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産業医には、働く人の安全と健康を守る役割があります。
その産業医には、おもに専属産業医(常勤)と嘱託産業医(非常勤)の2つの勤務形態があり、本記事ではそのうちのひとつ「嘱託産業医」について解説します。
「これから嘱託産業医を探すことになった」
「専属産業医とはどんな違いがあるの?」「うちの会社ではどちらを選任すれば良いの?」など、産業医に関する情報収集を行う企業の方向けにやさしく紹介する記事となっています。
なお、「嘱託産業医ってどんなお仕事?」といったように、産業医として求人を探している医師の方はこちらのページをご覧ください。
産業医の主なタイプには「嘱託産業医」と「専属産業医」2種類があり、それぞれの違いは勤務形態や企業との契約などが挙げられます。
嘱託産業医とは、企業において非常勤で働く医師のことで、委託産業医と呼ばれることもあります。
企業からみた嘱託産業医の活動頻度はおおよそ1ヶ月に1回、1時間程度の訪問を行い、職場の健康・安全について保健活動を実施しているケースが多いです。
契約形態は業務委託等の形式をとっていることが多いと言われています。
一方の専属産業医はその名の通り企業に常駐し、週に3日~4日程度、1日8時間程度の活動を行っているケースが一般的です。
そのため、企業と専属産業医は雇用契約を結んでいることが多いとされています。
上記2つの産業医の役割は共通しており、従業員をはじめとした企業等で働く人の健康・安全を守るというものがあります。
具体的には、労働災害やメンタルヘルス不調など仕事に関連する疾病を予防するため、専門的観点から指導や助言を行う存在です。
専属産業医はもちろん、嘱託産業医も産業医として認定されている必要があります。
病院やクリニックで働く医師(臨床医)と同じ医師免許に加えて、産業医学の専門知識について一定の要件を満たしていることが資格および条件になります。
具体的には、厚生労働省令にて定められた研修・プログラムを受講し、専門的な知識を身に付けていることが求められます(労働安全衛生法第13条第2項)。
プログラムについては医師会や産業医科大学の研修を修了することや、「労働衛生コンサルタント」試験の保健衛生区分で合格したりしている医師を指します。
嘱託産業医の働き方に注目してみると、産業医の資格を取得したあと本業として病院・クリニックにて勤務する傍ら、週に1日程度を嘱託の産業医として企業で活動するケースが一般的です。
なお「産業医とは?」「産業医についてもっと詳しく知りたい」というはこちらの関連記事もチェックしておきましょう。
事業場に常時雇用する従業員が50名以上いる場合には、嘱託産業医を選任する義務があります。
「事業場」というものは「企業」ではないことに注意が必要で、それぞれの単位は上のイラストのようになっており、「職場」と言い換えるとわかりやすいと思います。
法人単位ではなく拠点単位で数えるため、支社・営業所・店舗などはそれぞれで50人以上いるかどうかが判断されます。
そうなると次に「常時雇用する従業員の定義とはなんだろう」という疑問が湧いてくる方もいると思いますが、これは端的にいうと正社員はもちろん、派遣スタッフやアルバイトもカウントされることが一般的です。
このあたりについては産業医の選任ルールについてまとめた記事がありますので、興味のある方はご覧ください。
なお、産業医の選任は法令(※)で定められたルールですので、守れなかった場合には罰則があることに注意しましょう。
※(産業医の選任等)
第十三条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。(後略)
【出典】労働安全衛生規則(e-Gov)
結論から言いますと、嘱託産業医であれ専属産業医であれ、基本的な業務内容に大きな違いはありません。
しかし、両者は産業医として業務にあたる時間数が異なりますので、コミットできるレベルにも差が生まれることが考えられます。
また、「産業医は選任すればOK」ということは一切なく、選任後にも法令に対応した産業医業務を行っていくことが義務(労働安全衛生法・労働安全衛生規則)になっています。
ただ、嘱託産業医の限られた訪問時間であってもこ法令対応をクリアすることは十分に可能であります。
産業医の主な業務内容は、職場巡視や健康相談をはじめとした以下の7つです。
産業医の主な業務についてそれぞれかんたんに紹介していきますが、詳しく知りたいという方はこちらの関連記事を見ておきましょう。
職場巡視は、従業員の働く職場を実際に見て回ることで健康障害を予防する活動です。
具体的には、室温や光量は適切であるか、業務中に労災のおそれが発生する作業手順・環境になっていないか、といったことを確認することです。
なお、産業医による職場巡視は職場巡視は法令により毎月1回以上、もしくは2ヶ月に1回以上(要件をクリアする必要あり)の実施が義務付けられています。
職場巡視にて問題を発見した場合は、衛生委員会などに報告して改善を図るところまでが、産業医としての役割です。
※関連記事「産業医の職場巡視は法律上の義務!目的や頻度、チェック項目を解説」
非常勤の産業医が行う2つ目の業務内容は労働衛生教育の実施です。
労働衛生教育とは、企業と従業員に対して行う衛生講話を通じて行われることが一般的です。
従業員の健康管理と事業所の衛生管理について学ぶことを目的としており、この後の⑥にて紹介する衛生委員会にて衛生講話が行われるケースが多いです。
労働衛生教育は法令によって義務付けられている業務ではありませんが、労災防止やヘルスリテラシーの向上を目的として、多くの事業場で行われています。
嘱託産業医の業務3つ目は健康相談の実施です。
従業員から希望があった場合、産業医が個別で健康相談を受けます。
具体的にはストレスチェック(こちらも⑤にて後述)にて「高ストレス者判定」となってしまった従業員からの面談依頼などがあり、心身の健康に関する不安や悩み、職場環境で改善してほしいことなどの相談に対応します。その上で産業医は従業員の話にしっかりと耳を傾け、改善に向けた指導・助言を行います。
健康診断結果の確認と就業判定の実施をすることも嘱託産業医の業務です。
従業員は年に1回健康診断を受ける必要があり、これは労働安全衛生法第66条によって企業に義務付けられています。
嘱託産業医は健康診断の結果を確認した上で、従業員に対し改善策等を提案します。
関連記事:「【産業医監修】健康診断後、産業医に求められる対応とは?」
産業医の主な業務内容5つ目はストレスチェックの実施です。
従業員50名以上の事業場では法令によってストレスチェックの実施などが義務付けられています。
ストレスチェックは、厚生労働省などが提供するストレス調査票を対象労働者に記入してもらい、その結果から高ストレス者を選定します。産業医は高ストレスと判断された従業員に対し、面談や休業等のサポート、復職時の診断などを行います。
実施状況に関しては、管轄内の労働基準監督署長への提出が毎年必要です。そのため、産業医は実施から提出まで行わなければいけません。なお、本人の同意があればストレスチェックの結果は企業に通知できます。
【参考】厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
関連記事「ストレスチェック制度とは?」
非常勤の産業医が行う6つ目の業務内容は、衛生委員会への参加です。従業員が50人以上いる企業では「衛生委員会」を設置し、定期的に会議を開催する必要があります。嘱託産業医の参加は必須ではありませんが、構成員の一員として参加するのが望ましいとされています。
企業は産業医から、職場巡視やストレスチェックの報告、アドバイスなどの情報を得た上で従業員の健康管理と事業所の衛生管理に努めなければいけません。
非常勤の産業医が行う7つ目の業務内容は、一部の従業員との面談です。対象者となるのは休職者・復職者・高ストレス者・健康診断で異常があった従業員などです。個別で面談を行い、心身の状況を確認します。必要に応じて就業制限や休職を勧めたり、企業に報告したりします。
また、面談では医療機関の受診を促すのも産業医としての役割の1つです。休職者に対しては、復職するタイミングを判定します。
産業医が行う業務の詳細は「【まとめ版】産業医とは?役割・業務内容と設置するメリットを解説」に紹介していますので、確認しておきましょう。
厚生労働省によると、産業医として活動している産業医のうち、そのほとんどが非常勤の嘱託産業医として勤務しています。
専属産業医として勤務しているのは1割弱であるため、専属産業医を探すことはそう簡単なことではないでしょう。
嘱託産業医と専属産業医の主な違いは、勤務形態です。事業場によって、選任要件が変わってきますが、主な業務内容に違いはありません。次に、その具体的な内容について解説していきます。
【出典】厚生労働省「産業保健の現状と課題に関する参考資料」
産業医の選任要件は、事業場の規模によって異なります。
事業場の従業員が50名~999名であれば嘱託産業医の選任で問題ありません。
対して、従業員1,000名以上の事業場では専属産業医の選任が義務となっています(有害業務を行う事業場では500名以上で専属産業医の選任が義務です)。
また、従業員数が3,001名以上の大規模な事業場では、専属産業医を2名を選任する必要があります。
【関連記事】産業医の設置基準 何人以上から?自社に必要な人数は?
専属産業医は常勤の勤務形態になりますが、具体的な勤務時間については法令上定められていません。
そのため、企業と産業医間の契約内容によってさまざまです。これは非常勤の嘱託産業医も同様です。
専属産業医の場合、勤務形態と業務内容、また、社会保険加入対象となる勤務時間を考慮すると、週3. 5日以上働くことが適正と考えられるでしょう。嘱託産業医の場合、週1回、隔週、月1回で数時間の契約が多いため、勤務時間に大きな差があることが分かります。
【関連記事】常勤の専属産業医とは? その定義や選任基準などを解説
非常勤の嘱託産業医を探すにあたって、どのような点を意識すればよいのでしょうか。次に、産業医の探し方、産業医探しで意識したいことについて説明します。
産業医を探す方法は主に以下の5つです。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについてここではかんたんに紹介します。もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
医師会は都道府県や市区町村の単位で運営されていて、産業医を紹介している地域医師会もあります。地域医師会によっては、産業医の養成や、能力の向上に取り組んでいる場合もありますので、地域のことをわかっている産業医を紹介してもらえる可能性があります。
ただし医師会が行っているのは紹介のみで、産業医とは直接契約になります。職務内容・報酬額などの交渉は企業側で行わなければならない点は注意が必要です。
近隣に大学医学部があり、公衆衛生分野などが専門の医師がいるなら相談してみてもいいかもしれません。
大学の医師同士でつながりが強いため、知人紹介、求人を共有してもらえる可能性があります。
専属産業医を探しているのであれば、産業医科大学に求人を預けることもできます。ただし、産業医とは直接契約になるため、医師会への相談と同様の注意が必要です。
定期健康診断を依頼している病院・健診団体に、産業医の紹介を相談する方法もあります。病院・健診団体によっては産業医を紹介してもらえることもあります。
一方で、産業医報酬や業務内容については、事前によく確認してから交渉する必要があります。
経営者などであれば、知人のコネを使って産業医を探す方法もあります。しかし、紹介された産業医が自社とはマッチしない可能性もあります。その場合、紹介してくれた相手との関係上、簡単には断りにくいなどのデメリットが出てくることもあるようです。
多数の産業医が登録している紹介会社を利用すれば、事業場の事情に合った産業医を紹介してもらえる可能性が高いでしょう。
万一、産業医との間でトラブルが起こった場合、紹介会社の担当者が間に入って対応してくれます。後任が必要になったときは、大手の紹介サービスなら追加料金なしで後任の産業医を探してくれるケースがほとんどかと思います。デメリットを挙げるとするなら、手数料が掛かる点です。
非常勤の嘱託産業医の場合、契約している事業場への訪問時間や頻度によって報酬が変動します。具体的な報酬相場はどのくらいなのでしょうか。次に、医師会などの資料を基に説明していきます。
公益社団法人日本橋医師会(本部・東京都中央区)では、同会所属の産業医にヒアリングした結果を基に、嘱託産業医の報酬について以下のような資料を公表しています。
【産業医基本報酬額】
労働者 | 基本報酬月額 |
50人未満 | 75,000円~ |
50~199人 | 100,000円~ |
200~399人 | 150,000円~ |
400~599人 | 200,000円~ |
600~999人 | 250,000円~ |
【出典】公益社団法人日本橋医師会「産業医報酬基準額について」
なお、愛知県医師会産業保健部会では、嘱託産業医報酬の目安を以下のように公表しています。
【基本月額報酬(ストレスチェック対応時の報酬を含まない)】
労働者 | 基本報酬月額 |
100人未満 | 50,000円~ |
101~200人 | 65,000円~ |
201~300人 | 80,000円~ |
301~400人 | 95,000円~ |
401~500人 | 110,000円~ |
501~600人 | 125,000円~ |
601~700人 | 140,000円~ |
701~800人 | 155,000円~ |
801~900人 | 170,000円~ |
901~999人 | 185,000円~ |
【出典】愛知県医師会産業保健部会「嘱託産業医報酬の目安」
産業医の報酬は地域ごとに差がありますが、従業員の数に比例して面談数が増える、見るべき従業員が増えるため、従業員数が多いほど産業医への報酬額が高くなる傾向があると考えられます。
面談時間の延長が発生した産業医と企業間で取り交わした契約書に記載されていない業務を依頼する場合、追加料金の発生が考えられるため、注意が必要です。詳しくは、以下の関連記事で詳しく解説していますのでご確認ください。
【関連記事】産業医の報酬相場と報酬以外にかかる費用 会計処理の注意点などを徹底解説
ここまでで覚えておきたいこととしては「従業員が50名になったら嘱託産業医の選任が義務」ということでした。
では実際に嘱託産業医を探そうとしても、地域・エリアによっては産業医が見つかりづらいことがあります。
その理由のひとつが、産業医の資格を持つ医師が多くないということに起因しています。
50人以上の事業場は全国16万か所あるのに対し、活動している産業医は約34,000人。その多くは非常勤の嘱託産業医として活動しているものの、大抵は1〜2社を担当するにとどまるため、産業医を探すのは決して簡単ではありません。
そのため、一般的には50人以上になりそうな段階で嘱託産業医を探しはじめます。
【関連記事】産業医が必要な会社とは? 産業医選任の5大ポイントをチェック
嘱託産業医とは業務委託契約を結ぶことが多く見られます。
委託業務契約とは、企業が産業医に特定の業務を依頼し、その対価を支払う契約です。このため産業医は契約内容を遵守しなければならない一方で、契約内容にない業務を拒否することも可能です。
業務委託契約を結ぶ場合、その中には委任契約・準委任契約・請負契約があり、その契約内容はよく確認しておくことが必要です。
また、嘱託産業医と実際に契約する際には必要書類を揃えておくことや、作成時の注意点がいくつかあります。
こちらも以下の記事を事前にチェックしておきましょう。
【関連記事】「産業医との契約、何をどうする? 契約形態や契約書作成など徹底解説」
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以上、総まとめに近いかたちで嘱託産業医について紹介しました。
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