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職場で騒音対策を行うことになったものの、どのような対策を取ったらいいのかわからずお困りの人も多いかもしれません。
騒音障害防止ガイドラインは、策定から30年となる令和5年に大きな改訂が行われました。騒音が発生する可能性のある事業場の場合、適切な対応が求められます。
本記事では、騒音障害ガイドラインの内容と令和5年の改定事項、職場で取り組むべき施策を紹介します。自社における騒音障害対策の参考にしてください。
騒音職場ガイドラインとは、騒音が発生する職場に従事する労働者が、騒音性難聴を発症しないために策定されたガイドラインです。
耳は空気の振動を感じ取って音を知覚するため、大きな音を浴び続けると感覚器官が壊れ、音が聞き取りにくくなる恐れがあります。長時間・慢性的に騒音を浴び続けた結果、生じる難聴が騒音性難聴です。
このような背景から厚生労働省は平成4年に、企業が騒音障害対策に取り組むための指針としてガイドラインを策定しました。
【参考】
J-STAGE「「騒音障害防止のためのガイドライン」の見直しの背景と主なポイント」
厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
騒音障害ガイドラインにおいて、対応が必要となるのは次の2種類の作業場です。
それぞれあてはまる条件や対応すべき内容が変わるため、以下で詳しく説明します。
著しい騒音が発生する可能性が高いと定められている作業場は次の8つです。
【出典】
厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
厚生労働省「事業場の騒音対策に関する法令」
これらは労働安全衛生法588条、およびガイドラインの別表1に記載されています。従業員に騒音障害が発生するリスクが非常に高いため、適切な騒音レベルの把握・騒音対策の実施が求められます。
業務内容上、大きな騒音を発する可能性が高い作業場は主に以下のとおりです。
【出典】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
これらは、労働安全衛生法では著しい騒音を発する作業場としては指定されていません。しかし、ガイドラインにおいては騒音障害が発生しないように定期的に等価騒音レベルを測定・評価する必要があるとされています。
騒音レベルの測定については屋内作業場・坑内の作業場・屋外作業場のそれぞれで手順が定められています。自社がどの区分に該当するのか、正しく把握して対応しましょう。
騒音障害対策のために各企業が取り組むべきことは、次の5つです。
各項目の内容について、改訂版の騒音障害防止ガイドラインと、見直し方針をもとに解説します。
【参考】
厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン見直し方針」
事業者は、ガイドラインが適切に実施されるよう、騒音障害防止対策を実施する管理者を専任しなくてはなりません。管理者は職場の騒音レベルの測定や騒音低減措置などを、組織全体として継続的に実施します。
建設工事など、元請事業者が関係請負人に作業を指示している現場では、誰が取り組むのか不明確な場合もあるでしょう。元請事業者は、関係請負人がガイドラインに沿った対応を行えるように指導・援助する責務があります。
【参考】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
作業環境の管理については、各作業場の騒音障害発生のリスク度合いに応じて個別の対応が求められます。
圧縮空気・動力駆動の機器を用いたり、金属加工・木材加工を行ったりする屋内作業場では著しい騒音が発生し、騒音障害のリスクが非常に高まります。このため、定期的な等価騒音レベルの測定が必須です。
屋内・屋外・坑内で機器を用いて作業を行う作業場では、著しい騒音ではなくても、大きな騒音によって騒音障害が発生する可能性があります。等価騒音レベルが継続的に85dBを上回る場所では、定期的に測定を行わなくてはなりません。
測定の結果、等価騒音レベルが85dB以上の場合、発する騒音自体を低減する・ついたてを設置するなど騒音障害を防止するための改善措置が求められます。
等価騒音レベルの測定は6ヶ月以内ごとに、もしくは施設や設備、作業工程を変更した際に都度行わなくてはなりません。また、測定の結果については必要な事項を記録したうえで3年間保存する必要があります。
【参考】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
騒音が発生する作業場では、事業者は聴覚保護具の使用と作業時間の管理をガイドラインに沿って行います。
聴覚保護具は、遮音値が十分なもの(日本産業規格(JIS)T8161-1に基づくもの)を使用しなくてはなりません。事業者は、労働者が保護具を正しく着用しているかの確認が必要です。
等価騒音レベルが85~100dBとなる場合、一日あたりの許容ばく露時間が定められています。事業者は、労働者に騒音障害が発生しないよう作業時間を管理しなくてはなりません。
【参考】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
騒音障害を防止するための健康管理としては、ガイドラインで次の3つが定められています。
【出典】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
騒音健康診断は、「労働者個人の騒音ばく露状態の調査」「集団としての騒音の影響の調査」の2つの目的があります。騒音健康診断を含めた健康管理の流れは次のフローチャートの通りです。
【出典】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
騒音健康診断で異常が見られた労働者については、手順に従って二次検査を行い、必要に応じて事後措置を実施します。
また、騒音健康診断の結果は労働基準監督署に報告するとともに、記録した結果は5年間保管しなくてはなりません。
事業者は管理者を選任する際に、該当者に次の項目の労働安全教育を実施する必要があります。
【出典】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
管理者だけでなく、騒音作業に従事する作業者に対しての労働衛生教育も実施しなくてはなりません。科目は「人体の騒音に及ぼす影響」「聴覚保護具の使用・維持管理」の2つです。
令和5年4月に行われた、ガイドラインの改定ポイントは以下の4つです。
【出典】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインを改訂しました」
このような改定が加えられた背景には、平成29年に実施された騒音作業現場の実態調査があります。
アンケート調査の結果、多くの事業場でガイドラインが正しく活用されていないことが明らかになりました。問題視された点は、ガイドライン自体の認知が進んでいなかったことと、多くの作業場で騒音測定が行われていなかったことです。
このため、各事業者がより確実に騒音障害を防止できるよう見直しが行われました。それぞれの改定内容のポイントについて解説します。
【参考】J-STAGE「「騒音障害防止のためのガイドライン」の見直しの背景と主なポイント」
改定ポイントは、まず騒音障害防止に取り組む管理者を選任することです。
改定前は、すべての従業員に対して約3時間の教育・研修が課されていましたが、実際に取り組むのは簡単ではなく、大きなハードルになっていました。そこで改定後は、騒音障害対策を主導する管理者の選任が追加されています。
選任された管理者は騒音障害対策に関する研修を受講し、職場の環境改善に率先して取り組まなくてはなりません。
【参考】J-STAGE「「騒音障害防止のためのガイドライン」の見直しの背景と主なポイント」
改定後のガイドラインには、騒音レベルの測定方法として個人ばく露測定と推計が追加されました。
改定前に示されていた、騒音レベルの測定方法は次の2通りです。
しかし、アンケート調査から正しく測定できない作業場がある実態が明らかになっています。このことから、以下の2通りの測定方法が追加されました。
【出典】厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」
各作業場は、作業環境に応じて適切に等価騒音レベルを測定・推計できる方法を選択する必要があります。
改定後のガイドラインには、聴覚保護具の選定基準も明記されるようになりました。
聴覚保護具は適切に装着して使用すれば、騒音対策として非常に効果的です。しかし遮音性能の高すぎる保護具を用いると、作業中のコミュニケーションが困難になるおそれもあります。
そこで改正後は、JIS T8161-1にもとづいて測定された遮音値が目安として設定されました。事業者はこれにもとづいて、必要かつ十分な遮音値の保護具を選定する必要があります。
【参考】J-STAGE「「騒音障害防止のためのガイドライン」の見直しの背景と主なポイント」
改正のポイントの4つ目は、騒音健康診断の検査項目です。まず定期健康診断では、高音域(4,000Hz)の聴力検査の音圧が40dBから25dBまたは30dBに変更されました。
これは、高音域での騒音性難聴の判断基準が30dBに定められているためです。一次検査である定期健康診断の基準を厳しくすることで、騒音性難聴の早期発見につなげる狙いがあります。
また、雇入時健康診断や定期健康診断の二次検査では、6,000Hzでの聴力検査が新たに追加されました。
これは、騒音性難聴の場合に6,000Hz付近の聴力低下が先に表れることが明らかになったためです。事業者は4,000Hzと6,000Hzの両方を測定し、聴力の低下がより進行している周波数の値を高音域の聴力として採用しなくてはなりません。
【参考】J-STAGE「「騒音障害防止のためのガイドライン」の見直しの背景と主なポイント」
騒音障害防止ガイドラインには、騒音が発生する作業場において従業員の騒音性難聴を防止する目的があります。また、令和5年4月には実態調査の結果にもとづいて、より確実な対策が行えるように改正されました。
従業員の騒音性難聴を対策するには、作業環境の等価騒音レベルを正しく測定し、把握しておく必要があります。騒音レベルが大きい場合には、作業環境の管理、作業内容の管理、従業員の健康管理が欠かせません。
また、現場の従業員任せにせず、事業者側が積極的に騒音障害対策に取り組むことも重要です。選出した管理者を中心に、騒音性難聴が発生しないような職場の体制づくり、および労働衛生教育を徹底しましょう。
産業医の選任など、産業保健関連の法定義務が一目でわかるチェックシートです。 最近では、労基署から指摘を受けた企業担当者からの相談も少なくありません。働き方改革を推進する観点から、国では今後も法定義務が遵守されているかの確認を強化していくと思われるため、定期的に自社の状況を確認することをお勧めします。
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け