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従業員のメンタルヘルス不調を防ぐには? 産業医の活用法を解説

三橋利晴(みつはし・としはる)

産業医・労働衛生コンサルタント

岡山大学にて産業衛生・疫学・予防医学の実務や研究を行う。 平行して2008年からは嘱託産業医として様々な業種の事業所を担当。 大学病院では疫学や研究倫理の観点から院内の臨床研究支援を行う。

従業員へのメンタルヘルス対応は、企業が今後も生き残る上で無視することのできない、重要な課題といえます。企業の健康経営を目指す上で、ポイントとなるのが「産業医との面談」の実施です。ここでは、産業医の主な役割や面談を実施するメリット、さらにメンタルヘルス対応を依頼できる産業医について解説します。

そもそも産業医とは

そもそも、産業医とはどのようなものなのでしょうか。産業医とは、事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師のことです。
全ての医師が産業医になれるわけではなく、資格が必要です。産業医と認定される方法はいくつかあり、(1)日本医師会による認定、産業医科大学の規定コースを修了すること、(2)労働衛生コンサルタント(保健衛生)の資格を持っていること、(3)大学において労働衛生を担当する教授、助教授、常勤講師職にある者(または、あった者)であること―のいずれかを満たすことが必要です。

産業医は、一般的な臨床医(病院や診療所などの医師)とは目指しているゴールが異なります。一般的な臨床医は、目の前の患者さんの治療・利益の最大化をゴールにしていますが、産業医は、事業場の労働者全体の健康や労務上の安全をゴールにしています。その他の違いについては、以下の表にまとめていますのでご参照ください。

産業医 臨床医
職務場所 事業場 病院や診療所
対象 事業場で働く従業員 患者
仕事内容 安全や健康の保持増進 病気の治療
目指すべきゴール 労働者全体の健康や労務上の安全 患者の治療・利益
立場 事業者と労働者の中立の立場から活動 患者の味方として治療などを行う
事業者への勧告権 あり なし

なお、従業員数が50人以上の事業場は、産業医を選任することが労働安全衛生法で義務付けられています。事業場の規模によって契約する産業医の人数が変わってくるため、注意が必要です。

従業員数が50人以上3000人以下の事業場であれば、1人の産業医の選任が必要となります。そのうち常時50人以上999人以下の従業員がいる事業場は、非常勤の「嘱託産業医」の選任も可能です。従業員数が1000人以上、もしくは深夜・坑内といった有害な場所で作業している従業員が500人以上いる事業場は、常駐の専属産業医を選任するルールが定められています。

従業員数が3001人以上の事業場であれば、2人以上の専属産業医を選任する必要があります。

事業所の従業員人数 産業医人数
50~3000人 常時50人以上999人以下
1名以上(嘱託産業医も可)
常時1000人以上 1名以上(専属産業医)
次に掲げる業務(※)に常時 500 人以上
3001人以上 2名以上(専属産業医)

産業医が定常的に行う業務

面談中の産業医

産業医が定常的に行っている3つの業務(衛生委員会への参加、職場巡視、面談)の内容について、詳しく見ていきましょう。

衛生委員会への参加

衛生委員会に参加することは、産業医にとって重要な仕事です。衛生委員会では、主に健康管理体制・職場環境・働き方などについて審議されます。その衛生委員会において、医学的な見地からアドバイスするのが産業医の役割です。
また、産業医が衛生委員会に参加することによって、職場の実情をより詳しく把握してもらい、従業員に対する適切なケアをしてもらえるメリットも得られます。

職場巡視

毎月1回、あるいは2カ月に1回の職場巡視も、産業医の仕事の一つです。職場巡視は、主に健康な労働者が企業で働くことによって健康状態を損ねないようにする、病気を持つ労働者が企業で働くことによってその病気を悪化させない」などを目的として行われます。
職場環境は常に変化しています。今までは何の問題もなかったのに、わずかな期間で環境が大きく変化してしまうことも少なくありません。このような変化を察知するためにも、職場巡視は非常に重要な仕事となるのです。

従業員との面談

産業医の仕事として、従業員との面談もあります。会社で働いていると、心身の疲労やストレスが積み重なる従業員も多くみられ、メンタルからくる体調不良などが大きな問題になっています。

体調不良を自覚しながら無理に働き続けた場合、ある日大きく体調を崩して休職や入院などの事態を招くおそれがあります。そのため、体調が芳しくないときは、産業医と面談することも大切です。面談することで、病院に足を向けるきっかけを作れたり、職場環境を改善するためのヒントが得られたりする可能性があります。

なお、産業医との面談は、ストレスチェック後、健康診断後、長時間労働者が発生したときなどのタイミングで行われることが多いです。しかし、産業医との面談だけでは健康状態は改善しません。面談後に出される産業医の意見を踏まえた措置をとるようにしてください。他にも面談の重要なタイミングとして、メンタルヘルスなどの不調で休職していた従業員の復職時面談があります。十分に回復し、継続的に働ける体調になっているかどうかを確認するためには、産業医との面談を設定する必要があります。

産業医との面談を実施するメリット

産業医との面談を実施するメリットには、大きく分けて従業員の病気リスク低減、作業効率アップの2つが挙げられます。

産業医との面談を実施すると、従業員の病気を早期に発見できる可能性が上がることがメリットです。
病気はいつなるのか、予想できないものです。違和感があるのに放置してしまうと、後々何らかの病気を招いてしまうこともあります。
なかでも、うつ病などのメンタルヘルスに関わる病気は、本人では気付きにくいものです。しかし、周囲から見ると勤怠が乱れていたり、以前の業務パフォーマンスから低下していたり、気づくためのキーポイントがあります。周囲から見て、そのような変化があった従業員に対して産業医と面談するよう促すことによって、そうした変化が大きな病気につながる前に発見しやすくなるのです。

面談によって従業員の不安を取り除くことで、会社全体の作業効率の向上につなげられるのも大きなメリットといえます。
仕事に対して不安やストレスなどを抱えていると、モチベーションを維持することが難しくなります。すると、仕事でミスが増えたり、作業効率の低下を招いたりする原因につながるのです。不安やストレスの相談先として産業医との面談の場を設ければ、気持ちが楽になり、仕事に身が入るようになる可能性があります。また、本人の同意を得たうえで産業医から面談の情報提供を受ければ、職場環境の改善にも生かせます。

従業員に面談を受けてもらうための対策

仕事中の女性前述の通り、産業医との面談は、さまざまなメリットがあります。一方で従業員の中には、会社側に情報が漏れ、自分の不利益になることを恐れて産業医との面談を避けてしまうケースも少なくありません。このような従業員には、どのような対処を行えば良いのでしょうか。従業員に面談を受けてもらうために、企業ができる工夫について見ていきましょう。

まずは人事担当者がアプローチする

産業医との面談に先立って、まずは、人事担当者がアプローチするのが肝心です。従業員に対して「あなたの体調が心配だ」と伝え、面談の必要性を理解してもらう必要があります。しっかりと言葉で相手に訴えかけることで、従業員の心を開きやすくなるでしょう。
また、産業医との面談を促しても従業員が避ける場合には、不安に思っている理由を具体的に聞き出すのが大切です。理由としては、会社側に面談結果が伝わることをおそれているケースが多くみられます。
そのため、産業医との面談結果は人事評価に直接関与しないことや、面談結果や健康に関する情報は業務に関わる部分のみを担当者だけで共有することを伝え、不安を取り除くと良いでしょう。人事担当者が従業員に対して積極的に働きかけ、産業医との面談につなげる工夫を行うのがポイントとなります。

安心して面談が受けられる体制をつくる

対策として、従業員が安心して産業医との面談に臨める体制をつくるのも重要です。不安要素があると、どうしても面談に尻込みしてしまう人も少なくありません。
そのため、メンタルの不調と付き合いながらでも業務に従事できる、原則的に個人情報は業務にかかわる部分のみを担当者間だけで取り扱うという2つの認識を、社内にしっかりと根付かせることが肝要です。
実際に病気になってしまった従業員が復帰した事例などを積み重ねながら、プライバシーの保護に努める体制を、社を挙げてしっかりと構築していく必要があります。
また、メンタルヘルス不調者の復職にあたっては、主治医と産業医では役割分担があります。主治医は病気の回復度合いを評価し、産業医は職場や業務内容との適合性を評価します。このような役割分担をきちんと周知することで、産業医面談が必要であること、そして安心して受けられるという理解が社内に深まります。

【関連記事】
【産業医寄稿】産業医と主治医の連携、メンタルヘルス不調者の復職で何が必要か

効果的なメンタルヘルス対応には、産業医選びも重要

メンタルヘルス対応をうまく進めていくためには、どのような産業医に担当してもらうと良いのでしょうか。ここで、詳細について紹介します。

産業医がメンタルヘルスの対応を断るケースも

産業医の中には、メンタルヘルスに関連するストレスチェック業務を断る産業医もいらっしゃいます(※1)。
このようにメンタルヘルス対応やストレスチェック対応を断る産業医がいる背景には、精神科領域を専門としない産業医がいることが理由に挙げられます。また、副業感覚で産業医をしている場合には、高ストレス者への面接指導を苦手に感じていることがあるようです。

※1 週間東洋経済 2015年12月19日号「『中立的な専門家』は本当か 責任は増すばかり 産業医の実像」

精神科領域を専門とする産業医に依頼するメリット

精神科領域を専門としている産業医に依頼をする大きなメリットには、2点あります。

まず、メンタルヘルス・精神科領域の疾患や治療について詳しい知識があり、臨床経験もある点です。そのため、メンタルヘルス不調者への対応に慣れています。産業医としての面談でも、その知識や経験を生かした対応が期待できます。
もう1つのメリットとしては、事業場周辺にある精神科領域の病院や診療所について、情報を多く持っている点です。そのため、メンタルヘルス不調になり、治療が必要な従業員に対して、より適切な病院・診療所を紹介できます。

精神科領域の専門医は3.6%

精神科領域を専門とする産業医は、残念ながら人数が少ないのが現状です。

2018年には、産業医は3万8500人程度が資格を持っていると推計されます。
また、医師の人数は32万7210人(2018年12月現在)ですが、そのうち精神科領域の専門医は1万1791人(3.6%)です。産業医の資格を持っている医師も同じくらいの割合で3.6%が精神科領域の専門医だとすると、3万8500×3.6%=1386人になります。
日本全体でおよそ1386人ですので、とても少ない人数であることがわかります。ただ、精神科領域の専門医以外でも、事業場におけるメンタルヘルス対応に長けた産業医もいます。実際にメンタルヘルス対応をきちんとしている医師はもう少し多くはなります。

メンタルヘルス対応してもらえる産業医とは

次に、メンタルヘルス対応をしてもらえるのは、どのような産業医かを紹介していきます。

精神科領域の専門医である産業医

前述の通り、絶対的な数が少ないため、精神科専門医である産業医に依頼することは困難です。伝手をたどって探したり、地域の医師会や紹介会社に相談したりすると、精神科領域の専門医である産業医を見つけられる可能性が広がるでしょう。
医師会は主に開業医の先生が参加されているので、地域に精神科や心療内科で開業されている先生が少ない場合には、対応は難しいと思われます。また、紹介会社でも対応してもらえるのかどうかには差がありますので、いくつかの紹介会社に当たってみる必要があります。

メンタルヘルス対応の実務経験がある産業医

産業医を副業として行っている医師ではなく、産業医を主にしている医師であれば、メンタルヘルス対応の経験が十分あります。このような医師は、産業衛生学会の指導医・専門医を取得していたり、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の資格を取得していたりしますので、そのような条件で産業医を探すと良いでしょう。

メンタルヘルス対応に意欲的な産業医

まだ十分な経験がなくとも、メンタルヘルス対応に意欲的な産業医もいらっしゃいます。産業医衛生学会の専攻医(指導医から指導を受けている医師)、医師会・それ以外を含めて勉強会に積極的に参加している医師を産業医に選任すると良いでしょう。
医師会の産業医の講習会には、必要な単位を取得済でも毎回参加している産業医もいらっしゃいます。そういった産業医であれば、学んだ内容を生かしてメンタルヘルス対応もしていただけるでしょう。

まとめ

産業医には主要な業務がいくつかありますが、メンタルヘルス不調者に対する面談は重要な柱の1つになっています。
精神科や心療内科を専門診療科としている産業医に、メンタルヘルス不調者への面談を対応していただくと前述したようなメリットがあります。しかし、精神科や心療内科を専門としていなくとも、対応してくださる産業医がいます。メンタルヘルス対応をしっかりする産業医を探すのは難しい面もありますので、根気よく探すことが必要です。

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