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産業医面談はオンラインで実施できる?リモート化の条件や注意点

働き方が多様化した現在では、従来の出社形式をはじめ出社と在宅勤務のハイブリッド型、フルリモートというように、企業ごとにさまざまな勤務形態が導入されるようになりました。それに伴い、一部の産業保健活動や産業医の対応も要件を満たすことでオンライン実施が可能になりました。

本記事では、オンラインでの産業医面談、衛生委員会といった産業保健活動について解説した記事をまとめてご紹介します。

目次

産業医面談はオンラインでの実施が可能

厚労省の通達により産業医面談はオンラインで行うことが可能

産業医面談は、産業医と従業員が対面で話すことが一般的でしたが、2020年11月に厚生労働省より、産業医面談のオンラインでの実施を認める通達が出されました。

産業医面談のオンラインでの実施が可能になった背景には、新型コロナウイルス対策やオンライン化の推進があります。

新型コロナウイルスの流行をきっかけにリモートワークが普及し、オンラインでの産業医面談の需要も高まりました。オンラインとすることで、在宅ワーク中でも面談を受けられるためです。

また、情報通信機器や通信環境の発展も、オンライン面談の普及に寄与しました。デジタル技術の促進により、オンラインでも対面と同様に円滑なやり取りができるようになったため、産業医面談のオンラインでの実施が認められたのです。

【参考】厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」

オンライン産業医面談のメリットとデメリット

産業医面談をオンライン化するメリット

  1. 時間と場所の制約からの解放:従業員は自宅や職場から、都合の良い時間に面談を受けられます。特に、多忙な方や遠隔地にいる方にとって、通院の手間や移動時間を削減できるのは大きな利点です。

  2. 心理的ハードルの低減:自宅などリラックスできる場所で面談を受けられるため、対面よりも気軽に相談しやすくなる傾向があります。

  3. 継続的な治療のしやすさ:時間や場所の制約が少ないため、継続的な面談や治療を受けやすくなります。

  4. プライバシーの保護:自宅など個室で面談を受けることで、プライバシーが確保され、デリケートな内容も相談しやすくなります。

産業医面談をオンライン化するデメリット

  1. 非言語情報の把握の難しさ:表情やしぐさ、声色など、対面で得られる細かな非言語情報が伝わりにくく、産業医が従業員の心身の状態を正確に判断するのが難しい場合があります。

  2. 通信環境への依存:安定したインターネット環境が必須であり、通信トラブルが発生すると面談が中断される可能性があります。

  3. 緊急時の対応:緊急性の高い状況では、対面での面談に切り替える必要があるため、迅速な連携体制が必要です。

産業医面談をオンラインで実施するための要件

産業医面談では、従業員との会話や面談中の従業員の様子(表情やしぐさ、声色など)から従業員の心身の健康状態を的確に判断して、必要な措置を講じる必要があります。

産業医面談をオンラインで実施する際は、対面での面談と同様に円滑なやりとりができなくてはなりません。

厚生労働省からの通達では、オンラインでの産業医面談を実施するための要件が示されています。

医師に関する要件

オンラインでの産業医面談を実施できる医師は、以下の条件のいずれかを満たすことが望ましいとされています。

  1. 対象従業員が所属する事業場の産業医である
  2. 過去1年以上にわたって、対象従業員が勤務する事業場の健康管理に関する業務をしている
  3. 過去1年以内に対象従業員が勤務する事業場を巡視した経験がある
  4. 過去1年以内に対象従業員に面接指導を実施した経験がある

以前まで産業医面談を実施する医師は、上記4つの条件をすべて満たしている必要がありました。しかし、2020年11月の法改正に伴って、これらの条件は努力義務となりました。

努力義務とはいえ、事業場の労働環境や従業員についてある程度把握している産業医が産業医面談を実施するのがよいでしょう。

また、オンラインで産業医面談を実施する際は、事前に産業医に以下のような情報を提供しなければなりません。

  • 該当従業員が所属する事業場の業務内容、作業環境
  • 該当従業員の業務内容、作業環境、勤怠情報
  • 産業医から情報提供を依頼された事項

【参考】厚生労働省「【基発1119第2号】情報通信機器を用いた労働安全衛生法(令和2年11月19日)」

情報通信機器に関する要件

産業医面談をオンラインで実施する際に用いる情報通信機器は、以下の3つの要件を満たさなければなりません。

  1. 医師と対象従業員がお互いに様子を確認でき、映像と音声の送受信を円滑に行える
  2. 情報漏洩や外部からの不正アクセス防止のための、情報セキュリティが確保されている
  3. 従業員が情報通信機器を滞りなく操作できる

オンラインでの産業医面談では、スムーズにやり取りができること、およびセキュリティがきちんと確保できることが大切です。医師に関する要件とは異なり、情報通信機器に関する要件はすべて満たさなくてはなりません。

オンラインでの産業医面談でスムーズにやり取りができるかどうかは、双方のネット環境にもよります。事前にテストするなどして情報通信機器に関する要件を満たしているか確認しておくとよいでしょう。

【参考】厚生労働省「【基発1119第2号】情報通信機器を用いた労働安全衛生法(令和2年11月19日)」

実施方法に関する要件

産業医面談をオンラインで実施する際の方法について、以下の2点に留意する必要があります。

  1. 実施方法について、事前に衛生委員会などで審議して労働者に周知しておく
  2. プライバシーに配慮した環境で行う

オンラインで産業医面談を実施する場合には、あらかじめ実施方法などについて衛生委員会で審議し、決定した内容を労働者に知らせておかなくてはなりません

また、プライバシーに配慮した環境を整えておくことも大切です。従業員の自宅に自室が無い場合などに備えて、会議室や応接室などを利用できるようにしておくとよいでしょう。

【参考】厚生労働省「【基発1119第2号】情報通信機器を用いた労働安全衛生法(令和2年11月19日)」

産業医面談をオンライン実施する際の注意ポイント

産業医面談をオンラインで実施する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 事前に衛生委員会で審議して、決定事項を従業員に周知する
  • セキュリティ対策をしっかりと行う
  • 相互に面談環境を整える
  • 緊急性がある場合は対面での面談に変更する

それぞれについて詳しく解説します。

事前に衛生委員会で審議して、決定事項を従業員に周知する

オンラインでの産業医面談を実施する前に、衛生委員会でオンラインでの産業医面談を導入するべきかどうかや、導入した場合の実施方法について審議しておく必要があります。使用する通信機器や必要なネット環境、機器の貸し出しの可否など細かい点まで決めておきましょう。

オンラインでの産業医面談の導入が決まったら、掲示物やメールなどで従業員に周知します。

セキュリティ対策をしっかりと行う

産業医面談には守秘義務があるため、セキュリティ対策をしっかりと行う必要があります。

産業医面談の録画データを誤って漏洩させてしまうケースも考えられるため、面談中の録音・録画は行わない方が望ましいです。不正アクセスへの対策などについても、事前に衛生委員会で話し合っておきましょう。

相互に面談環境を整える

産業医面談をオンラインで実施する際には、産業医、従業員ともにプライバシーが保たれた、落ち着いて話せる環境で臨むことが大切です。

通信環境が要件を満たしている場合でも、照明やカメラの角度が悪かったり、周囲の騒音がひどかったりすると産業医が適切な判断ができない可能性があります。オンラインで産業医面談を受ける従業員には、あらかじめ環境を整える必要性を伝えておきましょう。

緊急性がある場合は対面での面談に変更する

オンラインでの産業医面談は利便性が高いですが、対面の方が従業員の様子を確認しやすいのも事実です。産業医面談をオンラインで実施する際でも、産業医が緊急性の高い状況であると判断した場合には、対面での産業医面談に切り替える必要があります。

近隣の医師や事業場の産業保健スタッフと連携して、速やかに対応できる体制を整えておきましょう。

産業保健活動をオンライン化する際に知っておきたいこと

衛生委員会をオンライン開催するには

衛生委員会は対面で開催することが基本となっていましたが、2020年8月に厚生労働省より、衛生委員会のオンライン開催を認める通達が出されました。

衛生委員会では、従業員の健康保持・増進のために長時間労働などの労働状況や健康診断の実施状況、職場環境などについて話し合います。

衛生委員会をオンラインで開催するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 衛生委員会のメンバーが情報通信機器を容易に使用できる
  2. ネット回線が安定していて、衛生委員会のメンバー同士がスムーズに意見交換できる
  3. 個人情報の漏洩や不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策がとられている

衛生委員会をオンラインで実施する際には、対面で行う場合と同様にスムーズな話し合いができること、セキュリティがきちんと守られていることなどが求められます。

産業医が忙しく、オンラインであっても衛生委員会に参加できない場合は、事前に審議内容についての資料を送付し、意見を聞いておくとよいでしょう。

【参考】厚生労働省「【基発0827第1号】情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について(令和2年8月27日)」
【関連記事】衛生委員会をオンライン化する際の注意点とポイントを解説

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産業保健活動のオンライン対応に向けて準備しよう

新型コロナウイルスの感染拡大やオンライン化の推進などを背景に、オンラインで実施可能な産業保健活動が増えてきました。

産業医面談や衛生委員会をオンラインで行うためには、満たさなくてはならない要件があります。多様になった働き方に合わせて効率的・効果的に産業保健活動に取り組めるよう、オンラインでの実施に必要な要件を把握して準備を進めておきましょう。

また、当メディアを運営しているエムスリーキャリアでは、オンライン対応可能な産業医面談サービスもご提供していますので、よろしければこちらからチェックしてみてください。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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