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適応障害とは?うつ病との違いや産業医との連携について解説

安西更紗(あんざい・さらさ)

某国立大学医学部卒業。精神科医として10年以上、地方の精神科単科病院で児童精神科を中心に精神疾患を抱えた患者様と日々向きあっている。また、公認心理師資格を取得し、オンラインカウンセリングも行なっている。

適応障害は仕事に支障が出る場合もあるため、労働者にも関係の深い病気です。今回は、精神科専門医の安西更紗先生に、適応障害、一般的に症状の似ているうつ病との違い、企業における産業医との連携についても解説していただきます。

適応障害とは

適応障害とは、日常生活を送る中で起こった出来事や環境の変化などにうまく適応できず、ストレスが原因でさまざまな症状が引き起こされ、社会生活に支障を来すような状態を指します。さまざまなストレスの影響で一時的に眠れなくなったり、落ち込んだりすることがありますが、短期間で症状が治まるようであれば特に心配はいりません。しかし、強いストレスに曝されるような出来事から3ヶ月以内に出現した症状によって、仕事や家庭生活に大きな影響が出るようになると適応障害と診断されることがあります。適応障害は、DSM-Ⅳ-TRによると有病率が2−8%と不眠症と同じくらい精神科を受診する患者さんの多い病気です。アメリカの診断基準(DSM―5)によると、原因となったストレス因子が取り除かれれば6ヶ月以内に症状は改善するとされています。似たような症状を呈することがあるうつ病と比べても、ストレスとの因果関係がはっきりした疾患であると考えられています。ビジネスマンの場合であれば、新入社員、人事異動や昇進、初めての業務内容が追加された場合など環境の変化や、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどの対人関係上の問題がストレスとなって発症する場合が多いです。

適応障害の主な症状

適応障害の症状は、原因となったストレスや患者さんの性格、受けたストレス原因などによってさまざまです。症状は精神的症状、身体的症状、行動的症状の3種類に大別でき、これらの症状がいくつか組み合わさって複雑に現れるケースも多く見られます。

精神的症状には、抑うつ気分(気分の落ち込み)、不安、意欲低下(何もやる気が起こらない)、感情失禁(突然涙が出てしまう)、集中困難(作業効率の低下、ミスが増える等)、イライラ感などがあります。これらの症状が目立つ場合は、労働者本人や周囲の家族や友人がうつ病を疑って受診をされる場合も多く見られます。

身体的症状には、不眠(寝つきの悪さ、途中で起きてしまう等)、頭痛、腹痛、吐き気、動悸、めまいなどがあります。身体的症状が目立つ場合には、内科や耳鼻科、脳神経外科など様々な身体科を受診し画像検査などで精査を受けるものの、はっきりした原因が見つからず症状が長引いてしまうパターンも見受けられます。そのため、ストレスの原因に思い当たる節があり、身体症状が長引いている場合は注意が必要です。

行動的症状には、仕事に影響のある問題行動(欠勤、遅刻、早退)、イライラ感からくる対人関係の悪化、アルコール多飲による問題行動などがあります。行動的症状は明らかに労働者の生産効率を低下させるだけではなく、職場の雰囲気を悪くするなど労働環境にも好ましくない影響を与えてしまう場合があります。

適応障害とうつ病の違い

先ほども少しふれましたが、適応障害はうつ病と似ている症状を示すことがあります。特に精神症状、中でも抑うつ気分や意欲の低下といった症状が主体となって現れている適応障害の場合は、鑑別が難しくなる場合があります。アメリカの診断基準(DSMー5)に従うと、うつ病と適応障害を同時に診断されることはありません。適応障害とうつ病は治療方針が全く異なるため、鑑別が重要となります。

まず、適応障害は症状の原因となる明らかなストレス因子に曝されてから3ヶ月以内に症状が出現しますが、うつ病は内因性(脳の器質的な問題)であるため、症状の引き金となるストレスがはっきりしないこともあります。また、うつ状態が現れる点では適応障害もうつ病も共通していますが、適応障害の場合はうつ状態に陥っていても、対人関係を含め職場環境が原因の場合は、休日や休職中には興味のあることを楽しむことができます。しかし、うつ病の場合は慢性的に(少なくとも2週間以上)抑うつ気分や喜び、興味の喪失といった状態が持続する点も異なっています。治療法の違いとしては、適応障害は原因となったストレス因子から離れることができれば半年以内には症状が良くなるため、治療において環境調整が重要となります。そのため、抗うつ薬による効果はあまり期待できません。一方、うつ病の場合は原因を取り除いても速やかに症状が良くなるわけではなく、抗うつ薬等による内服治療が必要となります。

適応障害とうつ病の違いをまとめると以下の表のようになります。

適応障害 うつ病
原因 明らかなストレス因子あり

3ヶ月以内に症状が出現

ストレス因子がない場合もある
症状 うつ状態が見られてもストレスから離れると活動できる 少なくとも2週間以上常にうつ状態が持続する
治療 環境調整がメイン

抗うつ薬の効果は限定的

抗うつ薬を中心とした内服調整

適応障害かもしれない従業員への対処法

ここまでうつ病との比較を含めて適応障害の特徴について述べてきましたが、これらの特徴に当てはまるような症状を示している労働者がいる場合、企業としてどのような対応を取るべきでしょうか。この段落では具体的な対処法を提示していきます。

産業医に相談する

上記のような精神的症状、身体的症状、衝動的行動の問題などの適応障害を疑う症状のある労働者がいる場合は、まず産業医に相談してみることをお勧めします。医師の視点から見て、企業側が必要な対応について有益なアドバイスを得ることができます。また、労働者の相談を受ける中で本人の希望があり、産業医もその必要性を認めた場合には、専門の臨床医の診察に繋げることもできます。しかし、産業医に相談する際には、産業医は臨床医とは役割が異なることに注意が必要です。患者さんに寄り添う立場の臨床医とは違って、産業医は企業と労働者の間に位置する中立的な立場です。また、産業医は労働者が健康に仕事を行えるよう指導や助言をする役割であるため、臨床医のように直接労働者の診断や治療は行いません。企業も労働者本人もそのような産業医の役割を理解したうえで、産業医面談を活用していただければと思います。

ストレスの原因が職場の人間関係の場合

新規入職や人事異動先の人間関係にうまく馴染めないことがストレス因子となって、適応障害を発症してしまうケースは多く見られます。特に、新年度が始まる4月からゴールデンウィーク明けの5月半ばにかけて、このパターンで精神科に来られるケースが多い印象があります。これらの場合は、部署の先輩や上司が協力し、新たな人間関係に馴染めるように業務以外にも細やかなサポートが必要となります。また、新しい業務内容の指導を一通り受けた後に、業務に携わるようになった段階でまだ処理が難しい内容が残っており、それを自ら上司や同僚に聞くことができず、業務についていけずに様々な症状が見られるようになって受診するケースもあります。そのため、前任者からの申し送りや研修での説明のあとにも、上司から業務内容に対する疑問点や不安がないかを適宜確認し、こまめに業務のフォローを行うことが、ひいては労働者の慣れない仕事に対するプレッシャーやストレスの軽減に繋がると思います。

また、上司からのハラスメントがストレスとなり適応障害を発症してしまうケースも問題となっています。継続的なパワーハラスメントやセクシャルハラスメントは、労働者の自尊感情や仕事に対する集中力を低下させたり、作業効率が落ちてミスを増やしたりする要因となります。そして、症状が悪化すると休職や退職の原因となり得る重大な問題です。厚生労働省が公表している「職場におけるハラスメント関係指針」においても、ハラスメントに対しては毅然とした態度で措置を講ずる必要性について明記されています。具体的には、ハラスメントにあたる内容及びハラスメントを行ってはいけない旨の方針の明確化、相談窓口の設置、労働者から相談があった場合に迅速かつ正確にハラスメントの事実関係を把握すること、再発防止に向けた具体的な措置を講ずること、が必要となります。

【参考】厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」

ストレスの原因が職場環境の場合

人事異動先で経験したことのない業務に就くことになった、管理職に昇進し部下の管理業務が負担に感じられる、退職者が出て人員不足となり突然業務量や業務時間が増えて処理できなくなったなど様々な理由から、職場環境に十分適応できないことがストレス因子となることもあります。その場合は産業医に相談し、不慣れな業務などで業務量過多になっていないか、労働者本人の資質に見合った業務内容なのかを共に検討し、必要があれば配置転換、人員補充等の措置を講じることが必要になります。もちろん、産業医面談においては個人情報保護の観点から労働者本人のプライバシーに最大限配慮し、本人の拒否が強ければ無理に聞き出すような対応をすることはありません。企業は、労働者は安心して産業医面談を受けられることを周知しておくと良いでしょう。

【参考記事】従業員がメンタルヘルス不調や身体疾患で休職したら―産業医による面談を活用しよう!

【人事担当者必見】休職に必要な手続きと対策とは?うつ病時の手当から復職対応まで

適応障害は「ストレス」を取り除くことが一番大切

適応障害は職場環境や対人関係など明確なストレスが原因となり、精神症状や身体症状、行動的症状が様々に組み合わさって出現する疾患です。これらの症状が悪化すると、業務に支障を来たし休職や退職に至ることもあるため、企業にとっても問題になりやすい病気と言えます。原因となるストレスを取り除くことさえできれば、比較的速やかに症状の改善が見られることからも、予防に努める事が非常に重要であると考えられます。適応障害の予防、あるいは症状の悪化を防ぐためには、産業医面談が有用です。産業医の助言を得て、対人関係や労働環境の調整をすることで、ストレス因子の低減に繋がります。また、労働者本人の希望があれば精神科医や心療内科医といった専門医を紹介し、臨床医の治療を受けることも可能です。適応障害が疑われる症状のある労働者に対しては、上手に産業医面談を活用しストレス因子を取り除く対応を検討しましょう。

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