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従業員の心身の健康を保つためには、勤務間インターバル制度の導入が効果的です。勤務間インターバル制度の導入は、事業場の努力義務とされています。
しかし、実際にインターバルとして設定すべき休息時間や導入手順が分からず、悩んでいる担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、勤務間インターバル制度導入の際に推奨されている休息時間や、導入によるメリットなどを紹介します。導入手順や活用できる助成金についてもあわせて解説しているので、ぜひ参考にして勤務間インターバル制度をスムーズに導入しましょう。
勤務間インターバル制度とは、仕事を終えた時刻から次に始業する時刻までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する制度です。
勤務間インターバル制度の目的は、従業員の生活リズムを整えたり睡眠時間を確保したりして、健康的に働き続けられるようにするためです。従来は接客業や輸送業など長時間労働が避けられない職場でよく導入されていましたが、近年は職種を問わず導入を検討する企業が増えています。
【参考】厚生労働省「勤務間インターバル制度について」
勤務間インターバル制度の導入は、2019年4月から事業場の努力義務とされました。しかし、導入していなくても罰則が科せられることはないため、導入率は大きく増えていないのが現状です。
厚生労働省の「就労条件総合調査」では、勤務間インターバル制度の導入率について以下のようなデータが公表されています。
導入状況 | 令和4年 | 令和5年 |
勤務間インターバル制度を導入している | 5.8% | 6.0% |
導入を予定・検討している | 12.7% | 11.8% |
導入予定はなく検討もしていない | 80.4% | 81.5% |
(出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」)
また、勤務間インターバル制度の認知度や導入率について、厚生労働省は以下のような数値目標を掲げています。
● 令和7年(2025年)までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする
● 令和7年(2025年)年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とする |
(出典:厚生労働省「勤務間インターバル」制度の周知や導入に関する数値目標」)
まずは制度内容を正しく理解し、どのような方法なら各事業場で導入しやすいかを検討してみるとよいでしょう。
厚生労働省はすべての指定対象事業場において、9時間以上11時間未満、もしくは11時間以上の勤務間インターバルを設けることを推奨しています。
インターバル確保の具体的な方法は、始業時間を遅らせたり、深夜業務や残業の回数を制限したりすることなどが挙げられます。勤務間インターバルが9時間未満の事業場は、業務の効率化や分担などを図り、従業員の勤務時間を短縮できるよう工夫してみましょう。
【参考】厚生労働省「働き方改革推進支援助成金交付要綱」
【関連記事】「運送・物流業の2024年問題」とは? 働き方改革への対応、取り組み事例を紹介
勤務間インターバル制度を導入するメリットは、以下の4つです。
それぞれの内容について詳しく説明します。
従業員の一定の休息時間を確保することは、長時間労働による健康被害の発生や、過労死などの防止に有効と考えられます。生活リズムが整い仕事とプライベートを区別できるようになれば、従業員のストレス解消や健康保持につながりやすいためです。
また、適正な睡眠時間の確保には、従業員の体力回復や集中力維持による業務効率アップの効果が期待できます。従業員の心身の健康維持は、事業場全体の生産性が向上する要因にもなるでしょう。
勤務間インターバル制度の導入によって労働環境が整備されれば、従業員の満足度向上が期待できます。働きやすい職場になれば、人材の定着率は高まるでしょう。
個々の従業員が長く働き続けるようになれば、採用や育成の手間が省けて広告費・人件費の削減にも効果的です。離職率の低下は、事業場と従業員の双方にとってメリットになります。
勤務間インターバル制度を導入していることを社外にも公開すれば、「働きやすい事業場である」と認知されやすくなります。企業イメージが向上し、優れた人材の獲得促進につながるでしょう。
優秀な人材を雇用できれば、業務効率の向上にもつながります。さらには、事業場の生産性アップが期待できます。
勤務間インターバル制度を導入すれば、従業員が一定の時間をプライベートに充てやすくなります。趣味を楽しんだり家族と過ごしたりする時間が確保でき、私生活が充実しやすいでしょう。
従業員のQOL(クオリティーオブライフ)の向上は、リフレッシュやストレス軽減につながります。
勤務間インターバル制度を導入する際は、以下の手順で進めるのが一般的です。
それぞれの手順について詳しく説明します。
まずは従業員の現在の労働状況を把握し、自社に勤務間インターバル制度が導入できるか検討しましょう。制度を導入し適切に運用するためには、現状の事業場の問題点などを正確に把握しておく必要があります。
従業員の労働時間を確認する際は、タイムカードや勤怠管理システムをチェックするほか、サービス残業の有無も調査しましょう。各職場の管理者に聞き取りを行うなどして、抜けや漏れのないよう状況を把握します。
自社で勤務間インターバル制度を導入できると分かったら、制度の種別を選択しましょう。勤務間インターバル制度は、導入前の事業場の状況によって以下の3つに分けられます。
種別 | 内容 |
新規導入 | 勤務間インターバル制度をまだ導入していない事業場において、休息時間が9時間以上の勤務間インターバル制度を新規導入する |
適用範囲の拡大 | 休息時間が9時間以上の勤務間インターバル制度をすでに導入しており、対象となる従業員が半数以下の事業場において、対象となる従業員の範囲を拡大して過半数にする |
時間延長 | 休息時間が9時間未満の勤務間インターバル制度を導入している事業場において、休息時間を2時間延長して9時間以上になるようにする |
(参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」)
自社の状況に合わせて、制度の種別を選択しましょう。
勤務間インターバル制度の種別を選んだら、運用方法を決めて就業規則に組み込みます。就業規則に記載すべき具体的な内容は、以下の4点です。
制度の詳細を決める際には、休息時間が十分に確保されなかった場合の対応についても決めておくとよいでしょう。また、定期的に制度内容と事業場の実態が合致しているかを見直し、必要であれば規則を修正することも大切です。
制度に曖昧な部分を増やさないために、例外となる規則はなるべく作らないほうがよいでしょう。厚生労働省では「就業規則規定例」を公開しているので、就業規則を改定する際は参考にするのがおすすめです。
勤務間インターバル制度の詳細が決定し就業規則を改定したら、すべての従業員にその内容を周知してルールを浸透させます。
周知の際には、社内の掲示板やメール、社内報などを活用するのが一般的です。社内で使用しているツールで、周知に活用できそうなものをチェックしておきましょう。
勤務間インターバルを導入する事業場が活用できる助成金には、「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」があります。申請の手順は以下のとおりです。
支給対象となる事業者の条件・取り組み・支給額について詳しく解説します。
「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」の支給対象は、以下の5つすべての条件に当てはまる中小企業の事業主です。
さらに、条件5のa~cのどの事業場であるかによって、取り組み目標が以下のように変わる点には注意が必要です。
aに該当する事業場 | 従業員の半数以上に対して、休息時間が9時間以上の勤務間インターバル制度を新しく導入する |
bに該当する事業場 | 対象となる従業員数を拡大し過半数にする |
cに該当する事業場 | 休息時間を2時間以上延長し9時間以上にする |
事業場の状況によって取り組むべき目標が異なるため、自社がどれに当てはまるのかを把握しておきましょう。
【参考】厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」
「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」を受給するためには、以下のいずれか一つ以上の取り組みを実施していなければなりません。
(参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」)
勤務間インターバル制度をはじめて導入する事業場なら、制度についての社内研修や、就業規則の変更などは比較的取り組みやすいでしょう。事業場の課題に即したものや、無理なく取り組めるものを選んで実施することが大切です。
「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」で支給される金額は、助成の対象となる取り組みの実施にかかった費用の4分の3です。
ただし従業員数が30人以下の事業場では、前述の支給対象となる取り組み6〜8 の実施にかかった費用が30万円以上の場合、例外としてその金額の5分の4が助成されます。
「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」の支給上限額は、以下のとおりです。
休息時間 | 新規導入の場合(1企業あたり) | 適用範囲の拡大・時間延長の場合(1企業あたり) |
9時間以上11時間未満 | 80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 | 50万円 |
なお、上表の休息時間とは、事業場に導入する勤務間インターバルの中で最も短いものが基準となります。
【参考】厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」
勤務間インターバル制度を事業場に導入する際に注意すべき点は、以下の3つです。
それぞれの注意点について詳しく解説します。
勤務間インターバル制度のために事業場の労働環境を整える際は、勤怠管理システムの導入などにかかる費用を工面する必要があります。また、新しいシステムの導入後には、メンテナンス費用が継続してかかる場合もあるでしょう。
さらに、制度の導入で従業員一人あたりの労働時間が減ると、増員が必要となりこれまでより人件費がかかることにもなりかねません。制度導入の際には、必要経費を算出して事前に準備しておきましょう。
勤務間インターバル制度を導入したときは、従業員一人あたりの労働時間が減ることも少なくありません。状況によっては業務が時間内に終わらず、自宅に仕事を持ち帰って作業する従業員が出てくる可能性があります。
こうした事態が起こるときは、取り組み内容が事業場の状況に合っていないと考えられます。制度本来の目的を達成するためには、従業員の業務量の見直し・効率化・増員など、自宅でのサービス残業を解消するための工夫が必要です。
勤務間インターバル制度の導入においては、業務の進め方が今までと大幅に変わる可能性があります。従業員にとっては慣れない方法に変更しなければならなくなり、やりにくさを感じる場合もあるでしょう。
事業場全体に制度が定着するには、時間がかかることもあります。しかし、制度導入の目的やメリットを周知徹底し、根気強く従業員の理解を得る努力を続けましょう。
勤務間インターバル制度を導入している事業場は複数あり、厚生労働省がその事例集を作成しています。ここではその事例集から3社を取り上げ、具体事例を紹介します。
【参考】厚生労働省「勤務時間インターバル制度導入事例集」
KDDI株式会社では、2015年7月から全社に対して勤務間インターバル制度を導入しています。2015年以前も部分的には同制度を適用していましたが、労働組合から適用範囲拡大の要求があったことで、全社導入に踏み切りました。
導入内容は、管理職以外の社員に対する最低8時間のインターバル確保の義務化です。また、管理職を含む全社員に対しては、健康管理の指標として11時間のインターバル確保を掲げています。
11時間の健康管理指標を掲げたことで、社内でそれまで見えていなかった過重労働が明らかになりました。さらに、インターバルを意識することで健康リスクの回避ができるようになってきたことも、制度導入による効果の一つです。
TBCグループ株式会社では、2017年の1月より勤務間インターバル制度を導入しています。導入の背景には、エステティック業界の労働時間管理について、会社として意識を高めていきたいとの考えがありました。
労務管理が行き届いた働きやすい職場であるとアピールし、今後の人材確保につなげたかったことも、制度を導入した理由の一つです。
導入内容としては、グループ企業を含む全社員に対し、9時間のインターバルを義務化したことが挙げられます。また、健康管理指標として11時間(月11日以上)のインターバルを規定し、時間管理システムの電子化にも取り組みました。
効果として、時間管理の電子化を整えた店舗では、時間外労働の申請が楽になったという声がありました。さらに、スタッフの時間管理意識が高まってきていることもポイントです。
ユニ・チャーム株式会社では、2017年の1月より勤務間インターバル制度を導入しています。
導入理由は、働き方の改革と人事制度の改定を2018年度に実施予定であったことです。また背景には、育児や介護などで制約のある人たちも活躍できる制度を整えたいという考えがありました。
導入内容は、全社員に対し最低8時間以上、努力義務で10時間以上のインターバルの規定です。従業員一人ひとりがいきいきと健康に働ける環境を整え、事業場の生産性を上げることを最終目標としています。
勤務間インターバル制度は、従業員の休息時間を十分に確保するための取り組みです。導入することで、従業員の心身の健康維持や離職率の低下、企業イメージの向上などが期待できます。
制度を適切に運用するためには事業場の現状を正しく理解し、実態に即した取り組み目標の設定が大切です。
事業場を対象とした助成金もうまく活用し、勤務間インターバル制度を導入して業務効率や生産性の向上を目指しましょう。
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