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新型コロナウイルスによる働き方の変化が語られる際、「ニューノーマル」という言葉がよく使われます。この記事では、ニューノーマルとは具体的に何を指すのか、どのような働き方の変化があるのか、新しい働き方において産業保健はどのように対応するべきかについて解説します。
ニューノーマル(=New Normal)とは、直訳すると「新しい普遍性」という意味です。具体的には、社会的に大きな影響を与える出来事が社会や習慣に変化を起こし、新しい常識が生まれることを指します。
過去にニューノーマルが誕生したタイミングとしては、2000年初頭のインターネットの本格的な普及と、2009年に起きたリーマン・ショックが挙げられます。
本格的なネット社会の到来は、ビジネスのやり方に大きな変化をもたらしました。例えば、それまでは営業といえば、顧客の元へ足を運び、紙をベースに契約を結ぶことが一般的でした。広告は、新聞・テレビなどを用いたマス広告が主流でした。しかしネットの普及により、営業はメールやホームページを活用しながら効率的に行われるようになり、広告はWEBサイトでユーザーに合わせたものが表示されることが当たり前になりました。
リーマン・ショックにおいては、企業のあり方に変化が見られました。それまで絶対的に安定だと見なされていた多くの大企業の経営が立ちいかなくなり、国内外で内部統制に対するニーズが増え、CSRやSDGsという形で企業の責任が追求されるようになったのです。
現在、新型コロナウイルス感染拡大をうけ、多くの企業がこれまでと異なる働き方へとシフトしています。この新しい働き方が、新型コロナウイルスによるニューノーマルと言われているのです。
具体的には、企業は対面することなく仕事を進めることが求められ、リモートワークが盛んに取り入れられるようになりました。そして、多くの企業がリモートワークの効率の良さや生産性の高さを実感しました。そのため、たとえ新型コロナウイルスが収束しても、リモートでの労働はニューノーマルとなるだろうと予想されているのです。
以下で、新型コロナウイルスによる具体的なニューノーマルについて説明していきます。
これまでは「企業で働く」と言えば、「オフィスに週に5日通う」ことが当たり前でした。しかし、ニューノーマルでは、インターネットを用いて自宅で働く在宅勤務が増えるとされます。
新型コロナウイルスの流行による緊急事態宣言の発令や外出自粛要請をきっかけに、多くの企業がリモートワークへと乗り出したことも、記憶に新しいのではないでしょうか。リモートワークは、通勤時間が不要なため生産性の向上につながったり、オフィスコストを削減できたり、社員のワークライフバランスを整えやすくなるという効果があります。
これまでは社員同士や取引先との連絡手段は、メールと電話が当たり前でした。ニューノーマルでは、オンラインのチャットツールの活用が主流になることが予想されます。
オンラインのチャットツールを使うと、瞬時に、どこでも、誰とでも連絡を取ることが可能です。加えて、書類・音声・画像などもデータとして共有・保存ができるというメリットがあります。在宅勤務時でも手軽にデータにアクセスできるため、リモートワークの拡大に合わせ、チャットツールもより普及していくでしょう。
これまで、打ち合わせや会議の実施は、訪問・対面で行うことが当たり前でした。ニューノーマルでは、オンライン会議が一般的になります。
オンライン会議のメリットは、場所の移動や準備が不要という点です。また、会議で用いる資料の印刷の手間・コストを削減できることも利点です。ほとんどのオンライン会議システムには、資料を共有できる機能が備わっているため、事前の資料送付なども不要で会議を開催できます。
上述の通り、これまでは会議をはじめとして、仕事で用いる資料は紙媒体であることが当たり前でした。ニューノーマル時代には、ペーパーレス文化がより浸透するでしょう。その理由は、テレワークやオンライン会議などが主流となると、そもそも紙での資料の受け渡しが難しくなるためです。最近では、契約などに用いる押印もデジタル化される動きが進んでおり、ペーパーレスはさらに進むことが予想されます。
これまでは、多くの企業で全社員共通の出勤時刻、退勤時刻が定められていました。ニューノーマルでは、時差出勤やフレックスタイム制度の利用が当たり前となります。
その理由は、特にコロナ禍においては、通勤電車などで人の密集を避ける必要があるためです。また、コロナ後においても、時差出勤やフレックスタイム制度の拡大は続くと予想されます。フレックスタイム制度を利用することで、子育てや介護の必要がある人も働きやすくなるためです。結果として、企業にとっては人材を長期雇用できたり、多彩な人材を雇用できたりというメリットがあるのです。
これまでは、一般的にオフィスを言えば、同じ部署・課の人はデスクを並べて働いていました。しかし、コロナ禍においては感染予防のため、従業員同士の間隔を空ける、デスクは間隔を開けて配置する、席の間にパーテーションやビニールを設置することが当たり前になります。
また先述の通り、アフターコロナにおいても、テレワークの常態化が予想されます。テレワークが当たり前になることで、オフィスの役割が見直されるようになるでしょう。これまでオフィスが「一緒に働くための場」だったのが、「従業員が集まり情報を共有するための場」へ変化すると考えられます。そして、このようオフィスの目的の変化に伴い、職場サイズの縮小や郊外への移転が行われる可能性も考えられます。
新型コロナウイルス感染拡大をうけて、産業保健の在り方も変わりつつあります。以下で、産業保健においては具体的にどのような変化がるのか詳しく解説します。
これまでは、安全委員会や衛生委員会、産業医面談は対面で行うのが当たり前でした。しかし、コロナ禍においては、安全委員会や衛生委員会の開催はテレビ電話による方式にすることや、開催を延期することなどの対応が認められています。産業医面談も同様に、オンライン上で行われることが増えています。
ちなみに、情報通信機器を用いた衛星委員会などのオンライン開催については、厚生労働省労働基準局から、通信の安定性やセキュリティの確保などを前提とした上で行うようにという留意事項が通達されています。また、オンラインでの産業医面談においても、通信の安定性やセキュリティの確保は大切です。特に、面談においては従業員の声や表情などの情報も重要です。適切な判断・指導をするためにも、はっきりとした音声・映像通信ができる環境で面談の実施を心がけましょう
参考:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について
これまでは、マスクの着用や手洗いは、風邪やインフルエンザが流行する冬季のみにその重要性が喚起されていました。しかし、ニューノーマルでは、新型コロナウイルスの飛沫感染防止のためのマスク着用、接触感染防止のための手洗いの徹底が必要になります。
新型コロナウイルスは症状がなくても感染している恐れがあるため、体調に問題がなくともマスクの着用が求められます。また、帰宅時には感染リスクを下げるために、こまめな手洗いが求められるようになります。
これまでは、マスク着用や手洗い同様、オフィスの消毒や換気といったウイルス対策も、風邪やインフルエンザの流行期のみに行われていました。
ニューノーマルでは、社内でのコロナウイルス感染を防ぐために、季節を問わずに行うことが求められます。感染リスクを下げるため、年間を通してオフィスの入り口に消毒液を設けたり、定期的に換気を行ったりする必要があります。
リモートワークが常態化すると、どうしても従業員の健康・メンタル管理に目が行き届きにくくなります。そのため、これまで以上に産業医との連携が重要となります。
テレワークが主流となっている企業の場合、どのように対応していくか産業医とよく話し合っておく必要があるでしょう。具体的には、在宅勤務の場合に従業員の復職・休職はどう扱うのか、産業医面談はオンラインで対応するのか、などについて、ルールを取り決めておくことが推奨されます。
最後に、ニューノーマルな働き方を積極的に導入している企業について紹介します。
食品メーカーのカルビーは、新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、オフィス勤務者の「モバイルワーク」を標準化しました。
具体的には、モバイルワークの標準化、コアタイムを設けないフルフレックス制度の導入、単身赴任の解除、通勤定期券代の支給停止、モバイルワーク手当の支給などを行っています。
また、上記を実践しやすいように、WEB会議システムの活用化、契約書の電子捺印、名刺の電子管理化などITによる業務効率化も併せて行われています。
「通勤しない方が、手当が厚くなる制度」の実施に取り組んでいる、とまとめられます。
電機メーカー富士通も、ニューノーマルに対応すべく様々な施策を実践・予定しています。代表的なものとしては、以下が挙げられます。
オフィス縮小による最適化やテレワーク勤務を基本とするなど、本記事内で紹介した「ニューノーマル」がまさに体現されています。
飲料メーカーのキリンは、社員の出社者数の上限を3割として、原則として在宅勤務をする施策を打ち出しました。また、在宅勤務を行う社員を対象に、通勤手当を実費精算に変更し、在宅勤務手当を支給するとしています。そして、キリンでは、新型コロナウイルスの収束後も、この方針を続ける予定であるとしています。
その理由として、キリンの人事を担当する取締役は「『アフター』コロナという状況ではなく、『ウィズ』コロナという時代に変わりはない。そのため、感染リスクをなるべく減らしたい」、「『出社しないで仕事を回すにはどうしたらいいか』という課題に直面したことで、これまでの固定観念を崩す働き方のアイデアが出始めている」と語っています。
コロナ対策としての一時的な働き方の変更ではなく、まさにニューノーマルの働き方の実践と言えるでしょう。
ここまで、ニューノーマル時代における働き方と産業保健のあり方の変化について紹介してきました。
コロナ禍において、働き方が変わっているのを実感している人も多いかもしれません。テレワークの効率や生産の高さが認められることで、この働き方はニューノーマルとなると予想されます。
産業保健も、ニューノーマルな働き方に対応すべく、リモート対応をする、年間を通して衛生対策をしっかりと行うなど新しい工夫が必要になってきます。
この記事を参考にして、新しい働き方に合わせた産業保健体制の整備に取り組んでみてください。
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