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〈事例から読み解く〉SCSKの健康経営。ヘルスリテラシーを向上させる取組みとは

人的資本経営への関心が高まる中、従業員の健康管理は人事部門の枠を超え、企業の持続的成長を左右する経営アジェンダとなっています。多くの企業が施策の定着に苦心する中、長年にわたり確かな実績を積み上げているのがSCSK株式会社です。

2026年3月、経済産業省と東京証券取引所が選定する「健康経営銘柄2026」が発表されました。SCSKは、2015年の制度開始から10回以上選定されています。これは国内でも極めて稀な記録であり、特に情報・通信業においても健康のリーディングカンパニーとして知られています。あわせて「健康経営優良法人2026(ホワイト500)」にも認定されており、その継続的な取り組みの質は高く評価されています。

なぜ、SCSKはこれほど長期にわたり高い水準を維持し続けられるのでしょうか。一時的な施策に終わらせず、健康を企業文化へと昇華させた同社の取り組みは、実務を担う人事担当者にとって多くの示唆を含んでいます。本記事ではその仕組みの概要をご紹介します。

就業規則に落とし込まれた「労使のコミットメント」

SCSKの取り組みの根幹には、経営理念「夢ある未来を、共に創る」の実現に向けた「人を大切にします」という強い意志があります。特筆すべきは、この理念が単なるスローガンに留まらず、企業の最高規則である「就業規則」に明文化されている点です。

就業規則の条文には、社員一人ひとりの健康が事業発展の礎であることが宣言されています。ここで注目したいのは、会社側の措置義務だけでなく、社員側の協力義務もあわせて規定されていることです。健康保持増進に努めることを社員の「義務」と定義することで、健康経営を単なる福利厚生ではなく、プロフェッショナルとして自らのコンディションを整えるという「仕事の要件」へと昇華させています。この労使相互のコミットメントが、全ての施策を支える土台となっています。

経営課題の解決を見据えた「ロジックの構築」

理念を実行に移すため、同社では「健康経営戦略マップ」を作成し、健康課題へのアプローチを論理的に体系化しています。施策の実施そのものを目的化させないよう、4つの柱を中心に、経営課題の解決に至る因果関係(ロジックモデル)を明確に描いています。

具体的には、教育を通じて自律的な知識を養う「健康リテラシー」を起点とし、生活習慣を整える「健康増進」、健診データに基づく「健康管理」、そしてメンタルヘルスや両立支援といった「安心感・リスク対応」を組み合わせています。これらが連動することで、従業員の行動変容が健診数値の改善に繋がり、最終的にプレゼンティーイズムの解消やワークエンゲージメントの向上といった経営成果に結びつくストーリーが共有されています。

インセンティブ制度「健康わくわくマイレージ」の連動

現場での実践においては、参加の心理的ハードルを下げる「ナッジ」の活用と、データに基づいた「管理」が両立されています。

例えば、健康づくりを習慣化させる仕組みとして「健康わくわくマイレージ」というインセンティブ制度を導入しています。歩数や朝食摂取、休肝日の設定、健診結果などをポイント化し、基準を達成した社員に給与加算などのインセンティブを付与するものです。これにより、健康への関心が低い層の巻き込みを実現しています。一方で、ハイリスク者への対応は非常に厳格です。再検査の受診率をKPIとして徹底管理するほか、睡眠改善や卒煙など、特定のリスクに特化した専門的なフォローアッププログラムが重層的に用意されています。

継続がもたらした「数値的成果」

SCSKが10回以上銘柄に選定されている最大の要因は、10年以上の長期にわたる取り組みが、確かな数値的成果として表れている点にあります。制度開始当初と直近のデータを比較すると、従業員の行動は大きく変化しています。

ウォーキングの実施率は34%から50%超へと向上し、休肝日の実施率も90%という極めて高い水準に達しました。朝食の摂取率や睡眠時間の確保についても着実な改善が見て取れます。これらの数値は、単なる習慣の変化に留まらず、「健康とパフォーマンスの関係」を実感する社員の増加を意味しています。10年以上という歳月をかけて、健康であることが仕事の成果に直結するという認識が、組織の文化として定着しました。

健康経営から「Well-Being」への進化

2026年度も最新の認定を受けた同社は、現在、健康経営を包含する「Well-Being経営」へとその歩みを進めています。仕事へのやりがいや心理的安全性、柔軟な働き方などを含む要素を独自に定義し、従業員の幸福と企業成長のシナジーを最大化させるフェーズに入っています。また、自社で培ったノウハウをコンサルティング等を通じて社会に還元する姿勢も、業界のリーダーとしての役割を象徴しています。

まとめ:人事担当者に求められる視点

SCSKの事例から学べるのは、健康経営を成功させるための「仕組み化」と「継続」の重要性です。経営メッセージを就業規則などのルールに落とし込んで覚悟を示すこと、そして施策がどのように経営課題に寄与するかという「地図」を整理すること。これらは、組織の規模を問わず適用できる本質的なアプローチです。

短期的な成果を追うのではなく、10年先を見据えて文化を醸成していく姿勢。SCSKが長年かけて証明し続けているこの軌跡は、これから健康経営を深化させようとする企業にとって、確かな指針となるはずです。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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