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労働安全衛生法において、事業者は長時間労働や高ストレスなど一定の条件を満たす従業員に対して、医師による面接指導をすることが定められています。面接指導の目的は、過労やストレスによって引き起こされるメンタルヘルスの不調や脳・心臓疾患を防ぐことです。
この記事では、医師による面接指導の対象者の条件や面接指導の流れについて解説します。
労働安全衛生法では、面接指導の対象者として、以下の2つが定められています。
医師による面接指導の目的は、脳血管疾患や虚血性心疾患、メンタルヘルスの不調を予防することです。
また、2024年4月以降、医療機関の管理者は、時間外・休日労働時間が月100時間を超えると見込まれる医師に対して、面接指導をすることが義務付けられます。
【参考】
こころの耳「長時間労働者、高ストレス者の面接指導について」
面接指導実施医師養成ナビ「長時間労働医師への面接指導について」
長時間労働者を対象とする面接指導では、医師が勤務状況や仕事への身体的・心理的な負担、体調変化などについて聞き取りを行います。そして、長時間労働により健康を損なうリスクが高まった労働者の心と身体の健康状態を把握して必要な指導をします。
近年、長時間労働は疲労の蓄積の重要な原因と考えられ、精神障害や脳・心臓疾患などの健康障害との関連が高いことが疫学的に認められています。健康障害発症のリスクを見逃さないためにも、事業者は長時間労働者の条件に該当する従業員から申し出があったときは面接指導をしなければなりません。
【参考】厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
【関連記事】
過重労働者に産業医面談は必要! 長時間労働の基準、面接指導の対象者や流れを解説
長時間労働はなぜ問題になるのか?労働環境を見直すべき理由
以下の図に示した基準に該当する従業員は、長時間労働者を対象とした面接指導の対象となります。長時間労働者の基準は、働き方によって異なるため注意しましょう。
【出典】厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導について」
以前は「時間外・休日労働時間が月100時間超」の従業員が面接指導の対象となっていました。2019年4月の労働安全衛生法の改正により、労働時間の基準が「月80時間超」に変わりました。
長時間労働者に対する医師による面接指導は、原則として、労働者本人の申し出があった場合のみ実施することとなっています。しかし、該当の従業員から申し出がない場合でも、事業者は面接指導の目的や面接指導を受けるメリットを十分に説明し、できるだけ面接指導を受けるように促すのが望ましいです。
【参考】厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
ストレスチェックの結果、ストレスの度合いが高く、医師による面接指導が必要と判断された従業員から申し出があった場合、医師による面接指導をします。
面接指導をすることで、医師が勤務の状況や心理的な負荷について確認して事業場に意見を述べられるため、職場環境が改善することが期待できます。
【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」
ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法の一部が改正されたことによって2015年から始まった制度です。
労働者のメンタルヘルス問題に各企業が真剣に取り組むことを目的に行われています。
労働安全衛生法第66条の10 第1項では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない」と記載されています。
条文にこそストレスチェックという明確な文言は含まれていませんが、同法の具体的な指針を定めたガイドラインには、新しく創設されたしくみ全体を「ストレスチェック制度」と呼びながら説明が行われています。ストレスチェックは労働安全衛生法に基づいた、企業が従わなければいけない義務の一つです。
【関連記事】義務化されたストレスチェックは正しく実施しよう!制度や方法を紹介
ストレスチェックを行わなければいけないのは、常時 50 人以上の労働者が従事する事業所です。
本社以外に、支店や営業所などが複数存在する場合には、それぞれの支店や営業所ごとで判断することになります。
労働者の定義については、「常態として雇用されている者」となっているので、週一勤務のパートやアルバイトであっても含まれる点には注意しましょう。
事業所で働く労働者の数が50人未満のケースでは、ストレスチェックを行う義務はありません。実施に関しては事業所の判断にゆだねられています。実施する場合は、ストレスチェックの法令や指針などに従わなければいけません。
ストレスチェックを行った結果、高ストレス者と判断された労働者は面接指導の対象となります。
2024年4月以降、医療機関の管理者には、時間外・休日労働時間が月100時間を超えると見込まれる医師に対して面接指導をすることが義務付けられます。
長時間労働の医師に対する面接指導の目的は、長時間労働となる医師の健康状態を確認し、必要に応じて管理者が就業上の措置をとることです。
2024年4月以降、診療に従事する勤務医の時間外・休日労働の年間の上限は960時間となります。しかし、以下のいずれかの理由に当てはまる場合には、その上限が年1860時間になります。
【出典】面接指導実施医師養成ナビ「医師の働き方改革の制度について」
上記の枠組みに当てはまる医師は、非常に長い時間の時間外・休日労働が可能です。医師の健康状態を守るために医療機関の管理者は、時間外・休日労働時間が月100時間以上になると見込まれる医師に対して、面接指導を実施しなくてはなりません。
長時間労働の医師に対する面接指導は、面接指導実施医師養成講習会を受講し、修了した面接指導実施医師が行います。
【参考】面接指導実施医師養成ナビ「長時間労働医師への面接指導について」
医師による面接指導は以下の流れで実施します。
それぞれのステップについて詳しく解説します。
まず、対象となる従業員に面接指導の案内を通知します。面接指導の目的や希望する場合の申し出方法などを伝えましょう。
面接指導を受けることで人事評価に影響を与えたり、社内で不利益を被ったりすることはないこともあわせて伝えるといいでしょう。
面接指導は原則として対象となる従業員から申し出があった場合のみ実施します。
面接指導の記録は5年間保存する必要があるため、面接指導の申し出は、記録に残る形式(書面やメールなど)で受け付けます。口頭など記録に残らない形で受けつけるとトラブルの原因となる場合があるため注意しましょう。
面接指導の対象となる従業員の申し出があったら、1ヶ月以内に面接指導を実施しなくてはなりません。
面接指導を担当する医師としては、産業医や産業保健活動に従事する医師が推奨されます。精神科医や心療内科医でなくても問題ありません。
面接指導では、医師が勤務の状況や心身の状態について確認し、必要に応じて専門医への受診勧奨をしたり、就業上の措置について検討したりします。
面接指導をした後は、事業者は医師の意見を参考にして、就業上の措置を検討したり、職場環境の改善に取り組んだりします。
就業上の措置は状況によって異なりますが、就業制限や休職などがあります。面接指導の結果を受けて、従業員に対して不利益になる措置(降格や希望に反した配置転換など)をしてはならないことに留意しましょう。
【参考】厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
面接指導の対象者となった労働者から申し出があった場合には、企業側は1ヶ月以内に面接指導を受けさせなければいけません。
その場合、まずは医師が問診などによって心身の健康状態をチェックします。その結果をもとに、抑うつ傾向や疲労蓄積度などを判断して労働者に必要な指導を行います。
そして、企業側には医師が行った面接指導の内容、および、就労措置が通知されるのが一般的な流れです。
なお、長時間労働者と高ストレスと判断された労働者における面接指導の手順に大きな違いはありません。基本的には面談を行って、その結果をフィードバックするという流れは同じです。
結論からいうと、面接指導を拒否している労働者に無理に受けさせることはできません。
面接指導の対象となる基準を超えていた場合、企業側は該当する労働者が面接指導を受けられる機会を提供するなどの面接指導を促す義務を負います。しかし、面接指導を行うのは、あくまでも労働者が合意する場合に限ります。
つまり、企業側は基準を満たした労働者に対して、面接指導を受けられる機会を提供することが何よりも重要なのです。
このように機会を提供し、さらに勧奨すれば尚いいでしょう。面接指導を受けるかどうかは労働者本人の判断に任せられます。しかし、本人から申し出を受けた場合は、企業側に拒否をする権利はありませんので、誤解しないようにしましょう。
面接指導は医師が行うことになりますが、誰でもよいわけではありません。
基本的には、事業所で契約している産業医が行うほうがよいとされています。
産業医とは、労働者の健康管理に精通した専門的な医師です。労働安全衛生法によって、勤務している労働者が50人以上いる事業所には産業医を選任するように義務付けられています。一般的には企業との間で業務委託契約を結び、職場の労働環境の改善に対して専門的な知見を活かして助言や面接指導を行います。
しかし、面接指導をしたうえでより専門的な治療が必要になるケースもあります。そういった場合には、心療内科医や精神科医といった専門医に治療を依頼することも可能です。
【関連記事】産業医とは? 企業での役割、仕事内容、病院の医師との違いを解説
面接指導は、原則的に「医師との対面」で行わなければいけません。
しかし、複数の事務所や営業所を抱える企業では、すべての事業所に十分な産業医を配置することは難しいでしょう。
そこで、やむを得ない場合には「通信機器を使用した面接指導」も認められています。それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか。
面接指導を行う方法として、ポピュラーなのは対面式です。
その名の通り、面接指導の対象となる労働者と、指導する医師が直接会って面談します。
対面式では、労働者の表情はもちろん、雰囲気などを直接感じ取れます。
そのため、コミュニケーションを取りやすく、より効果的な指導を行いやすいのがメリットです。
注意点としては、労働者が落ち着いて指導を受けられる場所を提供することが挙げられます。できるだけプライバシーを守れる環境を用意しましょう。
対面式のデメリットとしては、面接指導を受けた結果、業務に支障をきたしてしまっては労働者のストレスがかえって増幅してしまう恐れがあります。そのようなことがないように、管理者に対してもストレスチェックに対する理解を深める研修を行うなど、職場環境も整えておくとよいでしょう。
情報機器を使用して面接指導するメリットは、遠隔地にいても指導が受けられる点です。
事業所の数が多く、原則とされている対面式での産業医による面接指導を行うことが困難な場合、情報機器の利用によって面接指導が受けやすくなる点は事業者と労働者双方にとってメリットになるでしょう。
選任されている産業医以外が情報通信機器を使用して面接指導を行う場合は、下記いずれかの場合に該当する必要があります。
その他にも、面接指導で使える情報通信機器に該当するのは、映像と音声の送受信が可能な機器である点にも気を付けましょう。「音声だけ」や「映像だけ」の機器では要件を満たしたことにはなりません。しっかりとした設備を整えてから実施しましょう。
【関連記事】産業保健活動、オンライン対応がOK、NGなものは?―今さら聞けない産業保健vol.4
医師による面接指導をスムーズに実施するために事業者が準備しておきたいことは以下の通りです。
それぞれについて詳しく解説します。
面接指導は条件に該当する従業員から申し出があった場合に行います。
面接指導の目的や面接指導を希望する場合の申し出先について、社内掲示板やメールなど、すべての従業員が確認できる形式で周知しましょう。
従業員の中には、面接指導を受けると人事評価が下がるのではないか、社内での立場が悪くなるのではないかなどの不安があり、面接指導を受けたくないと感じている人もいます。面接指導の内容が会社での立場や人事評価には影響しないことなどを周知し、安心して面接指導を受けられる環境を整えましょう。
面接指導を受けるメリットは、自分の心身の状態やストレスの状況を客観的に判断してもらえたり、医師からセルフケアについての助言を得られたりすることです。面接指導を前向きにとらえてもらえるように、従業員に対し面接指導を受けるメリットを説明することも大切です。
面接指導が実施された場合、企業側は概ね1ヶ月以内に担当した医師から意見聴取を行い、医師が作成した面接指導結果報告書及び事後措置に係る意見書を元に、面接指導の内容を踏まえた事後措置の内容を考えるようにしましょう。
面接指導結果報告書は、労働者本人のメンタルヘルスの状態を評価した書類です。
指導した医師の氏名や面接を実行した年月日、労働者へのアドバイスなどが記載されています。一方、事後措置に係る意見書には「労働時間の短縮」「就業場所の変更」など、より具体的な指導内容が記載されていることもあるので、注意しておきましょう。
提言を受けた企業側は、報告書をもとに社内で検討し、改善策を実行しなければいけません。
その上で、面接指導が行われた結果、労働者本人に不利益が生じないよう、プライバシーには十分な配慮が求められます。なお、「面接指導結果報告書」または「就業上の措置に係る意見書」などの面接指導に関する書類は、5年間の保存義務があります。
面接指導は、一定の基準を満たした労働者に対して、企業側が機会を提供しなければならない義務です。
その結果をもとに、職場の理解を得ながら実際に改善策を進めていくのは、企業の人事労務担当者の仕事となるケースが多いでしょう。苦労されることも多いでしょうが、面接指導が労働安全衛生法に規定されている義務であることを説明して、職場内での理解を深めていってください。
【参考】
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル
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