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テレワーク中の従業員の不調を防ぐには? 産業医と連携して予防と早期発見を!

コロナ禍以降、働き方の変化によりテレワーク(在宅勤務)を導入する企業が増えています。しかし、テレワークでは事業者が職場巡視を行ったり、環境整備を進めたりすることができません。さらに、テレワーク特有の健康リスクが潜んでいます。本稿では、従業員の健康を守るために人事労務担当者として行うべきことを紹介します。

そもそも、職場巡視とは

安全で健康的に働きやすい職場を維持していくためには、職場巡視が役に立ちます。職場巡視とは、職場を巡回して、従業員の作業内容や職場における安全衛生上の問題を早期発見、改善していくことを目的とした職場点検です。職場巡視には法的な位置づけが定められており、衛生管理者は週1回以上、産業医は原則月1回以上の実施が義務付けられています。ただし、事業者から産業医に所定の情報(衛生管理者の巡視結果など)が提供されている場合には、2ヶ月に1回の実施で差し支えありません。
職場巡視では、転倒しやすい場所がないか、作業姿勢は腰痛リスクが高いものになっていないか、騒音が多すぎないか、執務室の温度湿度は適切か、など安全面や衛生面についてチェックを行います。その結果、職場において危険や健康問題がある場合には、産業医が指摘したうえで解決に向けた指導・助言をすることになります。

テレワークでは、“従業員の不調”に気づきにくい

近年では、コロナ禍の影響もあって、テレワークも増加してきています。企業は、テレワークにおいても、従業員の健康を守ることが必要です。しかし、上述した通り、産業医の職場巡視は「職場」における対応です。そのため、テレワークを導入している企業・事業場では、従業員に目が行き届きにくくなってしまいます。その結果、従業員が何らかの不調を抱えていたとしても、見落とされてしまうケースが出てくるかもしれません。特に、テレワークが主体で、オフィスへの出社頻度が低い従業員は、同僚や人事労務担当者、健康管理スタッフが気付かないうちに不調を発症する可能性が高くなってしまうことが考えられます。

実際に、テレワーク中に発生したリモート会議後の死亡事例が厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」の死亡災害データベースに掲載されています。リモート会議に15分間出席した方に、従業員が連絡したものの応答がないため、異変を感じ、マスターキーで部屋に入ったところベッドで死亡していた事例があります。もし、出社しての業務であれば、体調不良に対して周囲から受診を促したり、急変したとしても救急搬送を依頼したりする等、より適切な対応がとれた可能性があります。
テレワーク中の従業員の急変に対応すること自体は難しいので、急変につながるような体調不良・不調に気付いたり、防いだりすることが必要です。そのためには、人事労務担当者が産業医と連携を取り従業員に働きかけること、従業員にどのようなアプローチをとればよいか十分に検討することが必要です。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト  死亡災害データベース」

産業医が現場で感じる、「テレワーク中の従業員の不調」

東京大学が主体となって行う「新型コロナウイルス感染症に関わる全国労働者オンライン調査(E-COCO-J)」では、テレワークにおいてどのようなストレスが発生しているか報告されています。コロナ禍でのテレワーク経験者を対象に、2021年6月の時点で、テレワークで抱えるストレスや不安について尋ねたところ、「出勤時の勤務よりオンオフがつけにくいことがストレスである」は51.6%で、「在宅勤務をする物理的環境(家、机、椅子など)がないことがストレスである」は49.2%という調査結果が出ており、テレワークには特有のストレスがあることがわかります。
この結果から、コロナ禍でテレワークをしている従業員が抱えやすいストレスに応じて、事業場でも可能な配慮や対策を実施する必要があると考えられます。次に、筆者が経験したテレワーク中の従業員の不調について事例を紹介します。なお、個人を特定できないように、設定や状況を少しアレンジしています。

参考:東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野/精神看護学分野『新型コロナウイルス感染症に関わる全国労働者オンライン調査(E-COCO-J)』

【事例1:コミュニケーション不足によるメンタルヘルス不調】
Aさんは、担当している業務のプロジェクトリーダーとなり、チームメンバーと共に作業を行うこととなりました。このプロジェクトは、折からのコロナ禍もあり、多くのチームメンバーがテレワークで作業することになりました。Aさんは、自分自身の作業を持ちながらプロジェクト全体の管理業務も行っていましたが、メンバーからの問い合わせ対応、自分自身でもわからないことへの対応に時間が取られるようになっていきました。プロジェクトに関するストレスから、Aさんには徐々に不眠や頭痛といった症状が現れるようになり、結果として休職に至ってしまいました。

出社していれば、関係者が顔を合わせるミーティングや席の近くを通りかかったときにちょっとしたインフォーマルな会話(雑談)が行われます。そのため、プロジェクトの難しい箇所を共有しやすかったり、手すきのチームメンバーや他チームにいる作業に詳しい社員に助言を受けられたりします。しかし、テレワークだとこういった細やかなコミュニケーションが行えないため、Aさんのメンタルヘルス不調に気付くことが遅れてしまったのです。

【事例2:過重労働による体調不良】
Bさんは、コロナ禍前から必要以上のクオリティを求めるために、長時間残業となっていました。頻繁に強い頭痛を感じるようになり、体調不良を理由とした当日連絡の休暇を取得するようになったため、産業医に相談。Bさんの上司が長時間残業に対して強い管理を行った結果、症状が軽快しました。しかし、その後にコロナ禍になり、Bさんの部署はテレワーク主体の業務スタイルになりました。テレワーク中の時間管理は各自に任せるシステムであったため、Bさんは以前と同様に長時間労働を行うようになり、徐々に体調を崩し、休職することになってしまいました。

BさんもAさん同様、テレワークで従業員の様子が把握しにくくなった結果、体調不良となってしまった事例です。出社していれば、上司が残業時間管理をより徹底することや体調不良による出社率の低下などを理由に顔を合わせた面談を行い、体調不良を防ぐことができたかもしれません。

従業員の体調不良を予防するために、行うべきこと

上記の事例のように、テレワーク中の体調不良は気付きにくく、健康管理を行っていく上での課題となっています。テレワークにおける従業員への健康管理として、何をすれば良いのでしょうか。

まず、組織環境の整備が必要です。例えば、テレワークでは業務時間と業務時間外が不明確になりがちですので、業務時間についての明確なルール整備が必要です。
コミュニケーション不足についてもケアが必要です。これに対しては、定期的なオンラインランチや懇親会の設定、インスタントメッセージ・ソフトウェアを用いた偶発的な短い会話(出社時における雑談に相当)ができる環境構築が有用という研究報告があります。一方で、このような対策を行ったとしても、テレワーク時に体調を崩してしまう従業員もいらっしゃいます。テレワークの状況下で従業員の体調不良に気付くことはとても難しいため、体調の変化ではなく、業務中の「いつもと違う」という様子に気付くことが必要です。例えば、以下のような状況は、体調不良の徴候である可能性があります。

  • 業務時間の突発的な変更が多くなった
  • 業務量が増えたわけでもないのに、残業時間が多くなった
  • 業務パフォーマンスが低下した
  • 業務アウトプットの質が低下した
  • Web会議での発言が減った

このような情報を産業医と人事労務担当者で共有し、早期に介入することが必要です。まずは、「いつもと様子が違うから、心配だ」という理由で1:1のミーティングの機会を設定し、不安などの訴えがあれば、必要なサポートに繋ぎます。もし、従業員本人から心身の異常などの訴えがあれば、産業医による面接指導の場を設けて、産業医との連携を行ってください。面接指導の内容を踏まえて産業医からの助言がありますので、連携をとりながら、テレワークでの健康リスクを低減する措置を行います。場合によっては、専門医への受診が必要になる可能性もあります。

自宅でも「働く環境」を整えることは大切

人事労務担当者が組織環境を整備し、産業医と連携したとしても、テレワーク中の「働く環境」である自宅を整備するのは、従業員本人です。事業者は、テレワークにおける自宅環境整備について情報発信を行うことが必要になります。厚生労働省は、テレワークを行うための環境整備について、ホームページで情報発信を行い、チェックリストも公開しています。このチェックリストを従業員本人に確認してもらい、部屋の明るさ、室温・湿度、机や椅子などについて報告を受ける体制を作るとよいでしょう。テレワーク時の自宅環境整備について、事業者から補助金を出している場合については、その周知も行い、従業員自ら環境整備を行うよう勧奨してください。
前述したように、テレワーク中の従業員が経験しているストレスの1つに「仕事・プライベートの切り分けができないこと」も挙がっています。自宅内を切りわけることは難しいかもしれませんが、仕事のオンオフをつけるためにも、従業員には仕事をする場所とプライベートを過ごす場所をできるだけ変えるように説明しましょう。

もし、テレワーク中の従業員から労働災害について問い合わせがあったら

テレワーク中にも、労働災害が発生する可能性があります。本稿の執筆時点(2022年10月)では、データベース上に、リモートワーク中の労災事例が1件のみ(コロナ感染による死亡と考えられる事例)掲載されています。ある事業場の安全衛生委員会でも、従業員側の委員から「テレワーク中の労災でも適応されるのか?」という質問がありました。テレワーク中に労働災害の発生した場合は、どのように対応すればよいでしょうか。

まず、怪我などの災害が事業者管理下での出来事であれば、労働災害となる可能性が高いと考えられます。管理下なのか、そうでないかを判断できる客観的な記録が必要ですが、テレワーク中は「管理下」について判断することには注意が必要です。例えば、午前中はテレワークで午後はオフィスに出勤することが予定されていた場合、移動中は管理下にはあたりません。一方で、テレワーク中に急遽オフィスに出勤するように指示された場合の移動中は管理下にあたります。
労働災害としてケガをした場合などは、どのようにケガをしたのかについて記録が必要になります。必要な情報が揃っていて、管理下における災害であれば、通常の労働災害と同じ対応をとることになります。テレワーク中の労働災害が起こりうることを踏まえて、人事労務担当者としては、次のような対応をとっておくことが必要です。事業場として整備されているかどうかチェックしてみてください。

  • 情報通信機器の使用状況などの客観的な記録や、労働者から申告された時間の記録を適切に保存すること
  • 労働者が負傷した場合の災害発生状況等について、使用者や医療機関等が正確に把握できるよう、状況等を可能な限り記録しておくことを労働者に対して周知すること

産業医と連携をとって、テレワーク中の従業員に働きかけよう

テレワークは、ポストコロナ時代の働き方の1つとして定着するものと考えられます。しかし、テレワークには、これまでとは異なる健康上のリスクがあります。コミュニケーション不足やオンオフの切り替えが難しくなったことによるストレスなど、テレワーク特有のリスクに対応するためには、物理的な距離が離れていても、従業員に働きかけることが必要です。テレワーク中の従業員への対応は、人事労務担当者だけで行うのではなく、産業医と連携するようにしましょう。リスク状況をよく共有しながら対応を進めることで、従業員をケアしたり、不調者の早期発見をしたりすることができるかと思います。

三橋 利晴 (みつはし としはる)

産業医・労働衛生コンサルタント

岡山大学にて産業衛生・疫学・予防医学の実務や研究を行う。 平行して2008年からは嘱託産業医として様々な業種の事業所を担当。 大学病院では疫学や研究倫理の観点から院内の臨床研究支援を行う。

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