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産業保健師とは、従業員が健康かつ安全に働けるように、健康状態の管理を担当する保健師です。従業員のメンタルヘルスや健康不安を解消するために、産業保健師の役割が重要視されています。
本記事では、会社で働く産業保健師の仕事内容や産業医・産業看護師との違いについてまとめました。また、企業が産業保健師を設置するメリットや、設置する際のポイントについても詳しく解説します。
産業保健師とは、企業で働く保健師のことです。企業で働く従業員が健康・安全に働けるようサポートする役割を担います。
また、産業医や人事労務部門の担当者たちと連携しながら、職場環境の改善などに取り組むのも重要な役割の一つです。
エムスリーキャリアが2023年4月に「産業医・産業保健業務に関する市場調査」を実施したところ、回答者の過半数以上が保健師を選任している結果でした。
従業員規模が多い企業ほど、契約形態を問わず選任する保健師の数が多い傾向にあります。契約形態で見てみると、常勤保健師よりも非常勤保健師を選任している企業が多いことが分かります。
産業保健師と産業医は、設置義務・必要な資格・業務内容が異なります。自社のニーズに応じて最適な専門家を選べるよう、両者の違いについて解説します。
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産業保健師と産業医の大きな違いの一つは、設置義務の有無です。50人以上の従業員を雇用する事業場では、産業医の選任が義務付けられています。
一方、産業保健師には、雇用する従業員数にかかわらず選任義務がありません。しかし、近年は職場における健康課題の多様化や深刻化しているため、選任義務がなくても、可能であれば設置を検討するとよいでしょう。
【参考】
厚生労働省「産業保健スタッフ」
厚生労働省「産業保健に関する現状と課題」
産業保健師と産業医では、必要な資格が異なります。
産業医として働くには、労働者の健康管理をするうえで必要な医学的知識を身につけていなければなりません。医師免許を保有していることに加えて、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
・厚生労働大臣が指定する者(日本医師会など)が実施する研修の修了者
・産業医の養成過程を設置している産業医科大学などで、厚生労働大臣が指定する当該過程の修了者
・労働衛生コンサルタント試験に合格し、試験区分が保健衛生である者
・大学で労働衛生に関する科目を担当する教授や講師などの経験がある者
一方、産業保健師として会社内で働くには、保健師免許と看護師免許の2つの国家資格が必要です。
【参考】
厚生労働省「産業医について」
厚生労働省「保健師国家試験の受験資格認定について」
産業保健師と産業医では、従業員の健康管理を行う点は共通していますが、業務内容は異なります。
産業医は、定期的な職場巡視や労働衛生教育など、法令で職務が定められており、医学の専門知識をもとに従業員の健康課題や職場環境改善についての助言や指導をします。
また、健康診断の有所見者やストレスチェックで高ストレスと判定された従業員に対し、必要に応じて医療機関の受診勧奨を行うのも産業医の職務です。
一方、産業保健師は産業医のサポートや従業員への健康指導、健康相談の対応などが中心的な業務になります。
【参考】厚生労働省「産業医について」
産業保健師と産業看護師は、同じ産業看護職であり業務内容が似ていますが、必要となる資格や業務の対応分野が異なります。両者の違いについて見ていきましょう。
産業保健師として働くには、保健師免許と看護師免許の両方が必要です。一方で産業看護師は、看護師免許を取得していれば企業で働けます。
産業保健師と産業看護師では、業務の対応分野が異なります。
産業保健師は、従業員の健康保持・増進のために健康管理を行うことが主な業務です。身体面だけでなく、メンタルヘルスケアも含めた包括的な健康管理を行います。
一方で産業看護師は、病気や怪我をした従業員の対応が主な業務です。産業保健師と違い、従業員の身体的なケアに関する業務が中心です。
【参考】e-Gov 法令検索「保健師助産師看護師法」
産業保健師の具体的な仕事内容は、主に以下などがあります。
いずれも産業医の職務のうち法定外のものをフォローする、従業員の健康を守るために重要な仕事です。
健康診断は、労働安全衛生法120条で定められている事業者の義務です。産業保健師は、企業が実施する定期健康診断の企画・実施・結果の通知まで幅広く関わります。
健康診断の結果、面接や指導が必要であると判断した従業員には、産業医の代わりに保健指導を実施することもあります。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
【関連記事】健康診断は企業の義務! 会社で実施される健康診断の種類、対象者などを解説
産業保健師は、ストレスチェックの実施を担当することもあります。
従業員が常に50人以上勤務している企業は、義務としてストレスチェックを実施しなくてはなりません。ストレスチェックを実施するには特定の資格や条件がありますが、産業保健師も実施者になれます。
また、ストレスチェックの実施後、結果を集計し高ストレス者を選定することも産業保健師の役割です。
【関連記事】ストレスチェック制度とは?実施によって得られるメリットや導入手順を解説
産業保健師は、安全衛生委員会・衛星委員会に参加して専門的なアドバイスをすることも役割の一つです。
50人以上の従業員を常に使用する事業者は、衛生委員会の設置が義務付けられています。さらに、一定の条件を満たす場合には、安全衛生委員会を設置しなくてはなりません。
安全衛生委員会・衛生委員会への産業保健師の出席は義務ではないものの、出席してもらうことも可能です。
従業員の健康課題を洗い出したり、従業員の健康維持・改善施策を検討したりする際に、産業保健師からの意見は参考になるでしょう。
【参考】e-GOV法令検索「労働安全衛生法」
【関連記事】安全衛生委員会と衛生委員会とは? それぞれの役割と開催条件について
日頃から従業員の健康やメンタルヘルスの相談に乗ることは、産業保健師がはたす大きな役割です。
産業医に比べると、産業保健師は企業にいる時間が長く、従業員と接する回数も多くなります。そのため従業員の日々の不調に気づきやすく、単発で終わらない継続的なフォローが可能です。
また、医学的なサポートが必要となった際に早い段階で産業医に引き継げます。このように産業保健師は、産業医と従業員をつなぐ役割をはたしているといえるでしょう。
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長時間労働者への対応も、産業保健師の仕事の一つです。
厚生労働省が定める基準の労働時間を上回った従業員に対しては、面接指導が義務付けられています。産業保健師の役割は、長時間労働者に面接指導を受けることを勧め、面談をする産業医に従業員の情報を共有することです。
企業が独自に設置する努力目標を上回った場合など、産業医が面談をする程度でない場合は産業保健師が面談を実施することもあります。
長時間労働者が多くみられる場合、経営陣・人事労務担当者・産業医などと連携し、労働時間を削減する取り組みを実施することも産業保健師の役割です。
【参考】厚生労働省「長時働者への医師による面接指導制度について」
【関連記事】長時間労働者への産業医面談が必要になる基準とは?面談を実施する流れも解説
企業が産業保健師を導入するメリットには、以下が挙げられます。
それぞれのメリットについて解説します。
産業医に加え、産業保健師が企業内の産業保健のチームに加わることで、より手厚い健康管理体制の構築ができます。
健康診断の事後措置や健康相談、休職者の復職支援の相談窓口として産業看護職がうまく機能することにより、従業員の健康不安に対してより早い段階で介入できます。
産業医も職場巡視を行いますが、多くて月1回程度の巡視では、実際に毎日働く人の目線で環境整備を行うのが難しいことも多いです。
たとえば、朝・夕だけ部屋が寒い、夕方になると部屋が暗くなるなど、産業医の巡視時にはチェック不可能な項目もたくさんあります。
職場に産業保健師が常駐していれば、衛生管理者による職場巡視に毎回同行することが可能です。これにより、健康を害する要因を専門家の目線から検討し、職場環境改善に役立てられます。
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産業保健師に期待できる一番のメリットは、産業医の負担軽減です。産業医は、産業保健について専門的な立場や法律的な責務を有する唯一の医療職であるため、職場の健康・安全管理について幅広い見識と対処が求められます。
反面、産業医に求められる業務量も多く、数人の産業医で数万人以上の従業員の対応に当たることもまれではありません。
産業医の法令業務以外を産業保健師が行うことで、産業医は法令業務だけでなく、組織的な職場環境改善などの重要な業務に注力できるようになります。
また、法律で義務付けられていない範囲を産業保健師が肩代わりすることで、一人ひとりの従業員にきめ細かいフォローを早い段階から行えます。
産業保健師を設置することで、人事・労務担当者の負担軽減にもつながります。産業保健師に、従業員の健康管理業務を受けもってもらえるためです。
人事労務担当者は、健康管理以外にも複数の業務を受けもっているケースがあります。健康管理に詳しくないことも多く、負担が大きくなりやすいでしょう。
産業保健の専門家である産業保健師を設置すれば、効率的に職場の安全衛生を管理できるようになります。
産業保健師を設置する際には、次の点に注意しましょう。
産業保健師を選定するうえでは、知識や能力だけでなくコミュニケーション力のある人材を選びましょう。
産業保健師は健康相談を通じて、従業員の困っていることを聞き出してアドバイスを与える必要があります。相手の話に共感し傾聴する能力が高いほど、従業員も心を開いて話しやすいでしょう。
また、産業医や人事・労務担当者と連携するためにもコミュニケーション力が必要です。人当たりがよく、周りに信頼されやすい産業保健師のほうが安全衛生管理が円滑に進むでしょう。
産業保健師を選定する際には、企業で実務にあたった経験があるかも考慮するとよいでしょう。看護経験はあったとしても、企業と保健所や病院では職場の環境が大きく異なるためです。
たとえば、企業特有の長時間労働や健康問題、メンタルヘルスの問題に対応するにはある程度の経験が必要とされます。また、企業に就職する以上、一般企業特有の組織構造や意思決定のプロセスに慣れなくてはなりません。
そのため、実際に企業で働いた経験がある産業保健師のほうが、スムーズに業務に入ってもらえる可能性が高いでしょう。
産業保健師の設置にかかる費用を把握しておきましょう。おおよその費用を知っておくと、決定権がある人物に対して産業保健師の設置を提案しやすくなるためです。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、保健師全体の平均年収は451万円で、産業保健師もほぼ同等と考えられます。
(出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」)
ただし、常勤の産業保健師を従業員として雇用する場合、費用は企業の給与水準に応じて変わるので注意が必要です。
また、労働者健康安全機構の調査によると、49.4%の企業が「保健師もしくは看護師の設置人数は1名」と回答しています。
(出典:労働者健康安全機構「令和2年度事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書」)
上記の情報をもとに、企業の状況によって設置人数・費用を検討するとよいでしょう。
質の高い産業保健活動を展開するには、産業保健師・看護師と産業医の連携が欠かせません。産業医には法令業務があり、産業医にしかできない業務は多岐にわたります。一方で、産業保健師・看護師には、法令業務が設けられていません。
3者が連携するには、産業医が全体を統括し、産業保健師・看護師が産業医の業務をサポートすることが重要です。
さらに、産業保健師・看護師は、産業医のサポートを行うとともに、従業員の健康に関する不安や悩みの一次相談窓口として機能するのが理想的です。
また、衛生管理者や人事労務担当者などとも協力して、職場の健康課題解決に取り組むことが、産業保健活動の質の向上につながります。
産業保健師は企業の健康経営を円滑に進めるために非常に重要な役割を担いますが、法律上の設置義務がありません。
しかし、産業保健師を設置することで、産業医の業務負担の軽減や手厚い健康管理体制の構築などが期待できます。
産業医の設置後の次のステップとして、また産業医のいない企業における健康経営の要として、産業保健師の設置を検討してみてはいかがでしょうか。
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単発の面談が必要な事業場向け