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がんと共に働く従業員。企業、人事労務担当者がサポートのために出来ること

「従業員から『がんと診断されました……。」と報告を受けました。
しかし弊社の人事労務体制で彼らをどのようにサポートできるかが分からず、担当者としては不安で仕方ありません。」

このような悩みを抱えるのは、どの企業の人事労務担当者も同じです。
厚生労働省によると、がんに限らず病気を抱える従業員の92.5% が働きながらの治療を希望しています(※1)。

仕事と治療を両立したい従業員の要望に応えるには、企業が柔軟な姿勢や対応を取れるかが重要です。
この記事では人事労務担当者として、がんと共に働く人たちに対して企業として取り組みたい対応や行動、心構えなどをご紹介します。

行政が運営しているポータルサイトや制度、従業員同士の向き合い方についても説明するため、担当者はもちろん、周囲で働く従業員の方にもぜひご覧いただきたい内容です。
 

日本における「がん」の現状

そもそも、日本において「がん」の現状はどのようになっているのでしょうか。
がんは男女共にどの年代でも発症する危険性があります。

特に50代を過ぎるとがん発症率が増加し、高齢になるほど高くなる傾向にあります。
生涯でがんを患う確率は男女共に2人に1人(男性62%、女性47%)と言われているぐらいです(※2)。
ここでは国立がん研究センターが報告している「最新がん統計」より、がんに関する情報を抜粋してご紹介します。

2014年に「新たにがんと診断された人(罹患数)が多い部位」を男女別にすると以下です。

【男性】
1位 胃
2位 肺
3位 大腸

【女性】
1位 乳房
2位 大腸
3位 胃

【引用】国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計 1.日本の最新がん統計まとめ

男性のトップ3で紹介されている部位は、どれも2017年において「死亡数が多い部位トップ3」にもランクインしています。女性の1位である乳房のがん(乳がん)は、著名人の乳がん体験やピンクリボン運動などを通して聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

さらにがんと診断された人が、5年後に生存している割合(5年相対生存率)は、男性59.1%、女性66.0%です(※3)。

医療の発達により、働きながら治療に取り組む「がんと共に働く」という人が増えてきました。

がんに罹患していることを世間に告白する著名人が増えてきたことも、後押ししているのかもしれません。
こうした背景から、がんに負けないで5年後もしっかりと生き、仕事にも元気に励めるような取り組みが企業へと求められているのです。
 

「がんと共に働く従業員」をサポートするために企業に求められる行動

では、「がんと共に働く従業員」を後押しするために、企業としてどのような行動が求められるのでしょうか。

人事労務担当者に意識してほしいのは、「企業制度の見直し」「産業医との連携」「行政制度やサイトを知る」の3点です。
 

自社制度の見直し

まず確認して欲しいのは、自社の就業規則や制度が治療や体調に合わせた「柔軟な勤務形態」「休暇・休業制度」であるかどうかです。

がんをはじめとする病気の発症に合わせ、就業形態を変えずに勤務が継続できる体制、検診や急な体調不良による有給取得の柔軟な対応、時短勤務の利用などが挙げられます。

体力的な問題がある場合には、勤務時間の短縮をはじめ、通勤負担軽減のための時差出勤などが必要となる場合もあります。
 

産業医を含めた産業保健スタッフとの連携確認

産業医をはじめとする産業保健スタッフには、従業員の疾患理解をはじめ、仕事に無理なく望めるようなサポートをお願いしましょう。

それ以外に、人事労務担当者や上司など周囲で働く人たちへの状況説明といった知識面での橋渡しも、彼らの重要な仕事です。

特に人事異動などで従業員を取り囲む環境が変わる場合、上司や同僚となる人たちには、がんを患いながらも仕事に励む従業員の現状を適切に理解してもらう必要があります。

企業と産業保健スタッフとの連携を円滑に進めるためにも、日頃から密なやり取りが関係者間で求められるのです。
 

患者を支える行政の制度や公開情報を知る

厚生労働省や国立がん研究センターといった行政・研究機関を中心に、がんを患った人たちの就労を支えるための情報を公開しています。

特にこれから人事労務担当者としてがんと共に働く従業員と向き合わなければならない人は、厚生労働省が出している「治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために」というパンフレットが参考になるでしょう。

治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために(厚生労働省)
「がんと仕事のQ&A」という冊子も、がん当事者が抱える仕事の悩みやその対策を知る上で、手助けになるはずです。

診断されたらはじめに見る がんと仕事のQ&A(国立がん研究センター)
厚生労働省が公開する「疾患を抱える従業員(がん患者など)の就業継続」には網羅的に情報がまとめられているため、目を通しておくことをおすすめします。

疾患を抱える従業員(がん患者など)の就業継続(厚生労働省)
医療費の負担を軽くするための公的制度サイトなどを知っておくと、従業員に情報を渡すことが可能です。

医療費の負担を軽くする公的制度(国立がん研究センター)
具体的な制度内容を理解するに越したことはありませんが、まずは関連情報があるサイトを知っておくと、いざという時に何を参考に情報収集・提供をしたら良いかが分かります。
 

がんと共に働く仲間を支えるために今日から意識したい心構え

では、人事労務担当者をはじめ、一緒に働く従業員たちはどのような心構えでがんと共に働く仲間へ接したらいいのでしょうか。

ここでは「人事労務担当者」「周囲の従業員」という2つの立場からご紹介します。
 

「人事労務担当者」について

人事労務担当者の場合には、「がんについて正しく理解する」「接し方を考える」ことが重要となります。

がんについて正しい情報を理解することは、がんと共に働こうとする従業員の現状を把握することに役立つからです。産業医といった産業保健スタッフたちとの連携も忘れてはいけません。当事者である従業員からの話はもちろん、周囲からの情報にもアンテナを張っておきましょう。

接し方についても、「がんを患っているから・・・」と特別扱いをするのではなく、従業員と対話をしながら最適な接し方を見つけていくことが求められます。

良かれと思って従業員に十分な相談をしない状態で、待遇や雇用形態を変えることは避けましょう。
急な配置転換や接し方の変化などは、「がんになったために、自分は会社から必要とされなくなったのかもしれない・・・」と人によっては感じてしまうケースがあるからです。

特にがん告知を受けた直後は、気持ちが不安定になりやすい状況にあります。
業務にも体調にも支障が出ない範囲で、従業員に寄り添った判断をしていくことを心がけてください。
 

「周囲の従業員」について

人事労務担当者と基本的な心構えは大きく変わりませんが、「仕事に取り組みやすい環境を作る」「体調に合わせて気軽に頼れる部署風土を整える」などが重要です。

業務コミュニケーションをこれまで以上に密にしていくことが求められます。
特に部下ががんを患った場合には「大変そうだから・・・」など、主観で勝手に業務を変更せず、従業員との対話を通して仕事の調整をしていく必要があります。

必要に応じて、周囲の社員がカバーできるような体制作りをしておくといいかもしれません。
もし、同僚や上司ががんを患った場合には、「業務においてどのようなサポートがあると働きやすいですか?」というように声かけをすると引き継ぎがスムーズに運びやすいでしょう。

通院や体調といった環境に合わせて休みやすい社内風土や環境を作るための気遣いや声かけも意識してみてください。入社年次に限らず、がんと共に働く人も仕事がしやすい環境を作れるような行動を心がけていきましょう。
 

まとめ

がんと共に働く従業員を抱える企業や対応策を考えていきたい企業に向けて、一緒に働く上での人事労務担当者や周囲の従業員の心構え、会社に求められる行動を中心にご紹介しました。

まずは行政サイトや情報を通してガイドラインで少しずつ知識を深めながら、現場に求められる心構えを実践していきましょう。
 
【引用】
※1:厚生労働省 治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために Ⅰ治療と仕事の両立を取り巻く現状と課題
※2:国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計  3.がん罹患(新たにがんと診断されること 全国合計値) 5)がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2014年データに基づく)
※3:国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計  1.日本の最新がん統計まとめ 

 
【参考】
国立がん研究センター 身近な人ががんになった時
国立がん研究センター 診断されたらはじめに見る がんと仕事のQ&A
厚生労働省 疾患を抱える従業員(がん患者など)の就業継続
国立がん研究センター 医療費の負担を軽くする公的制度

 

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