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パワハラ防止法は中小企業も対象!罰則や取り組むべき対策を解説

大企業では2020年6月から、中小企業でも2022年4月から施行されているパワハラ防止法。パワハラを防止するための措置を義務づける法律ですが、具体的にどういった措置が必要なのか、違反した場合にはどうなるのかと疑問に感じている方もいるかもしれません。

この記事では、パワハラ防止法の概要や必要性、企業が取り組むべきこと等について解説します。パワハラ防止法の成立により何が変わるのか、具体的にどのような対策を行えばいいのかとお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

パワハラ防止法とは?

パワハラ防止法とは、事業主にパワーハラスメント防止措置を義務づけることを目的とした法律です。正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」、略して「労働施策総合推進法」と呼ばれます。

なお、パワハラ防止法は企業だけでなく地方公務員、教職員などの公務員にも適用されます。ただし、国家公務員には適用されません。

パワハラ防止法の成立の背景

パワハラ防止法の成立の背景にあるのは、パワハラに悩む人の増加と、それにより引き起こされる被害状況の深刻化といえます。

平成28年度に厚生労働省が発表した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によると、企業が従業員向けに開設している相談窓口において、最も相談の多いテーマがパワーハラスメント(32.4%)でした。

また、同年度に厚生労働省が発表した「過労死等の労災補償状況」では、精神障害で労災支給が決定されたのは498件にのぼり、前年度から26件増加していることが明らかになっています。

出来事別の支給決定件数を見ると、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」が74件で最多です。このようなことからも、職場での対人関係のトラブルが社会的な問題として顕在化していたことがわかります。

パワハラは従業員が能力を十分に発揮することの妨げになる上、個人としての尊厳や人格を不当に傷つけるなどの人権に関わる行為です。

それだけでなく、企業にとっても、職場秩序が乱れたり、業務への支障が生じたり、貴重な人材の損失につながったりと、社会的評価にも悪影響を与える大きな問題につながります。

このような状況を改善するために、パワハラに関する法的対策が必要となったことが、パワハラ防止法の成立の背景と考えられます。

パワハラの労災認定基準とは

パワハラにより従業員が精神障害を発病した場合、労災認定される場合があります

具体的には、「発病前のおおむね6ヶ月間に起きた業務による出来事について、強い心理的負荷が認められる場合」に、労災の認定要件の一つを満たすとされます。なお、ここでいう「強い心理的負荷」とは以下のいずれかに当てはまる行為です。

  • 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた
  • 同僚等から、暴行または(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた

上司からだけでなく、同僚からの暴行や嫌がらせも労災認定となる可能性があることに注意が必要です。

2022年4月から中小企業もパワハラ防止法の対象に

パワハラ防止法は2019年5月に改正され、2022年4月からは中小企業もパワハラ防止対策をするよう義務づけられました。

「中小企業」は、以下のように定義されています。

基準に当てはまる事業主は、パワハラ防止のために取るべき対策を理解し、適切な措置を講じる必要があります。

【出典】厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

パワハラの基準となる3つの要素

厚生労働省はパワハラを判断するための基準として、以下3つの要素を挙げています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
  3. 従業員の就業環境が害されるもの

それぞれの要素を判断する際のポイントを確認しておきましょう。

【参考】厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
【関連記事】職場におけるパワハラの定義とは?企業が知っておくべきポイント

1.優越的な関係を背景とした言動

優越的な関係を背景とした言動とは、業務を行う上で要求の拒否や抵抗ができない関係性にもとづいた言動です。

上司をはじめ、知識・経験を豊富にもつ同僚や部下など、職務上の立場が上の者からの言動が該当します。

たとえば、上司が拒否できない立場にいる部下に対して無意味な仕事を要求することは、パワハラに該当します。逆に部下が上司を昇進させないために、わざと業務に取り組まない場合もパワハラになる可能性があるでしょう。

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動

言動の内容が明らかに業務上必要なく、業務範囲・目的から大幅に逸脱している場合もパワハラに該当します。

パワハラかどうかは、以下のような要素をもとに総合的に判断しなくてはなりません。

  • 言動の目的
  • 言動を受けた従業員に問題行動があるか
  • 業種・業態・業務の内容
  • 言動を受けた従業員の属性(年齢、業務経験年数、国籍など)
  • 言動の行為者である従業員と言動を受けた従業員との関係性

たとえ言動を受けた従業員に問題があっても、行為者の言動が業務上必要・相当な範囲を超えていた場合、パワハラに当たります。

たとえば「お前は仕事の覚えが悪い、給料泥棒だ」などの人格否定、「お前と結婚する奴の気が知れない」などのプライベートに踏み込む発言はパワハラに該当します。

3.従業員の就業環境が害されるもの

言動によって従業員の就業環境が害され、能力の発揮に問題が生じている場合は、パワハラとみなされます。

厚生労働省のパワハラに関するガイドラインでは、「言動に対する従業員の平均的な感じ方」を基準として判断すると示しています。

つまり、世間一般の従業員が同じ状況で該当の行動をされたとき、業務に大きく支障が生じるように感じるかどうかを考慮するということです。

たとえば、話しかけられても無視する、明らかに遂行が不可能な業務を押し付けるといった行為は、当人の就業環境が害される行為といえます。

言動の頻度や継続性も重視するポイントですが、1回の言動が就業環境を害する可能性もあります。そのため、言動によりどれくらいの苦痛を受けたか、身体・精神の両方の観点から見極める必要があります。

パワハラと指導の違い

パワハラに該当する行為について詳しく知っていくと、「業務を行う上で必要な指導とパワハラはどう違うのか」と悩むことがあるかもしれません。パワハラと指導には、その行為の目的や内容、態度が以下のように異なるとされています。

パワハラ 相手を馬鹿にしたり、自分の目的を達成したりするために、業務上の必要性がない、もしくは業務上の必要性があっても不適切な内容の言動を、威圧的・攻撃的に行うこと
指導 相手の成長を促すため、業務のため、もしくは健全な職場環境を維持するために必要な言動を、肯定的・受容的な態度で行うこと

パワハラは「自分の欲求を満たす」ことを目的に行われるのに対して、指導は「相手の成長を促す」ことを目的に行われます

たとえば遅刻・欠勤が目立つ社員に対して、繰り返さないよう注意することは指導に該当します。しかし「お前のような人間は会社に必要ない」「親の顔が見てみたい」などと人格を否定するような言葉を使ってしまうと、パワハラになる可能性があるでしょう。

パワハラか指導か、線引きが難しい部分があるかもしれません。しかし、それを理由に業務上の必要な指導を怠ることがあってはなりません。

従業員が不満を感じる場合でも、業務上必要かつ適正な態度ならばパワハラとはみなされないと認識しましょう。

パワハラ防止法の適用となる範囲

パワハラ防止法が適用されるのかを判断する際には、以下2つの範囲を意識する必要があります。

  • 職場の範囲
  • 労働者の範囲

それぞれの範囲について正しく理解していないと、意識しないうちに法律違反を犯す恐れがあるので注意が必要です。

【参考】厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

職場の範囲

職場とは従業員が業務を行う場所です。通常業務を行っている場所以外にも、業務についていれば職場と見なされます。具体的には以下のような場所です。

  • 出張先
  • 自宅、コワーキングスペース
  • 業務で使用する車中
  • 取引先の会議室(接待の席も含む)
  • 業務時間外の懇親会

事務所以外の場所や懇親会を職場とみなすかについては、職務との関連性や参加が強制されているかなどを考慮し、パワハラ防止法の適用範囲であるかを判断する必要があります。

労働者の範囲

パワハラ防止法の適用となる「労働者」の範囲には、使用しているすべての従業員を含みますパートタイムやアルバイト、契約社員などの非正規雇用の従業員、業務委託契約を結んで働く人もパワハラ防止法の対象です。

派遣労働者へのパワハラ対策は、派遣元事業主だけでなく派遣先事業主も措置を講じる義務があります。自ら雇用している従業員と派遣労働者の扱いに差をつけてはならない点に注意しましょう。

職場におけるパワハラの6類型

職場におけるパワハラは、以下の6種類に分られます。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

上記のそれぞれにおいて、パワハラに見なされる例・見なされない例を紹介しますので、判断する際の参考にしてください。

【参考】厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

1.身体的な攻撃

従業員を殴ったり足蹴りしたりする、業務上必要ないのにものを投げつけるなどはの行動はパワハラに該当します。

一方、誤ってぶつかるなど故意ではない行動は、パワハラに当たりません。

2.精神的な攻撃

脅迫や暴言、名誉毀損や侮辱などにより精神的に大きな負担を与える攻撃的な言動もパワハラの一つに分類されます。具体的には以下のような事例です。

  • 人格を否定するような言動
  • 相手の性的指向を侮辱するような言動
  • 業務に関する必要以上の長時間の叱責
  • 他の従業員の前で、大声での威圧的な暴言
  • 従業員の能力を否定・罵倒するような内容の電子メールをCcで送信すること

対して、社会的な規範を越える言動が見られた場合や、企業の業務に関わる問題行為をした際に過剰ではない範囲で従業員に強く注意するのは、パワハラとみなされません。

3.人間関係からの切り離し

隔離や無視、仲間外しなどの行為もパワハラの一つとみなされます。具体的には以下のような言動です。

  • 従業員に仕事を任せない
  • 目的なく別室への隔離や自宅研修を命ずる
  • 特定の従業員を職場全体で無視し、コミュニケーションを取らない

一方、新規採用者の教育のために短期間、別室で研修を実施するのは目的が伴うため、パワハラではありません。

また、懲戒処分を受けた従業員を職場に復帰させるために、一時的に別室で研修を実施するのもパワハラの非該当例です。

4.過大な要求

明らかに遂行不可能な業務の要求や強制、仕事の妨害もパワハラと判断されます。該当する言動は以下などです。

  • 苦痛を伴う環境下で、業務と直接関係のない作業を長期にわたって命じる
  • 必要な教育をしないで達成が非常に困難な目標を命じ、未達成だった場合に厳しく叱責する
  • 私的な雑用を命ずる

対して、従業員の業務能力を向上させるために、適度に高いレベルの業務を任せるのは、業務上妥当な要求とみなされます。

その他に、繁忙期のために通常時よりも多めの業務を任せるのもパワハラに該当しません。

5.過小な要求

過大な要求だけでなく、能力や経験に即していない程度の低い仕事の指示もパワハラにみなされます。具体例は以下などです。

  • 従業員を退職させるために、誰でもできる業務を与えてモチベーションを下げさせる
  • 気に入らない従業員への嫌がらせのために仕事を与えない

従業員の能力に合わせて一定期間業務量を軽減させることは、パワハラと判定されません。

6.個の侵害

私的なことに必要以上に立ち入る発言もパワハラと判断されます。具体的には以下のような言動です。

  • 業務時間外にもかかわらず従業員を見張り、私物の写真を撮る
  • 従業員に確認せずにプライベートな情報を他の従業員に話す

一方、従業員への配慮の必要性があり、家族状況などを聞き込みするのは、個の侵害によるパワハラに該当しません。

加えて、従業員の了解を得た上で、個人情報を人事・労務担当者に提供し配慮を促すのもパワハラとはみなされません。

パワハラ防止法に違反したらどうなる?

ここでは、事業主がパワハラ防止法に違反してしまった場合の措置について解説していきます。

パワハラ防止法に罰則はある?

パワハラ防止法に違反した場合の事業主に対する罰則は、とくに定められていません

ただし、必要に応じて厚生労働省が違反した事業主に対して助言・指導・勧告を行えるとされています。

さらに、勧告を受けた事業主がそれに従わなかった場合には、厚生労働省はその旨を公表できることになっています(改正労働政策総合推進法第33条)。

上記の行政的な措置のほか、パワハラの行為内容によっては民事上・刑事上で責任が問われる場合があります。

たとえば、パワハラを行った個人に対しては、その行為が「傷害、暴行、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱」等の刑法に該当した場合は処罰されます。また、「故意・過失によって他人の権利・法律上保護される利益を侵害した」と認められれば、民法709条にもとづく損害賠償責任などが起こり得ます。

個人だけでなく、パワハラを起こした企業にも責任が問われることがあります。たとえば企業が「労働者に対する安全配慮義務(労働契約法第5条)」をはたしていないと見なされると、「債務不履行責任(民法415条)」が問われる場合があります。その他、状況によっては「不法行為による損害賠償責任(民法709条)」、「加害者の行為についての使用者としての責任(同715条)」等の責任が問われる可能性もあります。

このように、パワハラ防止法そのものへの違反には罰則は設けられていないものの、パワハラ行為そのもの、企業が従業員の安全を確保していないこと等に対して、刑法・民法上の責任を問われる可能性があるのです。

パワハラを放置するリスクとは

企業がパワハラを放置するリスクは、民事上・刑事上での責任が問われることだけではありません。パワハラ行為があることを認識していながら、それを放置していると、職場の雰囲気は悪化するでしょう。それに伴い、従業員の生産性の低下等にもつながるリスクもあります。

このような状態が続くと、結果として人材が流出したり、パワハラに関する噂が広がり新たな人材を確保しにくくなったりする可能性もあります。

さらに、パワハラの黙認による企業責任を問われた場合、損害賠償を請求されることもあります。

このようなことが起きれば、企業のイメージを大きく損ねてしまうでしょう。パワハラを放置してしまうと、結果として企業のさまざまな不利益につながります。

パワハラ認定された事例3選

ここでは、パワハラ認定された事例を3つ紹介します。

  • 身体的な攻撃型のパワハラ事例
  • 人間関係からの切り離し型のパワハラ事例
  • 過大な要求型のパワハラ事例

類型別の事例について、どのような点がパワハラと認定されたのかを解説するので、参考にしてください。

身体的な攻撃型のパワハラ事例

業務分担を巡るやりとりから暴行事件に発展し、被害社員が休職中に解雇を言い渡されたパワハラ事例です。

加害社員は課の印刷機のトナーを発注する際に、被害社員から命令口調で言われたことをきっかけに暴行を働き、顔や首に怪我を追わせました。事件後、被害社員は約2年半継続して休業している間に解雇となっています。

暴行事件の原因は備品管理の業務分担で、業務起因のトラブルのためパワハラと判断されました

会社と加害社員は損害賠償責任を負うことになり、慰謝料60万円、解雇は権利の濫用として無効の判決が下されています。

【参考】厚生労働省「【第40回】同僚間の暴行について使用者に損害賠償責任を認めると共に、同暴行に起因する欠勤中の解雇を無効とした例」

人間関係からの切り離し型のパワハラ事例

高等学校が女性教諭に対して、長期間にわたる業務解任や隔離、自宅研修の命令などをしたパワハラ事例です。

教師としての適格性を欠く言動を理由に、授業・クラス担任などの業務から外し、出勤しても業務がなく1日中デスクで過ごすしかないような状況にさせました。

また、他の教員とトラブルを起こすのをやめさせるために、他の教員と引き離した職員室内に席を移動させたり、別の職員室に隔離させたりしました。

高等学校のこれらの言動に対し、教員の業務である生徒の指導・教育をさせないことは、著しく精神的苦痛を与え、業務命令権の範囲から外れているとの判決が下されています。

また、職員室内や別室への隔離においても、差別的な扱いによる違法行為と認定されています。高等学校を運営する学校法人は、600万円の損害賠償義務を負うことになりました。

【参考】厚生労働省「【第64回】高等学校の教諭に対してなされた、授業・担任等の仕事外し、職員室内での隔離、別の部屋への隔離、自宅研修等の命令が、違法であるとして、600万円の損害賠償が認められた事案」

過大な要求型のパワハラ事例

うつ病の社員に会社が部署異動を打診した直後に社員が自殺し、会社側に安全配慮義務違反に問われた事例です。

被害社員は以前の部署に所属している際にうつ病に罹患し、服薬によって日常生活を送れる程度にまで回復していました。

会社側は被害社員を適任と考えて異動の面談を実施しましたが、その際に暴言を受けたとして、自殺後に社員遺族から過大な要求であり安全配慮義務違反ではないかと問われます。

判決では、会社側の説得状況はうつ病に罹患していない従業員に対してならば過大な要求には当たらないとされました。

会社側は社員がうつ病に罹患していることを知らなかったため、予見可能性がなく安全配慮義務違反は認められないと判断されています。

本事例では、異動の打診は業務量を減らすためであり、説得も適切としてパワハラとは認められませんでした。

しかし、従業員が疑問や不安を示す場合、安全配慮義務にもとづいて異動命令を撤回することも考慮する必要があるでしょう。

【参考】厚生労働省「【第63回】異動を命じられた労働者が自殺した事案において、使用者の安全配慮義務違反が否定された例」

【関連記事】職場で自殺が起きた時、会社が取るべき対応とは?―産業医のメンタルヘルス事件簿vol.5

パワハラ防止法にもとづき企業が講ずるべき対策

職場でパワハラを起こさないために、企業が講ずべき対策として以下が挙げられます。

  • パワハラ対策の方針を明確化し周知・啓発する
  • 相談に対応するために必要な体制を整える
  • パワハラが発生したら迅速かつ適切に対応する
  • プライバシー保護の対策を講じて周知する
  • 不利益取扱い禁止規定を設け周知する

それぞれの内容を解説します。

【参考】厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

パワハラ対策の方針を明確化し周知・啓発する

パワハラに該当する内容やパワハラを容認しない旨を明確にし、管理監督者を含む従業員に周知・啓発することが重要です。パワハラ行為を働いた従業員には厳しい対処をする旨や、処分内容などを就業規則に明記しておきましょう

また、パワハラの背景には、従業員とのコミュニケーションの希薄化などの問題も考えられます。そのため方針を示すだけでなく、パワハラに至る原因や背景も含めて伝えるように心がけましょう。

相談に対応するために必要な体制を整える

パワハラの相談に適切に対応するための体制の整備も必要です。

大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から、ハラスメント相談窓口の設置が義務化されました。相談窓口とは、職場でのハラスメント全般についての一元的な相談窓口のことを指します。

対面での面談以外にオンラインやメールでの面談など複数の相談方法を設け、従業員が相談しやすいようにしましょう

また、窓口担当者が相談の内容に応じて適切な対応が取れるよう、マニュアルを作成しておくことをおすすめします。


【関連記事】産業医はハラスメント防止にも対応できる?相談窓口における役割や注意点

パワハラが発生したら迅速かつ適切に対応する

パワハラの発生を知ったら、事実関係を速やかに確認し適切に対処しなければなりません。

事実関係を確認する際には、窓口担当者か人事部門の担当者が、パワハラの被害者・行為者の両方にヒアリングを行う必要があります。被害者と行為者それぞれの主張に不一致がある場合、第三者への聞き込みも検討しましょう。

事実関係の確認ができたら、以下のような被害者への配慮措置を実施します。

  • 被害者と行為者を遠ざけるための部署異動、配置転換
  • 行為者からの被害者に対する謝罪
  • 被害者の労働条件の不利益の回復
  • 被害者のメンタルヘルス不調が見られる際は、相談対応を実施

被害者への措置と同時に、行為者に対しても懲戒処分を取る、第三者機関による調停などの迅速な対応が求められます。

パワハラを軽く捉えて、行為者・被害者に解決を任せようとしてはなりません事業者は行為者に対しても誠実に接し、どのような言動・行動に問題があるのかを理解してもらうよう努めましょう。

プライバシー保護の対策を講じて周知する

パワハラ対策と同時に、プライバシーを保護するための対策も講じて周知しましょう。パワハラに関する情報は、相談者のプライバシーはもちろんですが、行為者のプライバシーも保護されなくてはなりません

プライバシー保護のための対応マニュアルの作成や、相談窓口の担当者に対してプライバシー保護についての研修を実施するなどの対策をしましょう。

また、従業員にプライバシー保護への取り組みを周知し、安心して相談できる環境だと理解してもらうことも重要です。社内報やホームページ、パワハラ防止の啓発資料などに掲載して配布しましょう。

⑤不利益取扱い禁止規定を設け周知する

パワハラに関する相談をしたことを理由に、従業員が解雇などの不利益な取り扱いがされないようにすることも重要です。

従業員への不利益な取り扱いの禁止に関しては、労働施策総合推進法に明記されています。また、事業者のヒアリングに協力したことを理由とした、不利益な取り扱いも禁止されています。

そのため、不利益取扱い禁止規定を設け、従業員に周知しておきましょう。

【参考】e-Gov法令検索「労働施策総合推進法」

もし、社内でパワハラが発生したら

いくらパワハラ対策を徹底しても、パワハラの発生を100%防げる訳ではありません。もしもパワハラが発生してしまった場合には、適切に対処することが大切です。具体的には、パワハラの相談を受けた場合、以下の流れで事実確認を行い、再発防止につなげましょう。

対応ステップ 内容
相談窓口(一次対応) ・相談者の秘密が守られること、不利益取り扱いがされないこと、相談窓口でどのような対応が行われるかを明確にする

・1回の相談時間は50分程度に留める

事実関係の確認 ・相談者の同意を得た上で、行為者や第三者への事実確認を行う

・相談者と行為者の意見が一致しない場合に第三者への事実確認を行う

行為者・相談者に対してとるべき措置の検討 ・以下の要素を考慮して今後の措置を検討する

相談者の被害の程度/事実確認の結果/行為者(加害者)や相談者(被害者)の行動・発言に問題があったと考えられる点/就業規則の規定/パワハラの裁判例

・上記を踏まえ、行為者または相談者への注意、行為者からの謝罪、人事異動、懲戒処分などの対応をとる

行為者・相談者へのフォロー ・行為者・相談者双方に会社として取り組んだことを説明する

・行為者の言動の問題点などを伝えて、同様の問題が起こらないようにフォローアップする

再発防止策の検討 ・再発防止策は予防策と表裏一体であるため、予防策に積極的に取り組むことで再発防止につながる

・予防策については、厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」などを参考にする

産業医の活用・連携 ・パワハラ相談者のメンタルヘルス対応のために産業医と緊密に連携する

・職場全体の環境を良好にするために、産業医の意見も踏まえつつ、ストレスチェックの結果分析などを検討する

なお、厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」では、パワハラを防止するためのより具体的な施策例が示されています。

たとえば、同資料内の「相談窓口(一次対応)担当者のためのチェックリスト」では、次のようなきめ細かな注意が記載されています。

  • 相談者が冷静に話をできるよう心がけましょう。できる限り、相談者が女性ならば女性の相談対象者も同席しましょう。
  • 相談者の話をゆっくり、最後まで傾聴しましょう。1回の面談時間は、50分程度が適当です。相談者が主張する事実を正確に把握することが目的です。意見を言うことは原則として控えましょう。

また、パワハラの相談におけるNGワードの例も掲載されています。具体的には以下のような台詞が挙げられ、相談者を責める発言はすべきではないことが示されています。

  • 「パワハラを受けるなんて、あなたの行動にも問題(落ち度)があったのではないか」
  • 「どうして、もっと早く相談しなかったのか」

このような資料も参考にしながら、パワハラ発生時の適切な対処方法について理解しましょう。

【参考】厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」

パワハラ防止・対策のためにも、産業医の活用を

パワハラを防止するためには、産業医の活用も重要な要素です。

パワハラでは被害者の精神的ダメージが非常に大きいことが指摘されています。復帰まで半年など長期間を要し、休職にとどまらず、退職に至ることも少なくありません。従業員のメンタルヘルス対応には産業医と緊密な連携が必須です。

また、1件のパワハラの背景に、職場全体のストレスが蔓延していることもあるでしょう。そのような場合、行為者だけを責めても根本的な解決には繋がりません。

職場全体の環境を良好にするためには、ストレスチェックの集団分析が有効となる場合があります産業医の意見も踏まえつつ、導入検討をしてみましょう。

【関連記事】
従業員のメンタルヘルス対策、産業医に依頼できることは?
産業医はハラスメント防止にも対応できる?相談窓口における役割や注意点

ハラスメント問題への対応を「あかるい職場づくり」の契機にしよう

パワハラを防止するには、「パワハラ」とはどんな言動を指すのか、パワハラに該当する行為をした場合どのような措置が取られるのか、なぜパワハラの発生を防ぐ必要があるのかを明確化し、従業員に周知してルールの遵守を徹底することが大切です。

加えて、従業員に対して「パワハラは誰でも被害者・加害者になる」という認識を持ってもらうことも重要なポイントです。

自社に適した対策について迷った場合には、パワハラガイドラインや実態調査の確認、他社の取り組み事例を把握することも有効でしょう。

この記事を参考に、自社のパワハラ防止対策を考えてみてください。

玉上 信明 (たまがみ のぶあき)

社会保険労務士 / 社会保険労務士玉上事務所

三井住友信託銀行株式会社入社後、年金信託・法務・コンプライアンス部門などを担当。 定年退職後、2017年1月に社会保険労務士玉上事務所を開業し人事労務管理コンサルティングなどをおこなう。 セミナー講演やメディアへの記事掲載、ブログも執筆中。

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