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安衛法における産業医の選任義務・罰則の要点まとめ

職場の従業員数が50名を超えるタイミングで、人事担当者が行わなければならないタスクは急増するといわれています。

その中のひとつに「産業医の選任」があります。
産業医選任は労働安全衛生法をはじめとした関連法にまつわる企業の義務です。

本記事では「産業医を選任することになった」「産業医の選任義務について知りたい」という方に向け、法令対応についてまとめています。
※本記事では主に従業員規模999人までの職場を対象とした「嘱託産業医」の選任に関する情報をまとめています。主に1,000名以上規模の職場で必要となる「専属産業医」の選任についてはこちらの記事で解説していますのでご確認ください。


産業医選任は労働安全衛生法で定められた企業の義務

従業員が50名以上になったら14日以内に産業医を選任する

産業医の選任は「50名以上」「2週間以内」が安衛法で義務付けられている

常時雇用する従業員が50人以上の事業場では産業医の選任が労働安全衛生法(通称「安衛法」)等の法令で義務付けられています。

安衛法をはじめとした各種の法令は、いわば働く人の安全・健康を守るための義務といえます。

産業医選任は労働安全衛生法第13条で定められた企業の義務です。よって、これを怠った場合は事業主が罰せられる可能性があります。

また、選任後は労働基準監督署への選任報告をすることも忘れてはいけません。

例えば従業員数が50名を超えるなど、産業医の選任義務が発生した日から2週間位内に必ず産業医を選任し所轄の労働基準監督署に届出を行うことが欠かせません。

産業医の選任については、労働安全衛生規則第13条(「安衛則」とも呼ばれます)にて「産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること」記されています。

産業医の選任に関する法律の条文を見てみましょう。

▼労働安全衛生法

第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
出典:労働安全衛生法 第13条(e-gov)

▼労働安全衛生規則

第十三条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。(後略)

出典:労働安全衛生規則 第13条(e-gov)

要点①:安衛法における産業医の選任義務「従業員50名」とは

企業と事業場の違い・考え方

産業医の選任義務は事業場と従業員数で決まる

労働安全衛生法では「事業場」という言葉が出てきます。この単語を聞き慣れない方も多いかと思いますが、「事業場」は「企業」と同じ意味ではないことに注意が必要です。

選任する産業医の人数は常時雇用する従業員の数により異なり、事業場単位でカウントします

事業場とは、簡単にいうと職場のことです。ですので、同じ企業という括りであっても場所が異なれば別の事業場として考えま(詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください)。

この事業場ごとに常時何名の従業員が勤務しているかという括りで、産業医を選任する義務の発生が決まります。

例えば、複数の支社を持つ会社の場合です。企業と事業場の関係は上の図のようになっており、この事業場の単位で従業員規模が50名を超えた際には、産業医(一般的に嘱託産業医と呼ばれる医師)の選任が義務となります。

もちろん、従業員が50人に満たない事業場であっても産業医を選任することは問題ありませんし、従業員の安全・健康にとっては良いことです。

余談ですが、前述した労働安全衛生規則第13条では、事業場の規模(常時雇用する従業員数の多さ)に応じて選任すべき産業医のルールを定めています。

例えば本社の従業員数が1,000名を超えるような場合や、有害業務を取り扱う事業場では従業員500名以上で専属産業医の選任が義務となります。

「嘱託産業医と専属産業医はなにが違うの?」という疑問が出てくると思いますが、その点についてはこちらの関連記事で詳しく解説しています。ご興味のある方はご覧ください。

つまり、有害業務を行う事業場などの例外を除けば、基本的に従業員が999名以下の職場では嘱託産業医の選任でOKということになります。

当メディアを運営しているエムスリーキャリアでは、2025年より産業医紹介・選任に関するCMを放映中ですので、よろしければご参考にされてください。

〈この章のまとめ〉事業場規模と選任する産業医の関係

事業場の規模と産業医のタイプ・人数など、ここまでの話をまとめると次の表のようになります。

自社の職場で必要となる産業医のタイプを確認しておきましょう。

事業場で常時雇用する労働者数 選任が必要な産業医の人数 産業医のタイプ
50名未満 選任義務なし(努力義務)
50〜499名 1名 嘱託産業医(非常勤)で可
500〜999名 1名 非常勤の産業医で可
ただし、労働者を特定業務に従事させる事業場の場合、専属の産業医が必要
1,000〜3,000名 1名 専属の産業医が必要
3,001名以上 2名 専属の産業医が必要

〈補足〉「常時雇用する労働者」の考え方

さきほどから「従業員が50名以上になったら」と繰り返していますが、正確には「常時雇用する労働者」が50名を超えた際に産業医の選任義務が発生します。

この「常時雇用する労働者」と何なのかというと、労働時間や日数に関係なく継続して働く従業員のことを指します。

よって、労働時間や日数が少ないアルバイトやパート、派遣社員など非正規雇用者も、継続的に雇用されているのであれば常時雇用する労働者に該当します。

継続して雇用される非正規社員も含めて、常時雇用する従業員の人数が50人以上となった時は、法令遵守のためにも産業医を選任する必要があります。

「常時雇用する労働者」についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事で紹介していますので、気になる方はチェックしておきましょう。

 

要点②:義務発生から「2週間以内」に産業医を選任・届出をする

義務発生から2週間以内に産業医の選任と届出を行う

安衛法・安衛則対応のポイントは「2週間以内に産業医の選任と届出を行う」

労働安全衛生法にて事業場の従業員数が一定以上になると産業医の選任義務が発生しますが、いつまでに何をすればよいかイメージしづらいとも考えられます。

これについては前述したように、産業医の選任義務が発生したら2週間(14日)以内に産業医を選任することが法令(労働安全衛生規則第13条)で定められています。

かつ、産業医の選任後は遅滞なく「産業医選任報告」を所轄の労働基準監督署長に届け出ることも忘れてはいけません。

つまり、従業員が50名を超えてから産業医を探し始めるとなるとかなりタイトなスケジュールであることが分かります。

そのため多くの企業では従業員が50名を超えそうなタイミングから産業医を探し始めることが一般的です。

その理由は2つあり、「世の中の産業医の人数がそもそも多くない(エリアによっては見つけることが難しいケースがある)」ということと「産業医を探し、選任できるまでには日数がかかる」からです。

当社は産業医の紹介を専門的に行っている会社ですので、産業医の紹介を期日までに確約するサービスがあります(しかも、費用は業界の最安値水準です)。

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産業医が選任できたら、「産業医選任届」を作成します。産業医選任の報告書作成については記入例も含めてこちらの記事で詳しく紹介していますので参考にしてみてください。


(産業医の選任等)

第十三条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。(後略)
【出典】労働安全衛生規則(e-Gov)

 

安衛法の罰則:産業医選任の法令違反は50万円の罰金

続いて「では、産業医を選任しなかった・できなかったらどうなるのか」ということも知っておきましょう。

上記で述べたように一定の規模を超えた事業場において、産業医の選任は労働安全衛生法で定められた企業の義務であり、この義務を怠った場合はすなわち法令違反となってしまい、事業主が罰則の対象となる可能性があります。

具体的な内容は労働安全衛生法第120条の罰則にて定められており、「(中略)五十万円以下の罰金に処する。」とされています。

また、産業医未選任の事業場には行政指導がなされる可能性もありますし、何より従業員の安全・健康を守るという観点からリスクになります。

よって義務が発生したら、速やかに産業医を選任することが大切になるわけですが、「誰でも良いから産業医を選任する」という考えにも注意が必要です。

その理由は、選任後の産業医に稼働実態がない場合は、労働基準監督署から指導を受ける可能性があるからです。

これがいわゆる「産業医の名義貸し問題」というもので、書類上は産業医を選任しているものの、産業医の活動実態がなく、従業員にとって危険な状態であるというものです。

そのため、企業としては選任後もしっかりと活動してくれる産業医を選任することが重要になります。

もっと詳しく知りたい方は産業医の名義貸し問題に関するこちらの記事もチェックしておきましょう。

 

産業医の未選任問題と産業医が見つからない状況

9.3%の事業場が罰則を受けるリスクあり

厚生労働省が行った「労働安全衛生調査(2021年)」の結果によると、産業医の選任義務を順守していない事業場は9.3%存在していることがわかっています。

この9.3%の事業場については先ほどの罰則が科される可能性があるほか、2024年4月に公表されたの日本医師会の答申では、未選任事業場が確認された場合、地域医師会に連絡のうえ産業医を選任に関する行政指導を徹底することが提言されています。

こうなった場合、企業のイメージダウンにつながるというリスクもありますが、そもそも産業医が見つからず、産業医を選任できていないというケースがあることも考えられます。

産業医の稼働状況:34,000名程度しか活動していない

最後に産業医の稼働状況を見てみましょう。
厚労省が公表した「医師会が関わる産業保健の現状」によると、令和4年の時点で日本医師会の認定産業医は107,000人を超えており、そのうち有効者数は70,000人程度とされています。

そして、その中で実際に稼働している産業医はその約半数の34,000名ほど。

経済センサスで見てみると50名~999名の日本の法人数は98,000件以上存在します(2021年)

つまり、全国の職場の数に対して産業医の数が足りているとはいえない状況です。

産業医の不足について、都市部ではあまり大きな問題にならないかもしれませんが、地方によっては医師数が少なく、産業医選任が難しいという実態もあるようです。

「なかなか産業医が見つからない」という方は、産業医の探し方を見直してみることもひとつの手です。編集部が作成したこちらの記事がおすすめです。

また、当社では全国エリアで産業医の紹介を行っています。気になる方はパンフレットもご覧ください。

産業医選任に関する法律と要点について紹介しました。

産業医は選任して終わりではなく、その後の産業保健活動にしっかり取り組んでいくことが大切になります。

当社では産業医の紹介と選任時~選任後のサポートを業界最安値の水準で提供していますので気になる方はサービスパンフレットをダウンロードしてみてください。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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