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労働安全衛生法に基づく健康診断とは?種類や対象者などをわかりやすく解説

企業の人事労務担当者の皆さま、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施は、従業員の健康管理と企業の法的義務を果たす上で非常に重要です。しかし、「どの健康診断を、誰に、いつまでに実施すれば良いのか」「費用は誰が負担するのか」など、多くの疑問をお持ちではないでしょうか。
この記事では、労働安全衛生法が定める健康診断の種類、対象者、検査項目、実施時期、そして企業が負うべき義務について、わかりやすく解説します。また、健康診断の結果に基づく措置や、違反した場合の罰則についても触れていきます。

労働安全衛生法とは?健康診断実施の重要性

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的とした法律です。この法律に基づき、企業には従業員に対して特定の健康診断を実施する義務が課せられています。健康診断は、従業員の疾病の早期発見・早期治療だけでなく、疾病の予防や健康保持増進にも繋がる重要な取り組みです。
エムスリーキャリアが実施した企業アンケートでも、重視している指標として「健康診断・ストレスチェック受診率」(31%)が1位、「健康診断2次診断の受診報告率」(20%)が7位に選ばれています。このことから、多くの企業にとって関心の高いテーマであることがわかります。

【参考】e-GOV法令検索「労働安全衛生法」

労働安全衛生法で義務付けられる健康診断の種類と対象者

労働安全衛生法では、主に以下の3種類の健康診断の実施が義務付けられています。それぞれ対象者や実施時期が異なりますので、ご確認ください。

雇入れ時健康診断(労働安全衛生規則第43条)

【対象者と実施時期】
常時使用する労働者を雇い入れる際に行う健康診断です。
試用期間中であっても、入社後速やかに実施する必要があります。
ただし、採用から3ヶ月以内に、すでに以下の項目を満たす健康診断を受診しており、その結果を証明する書面を提出した場合は、一部または全部の項目を省略できる場合があります。

【検査項目】
以下の項目をすべて実施する必要があります。

  • 既往歴および業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
  • 胸部X線検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査(赤血球数、ヘモグロビンの量)
  • 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
  • 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
  • 心電図検査

定期健康診断(労働安全衛生規則第44条)

【対象者と実施時期】
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に実施する健康診断です。
パートタイマーやアルバイトであっても、以下のいずれかの条件を満たす場合は対象となります。

  • 通常の労働者の所定労働時間の4分の3以上勤務している者
  • 通常の労働者の所定労働時間の2分の1以上勤務している者で、特定業務従事者健康診断の対象となる業務に従事している者

【検査項目】
雇入れ時健康診断と同じ項目が基本となります。

特定業務従事者健康診断(労働安全衛生規則第45条)

【対象者と実施時期】
特定業務(深夜業、有害業務など)に従事する労働者に対し、当該業務への配置換えの際、および6ヶ月以内ごとに1回、定期的に実施する健康診断です。
深夜業に従事する労働者は、通常の定期健康診断のほかにこの健康診断が必要です。

【検査項目】
通常の健康診断項目に加えて、業務内容に応じた特殊な検査項目が追加されます。例えば、深夜業従事者には、胃部X線検査や血液検査などが追加される場合があります。

【参考】
厚生労働省「健康診断Q&A」

厚生労働省「「常時雇用する従業員」とは?」
厚生労働省「一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?」
厚生労働省「派遣元が実施すべき事項」
国税庁「第1款 役員等の範囲」

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その他の健康診断と面接指導

上記のほかにも、労働安全衛生法では特定の状況下で実施が義務付けられる健康診断があります。

特殊健康診断(労働安全衛生法第66条第2項)

【対象者と実施時期】
特定の有害業務(特定化学物質、放射線など)に従事する労働者に対して、法令で定められた時期(6ヶ月以内ごとなど)に実施が義務付けられています。
有害物質の種類によって、対象者や実施時期、検査項目が異なります。

海外派遣労働者の健康診断(労働安全衛生規則第45条の2)

【対象者と実施時期】
海外に6ヶ月以上派遣する労働者に対して、派遣前および帰国後に実施が義務付けられています。

ストレスチェック制度に基づく面接指導(労働安全衛生法第66条の10)

【対象者と実施時期】
ストレスチェックの結果、高ストレスと判断され、医師による面接指導を希望する労働者に対して、事業者は面接指導を実施する義務があります。
希望する労働者からの申し出があった場合、遅滞なく実施する必要があります。

健康診断にかかる費用負担と労働者の受診義務

健康診断にかかる費用は、原則として事業者が全額負担しなければなりません。これは、労働安全衛生法で事業者に健康診断の実施が義務付けられているためです。
また、労働者には健康診断を受ける受診義務があります。正当な理由なく受診を拒否することはできません。企業は、労働者が健康診断を受診しやすいよう、日時調整や受診場所の提供など、必要な配慮を行う義務があります。

健康診断結果の取り扱いと企業の義務

健康診断の結果は、個人情報であるため、厳重に管理する必要があります。

健康診断結果の通知と保管

事業者は、健康診断の結果を労働者本人に遅滞なく通知しなければなりません。
健康診断個人票を作成し、5年間保管する義務があります。

医師の意見聴取と就業上の措置

健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者については、事業者は医師または歯科医師の意見を聴取しなければなりません。
医師の意見に基づき、必要に応じて労働時間の短縮、作業転換、配置転換など、労働者の健康保持に必要な就業上の措置を講じる義務があります。

労働基準監督署への報告

特定の健康診断(特殊健康診断など)の結果については、所轄の労働基準監督署長への報告が義務付けられています。

労働安全衛生法に基づく健康診断の罰則

労働安全衛生法に定められた健康診断の実施義務に違反した場合、企業には罰則が科される可能性があります。

罰則の種類

  • 罰金: 50万円以下の罰金が科される場合があります(労働安全衛生法第120条)。
  • 指導・勧告: 労働基準監督署から指導や勧告を受ける場合があります。改善が見られない場合は、さらに厳しい措置が取られる可能性もあります。

罰則を避けるためにも、労働安全衛生法に基づく健康診断の適切な実施が不可欠です。

まとめ:適切な健康診断実施で企業と従業員の安全を守る

労働安全衛生法に基づく健康診断は、従業員の健康を守り、企業が法的責任を果たす上で非常に重要な取り組みです。種類ごとに異なる対象者、項目、実施時期を正確に把握し、適切に実施することが求められます。
もし、貴社における健康診断の運用に関してご不明な点やお困りごとがございましたら、専門家へのご相談もご検討ください。適切な健康管理体制を構築し、従業員の皆さまが安心して働ける職場環境を維持していきましょう。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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