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妊娠・出産において嫌がらせを受けるマタニティハラスメント。
新聞やニュースでもその問題について取り上げられることが増えてきましたが、依然として相談件数は多いままです。
本記事では、なぜ企業においてマタハラ対策が必要なのか、マタハラの具体的な事例や対策方法について紹介していきます。
マタハラとは「マタニティハラスメント」の略語です。
「『母であること』に対するハラスメント」、つまり妊娠・出産・子育てをする女性が職場において、それを理由として解雇や減給、嫌がらせなど、不当な扱いを受けることを指します。
男女平等を目指す社会において、マタハラは大きな問題であり、2017年には企業にマタハラ防止措置が義務付けられるようになりました。
しかし、厚生労働省による2019年「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況」によると、妊娠・出産に関するハラスメントやセクシャルハラスメント、それを理由とする不利益取扱いに関する相談は19,595件にものぼっています。
【出典】令和元年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況
マタハラに悩んでいる人の数は依然として多く、各企業が対策する必要がある問題ということがわかります。
実はマタハラという言葉は、その内容が明確に定義づけられているわけではありません。
「発言者の意図に関係なく相手に不快な思いをさせたり、尊厳を傷付けたりすること」全般が、ハラスメントとみなされます。
また、「ハラスメント」と「違法行為」は区別されています。
具体的に説明すると「違法行為」とは、事業主が妊娠・出産など理由とする解雇や降格などの「不利益取扱い」をすることです。
これらは男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法で禁止されています。
一方で、妊娠・出産、育児休業に関する上司や同僚による就業環境を害する行為は「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」とされ、事業主にはこれの防止対策を講じることが義務づけられています。
つまり、違法行為は事業主が女性の妊娠や出産にあたり解雇や降格などの処置を取ることであり、ハラスメントは上司・同僚が女性の妊娠や出産にあたり嫌がらせなどをすることであると、それぞれ区別されます。
ハラスメントと区別される「不利益取扱い」とは、先述の通り、妊娠・出産などにまつわる以下のことを理由として労働者を解雇・減給・降格することです。
上記を理由に解雇・減給・降格する事は、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法により禁止されています。
ただし、状況によっては例外とみなされ違法とならない場合もあります。
例として、以下のケースが挙げられます。
ここで言う「業務上の必要性」とは、会社の業績悪化や本人の能力不足・成績・態度不良などがあった場合を指します。
※不利益取扱いや、不利益取扱いの契機となった事由に、有利な影響がある場合(例:本人の意向に沿った業務負担の軽減等)は、それも加味した影響。
前述の通り、マタハラそれ自体は「違法行為」とは区別されています。
しかし、その一方でマタハラを「対策」することは、法律によって事業主に義務付けられています。
具体的に言うと、「男女雇用機会均等法育児」「介護休業法」により、マタハラ防止措置を講じることが義務付けられています。
すべての労働者が妊娠出産することや、産休・育休などの制度を利用することに対して、上司や同僚から嫌がらせを受けないよう、対策する必要があるのです。
マタハラには大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
以下で、2つのタイプの具体例について紹介していきます。
マタハラの1つ目のタイプとして、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法を利用することへの嫌がらせが挙げられます。
つまり、産休・育休・育児のための時短勤務をすることに対しての嫌がらせです。
制度や措置の利用への嫌がらせに対して、マタハラ防止措置が必要となる事例としては、具体的に以下の3つがあります。
1つ目の例は、産前休業の取得を上司に相談したが、「休むなら辞めてもらう」と言われたなどがこれに当たります。
2つ目の例の「制度の利用の阻害」については、男性社員が育児休業の取得について上司に相談したが、「男のくせに育児休業をとるなんて」と言われ、取得をあきらめざるを得なくなった、などの例が挙げられます。
3つ目の例の「精度の利用についての嫌がらせの例」としては、上司や同僚が「時短勤務をするなんて周りを考えていない、迷惑だ」と継続的に言われるなどがあります。
上記事例は、全て「制度・措置を利用することへの嫌がらせ」としてマタハラの防止措置が必要になります。
マタハラの2つ目のタイプとして、妊娠・出産したことへの嫌がらせがあります。
妊娠・出産したことへの嫌がらせに対して、マタハラの防止措置が必要となる事例としては、具体的に以下の2つがあります。
1つ目の具体例としては、妊娠を報告したところ「他の人を雇うので早めに辞めてもらう」と言われたなどがあります。
次の「妊娠をしたことによる嫌がらせ」における具体例としては、上司や同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と言い、仕事をさせず、就業に支障が生じている状況などが挙げられます。
このような事例は、「妊娠・出産したことへの嫌がらせ」としてマタハラに該当します。
企業がマタハラ対策を講じることは、厚生労働大臣の指針により事業主の義務として定められています。
具体的なマタハラ対策としては、以下の措置が挙げられています。
上記マタハラ対策について、以下で詳しく解説していきます。
事業主はマタハラ対策として、以下のような制度や処置を社員に周知する必要があります。
社内報やパンフレット、HPなど、全社員が目にすることができる媒体で、周知徹底しましょう。
事業主は、以下の体制をとり、社内でのマタハラに対処する必要があります。
いざという時の相談窓口を設けることで、妊娠・出産しながらでも安心して働くことができます。
マタハラが発生した際には、事業主は以下のように対処する必要があります。
マタハラの発生を正確に把握し対応することが、再発防止への第一歩となります。
そもそもマタハラを発生させないよう、背景を理解し要因を解消する必要があります。
マタハラの発生要因を取り除くことが、何より重要なのです。
マタハラ対策というのは、当然ですが制度を作っただけで終わりというものではありません。
作った制度に則り、各企業が対策を実行していく必要があります。
はじめに、マタハラになり得る具体的な事例を紹介します。
妊娠報告をきっかけとして、本人が望まない処置をされる事例があります。
後者は一見すると気遣いのようにも思えますが、本人がそれを望んでおらず、かつ一方的な措置であればマタハラとなります。
以下のように産休・育休を認めないこともマタハラになります。
このように、育休に関するマタハラについては、対象は女性社員に限るものではありません。
時短勤務に対する以下のような嫌がらせもマタハラに当たります。
上司からの発言だけでなく、同僚からの発言の場合でも、それが何度も繰り返されるとマタハラとなることに注意が必要です。
次に、マタハラを防止するために実際に企業で行われている対策方法を紹介します。
就業規則の懲戒事由という項目において、懲戒事由にマタハラが含まれることと、及び戒処分にあたっての判断要素を明記している事例があります。
上記のように就業規則において懲戒規定が定められており、その中にマタハラへの対処方針・内容などが含まれている場合には、それをパンフレット、チラシ、社内報、社内ホームページなどで周知することで、一歩進んだ対策をとることができます。
就業規則の懲戒の事由に、具体的なハラスメントの言動を列挙しているケースもあります。
具体的な言動と懲戒の種類と対応させる形で定めることで、どのような言動をとってはいけないのかということがイメージしやすくなります。
社員が妊娠や出産を迎える際には、事業主・上司を筆頭に職場全体でサポートする必要があります。
サポートと言っても、社員の出産までの時期や状態によって注意するべきポイントが異なります。ここでは、出産までの時期・状態別に、事業主や上司が取るべき対応を詳しく紹介します。
妊娠~産前・産後休業前までは、意図しないマタハラをしないように注意が必要です。
具体的には「辞めてしまうのだろうか」「人材が不足する」という不安が頭を過ぎっても、それを直接口にするのではなく、まずは「おめでとう」という一言や、体調を気遣う温かい言葉をかけましょう。
妊娠中に特に配慮すべきことがあるか、軽易業務への転換への希望があるかなどを聞いたうえで、双方が納得できる適切な配慮を行うことが大切です。
良くない例としては「大変だろうから、あの仕事から外してあげよう」と考え本人への相談をしないまま実行してしまうことがあります。これは、もし本人が希望してなかった場合には、一方的な行為であり、男女雇用機会均等法の「解雇等不利益取扱いの禁止等」に違反します。
反対に、「妊婦を雇う余裕はない」「妊婦でも甘えは許さない」という発言をすることも、当然マタハラに繋がります。これは労働基準法「母性保護規定」に違反しています。
妊娠~産前・産後休業前におけるマタハラ対策の取り組み事例としては以下があります。
この時期は、当該社員とよくコミュニケーションを取りながら配慮をすることが大切です。
産前・産後休業、育児休業中には、協力的な職場の雰囲気を作るよう意識することが大切です。
具体的には、復帰後の働き方について、本人の希望を含めて可能な限り産前・産後休業前に話し合いをしましょう。
ちなみに、労働基準法「産前・産後休業」においては、以下が定められています。
「復職後に以前のように仕事ができるか」という不安を持つ社員も少なくありません。
不安を軽減するために、育児休業中に会社の情報を提供したり、復帰のためのセミナーを開催したりすることも有効でしょう。
産前・産後休業や育児休業にあたって、代替要員を雇用したり、仕事を分散させたりする場合には、全体に納得感を持たせる必要があります。
代わりに仕事を請け負ってくれる人たちに対して、当人の復帰後の働き方について説明し、管理職の立場から全員に協力をお願いしましょう。
また、男性が育児休業や育児のための制度を利用しようとすると、「奥さんは何をしているの?」「子育ては母親の役目」などと言って上司や同僚から妨害されることもあります。
これはパタニティハラスメント(パタハラ)と呼ばれる行為です。
これは育児・介護休業法「育児休業」により定められる「1歳に満たない子を養育する労働者は、男女を問わず、希望する期間、子を養育するために休業することができる」「両親ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月になるまでの間に父母それぞれ1年間まで育児休業を取得できる」に反しています。
パタハラを含め、産前・産後休業、育児休業中の対策の取り組み事例としては以下があります。
男女問わず、協力しあえる雰囲気を醸成することが重要です。
復職後は、女性社員のキャリアを本人と一緒に考えることが大切です。
具体的には、仕事と育児を両立したいと思っている社員に対して「母親なら子どものことを第一に考えないと」「旦那の収入があるだろう」などの言葉をかけてはいけません。
仕事と育児の両立は、育児・介護休業法「育児との両立に関する制度」により保証されているためです。
復帰後の就業は、原則として「原職」もしくは「原職相当職」への復帰となります。
そのため、「子育て中だから仕事が大変に違いない」「この役職は負担だろう」など決めつけてはなりません。
一方的な降格や配置転換、昇進・昇格を行うことは、男女雇用機会均等法「解雇等の不利益取扱いの禁止」により違法とされます。
また、残業が当たり前の職場においては、「短時間勤務なんて許さない」「残業できないと迷惑だ」などの言葉が、短時間勤務をしている人に向けられることがあるかもしれません。
しかし、育児短時間勤務制度は労働基準法「母性保護規定」、育児・介護休業法「育児との両立に関する制度」などによって定められています。時短勤務制度というのは事業主への義務であり、職場全体でそれを理解する必要があるのです。
復職後のマタハラ対策の取り組み事例としては以下があります。
子育てしやすいよう、職場全体で柔軟に対応することが大切です。
ここまで見てきた通り、女性社員の妊娠・出産・子育てを理由にした休業、時短勤務は労働基準法、育児・介護休業法、男女雇用機会均等法などにより保証されています。
すなわち、マタハラをするということは法律違反となる場合があるのです。
また、加えて以下のマタハラ対策は事業主の義務とされています。
妊娠・出産する社員およびそれをサポートする社員に気持ちよく働き続けてもらうためにも、マタハラ対策は必須です。
本記事の事例を参考に、マタハラ問題及びその対策について考えてみてください。
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