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部署異動後に悩みを相談できる人、できない人の差とは―産業医のメンタルヘルス事件簿vol.3

企業の人事労務担当者が思い悩むことの1つに、従業員のメンタルヘルス対応が挙げられるでしょう。「産業医のメンタルヘルス事件簿」では、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の産業医兼精神科医の先生方に、産業保健の現場で起きていることやその対応について寄稿いただきます。

今回はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷のパートナー医師である伊藤友香先生に、従業員が相談しやすい環境づくりについて教えていただきました。

「突然会社に行けなくなってしまった」を防ぐために

どの職場にも「真面目で完璧主義」という傾向をお持ちの方が1人はいるのではないでしょうか。このような方は客観的に評価される一方で、ご自身は完璧主義ゆえの反芻思考、他者配慮性の高さ等によって過緊張が続き、ある日突然会社に行けなくなってしまう――というケースが少なくありません。

このタイプの従業員の休職を防ぐために、人事労務はどのように働きかければいいのでしょうか。次の事例をもとに予防策、復職後のフォローについて考えていきましょう(以下、事例の細部は変更しています)。

【事例:真面目な性格ゆえに、一人で抱え込んで休職になってしまったケース】
首都圏の情報通信系企業(従業員約100名)に勤務する、32歳のAさん。真面目で責任感が強く、相手を少しでも不快な気持ちにさせたくないお考えをお持ちでした。部署異動をしてから3カ月後、人事労務担当者から産業医に「メンタル不調でAさんが突然出社できなくなった」と報告があり、程なくして診断書が提出され休職となりました。Aさんは、自分がしんどい状況でも周囲に相談ができず、結果的に限界を超えるまで一人で抱え込み続けてしまっていたのです。

よく、ストレスの対処法として「悩み事があったら早めに周囲に相談すること」が推奨されます。しかしながら、実際は「こんな些細な悩みを相談するのは恥ずかしい」「自分の弱みを見せるのが怖い」「迷惑をかけたくない」といった考えから、周囲への相談を躊躇してしまう方も少なくありません。事例のAさんは、まさにこの該当例と言えるでしょう。最近はテレワークを導入する企業が増え、お互いの姿が見えないことで、相談のハードルがますます上がっていると考えられます。

復職面談の際に、Aさんは休職前のことを次のように振り返っていました。
「異動後、業務内容や顧客との人間関係に悩んでいました。上司や同僚への相談も考えましたが、まだ関係性もできていなくて――。加えてテレワークの頻度が高く、うまくタイミングが掴めなかったのです。次第に、週末も仕事のことを考え続けるようになっていき、ある日突然、緊張の糸が切れて会社に行けなくなってしまいました。私はこれまで自分の弱みを他者に見せるのが怖くて、苦しい時もなかなか人に相談できなかったんだと思います」。

復職後もしばらく産業医面談を継続し、Aさんが周囲への相談を実践できているかを一緒に振り返りました。その中で、上司や同僚が親身に接してくれて、人に弱みを見せても大丈夫だと思えたこと、今後は悩みがあれば早めに上司や同僚に相談したいと考えていることを話してくれました。現在もなお、Aさんは再発することなく働けています。

しかし、自助努力だけで本当に相談できるようになるのか心配でもあります。

ここに人事労務からのアプローチがあると、グッと相談しやすくなるものです。次にご紹介するケースにそのヒントが見られます。

なぜ、従業員は自ら産業医面談を希望したのか?

次に、悩み事を早めに産業医に相談したことで、産業医を介して上司と上手くコミュニケーションが取れるようになり、職場に適応できたBさんの事例を見てみましょう。

【事例:産業医面談を実施し、体調不良が早期解決したケース】
Aさんと同じ企業に所属する42歳のBさん。部署異動後、業務内容が合わずに過緊張が続き、次第に不眠が出現しました。本人の希望で産業医面談を実施し、「体調不良について、自分から上司に直接話すことには抵抗があるが、産業医から伝える分には構わない」とのことで面談終了後に産業医から上司に情報共有をしました。その後、上司がBさんの体調を気遣う言葉を掛ける、一定期間、業務量を軽減するなどの対応をしました。翌月にはBさん・上司・産業医の三者面談を行い、次第に症状は改善しました。

Bさんのように、悩み事をいきなり上司に相談しにくい方には産業医面談を活用していただくことをお勧めしています。従業員からの同意を得た上で、産業医が従業員本人と上司の架け橋となり、職場への適応を手助けできる可能性があるためです。
Bさんの場合、(1)配偶者に休職経験があり、産業医に助けられたと聞いていたこと、(2)早めに面談を受けるように勧められたこと、(3)毎月の全社メールで産業医の面談案内があったこと―が早期相談につながりました。

しかし残念ながら、産業医に悩み事を打ち明けることは一般的ではなく、心理的なハードルも高いのではないでしょうか。従業員から産業医に相談してもらう上で、人事労務担当者の役割は大きいと言えるでしょう。
人事労務担当者ができることとして、(1)産業医面談を気軽に利用できると繰り返し周知する、(2)産業医に対し、従業員向けセルフケアセミナー等の企画を持ち掛け、従業員には参加を呼びかける、(3)新入社員や異動後の社員に産業医面談する体制をつくり、日ごろから従業員と産業医の繋がりをつくっておく―などの方法があります。

Aさんのように1人で思い悩んでしまうよりも、Bさんのように早めに第三者に相談することで状況が改善しやすくなります。ぜひ産業医の先生と一緒に、従業員が気軽に相談できる仕組みづくりを検討してみてください。

伊藤 友香 (いとう ゆか)

産業医・精神科医・公認心理師・労働衛生コンサルタント・健康経営エキスパートアドバイザー

大手情報通信系企業の専属産業医。職域での認知行動療法の実践や、ストレスチェックを活用したいきいき職場づくりへの提案を行っている。

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