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労働安全衛生法にもとづき、一定数を超える従業員が働く事業場では衛生推進者を選任する義務が生じます。
しかし、労働基準監督署への報告義務がないこともあり、衛生推進者の必要性について詳しく知らない人事労務担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、衛生推進者の必要性や資格要件、職務内容を解説します。
衛生推進者は、労働安全衛生法にもとづき選任が義務付けられた、従業員の安全や健康確保に関わる業務の担当者を指します。設置対象となるのは、常時10人〜50人未満の従業員を雇用する事業場です。
事業場で働く従業員が常時10人を超えた日から14日以内に選任するよう求められており、選任義務は事業場ごとに生じます。
衛生管理者や安全管理者の場合、労働基準監督署に選任した旨を報告する必要がありますが、衛生推進者選任後の報告については義務付けられていません。
ただし、衛生推進者の氏名を作業場の分かりやすい場所に提示するなどの方法で、関係者に周知する必要があります。
【参考】厚生労働省「Q安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。」
衛生推進者が必要な理由は、労働災害や従業員の健康障害を防ぐためです。
厚生労働省が公表するデータによると、全産業における死傷災害の60%は、従業員数50人未満の中小規模事業場が占めています。とくに多く発生する傾向にあるのは、従業員数が10〜29人程度の企業です。
衛生推進者の対象となるのは比較的危険が生じにくい業種ではあるものの、作業環境実態や有害危険物の使用実態調査などを適切に行い、改善への取り組みが必要です。
小規模な企業こそ安全衛生上の問題が発生しやすい事実を理解し、積極的に対処する姿勢が望まれます。
労働災害や健康障害は、従業員本人だけでなく企業も大きなダメージを受けます。このような事態を避けるためにも、企業が責任を持って対策を講じることが重要です。
【参考】厚生労働科学研究成果データベース「中小企業における労働災害防止の推進と労働安全衛生法」
衛生推進者を選任して従業員の安全や健康に配慮することで、以下のようなさまざまなメリットが期待できます。
従業員が日々健康に働けることでモチベーションやパフォーマンスが高まり、生産性の向上が見込めます。
また、安全衛生管理を徹底するとともに、従業員の意見を聞き取り労働環境の改善に役立てれば労働災害の発生を未然に防ぐことが可能です。
そのほか、従業員の安全や健康にしっかり配慮している企業というイメージが広がることで求人への応募が増え、優秀な人材を確保しやすくなります。
このようなさまざまなメリットから、衛生推進者の選任は従業員だけでなく企業にとっても大切なことです。
衛生推進者は、要件を満たす従業員から選任する必要があります。資格要件と講習の受け方を確認しておきましょう。
衛生推進者は従業員なら誰でもよいわけではなく、資格要件が定められています。衛生推進者の資格要件は以下のとおりです。
上記7つのうち、衛生推進者は1〜3について衛生の実務に従事している者から任命します。
安全管理や衛生管理について、実務経験や特別な資格をもつ従業員がいない場合は、選任予定者に衛生推進者養成講習を受けてもらう必要があります。
【参考】公益社団法人労務管理教育センター「受講のご案内|安全衛生推進者養成講習」
衛生推進者養成講習は、都道府県労働局長による登録を受けた団体が行う講習です。受講資格はとくに設定されておらず、学歴・経験問わず誰でも受講できますが、従業員のなかから選任することが好ましいとされています。
講習の詳細については公益社団法人労務管理教育センターで確認可能です。講習は1日で行われ、講習終了後に修了証が交付されます。
講習実施機関により細かい内容や費用、講習のスケジュールなどが異なるため、事前に把握しておきましょう。
【参考】公益社団法人労務管理教育センター「受講のご案内|安全衛生推進者養成講習」
企業において衛生に関わる業務を担当するのが衛生推進者の役割です。従業員が安全かつ健康的に働くために、よりよい職場環境への改善を目指します。
厚生労働省で定める衛生推進者の主な職務内容は、以下のとおりです。
(出典:厚生労働省「Q 安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。」)
厚生労働省が定める職務のうち、衛生推進者は衛生についての職務のみを担当し、それ以外の業務は安全衛生推進者が担当します。
具体的には、作業環境や有害作業の実態調査・改善やメンタルヘルスケアの教育をはじめとした安全衛生に関する教育などの職務が挙げられます。
衛生推進者と安全衛星推進者、衛生管理者との違いを理解しておきましょう。
衛生推進者と安全衛生推進者は、従業員数が常に10人〜50人未満となる事業場で選任義務が生じる点は変わりませんが、対象となる業種に違いがあります。
対象となる業種の違いは、下表のとおりです。
安全衛生推進者を選任すべき業種 | 衛生推進者を選任すべき業種 |
林業、鉱業、建設業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・什器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・什器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 | 左記以外の業種 |
(出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト:安全管理者」)
安全衛生推進者の対象となる業種は上記の19種類で、職場に危険が生じやすい業種と定められています。業務上安全管理を必要とする現場が多く、職場の衛生管理に加えて安全管理の推進も求められます。
衛生推進者を配置するのは、社会福祉施設や飲食店、保育所などの業種が対象です。職場における衛生管理に関する取り組みについて担当し、食中毒や感染症予防対策なども重要な職務の一つです。
常時従業員数が50人以上の企業においては、衛生推進者や安全衛生推進者ではなく衛生管理者・安全衛生管理者を選任します。
事業場の規模によって選任する衛生管理者の数は異なり、50人以上200人以下の事業所なら一人、200人を超え500人以下なら2人の衛生推進者が必要です。
衛生管理者は多くの従業員を管理する必要があるため、衛生推進者と比べてより深い専門知識をもっているのが特徴です。
また、常に50人以上の従業員がいる事業場においては、衛生管理者だけでなく産業医の選任義務も生じます。
【参考】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:衛生管理者」
【関連記事】健康経営に欠かせない衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説
衛生推進者を選任する際には、いくつか注意しておきたい点があります。それぞれよく理解して、効果的な運用を目指しましょう。
衛生推進者の業務が形骸化しないように、具体的な業務内容に関して記録を残しておくとよいでしょう。
万が一、企業の安全衛生管理不足が原因で労働災害が発生してしまった場合、活動記録がない点を問題視される可能性があります。
企業の安全衛生管理力を高め、労働災害防止や従業員の健康を守る本来の目的からも、計画的かつ効果的な運用が望まれます。
衛生推進者の負担を軽減するために、必要に応じて産業医などの専門家と連携するのも有効な手段です。
通常の業務をこなしながら衛生推進者の職務を兼任するのは大きな負担となり、どちらの業務にも十分対処できなくなるリスクがあるでしょう。
衛生推進者にすべてを任せるのではなく、産業医のような専門家と契約しサポートを受けることで、より従業員の安全や健康を守れることが期待できます。
産業医とは専門知識を活かし、労働者の健康管理などの指導を行う医師で、事業場の従業員数が50人以上になると必ず選任しなければなりません。さらに、従業員50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施義務も生じます。
将来的に従業員の増員を考えているなら、早めに産業医との契約を検討したうえで、やるべきことの準備を済ませておくことも必要です。
【関連記事】産業医とは? 企業での役割、仕事内容、病院の医師との違いを解説
衛生推進者の設置を怠ると、以下のようなリスクがあります。
想定されるリスクについて詳しく解説します。
衛生推進者は選任報告が不要で、国内小規模企業における選任の実態も正確には分かっていないのが実情です。しかし、安全衛生上の問題が発生した場合、衛生推進者の不在は問題視されます。
厚生労働省では毎年、労働安全衛生法の法令違反が確認された企業を公表しています。
もちろん、選任漏れ自体は法令違反ですが、衛生推進者の不在により社内の安全衛生が保たれず問題が起きた場合、被害を受けるのは従業員だけではありません。
社名公表となれば会社の社会的な信用失墜に繋がり、業績への影響も避けられないでしょう。
【参考】厚生労働省労働基準局監督課「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(令和4年11月1日~令和5年10月31日公表分)
衛生推進者の選任義務があるにもかかわらず選任していない場合は、罰則を科せられる場合があります。
労働安全衛生法の該当する規定に違反すると、50万円以上の罰金が生じる可能性があるため注意が必要です。
たとえ選任していたとしても、衛生推進者が職務を怠り、事業者がそれを放置している場合、安全配慮義務違反に問われることも考えられます。
安全配慮義務違反として扱われた場合、労働安全衛生法だけではなく、民法にもとづき罰則が科される可能性もあります。
【参考】e-GOV法令検索「労働安全衛生法」
【関連記事】安全配慮義務違反に該当する基準とは?企業が取り組むべき対策も解説
衛生推進者を選任しないまま労働災害や健康障害が発生した場合、企業責任が問われ損害賠償を請求される恐れがあります。
怪我の場合はもちろん、うつ病をはじめとするメンタルヘルス不調であっても、企業が損害賠償を請求されるケースもあるため注意が必要です。
労災保険ではカバーしきれない損害については、安全配慮義務違反などの民事上の損害賠償責任が問われます。
万が一従業員が企業に対して訴訟を起こすことになれば、企業の信用が失われイメージダウンにつながりかねません。従業員はもとより、企業を守るためにも衛生推進者の選任は不可欠といえるでしょう。
衛生推進者の選任は、労働安全衛生法によって定められた企業の義務です。従業員の安全や健康を守ることで、生産性向上など企業としてもメリットが期待できるので、従業員数が10人以上になったら早めに選任しましょう。
選任要件を満たす従業員がいなければ養成講習を受ける必要があるため、計画的に選任の準備を進めることも大切です。
衛生推進者に選任された従業員の負担が心配な場合は産業医を活用するなど、効果的に安全管理を行える対策を考えていきましょう。
産業医の選任など、産業保健関連の法定義務が一目でわかるチェックシートです。 最近では、労基署から指摘を受けた企業担当者からの相談も少なくありません。働き方改革を推進する観点から、国では今後も法定義務が遵守されているかの確認を強化していくと思われるため、定期的に自社の状況を確認することをお勧めします。
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け