#php if (is_mobile()) : ?> #php else : ?> #php endif; ?>
過重労働が慢性化していると、健康障害の発症や法令違反により罰則を科せられる可能性があります。従業員が安心・安全に働けるよう、企業は過重労働の対策を講じなければなりません。本記事では、過重労働によって懸念される健康被害や、企業が取り組むべき対策を解説します。
過重労働とは、長時間の時間外労働や休日勤務により、身体的・精神的に過度な負担がかかる労働のことです。
時間外・休日の労働時間が1ヶ月で100時間を超えたり、2〜6ヶ月の労働時間が平均で80時間を超えたりする場合は、過重労働であると判断されます。
過重労働が続くと、脳疾患や心臓疾患、精神疾患などの健康障害を引き起こす恐れがあります。事業者は従業員の健康被害を防ぐために、過重労働対策を講じなければなりません。
【参考】厚生労働省「過重労働による健康障害を防ぐために」
長時間労働と過重労働の違いは、労働時間の具体的な基準が設けられているか・設けられていないかです。
過重労働は、時間外・休日の労働時間の合計が1ヶ月につき100時間、もしくは2〜6ヶ月の平均労働時間が80時間を超える労働を指します。
一方、長時間労働は、労働時間の具体的な基準が設けられていません。一般的に労働基準法に定められている、1日8時間以上・週40時間を超えて労働することを長時間労働として解釈される場合があります。
【参考】e-Gov 法令検索「労働基準法」
過重労働を減らすために、時間外労働の上限規制を追加した労働基準法が、2019年4月に施行されました。時間外労働の上限規制の内容は以下のとおりです。
それぞれの規制内容について解説します。
【参考】厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)」
以下の条件に当てはまる場合、労使協定(通称:36協定)の締結・届出が必要です。
36協定の締結には、企業と労働組合もしくは労働者の過半数代表者が締結しなければなりません。
36協定を作成する際の注意点については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
【関連記事】【社労士監修】新36協定の基本のキ│時間外労働の上限規制と特別条項の変更点を解説
【参考】e-Gov 法令検索「労働基準法」
36協定を締結した場合、時間外で労働できる上限は月45時間・年360時間以内です。
臨時的・特別な事情で時間外労働が月45時間・年360時間を超える場合は、特別条項を定める必要があります。臨時的・特別な事情の具体例は以下のとおりです。
なお、業務の都合上残業が必要な場合や、業務上やむを得ない場合などは、臨時的な特別な事情に当てはまらないためご注意ください。
【参考】厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」
臨時的・特別な事情により特別条項付き36協定を締結した場合も、時間外労働の上限を遵守する必要があります。
特別条項付き36協定を締結した場合の時間外労働の上限は、以下のとおりです。
上記の労働時間の範囲内であっても、企業は従業員に対して安全配慮義務を負います。
労働時間が長いほど、脳や心臓疾患を発症するリスクが高まります。企業は労働時間や休日労働をできる限り少なくするように努めることが大切です。
労働安全衛生法により、時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり80時間を超える長時間労働者から面接の申し出があった場合、医師による面接指導を行わなければなりません。
面接指導は、長時間労働による健康状態を確認し、その結果を踏まえて必要な措置を講じるために実施します。面接指導を行う医師は、産業保健についての医学的な知見をもつ産業医であることが望ましいです。
【参考】厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
労働基準法に違反して過重労働させた場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
また、事業者のために代理人や従業員が労働基準法に違反して過重労働させていた場合も、事業者に対しても30万円以下の罰金が科されます。
労働基準法に違反した場合、罰金の支払いだけでなく社会的信用も低下する恐れがあるため、法律遵守を徹底しましょう。
なお、労働基準法に違反し、労働基準監督より是正勧告を受けた場合、厚生労働省より企業名が公表されます。
【参考】
厚生労働省「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」
過重労働により、以下のような健康被害が起きる恐れがあります。
それぞれの健康被害の現状について解説します。
過重労働は、脳・心臓疾患を引き起こす要因になります。
厚生労働省の「令和5年度の過労死等の労災補償状況」によると、脳・心臓疾患により労災補償を請求した件数は1,023件でした。前年度より220件も増加していています。
時間外労働を理由とした労災補償支給決定数は216件であり、そのうち60件は80時間以上〜100時間未満の時間外労働を行っていたことが公表されています。
【参考】厚生労働省「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」
長時間労働や交代勤務、出張などの不規則な勤務形態を強いられている従業員は、精神的な負担が増加している場合が多く、心の不調が生じる可能性があります。
長時間労働者は睡眠時間が不足しがちで、睡眠不足による疲労の蓄積が心身ともに大きな負担となっていると考えられるためです。
厚生労働省の「令和5年度の過労死等の労災補償状況」によると、精神障害により労災補償を請求した件数は3,575件であり、前年度より892件も増加しています。
精神障害を引き起こしたとされる主な出来事として「1ヶ月に80時間以上の時間外労働を行った」が挙げられており、2023年度は61件の労災支給が決定しています。
【参考】厚生労働省「精神障害に関する事案の労災補償状況」
過労死防止対策推進法では、過労死を「業務における過重な身体的若しくは精神的な負荷による疾患を原因とする死亡(自殺による死亡を含む)又は当該負荷による重篤な疾患をいう」と定義しています。
厚生労働省の「過労死等防止対策白書」によると、令和4年における勤務問題を原因・動機とする自殺件数は2,968 人でした。
そのうち、健康問題による自殺者は 12,774 人で、全体の58.4%を占めています。
【参考】厚生労働省「令和4年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」
厚生労働省の調査によると、時間外労働が発生する原因には「業務量が多い」が43%を占めています。
ついで「人員が不足している」が31%、「仕事の繁忙期と閑散期の差が大きい」が18.9%という結果です。
従業員の過重労働を防止するには、時間外労働を発生させない対策を実施することが大切です。
【参考】厚生労働省「令和4年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」
従業員の健康を損なうことがないよう、以下のような過重労働対策を行いましょう。
それぞれの対策について解説します。
過重労働対策には、従業員の労働時間を正確に把握できる勤怠管理システムの導入が必要です。勤怠管理システムを導入すると、分単位で正確に労働時間を記録できます。
従業員のスマートフォンやICカードなどを利用して打刻できる勤怠管理システムであれば、従業員が意図的に残業時間を少なく申告したり、遅刻などを偽ったりすることも防止できます。
従業員の過重労働を防ぐには、一人ひとりの業務量を見なおすことも重要です。業務量は仕事ができる人に偏っているだけでなく、残業を断れない人に業務が集中していることもあります。
また、業務量に対し人材不足の場合や人材は足りているものの、他部署との連携が図れないために業務効率が低下している場合もあります。
従業員の業務を見直し、必要に応じて業務の棚卸しや統廃合・標準化に加え、人材再配置や新規採用などの対策に取り組みましょう。
管理職のマネジメントを強化することも、従業員の過重労働対策につながります。
部下とのコミュニケーションを通して、業務量が偏っていないか、サポートを必要としているかを把握できるためです。
業務量の偏りを軽減するためにも、現場の状況に応じた人員配置や、他部署と連携を図って業務サポートを依頼できるとよいでしょう。
また、管理職がラインケアを行い、従業員のメンタルヘルスを良好に保てると、安全配慮義務を遵守できます。
ラインケアの進め方や取り組み方については、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
【関連記事】ラインケアとは?基本の進め方、推進するメリットを解説
過重労働を防ぐには、従業員に有給休暇の取得を促すことも重要です。有給休暇を取得し従業員の心身がリフレッシュされれば、モチベーションが向上するでしょう。
事業者は、従業員が積極的に有給休暇を取得できる職場環境をつくることが大切です。
【参考】 e-Gov 法令検索「労働基準法」
企業風土の見直しや改善を図ることも、従業員の過重労働対策につながります。
たとえば、従業員の残業や長時間労働を美徳とする企業風土は、現代の社会情勢と適合しません。
また、従業員自身が残業手当を目当てにして無理に残業している場合も、現代社会に反した考えであり、働き方の意識改革が求められます。
企業風土の見直しや改善を図るには、経営トップを含む上層部の意識改革が必要です。
従業員の残業に対する意識改善を実行するには、評価制度の見直しや、インセンティブ制度の導入などを検討しましょう。
会議体で取り組むテーマや実施回数などを見なおすことも、従業員の過重労働対策として有効です。
無駄な朝礼、物事が決まらない会議・打ち合わせ、またそのための資料作成など、非効率なことをしていないか確認しましょう。
また、会議のゴールを決める(事前のアジェンダ)、時間や参加人数を制限する、進行役のファシリテーション技術の向上など、会議の質を上げることも検討しましょう。
リモートワークが導入されている企業では、リモートワークに適した労働管理を行うことで、従業員の過重労働を対策できます。
リモートワークでは仕事ぶりを間近でチェックする人がいないため、長時間労働になりがちです。
システムのログインなどで勤怠管理、時間外のアクセス制限、メール送付時間の適正化(深夜・休日など時間外にメールを送らない)など、リモートワークならではの対策を講じる必要があります。
時間外労働の削減により過重労働防止に成功している企業事例を3社紹介します。過重労働対策を検討するうえで参考にしてください。
株式会社サティライズは、中小企業向けのシステム導入コンサルティングなどを行っている企業です。
同社では、総務や経理業務などの業務量が増加したことから、総務業務の業務量を軽減するために、社労士事務所と連携して業務支援システムを導入しました。
業務支援システムの導入により、社会保険料の正確な計算と業務時間の削減を実現しています。
また、勤怠管理システムも導入したことで、労働上限時間を超えた場合にアラームが表示されるようになり、従業員の労働時間管理を適切に行えています。
さらに、勤怠管理システムと業務支援システムを連携したことで、勤怠管理の業務量を大幅に減らせました。
【参考】厚生労働省「株式会社サティライズ|働き方改革特設サイト」
株式会社クラフトは、看板やディスプレイの企画から施工までを手がける企業です。
同社では、残業や休日労働が慢性化した環境を改善するために、助成金を活用して働き方改革に取り組みました。
「年次有給休暇全員100%」を社長自ら掲げて、数時間でも有給休暇を取得できるようにした結果、2020年には有給取得率が97.71%に向上しました。また、残業時間の削減も実現しています。
【参考】厚生労働省「株式会社クラフト|働き方改革特設サイト」
信州ビバレッジ株式会社は、清涼飲料水の製造を行っている企業です。
同社では、残業が年間400時間を超えており、業務の生産性が低下していたため、週休3日制度の変形労働時間制を導入しました。
勤務形態の変更により従業員の年収が低下する懸念点がありましたが、残業代が削減した分は基本給を上げて、賞与で補填する仕組みを構築しました。
その結果、残業時間が年間60時間程度になり、大幅な時間外労働の削減を実現しています。
【参考】厚生労働省「信州ビバレッジ株式会社|働き方改革特設サイト」
過重労働は、病気の発症や自殺、過労死などにつながる恐れがあります。事業者は、過重労働を発生させない取り組みを実行しなければなりません。
過重労働を防ぐには、勤怠管理システムを使用し労働時間を正確に把握し、業務量を見なおすことが大切です。過重労働対策に取り組み、従業員が働きやすい職場環境をつくりましょう。
従業員数が50名を超えた事業場には、労働法令によって4つの義務が課せられています。 「そろそろ従業員が50名を超えそうだけど何から手をつければいいんだろう」「労基署から勧告を受けてしまった」。従業員規模の拡大に伴い、企業の人事労務担当者はそんな悩みを抱えている人も少なくありません。 本資料ではそのようなケースにおいて人事労務担当者が知っておくべき健康労務上の義務と押さえるべきポイントについて詳しく解説していきます。
エムスリーキャリアが提供する専属・嘱託・スポット、すべての「産業医サービス」について分かりやすく1冊にまとめたサービス紹介パンフレットです。 お悩み別にオススメの産業医サービスがひと目でわかります。
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け