 左 記 ② ~ ⑯ の う ち 1 3 項 目 以 上 | ||
③受診勧奨に関する取り組み | |||||
④50人未満の事業場におけるストレス チェックの実施 | |||||
健康経営の実 践に向けた土 台づくり | ヘルスリテラシーの向上 | ⑤管理職又は従業員に対する教育機会 の設定 ※「従業員の健康保持・増進やメンタルヘルス に関する教育」については参加率(実施率)を 測っていること | |||
ワークライフバランスの推進 | ⑥適切な働き方の実現及び育児・介護の 両立支援の取り組み | ||||
職場の活性化 | ⑦コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み | ||||
仕事と治療の両立支援 | ⑧私病等に関する復職・両立支援の取り組み(⑭以外) | ||||
従業員の心と 身体の健康づ くりに関する具 体的対策 | 保健指導 | ⑨保健指導の実施及び特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み ※「生活習慣病予備群者への特定保健指導以 外の保健指導」については参加率(実施率)を 測っていること | |||
具体的な健康保持・増進 施策 | ⑩食生活の改善に向けた取り組み | ||||
⑪運動機会の増進に向けた取り組み | |||||
⑫女性の健康保持・増進に向けた取り組み | |||||
⑬長時間労働者への対応に関する取り組み | |||||
⑭メンタルヘルス不調者への対応に関す る取り組み | |||||
感染症予防対策 | ⑮感染症予防に関する取り組み | ||||
喫煙対策 | ⑯喫煙率低下に向けた取り組み | ||||
受動喫煙対策に関する取り組み | 必須 | ||||
評価・改善 | 健康経営の推進に関する 効果検証 | 健康経営の実施についての効果検証 | 必須 | ||
法令遵守・リスクマネジメント | 定期健診を実施していること、50人以上の事業場においてストレスチェック を実施していること、労働基準法または労働安全衛生法に係る違反により 送検されていないこと、等 | 必須 |
【参考】経済産業省「令和5年度 健康経営度調査」
1つ目の大項目は「経営理念・方針」です。健康経営優良法人(大規模法人部門)認定のためには「健康経営の戦略、社内外への情報開示」の小項目のみ必須となっていますが、ホワイト500認定のためにはすべての小項目が必須となっています。
ホワイト500認定の方が、健康経営優良法人(大規模法人部門)認定よりも条件が厳しくなっているのはその他の大項目でも同様です。
2つ目の大項目は「組織体制」です。健康経営に向けた組織体制を十分に整えられているかが問われます。たとえば、「実施体制」の小項目では、「健康経営施策の実施にあたって、産業医または保健師はどのように関与しているか」が焦点です。
「特に関与していない」と回答するような体制だと、その時点で健康経営優良法人に認定されないので注意が必要です。
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3つ目の大項目は「制度・施策実行」です。健康経営のために実際にどのような制度を設計し、施策を行っているかが問われます。
たとえば「50人未満の事業場におけるストレス チェックの実施」では、50人未満の事業場でストレスチェックを実施していない場合、項目不適合となります。
「長時間労働者への対応に関する取り組み」では、面談指導や時間外労働の制限を行っているかが質問項目です。
また、メンタルヘルス不調の予防や不調者への復職支援、就業と治療の両立支援への取り組みが問われる項目もあります。
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4つ目の大項目は「評価・改善」です。昨年までの取り組みについてどのように効果検証をしているかが問われます。
健康経営を始めるのが初めての年であっても、労働安全衛生施策の結果などをもとに効果検証をしているか回答しなければなりません。
前年までの取組結果だけでなく、改善状況まで把握していないと健康経営優良法人不認定となります。
健康経営優良法人の認定に継続して挑戦しているなら、送られてくるフィードバックシートを踏まえた効果検証と改善がカギになるでしょう。
5つ目の大項目は「法令遵守・リスクマネジメント」です。定期健診や50人以上の事業場でのストレスチェックなど法令で義務づけられた対応をきちんと行っているかが問われます。
「法令遵守・リスクマネジメント」は質問項目ではなく誓約事項です。1つでも満たしていないと、当然のことながら不認定となります。
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ホワイト500に選ばれるためには、「健康経営度調査」に回答して、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定要件を満たしていることを示さなければなりません。
健康経営度調査の調査項目は都度変更が加えられることがあり、「健康経営優良法人2024」では3つの要素が新たに加わりました。近年の重要な変化として参考にしてください。
【参考】経済産業省「「健康経営銘柄2024」・「健康経営優良法人2024」の申請受付開始!」
「健康経営優良法人2024」では、従来よりもさらに詳細な情報開示が求められるようになりました。
特定健診・特定保健指導の実施率や、業務パフォーマンス指標の測定と開示が評価対象になったほか、労働安全衛生・リスクマネジメントの開示状況について問う設問も追加されました。
近年、子育てや親の介護、女性特有の健康課題等による従業員の心身の負担が社会的な課題となっています。そこで「健康経営優良法人2024」では、従業員個々の事情に応じた柔軟な働き方や生産性低下防止に関する設問が新たに追加されました。
ワークライフバランスの推進や、女性特有の健康課題への配慮が今まで以上に求められます。
評価には含まれませんが、「健康経営の国際展開」の要素も増えました。海外拠点での健康経営の実施方針や実施状況を問う質問項目が追加されています。
「健康経営優良法人2024」では評価に含まれなかったものの、将来的に健康経営を海外拠点に波及させられているかが評価項目として問われるようになる可能性はあります。
「健康経営優良法人2024」でホワイト500の認定企業になるまでの流れを紹介します。
※今後変更となる可能性もあるため、申請時に最新の情報をご確認ください。
申請の〆切は例年10月です。12月にフィードバックシートの速報版が送られ、健康経営優良法人の発表後に正規のフィードバックシートが送られてきます。
健康経営優良法人に認定され続けるためには、フィードバックシートを踏まえ、健康経営の取り組みをさらに改善していくことが重要です。
【参考】ACTION!健康経営「申請に関する説明動画・資料」
健康経営にはさまざまなメリットがあります。健康経営優良法人やホワイト500認定を目指して健康管理を実施するだけでも、従業員の健康維持や生産性・モチベーションの向上などが期待できます。
さらに、認定を受ければ健康経営に積極的な企業として広く周知され、企業イメージも大いに高まるでしょう。投資などを呼び込むという意味では、企業の利益追求の面でも重要です。さまざまなメリットがあるホワイト500の認定にぜひチャレンジしてみてください。
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