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特定健診とは?項目・対象者や2024年からの変更点について解説

特定健診は、40歳以上75歳未満を対象にメタボリックシンドロームに注目した健診や指導を行い、生活習慣病の予防・改善へとつなげるためのものです。

通常の健康診断とは異なるため、どのように対応するべきか分からない企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、特定健診の詳細や料金相場、2024年から適用される変更などについて解説します。


特定健診とは

特定健診とは、メタボリックシンドロームに注目した健診を行い、早期に生活習慣病のリスクを発見・指導を行うための診断です。

特定健診が重要視される背景には、生活習慣病が死亡のリスクを間接的に高める要因であることが挙げられます。

画像引用:政府広報オンライン「生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!」

死因の上位である心疾患や脳血管疾患は、動脈硬化が要因です。とくに内臓脂肪がある状態に高血圧症などの病気が重なると、動脈硬化を招く危険性が高まります。つまり、生活習慣病が死亡のリスクを間接的に高めているのです。

また、「内臓脂肪型肥満+高血圧症などの病気2つ以上」の状態はメタボリックシンドロームと呼ばれ、男女ともに40歳以上から増加傾向にあります。

初期の生活習慣病は自覚症状がないケースも少なくありません。そのため、発見と対応が手遅れとならないよう、メタボリックシンドロームの早期発見・指導を目的とした特定健診が2008年よりスタートしました。

【参考】
政府広報オンライン「生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!」
厚生労働省「平成20年4月から特定健康診査・特定保健指導が始まりました!」

特定健診の対象者

特定健診の対象者は、40歳以上75歳未満の全被保険者および被扶養者です。ただし、妊娠出産や病気療養で入院している方などは対象外となります。

【参考】政府広報オンライン「生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!」

特定健診の診査項目

特定健診における各診査の詳細は次の通りです。

基本的な健診の項目 ・質問票(服薬歴、喫煙歴等)

・身体計測(身長、体重、BMI、腹囲)

・理学的検査(身体診察)

・血圧測定

・血液検査

・脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)

・血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c、やむを得ない場合には随時血糖)

・肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)

・検尿(尿糖、尿蛋白)

詳細な健診の項目 ・心電図検査

・眼底検査

・貧血検査(赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値)

・血清クレアチニン検査

「基本的な健診の項目」は、全員が受ける必要のある項目です。一方で「詳細な健診の項目」は、一定の基準を超え医師が必要と判断した場合に受ける必要がある項目です。

【参考】厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 4 版)」

特定健診と健康診断の違い

特定健診が生活習慣病の早期発見・予防のためにメタボリックシンドロームに注目した健診であるのに対し、健康診断は病気全般の発見を目的としたものです。

特定健診と健康診断の具体的な違いは次の通りです。

健診名 対象者 検査項目
健康診断 常時雇用する労働者 ・問診(既往歴および業務歴の調査や自・他覚症状の有無の確認)

・身体測定、視力・聴力検査

・血圧測定

・便及び尿検査

・胸部エックス線検査 など10数項目

特定健診 40歳以上75歳未満の全被保険者および被扶養者 健康診断の内容にくわえ

 

・血液検査

・肝機能検査

・血中脂質検査

・空腹時血糖

・心電図検査

・眼底検査

・貧血検査 などを実施

健康診断の対象者となる「常時雇用する労働者」は、正社員だけに限りません。契約社員やパート・アルバイトであっても一定時間以上働いてる方は対象となります。

また、特定健診では上表に記載されている検査を一度にすべて行うわけではありません。いくつかの項目を検査し、医師が必要と判断した場合のみ、追加で行われるものもあります。

【参考】
厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 4 版)」
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断」

特定健診の実施にかかる費用相場

特定健診の実施費用は、従業員一人あたり7,000~10,000円程度 です。特定健診だけを従業員に受けてもらうのであれば、費用は保険者(国健康保険協会や健康保険組合)が負担してくれます。

ただし、雇い入れ時や定期的に実施される健康診断などと同時に特定健診を実施した場合、重複する項目の検査費用は企業負担となります。

(参考)厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4版)」

費用や詳細な対応は加入している健保組合によって異なるので、一度確認しておきましょう。

特定健診で基準を超えた対象者には特定保健指導をおこなう

特定健診によって生活習慣病のリスクが高いと判断された場合、対象者にあわせて特定保健指導と呼ばれるアドバイスが行われます。

特定保健指導には「動機付け支援」「積極的支援」の2つがあり、対象者が抱えるリスクの程度にあわせて実施されます。

参考:厚生労働省「特定健康診査・保指導の円滑な実施に向けた手引き(第4版)」

特定保健指導の内容

特定保健指導の内容である「動機付け支援」「積極的支援」について解説します。

動機付け支援

動機付け支援とは、メタボリックシンドローム予備群にあたる方を対象に、保健師や管理栄養士が生活習慣改善のサポートを行うものです。

原則1回の動機付けと呼ばれる面接が行われ、食事・生活面の課題を明らかにした上で、実行可能な計画を立てます。

3ヶ月以上経過後に、行動目標が達成できたか、食事・生活面に変化が見られたかについて評価されます。

積極的支援

積極的支援は、メタボリックシンドロームに該当する方を対象に定期的かつ継続的に行われるサポートです。

面接から評価までの大まかな流れは、動機付け支援と変わりません。しかし、積極的支援の場合は、行動の評価や励ましを通して積極的なサポートが実施されます。

特定保健指導となる対象者

特定保健指導の対象となる基準は、次のように定められています。

腹囲 追加リスク 喫煙
(質問票より)
特定保健指導対象者
1.血糖2.脂質3.血圧 40~64歳 65~74歳
男性85.0cm以上

女性90.0cm以上

2つ以上該当 積極的支援 動機付け支援
1つ該当 あり
なし 動機付け支援
上記以外で

BMI25.0以上

3つ該当 積極的支援 動機付け支援
2つ該当 あり
なし 動機付け支援
1つ該当
上記以外 情報提供 or 特定保健指導非対象者

【出典】厚生労働省「特定健康診査等実施計画作成の手引き(第4版)

なお、上記で積極的支援に該当する方であっても「2年連続で積極的支援となった」かつ「BMIや腹囲が一定数改善している方」は動機付け支援相当となります。また、健診時にすでに高血糖や脂質異常、高血圧の薬剤治療を受けている方は特定保健指導の対象とはなりません。

2024年から適用される特定健診・特定保健指導の変更点

2024年より、第4期特定健診・特定保健指導が開始されることにともない、特定健診、特定保健指導それぞれにいくつかの変更点があります。

参考:厚生労働省「特定健康診査等実施計画作成の手引き(第4版)」

特定健診の変更点

特定健診において2024年から変更される点は次の2つです。

  • 喫煙・飲酒に関する質問内容の変更
  • 中性指導測定前の絶食時間の変更

それぞれについて解説します。

喫煙・飲酒に関する質問内容の変更

喫煙・飲酒に関する質問が、より健康リスクに気づきやすい内容へと変更されることになりました。

喫煙に関しては質問の細分化が行われており、飲酒に関しては頻度を調査するための質問が追加されています。また、特定保健指導に関する質問も変更されており、従来は利用意思を問う程度の内容であったものが、より指導介入しやすい質問へと変わりました。

中性脂肪測定前の絶食時間の変更

従来まで検診前は10時間以上の絶食が必要でしたが、食後3時間半以上経過していれば中性脂肪による血中脂質検査が受けられるようになりました。

これにより、これまで長時間の絶食がネックで特定健診を避けていた方の心理的ハードルが下がるため、健診を受ける方の増加が期待されています。

特定保健指導の変更点

特定保健指導における変更点は次の3つです。

  • アウトカム評価制度の導入
  • 達成状況の見える化推進
  • ICTの活用

それぞれについて詳しく解説します。

アウトカム評価制度の導入

1つ目の変更点はアウトカム評価制度の導入です。

従来、保健指導はポイント制となっており、さまざまな取り組みによって通算180ポイント以上を獲得することによって保健指導が完了することとなっていました。

しかし、この方法は行動の事実のみが評価対象となっていたため、成果を評価できておらず、大きな課題となっていました。

アウトカム評価制度は、目標の達成に対してポイントが付与される形式となっており、実際の改善を評価できます。

達成状況の見える化推進

2つ目の変更点は、達成状況の見える化推進です。

アウトカムの達成状況や対象者の行動変容などの情報を見える化し、成果のあった要因を分析・評価することで、より効果的な保険指導へつなげることを目的としています。

具体的には次に挙げる内容の評価・分析を行います。

  • 「腹囲2cm・体重2kg 減」の達成割合
  • 行動変容指標の改善割合
  • 次年度以降の特定健診時の階層化や体重等の状況
  • 喫煙者の次年度禁煙割合
  • リピーター(2年連続して特定保健指導対象となる者)の特定保健指導の終了状況
  • 複数年継続した健診結果の変化

ICTの活用

3つ目の変更点はICTの活用です。

ICTとは、インターネットやスマートフォンなどの情報通信機器を活用して、コミュニケーションをとる技術のことです。ICTの活用により、リモートでの健康に関する指導が可能となります。

対象者の住まいや勤務状況によっては、直接指導が難しいこともあるため、ICTの活用は利便性向上の効果が期待されています。

特定健診・特定保健指導の内容を把握して適切に実施しよう

特定健診は、生活習慣病予防を目的として、メタボリックシンドロームに着目した検査を行うことです。特定健診を通じて生活習慣の見直すことや、特定保健指導につなげることで、疾病リスク低減を目指しています。

企業にとって自社が抱える従業員が健康的に長く働くことは、企業にとってもプラスになります。昨今の多様な働き方のニーズに応えるためにも、特定健診の内容や必要性を正しく把握しておきましょう。

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