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職場内で「うつ病」が疑われる従業員が出た場合、企業の対応は非常に重要となります。産業医がいる場合はしっかりと連携を取り、事業者としてできる限りのフォローをしていくことが大切です。従業員が休職に至らず、再び元気に働いてもらうためにも担当者は対応をしっかりと理解しておきましょう。また、産業医面談で従業員が泣いてしまったと聞くと、人事担当者としては慌てるかもしれませんが、動揺しない心構えも必要です。ここでは、企業の担当者として知っておきたい対応のポイントについて紹介します。
職場内に「うつ病」だと疑われる従業員がいる場合、ほとんどの企業では「慎重に対応しよう」と考えるでしょう。しかし、慎重すぎるあまり何もアクションが起こせなくなると、企業にとっても従業員にとっても良くありません。「うつ病」が疑われる従業員がいる場合、産業医面談を設定して産業医と連携をとっていくことが大切です。
とはいえ、どのようなタイミングで産業医面談を実施すればよいのか迷ってしまうケースもあるでしょう。ポイントとしては、大きく3つあります。
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1つ目は、ストレスチェックで「高ストレスである」という結果が出たときです。
ストレスチェックは従業員のメンタルヘルス不調などを未然に防ぐことを目的としています。高ストレス者には、その結果をきちんと本人に通知し、産業医と面談するかどうかを確認します。面談は強制ではないので、本人が面談を拒否することもあるでしょう。
しかし、企業としてはさらに不調が進み休職に至る前に面談を行い、産業医とともに対応策を考えていくことが重要です。産業医面談の無理強いをしてはいけませんが、なるべく産業医面談を受けてもらえるよう、本人と話し合いましょう。
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2つ目は、従業員の中で長時間労働をしている人がいる場合です。産業医面談は、必ずしも本人からの申し出が必要というわけではありません。そのため、長時間労働をしている従業員に気付いたときには、たとえ本人の希望がなかったとしても、一度産業医面談を受けてみるよう促すのが望ましいでしょう。
「長時間労働」とは、1カ月の時間外労働が80時間を超えた場合に適用されることを理解しておく必要があります。もちろん、それより短い労働時間であっても、様子のおかしい従業員を見つけた場合には産業医面談をすすめるのがベストです。
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3つ目は、従業員本人が産業医面談を希望しているときです。従業員は、誰でも産業医面談を受ける権利があります。そのため、「面談をしてもらいたい」という従業員がいた場合は、何か相談事があるのだと考え、積極的に面談をセッティングするようにしましょう。
もし、産業医面談を受けさせないことで何か重大な問題が起きた場合には、企業は安全配慮義務を怠ったとみなされます。企業による安全配慮義務違反が、万一自殺や過労死などにつながった場合には、多額の損害賠償を支払うことになるケースもあります。企業の担当者は、なんらかの不調を抱えた従業員に対し、産業医面談を設定するタイミングを逃さないように注意しましょう。
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うつ病が疑われる従業員がいた場合、会社側は「産業医面談を受けてもらいたい」と思うものです。しかし、従業員が産業医面談に前向きでない場合もあります。
そもそも本人が不調に気付いていなかったり、産業医面談を受けることで不利な立場になることを恐れていたりと、産業医面談に積極的でない理由はさまざまです。
ここからは従業員に無理強いすることなく、産業医面談を受けてもらう方法を解説します。
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従業員に産業医面談を促すとき、最も大切なのは「あなたのことを心配していますよ」という気持ちを伝えて安心してもらうことです。
メンタルヘルスの不調は、本人が気付いていないケースが多くあります。そのため、いきなり面談をすすめた場合には、ためらってしまう人のほうが多いでしょう。
「あなたのことを心配しています」とはっきりと言葉にして伝えることで「自分のことを心配してくれている人がいるのなら相談してみよう」という気持ちになりやすくなります。担当者は、従業員が不安に感じていることにひとつひとつ丁寧に向き合い、産業医面談へとつなげていくことが大切です。
産業医面談を受けることで話した内容が上司に伝わってしまったり、評価が落ちてしまったりすることを恐れる人もいます。担当者は、面談の結果が評価に直接影響しないことや産業医には守秘義務があることを伝え、不安な気持ちを解消するよう努めましょう。
担当者は、従業員に産業医面談を受けさせるだけでなく、その後産業医としっかり連携をとっていくことが何より重要です。
「うつ病」などのメンタルヘルス不調では、特に「ミスや遅刻が多くてなんだかおかしい」にもかかわらず、大きな問題が起きているわけではないケースがたくさんあります。このような場合もふまえて、「病状の回復」と「就労」のどちらも成立させるためには、企業側と産業医の連携が欠かせません。
担当者は、現症・勤労状況・生活状況・事業場の懸念の4つのポイントについて産業医と情報共有を行うようにしましょう。
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現症とは、従業員の現在の病状などです。「うつ病」に多いものとして抑うつ感や意欲の低下、不眠などがありますが、そのような症状が出ているのかどうか確認をします。また、薬を飲んでいるようであれば薬の種類と量も把握します。
なお、現症の確認は原則として産業医が行います。人事担当者は医師ではないので、症状の把握にも限界があります。本人から症状を無理に聞き出そうとするのではなく、従業員との会話の中で聞いた情報があれば産業医に共有するくらいにしてください。
勤労状況とは、勤務形態はどのようになっているのか、出張はどの程度あるのか、超過勤務はどれくらいあるのかなどの勤労状態全般を意味します。この内容については、担当者が現場に確認を行い、産業医に情報提供する場面も多いかもしれません。
また、本人が働く意欲はあるのか、仕事について関心はあるのかなどについても、面談で話した内容があれば共有を行います。そこには現場の人間関係についての悩みなどが出てくる場合もあります。
生活状況とは、睡眠がしっかりとれているか、バランスのとれた食事をきちんと摂取できているかなど、従業員の生活全般を指します。うつ病の症状によって生活状況に影響が出ている場合もあるので、生活状況の把握は重要です。
他にも、家事や育児、介護などを行っているのであれば、それがどの程度のものなのか産業医面談で確認する場合もあります。
事業場の懸念とは、企業として心配される事柄全般を示します。たとえば、症状に関していえば、「診断書では「うつ病」となっているが症状と照らし合わせるとどうなのか」「再発のリスクはあるのか」などです。仕事でいえば、「これまでと同じ仕事はできるのか」「当該従業員が休職することによる職場環境の変化が生じるか」などがあげられるでしょう。
また、自殺など自傷行為におよぶ危険性についても産業医から意見をもらうのがベストです。産業医とは連携をとることが非常に大切ですが、一方が情報を得るだけでは連携とはいえません。担当者は、産業医面談にいたる前の従業員の職場での様子や仕事上の負荷などの確認を行い、情報提供をするようにしましょう。
「うつ病」だと思われる従業員に対して企業ができることは、産業医面談を設定することだけではありません。ここでは、それ以外にも企業として行える対応について紹介します。
「うつ病」が疑われる従業員が、まだ心療内科やメンタルクリニックにかかっていなかった場合、企業としてはメンタルクリニックなどの医療機関の受診を促すことが望ましいです。診察を受けるのは、早ければ早いほどいいでしょう。
というのも、早期に受診をすることで、病状が悪化してしまう前に治療をスタートさせられるからです。また、診察を受けることによって、「うつ病」なのかどうかもはっきりとします。診察を受けたら、できれば従業員に診断書を見せてもらいましょう。
診断書には、「病名」「休職が必要かどうか」また「休職が必要な場合の期間」を記載してもらいましょう。企業としては、従業員を受診させることで病名や休職の必要性をはっきりさせることが重要です。
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従業員が受診している医療機関の主治医とは、密に連携をとることが大切です。主治医から情報を得られることで、病状がどのくらい回復しているかを把握できるだけでなく、必要な配慮や本人の特性について知ることができます。
その結果、より最適な職場環境を整えられるので、再発の予防にもつながります。特に、従業員が休職し復職するとなった場合、よりスムーズに職場復帰をしてもらうには主治医からの情報が非常に重要です。病気の再発サインについても意見をもらえれば、再発予防にもなるでしょう。
担当者は、産業医だけでなく主治医とも連携をとることで「従業員の安全・健康に配慮する」という安全配慮義務を果たすことにもつながります。
「うつ病」になる原因には、さまざまなケースが考えられます。私生活におけるトラブルやストレス、仕事での人間関係や長時間労働などによっても「うつ病」になることがあります。
もし、産業医面談において仕事が原因と考えられるような要因があった場合には、職場環境について確認を行いましょう。たとえば、長時間労働や業務量過多ではなかったか、上司からの叱責や同僚とのトラブルはなかったか、などについてチェックします。
また、直近で大きなミスや配置換えがなかったかについても確認すると良いでしょう。こうした出来事も、ストレスの原因となるからです。もし、これらの中から問題点が見つかった場合には、職場環境の改善に取り組むことが重要となります。
また、産業医面談の内容をふまえて、本人の特性に合わせた業務内容に変更することも有効です。
産業医面談を設定する際には、従業員が泣いてしまうことも想定しましょう。精神的に追い詰められている状態だと、産業医面談で泣いてしまう従業員も珍しくありません。
産業医面談はプライバシーを守るために個室で行うのが一般的です。泣いたとしても問題ない部屋を普段から用意しておきましょう。
また、産業医面談で泣いてしまうほどの精神状態だと、面談だけで消耗してしまう可能性があります。前後に重要なスケジュールがある時に産業医面談を設定しないなど、スケジュール面でも配慮が必要です。
産業医には守秘義務があるため、従業員が産業医面談で泣いたとしても、従業員本人が同意した場合を除いて、産業医から会社側に泣いたと伝わることはありません。
しかし、会社内の人づてに従業員が産業医面談で泣いたと知った場合、人事担当者などはどのような対応をすればよいのでしょうか。ここからは、産業医面談で泣いた従業員への対応を解説します。
まず重要なのは、人事担当者が動揺しないことです。
精神状態が不安定になっている従業員が泣くのは珍しいことではありませんし、産業医面談で泣いたからといって、直ちに休職が必要な状態とも限りません。必要な配慮はしつつ、従業員の状態を見ながら、総合的に今後の対応を考えましょう。
従業員本人と話す機会があっても、産業医面談で泣いたことに関しては問いたださないようにしましょう。産業医面談で従業員が泣いたかどうかは、本来であれば人事担当者が知りえない情報です。従業員の同僚や上司から泣いた話を聞いたとしても黙っておきましょう。
また、本人が情報の開示に同意して、産業医から情報共有を受けた場合でも、本人にとって触れられたくないことかもしれません。余程の必要がない限り、わざわざ触れなくてもよいでしょう。
企業ができることを淡々と行って、従業員をサポートしましょう。従業員が泣いたことに対して、人事担当者など周囲にいる人は動揺するべきではありませんが、従業員が泣くほどつらい思いをしていることには配慮する必要があります。
従業員にとって負担になりすぎないようコミュニケーションを取りながら、企業ができるサポートを行っていきましょう。
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「うつ病」が疑われる従業員へのケアについて考えていると、産業医面談やうつ病と会社の関わりについて細かな疑問が湧いてくるのではないでしょうか。ここからは、従業員をケアする側が気になる事柄について解説します。
産業医のカウンセリングは「産業医面談」として行われます。産業医面談で相談できる内容には、仕事の悩みだけでなくメンタルヘルスに関することも含まれます。そのため、産業医にカウンセリングを頼んでも問題ありません。
ただし、産業医は投薬などの医療行為を行わないので、従業員がうつ病などを患っていた場合、産業医のカウンセリングだけでは不十分です。
治療が必要であれば産業医とは別に主治医を見つける必要があります。メンタルクリニックなどとの連携はなるべく早く行うようにしてください。
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「うつ病」と診断された場合でも、うつ病であることを従業員が会社に報告する法律上の義務はありません。自身の病気はプライバシーにあたるので、報告するかどうかは本人の意志を尊重する必要があります。
ただし、病気を理由に休職するときなどに診断書を見せることを就業規則で定めている場合には、診断書の提出を求めることができます。
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「うつ病」だと思われる従業員には、適切に産業医面談を設け、企業と産業医が連携をとっていくことが重要です。
しかし、企業には、それ以外にもできる限りのことを行っていくことが求められています。
そのためにも医療機関の受診を勧めることや、場合によっては職場環境の改善に努めることも必要になってくるでしょう。担当者は、メンタルヘルス不調の従業員が出た場合の企業の役割をしっかりと理解しておくことが大切です。
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