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従業員50人以上の職場でストレスチェックが義務化されていることから分かるように、仕事にはストレスが付きまといます。人間であるため、ストレスがかかると傷ついてしまうこともあるでしょう。大切なのは、いかにストレスから立ち直るかです。
この記事ではストレスから立ち直る強さであるレジリエンスとは何かや、どうやったらレジリエンスを高めることができるかをお話します。
圧力をかけるとボールはへこみ、圧力がなくなるとボールは丸い形に戻りますよね。この回復する力、弾力性がレジリエンスです。レジリエンスとはストレスがかかっても元に戻ることのできる「しなやかな強さ」のことです。
レジリエンスは以下の6つの要素からなります。
1. 自己統制
自分の感情や行動をコントロールできることです。
2. 粘り強さ
挫折してもあきらめないことです。
3. 自己効力感
自分ならできるという自信のことです。
4. 新しいことを恐れない
興味・関心を色々なものに持つことができることです。
このことは、1つのことにこだわらず他の道筋を探すことに繋がります。
5. 楽観性
未来に対して絶望せず、どうにかなると思えることです。
6. 対人関係スキル
良い人間関係をきずくことです。
また、人を助けること・人に助けられることができることもストレスを乗り越えるのに大切です。
ストレスに負けない強さとして、例えばストレスを成長の機会として捉える性格(心理学ではハーディネスと呼ばれます)や、1つのことを粘り強く続けられること(心理学では固執性と呼ばれます)のほうがいいと思う人もいるかもしれません。
あるいは、そもそもストレスを感じにくい性格の人や、楽観主義な人は「自分はこのままでいいや」と思うでしょう。しかし、今あげた性格には実は危険な側面があります。
ストレスを成長の機会と受け止めるため、不安や抑うつをあまり感じないので精神面での健康は保たれやすいです。しかし、身体的には負荷がかかっているため、いつかは体が悲鳴を上げる恐れがあります。
1つのことに粘り強く取り組めることは良いことです。しかし、度を超して1つのことにこだわり過ぎてしまうと、大局を見据えることができないという問題が起こります。また、効率的に仕事をこなすことができないということに繋がる恐れもあります。
2007年にユーキャン新語・流行語大賞のベストテンに入賞した「鈍感力」。嫌な出来事をすぐに忘れられる、説教を受けても右から左に流せるなどと、鈍感なことは精神衛生に資する側面もあります。ただし、職場という人とのつながりのある環境で生きる以上、ストレスへの鈍さは集団行動を取れなくする恐れがあります。
楽観的であることは心身の健康につながると多くの研究で証明されています。しかし、それは「根拠のある」楽観主義に限った話です。客観的な判断や努力などの裏付けを伴わない「根拠のない」楽観主義は仕事の妨げになる恐れがあります。
「レジリエンスの6つの要素」で紹介したものは、以下の5つの方法により高めることができます。実践しやすい方法を行ってください。
研究者である上野 雄己・平野 真理,・小塩 真司が2018年に行った「日本人成人におけるレジリエンスと年齢との関連」についての調査では、レジリエンスは生涯を通じて発達していくことが分かりました。これは単に年を取ることでレジリエンスが身に着くということではありません。
部下ができる、大きなプロジェクトを任せられるといった会社での成長や、子供の誕生や親との死別といったプライベートでの成長といった年齢相応の課題をクリアしていく中でレジリエンスが身に着いていくのです。そのため、若い社員の現在のレジリエンスが低いからといっても、悲観しなくても大丈夫です。
また、仮に休職した人がいたとしても、その人はレジリエンスが低いからダメだと捉えてはいけません。「休職前の働き方には無理があった」「休職することで何が見えてきたか」などのように人生の経験として捉えることで、レジリエンスを高めることに繋がります。
2018年に発表された研究によると、マンツーマンやコーチングでのレジリエンス向上プログラムを実施することは労働者のメンタルヘルス介入に有効であることが分かりました。
プログラムのワークシートでは、例えば、どんな場面で自分は不安を感じやすいか、その場面で自分はどんなことを考えていたのか、なぜそのような考え方をしてしまうのかといったことを用紙に書き出すよう指示されます。書き出すことで、自分のことを客観的に捉えやすくなるのです。
特にレジリエンスが低い社員や、ストレスチェックで引っかかった社員にマンツーマンでのワークシートを実施することで、レジリエンスを高めて不適応状態に陥るのを阻止できると考えられます。
ただしワークシートを実施する上で、人に言いにくい悩みを話すこともあるでしょう。そのため上司や同じ部署の仲間ではなく、普段接することのない人事部や外部のカウンセラーとマンツーマンでワークシートを行うことをおすすめします。
嫌だった出来事を思い出させ、そこでの自分の考え方が現実に即したものだったか、他にどんな考え方ができるかなどを考えるといったワークシートを通して、考え方の見直しを図ります。
レジリエンスが低い人やストレスチェックで引っかかる人は「自分が悪かった」という自責的な思考や、ちょっとしたミスを深刻に捉えすぎるマイナス思考に陥りやすい傾向にあります。
ワークシートに記入することで、出来事から距離を置いて考えることができます。
ワークシートを繰り返すことで、マイナス方向に歪んだ考え方が少しずつ修正され、現実に即した考え方ができるようになっていきます。そのため、感情に振り回されにくくなっていくことが期待できるのです。
歪んだ考え方を修正するワークシートは、市販でも販売されています。心理学を学んでいない人であっても、認知行動療法のワークシートは使いやすいです。
逆境グラフとは、自分がどんな人生を歩んできたかを表現したグラフです。横軸は年齢、縦軸は自分の人生の浮き沈みを示し、何歳の頃にどんな出来事があったかを記していきます。
人生悪いこともありますが、何かのきっかけがあって好転していきます。そのときにどんな出来事があったのか、自分は何をしたのか、何を思ったのか、周りの人は何をしてくれたのかなどを振り返っていくことで、自分が持っている力に気づくことができます。その結果、自己効力感を高めることができるでしょう。
ただし、あまりにつらい逆境は思いだしたくないこともあります。その場合は、第三者的立場で考えるなどしてもらっても大丈夫です。
また、過去の困難に対して、今の自分ならどんなことができるか、他に乗り越える方法はなかっただろうかなどを考えることで、視野を広げる効果も期待できます。
マインドフルネスとは「今、この瞬間」に対して意識を向けることです。「考え方の見直し」では自責的な思考を望ましくないものとしていました。しかし、どうしても自責的に考えてしまうという人もいるでしょう。
マインドフルネスのあり方では、自責的に考えてしまうことをダメだと否定しません。一歩距離を置いた位置から、客観的に自分が何を考えているか、どう感じているかを捉えるようにするのです。
マインドフルネスのあり方を身につけるトレーニングとして、「今ここ」の自分の呼吸に意識を向ける方法があります。もちろん途中で注意が外れることもあるでしょう。それでも良しとして再び呼吸に注意を向けることを繰り返してください。
トレーニングを重ねることで、悪いことばかりに注意を向けないようにするという注意のコントロールができるようになり、嫌な感情から距離を置くスキルを身につけられることが期待されています。ひいては、レジリエンスの中の自己統制を高められると考えられます。注意点としては、あせってマインドフルネスを習得しようとしなければ…と考えてはいけません。あるがままを受け入れることが大切です。
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運動すると気分がすっきりすることはよく知られていることですが、このことにはセロトニンという脳内の神経伝達物質がかかわっています。
セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれているため幸せと関連していると考えられがちですが、正確には気分の安定とかかわっています。そのため、運動してセロトニンの分泌を高めることで、レジリエンスの自己統制を高める効果が期待できるのです。
3分早歩きしたら3分普通に歩くのを交互に繰り返すインターバル速歩やダンスのように一定のリズムで体を動かす運動がセロトニンの分泌を特に高めます。
でも、ダンスやインターバル速歩をするのが恥ずかしいという人もいるかもしれません。山梨大学大学院総合研究部助教小島令嗣が2018年に行った「身体活動とレジリエンスの関連」の調査によると、日常生活での運動量が多い人ほどレジリエンスが高い傾向にありました。つまり、どんなものでも良いので日頃から運動を積極的に行うことがレジリエンスを高めることに繋がるのです。
ギスギスした職場とゆったりとした職場、明るい人と暗い人、これらの違いの1つとして考え方の枠組み(心理学ではフレーミングと呼ばれます)の違いがあります。例えば以下はどちらのほうが多くの人が納得した意見だと思いますか?
A.10人中7人が納得した
B.10人中3人が納得しなかった
AもBも実は同じです。でも、どこに考え方の焦点を持ってくるかによって印象が変わるのです。
考え方の枠組みは職場での声かけに応用できます。例えば、部下の行動を評価する場合には「できなかったこと」ではなく「できたこと」をまず積極的に声に出すようにしてください。褒められることを強く意識できるため、自己効力感が高まりやすくなります。また、当たり前のことと軽視されがちですが、「ありがとう」の言葉かけをお互いにすることも大切です。上司・仲間との関係が良好になります。
ストレスから立ち直るためにはレジリエンスが大切です。レジリエンスを高めるには、(1)人生経験を積む、(2)マンツーマンでのワークシート、(3)マインドフルネス、(4)運動、(5)ポジティブな声かけを意識することが有効です。
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