1. トップページ
  2. 健康経営コラム
  3. 衛生推進者は必要?―衛生推進者の職務内容

衛生推進者は必要?―衛生推進者の職務内容

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

産業医紹介を中心に健康経営サービスを提供

健康経営に関するお役立ち情報を発信する「健康経営コラム」編集部です。 産業医紹介サービスを提供しているエムスリーキャリア株式会社が運営をしています。 全国32万人以上(約9割)の医師データベースを活用し、あらゆる産業保健課題を解決いたします。 お困りの企業様はお問い合わせボタンよりご相談くださいませ。

事業場で雇用する従業員の数が常時10人以上になると「衛生推進者」を選ぶ必要があります。
これは法律によって定められた義務であり、従業員の安全や健康を守るためにも欠かせないものです。

ただ、労働基準監督署への報告義務がないため、衛生推進者についてあまり詳しく知らないという経営者も多いのではないでしょうか。

今回は、小規模の事業所で重要である衛生推進者について、その必要性や職務内容、選任基準などについて紹介していきます。

企業には従業員の安全・健康を守る義務がある

従業員は契約によって企業に雇用され、労働力を提供する代わりに給与を受け取っています。
この契約さえ守られていれば問題ないように見えますが、実はそうではありません。

企業は雇用契約に基づいた従業員への給与支払いだけでなく、法律により彼らの安全や健康を守る「安全配慮義務」も負っているのです。

従業員に任せる職務内容や労働時間などは、雇用契約に基づき、法律の範囲内で企業が自由に決めることができます。しかし、契約があるからといってどのような働かせ方をしても良いというわけではありません。

たとえば、従業員に長時間労働をさせたり、危険な環境下での労働を強いたりした結果、従業員が心身の健康を損なってしまったとします。このような場合、企業は従業員の安全配慮義務を怠ったと見なされ、民法の規定により損害賠償責任を負う可能性もあるため注意しなければなりません。

そもそも、企業が順調な経営を行うためには、従業員に最大限の能力をもって職務に貢献してもらう必要があります。しかし、安全配慮義務を怠ったまま放置していると、従業員の健康が損なわれてパフォーマンスが低下しかねません。

多くの従業員のパフォーマンスが低下すれば、企業全体の生産性低下にもつながってしまうでしょう。
経営的な視点から考えても、従業員の安全や健康を守ることには大きな意義があるのです。

【参考】公益財団法人労務管理教育センター
 

法律で選任が義務付けられた「衛生推進者」

安全配慮義務からもわかるように、日本では従業員の安全や健康についてさまざまな対策が行われています。

そのうちの一つが、多くの企業に義務付けられている「衛生推進者」の選任です。
従業員の安全や健康を守るうえで重要な役割を担う衛生推進者について、基本的な内容を押さえておきましょう。
 

衛生推進者とは

衛生推進者とは、労働安全衛生法に基づいて選任が義務付けられた、衛生管理の責任者のことです。
常時10~50人未満の従業員を雇用する事業場が対象で、職場における安全衛生水準の向上を目指し、さまざまな事案を担当します。

従業員の人数が増えるなど、選任する理由が発生した場合、その日から14日以内に選任して職場に周知しなければなりません。

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進するために定められた法律です。労働者が健全な心身で働けるよう、職場ごとにきちんとした安全衛生管理体制を確立するよう定めています。

もし違反した場合、懲役や罰金などの罰則が科される可能性もあるため十分な注意が必要です。

ただし、衛生推進者に関しては労働基準監督署への報告義務や届け出義務などはなく、選任しなかったとしても特に罰則もありません。このため、忙しさからつい選任を先送りしてしまったり、そもそも衛生推進者の存在を知らなかったりする経営者もいるでしょう。

しかし、あくまでも労働安全衛生法によって定められた義務である以上、選任しないまま放置するのは良くありません。従業員の安全や健康に配慮すると、生産性向上やイメージアップなど企業のメリットにつながるケースも多いので、できるだけ早く選任することをおすすめします。

【参考】厚生労働省-安全衛生推進者(衛生推進者)について
 

企業における衛生推進者の必要性

OL
衛生推進者の選任は、安全衛生管理の一環として義務付けられているものです。

衛生推進者の選任が必要なのに放置していると、企業として安全衛生管理を怠ったと判断される可能性があります。場合によっては、労働安全衛生法にしたがって罰則の対象となったり、損害賠償請求されたりするなど、企業として大ダメージを受けてしまうケースもあるでしょう。

このような事態を防ぐためにも、衛生推進者をきちんと選任し、安全衛生管理を徹底する必要があるのです。

また、衛生推進者を選任して従業員の安全や健康に配慮することで、企業にさまざまなメリットも期待できます。

まず、日々健康に働けることで従業員のモチベーションやパフォーマンスが高まり、生産性の向上が見込まれるでしょう。

衛生推進者が従業員の意見などを聞き取ることで、労働環境の改善に役立てられる場合もあります。さらに、安全衛生管理を徹底すれば労働災害の発生を未然に防ぎ、コスト削減を実現できることもあるでしょう。

このほか、従業員の安全や健康にしっかり配慮してくれる企業だというイメージが広がることで、求人への応募が増え、より優秀な人材を得られる可能性もあります。

このようなさまざまなポイントから、衛生推進者の選任は従業員だけでなく企業にとっても大切なことだといえるのです。

【参考】 厚生労働省-安全衛生管理を進める上でのポイント
 

衛生推進者になれるのは?

衛生推進者は、従業員であれば誰でもなれるというわけではありません。選任できるのは、以下の要件のうちいずれかを満たす従業員だけなので注意しましょう。

  • 大学又は高専卒業後1年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
  • 高等学校又は中等教育学校卒業後3年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
  • 5年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
  • 安全管理者の資格及び衛生管理者の資格を有する者(両方の資格を有する者)
  • 安全管理者または衛生管理者の資格を有する者で、その資格を取得後1年以上安全または衛生の実務に従事した経験を有する者
  • 労働安全コンサルタントまたは労働衛生コンサルタント等の資格を有する者
  • 都道府県労働局長の登録を受けたものが行う講習を修了した者

安全管理や衛生管理について、実務経験や特別な資格を持つ従業員がいない場合は、選任予定者に衛生推進者養成講習を受けてもらう必要があります。

講習は学歴などにかかわらず誰でも受講可能ですが、講習実施機関により細かい内容や費用、講習のスケジュールなどが異なるので確認しておきましょう。

【参考】公益社団法人労務管理教育センター
 

衛生推進者の職務内容

衛生推進者は、職場の従業員が健康に働けるよう、衛生に関するさまざまな職務を担当します。

厚生労働省は衛生推進者の主な職務内容について以下のように定めているので、衛生推進者本人はもちろん周囲の従業員にも周知しておきましょう。

ただし、以下の職務内容には「安全衛生推進者」のものも含まれており、衛生推進者はこのうち衛生に関する業務のみ担当するので注意が必要です。

  • 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
  • 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
  • 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
  • 労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること

【参考】厚生労働省-安全衛生推進者(衛生推進者)について
 

衛生推進者と安全衛生推進者の違い

衛生推進者の職務内容に関する記述の中で、「安全衛生推進者」という名称が出ました。

衛生推進者とよく似ていますが、両者には明確な違いがあります。従業員数が常時10~50人未満の事業場が対象という点は同じですが、そのうち特定の業種の企業は安全衛生責任者を選任することを義務付けています。

具体的には、林業、鉱業、建設業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・什器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・什器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業の全19業種です。

これらの業種はより安全管理の徹底が必要とされるため、安全衛生推進者の選任が義務付けられています。
安全衛生推進者は衛生推進者と比べて担当する職務の範囲が広く、養成講習でもより多くの講習を受講しなければならないケースが多くなっています。

19業種以外の業種は衛生推進者の選任で問題ないので、自社の業種によりどちらを選任するかよく確認しておきましょう。

【参考】横浜北労働基準監督署

衛生推進者がいれば従業員の安全・健康は守られるのか?

労働安全衛生法で義務付けられた衛生推進者を選任すれば、従業員の安全や健康を守れる可能性は高まります。

しかし、衛生推進者だけではできることに限りがあり、十分な対処ができないケースも少なくありません。
従業員が通常の業務をこなしながら衛生推進者の職務を兼ねると、負担が増してどちらの仕事も満足にできなくなる恐れもあるでしょう。

このため、衛生推進者にすべてを任せるのではなく、産業医などの専門家と契約してサポートを受けることをおすすめします。

産業医とは、労働者の健康管理などについて、専門知識を生かしアドバイスや指導を行う医師のことです。
専門家から適切な指導を得られれば、衛生推進者の負担が軽減するだけでなく、その企業に合ったやり方で従業員の安全や健康を守れるようになるでしょう。

なお、産業医は事業場の従業員数が50人以上になると必ず選任しなければなりません。
従業員50人以上の事業場は、ストレスチェックの実施や衛生委員会の設置など、ほかにもさまざまな義務が課されます。

将来的に従業員の増員を考えているなら早めに産業医と契約し、やらなければならないことの準備を、余裕を持って済ませておくのがおすすめです。

【参考】
厚生労働省-安全衛生管理・活動の進め方
東京労働局-「総括安全衛生管理者」 「安全管理者」 「衛生管理者」 「産業医」のあらまし
 

まとめ

衛生推進者の選任は、労働安全衛生法によって定められた企業の義務です。
従業員の安全や健康を守ることで、生産性向上など企業としてもメリットが期待できるので、従業員数が10人以上になったら早めに選任しましょう。

選任要件を満たす従業員がいなければ養成講習を受ける必要があるため、計画的に選任の準備を進めることも大切です。衛生推進者に選任された従業員の負担が心配な場合は産業医を活用するなど、効果的に安全管理を行える対策を考えていきましょう。

  • 従業員50名以上の事業場に求められる健康労務上の4つの義務

    従業員50名以上の事業場に求められる健康労務上の4つの義務

    従業員数が50名を超えた事業場には、労働法令によって4つの義務が課せられています。

    「そろそろ従業員が50名を超えそうだけど何から手をつければいいんだろう」「労基署から勧告を受けてしまった」。従業員規模の拡大に伴い、企業の人事労務担当者はそんな悩みを抱えている人も少なくありません。

    本資料ではそのようなケースにおいて人事労務担当者が知っておくべき健康労務上の義務と押さえるべきポイントについて詳しく解説していきます。

  • 一目でわかる!人事労務担当が産業保健で法令違反しないためのチェックシート 

    一目でわかる!人事労務担当が産業保健で法令違反しないためのチェックシート 

    産業医の選任など、産業保健関連の法定義務が一目でわかるチェックシートです。

    最近では、労基署から指摘を受けた企業担当者からの相談も少なくありません。働き方改革を推進する観点から、国では今後も法定義務が遵守されているかの確認を強化していくと思われるため、定期的に自社の状況を確認することをお勧めします。

  • 5分でわかる!産業医サービス紹介パンフレット

    5分でわかる!産業医サービス紹介パンフレット

    エムスリーキャリアが提供する専属・嘱託・スポット、すべての「産業医サービス」について分かりやすく1冊にまとめたサービス紹介パンフレットです。
    お悩み別にオススメの産業医サービスがひと目でわかります。

記事ランキング

記事ランキング

カテゴリー

お電話でのお問い合わせ 03-6895-1762

受付時間:土日祝を除く10:00〜19:00

紹介会社
比較表付き!

5分でわかる!産業医サービス紹介パンフレット

エムスリーキャリアが提供する産業医紹介サービスについて分かりやすく1冊にまとめたパンフレットです。
従業員規模やお悩み別におすすめの産業医サービスがひと目でわかります。

資料請求する
  • お見積り・お問い合わせ

    サービスに関するご質問や相談等がございましたら、ご遠慮なくお気軽にお問い合わせください。

    お問い合わせ
  • お役立ち資料

    人事労務担当者が抑えておくべき産業保健に関するノウハウや、産業医紹介サービスの概要資料を無料でご覧いただけます。

    ダウンロードはこちら
  • サービス説明会

    20分でわかる!M3Careerの産業医サービスオンライン説明会
    日時 平日2回(10:00〜/14:00〜)

    参加申し込みはこちら