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従業員が50人以上の事業場には、労働法令上、5つの義務が課せられています。一方で、従業員50人未満の事業場にも産業保健における法令上の義務があります。本記事では、その具体的な内容について解説してきます。
産業保健の法令上の義務における、従業員50人未満と50人以上の事業場の大きな違いの1つは、産業医の選任義務の有無です。
産業医の選任義務が発生するのは、常時雇用する従業員が50人以上の事業場です。このため、従業員50人未満の事業場では産業医の選任義務はありません。しかしながら、企業には安全配慮義務が課せられており、従業員が安全で健康に働くために配慮することが求められています。この観点から、従業員50人未満の事業場でも産業医を選任することが望ましいと考えられます。
なお、令和3年の労働災害統計によると、事業場の規模が小さいほど労働災害が多い結果となっています。このことから、事業場規模が小さくても、安全衛生管理が必要であることがわかります。
【令和3年事業場規模別労働災害発生状況】
出典:厚生労働省「労働災害統計」
【関連記事】中小企業で産業医がいない場合、どうなる? 相談先は?
従業員数を問わず、全ての企業で課される産業保健上の法的義務は、以下の3つです。
従業員を1人でも雇っている場合は、定期健康診断を受けさせる義務があります。費用については、使用者側で負担する必要があります。なぜなら、使用者には従業員に安全かつ健康で働いてもらうよう配慮する義務(安全配慮義務)があるからです。
健康診断は従業員の健康管理の基本となるものですが、実は会社の規模が小さくなるにつれて実施率が下がる傾向にあります。それに対し、何らかの異常所見が見つかる確率は、会社の規模が小さいほど高くなることがわかっています。高血圧や脂質異常症などの基礎疾患を放置したまま従業員を働かせた結果、「過労死」などが起こった場合には、使用者側に責任を問われることもあるのです。
【関連記事】社員の健康診断は義務?企業が理解しておきたいポイントとは
時間外・休日労働時間が月100時間を超え、疲労の蓄積が認められる長時間労働者に対しては、本人の申し出があった場合、医師による面接指導を行わなくてはなりません(労働安全衛生法第66条の8)。
これは、脳血管疾患及び虚血性心疾患などの発症が長時間労働との関連性が強いとする医学的知見があるからです。そもそも長時間労働にならないよう配慮することが大切ですが、やむを得ず長時間働くこととなった場合は、健康状態についてのフォローが必要となります。
長時間労働者の面接に関する義務については、以下記事をご参照ください。
【関連記事】長時間労働者に産業医面談は必要! 長時間労働の基準、産業医面談の対象者や流れを解説
参考:厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」、「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
従業員を雇い入れた場合には、社会保険と労働保険に加入しなければなりません。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)については、国・地方公共団体または法人の事業所の場合は従業員の人数に関わらず、また特定の業種(※1)で常時5人以上を雇用する個人事業所の場合は強制加入となります。パートやアルバイトでも、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者の分の4分の3以上あれば加入対象となります。保険料は事業主と労働者の折半となります。
※1 製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告工業、教育研究調査業、医療保険業、通信法同業など
雇用保険と労災保険は、事業規模に関わらず加入しなければならないものです。雇用保険は労働者が失業した時のための制度であり、労災保険は労働者が仕事で怪我や病気をした時のための制度です。雇用保険の保険料は事業主と労働者の折半ですが、労災保険は全額事業主の負担となります。
従業員が10人以上になると、先述した3つの義務に加え、さらに以下の2つ(従業員が43.5人を超えた場合は3つ)の法的義務が加わります。
参考:厚生労働省「人を雇う時のルール」
就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、そして職場内の規律について定めた職場における規則集です。従業員が常時10人以上いる企業は就業規則を作成しなければなりません(労働基準法第89条)。また作成・変更の際には、労働基準監督署長に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。
就業規則には、以下の事項を必ず記載しなければなりません(労働基準法第89条)。
就業規則を作成・変更する場合には、法令や労働協約を遵守する(労働基準法第92条、労働契約法第13条)とともに、労働者の代表から意見を聞かなくてはなりません(労働基準法第90条)。
参考:厚生労働省「就業規則を作成しましょう」
衛生推進者(安全衛生推進者)とは、労働者の安全や健康確保などに係わる業務をする担当者です。安全管理者及び衛生管理者の選任の義務がない従業員10-50人以下の企業において、選任が義務付けられています(労働安全衛生法第11条1項、第12条の2)。
参考:厚生労働省「安全衛生推進者」
安全管理者または衛生管理者のように国家資格が必要なわけではありませんが、必要な能力を有すると認められる者として、大学又は高等専門学校を卒業した者で、その後1年以上安全衛生の実務(衛生推進者にあっては衛生の実務)に従事した経験を有する者等とされています。
参考:厚生労働省「安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。」
厚生労働省「職場のあんぜんサイト 安全衛生推進者」
【関連記事】健康経営に欠かせない衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にしなければなりません。(障害者雇用促進法43条第1項)
この法定雇用率が令和3年3月1日から引き上げとなり、これまで障害者の雇用義務のある従業員数が、45.5人であったものが43.5人へ変更となっています。
法定雇用率などの詳細は、以下の記事をご参照ください。
【関連記事】【社労士監修】法定雇用率を徹底解説!障害者雇用を推進するためのポイントとは
参考:厚生労働省「事業主の方へ」、「令和3年3月1日から 障害者の法定雇用率が引き上げになります」
従業員が50人未満の企業に努力義務とされているのは、ストレスチェックの実施、医師等による健康管理等の実施です。
あくまで努力義務ですので、実施しなくてもペナルティなどはありません。ただし、従業員が50人以上になったら必ず行うことでもありますので、人数が少ないうちから実施し、制度に慣れておくことは大切です。また何らかのトラブルが起こった際に、これらが実施されている記録が残っていると、企業側の対応がきちんとしている証拠となります。
従業員50人未満の企業でストレスチェックに伴う産業医面談、健康管理等の諸対応を産業医に依頼したい場合は、単発で産業医紹介サービスを活用する、地域産業保健センターに相談することを検討しましょう。
ストレスチェックについては、以下の記事をご参照ください。
【関連記事】【産業医が解説】自社に適したストレスチェック調査票は?
地域産業保健センター(地さんぽ)とは?役割や利用時の注意点を解説
従業員の安全や健康を守るためには、安全配慮義務に基づいた対応を行うことが肝要です。たとえば、メンタルヘルス不調を理由とした休職者や健康診断で要精密検査の従業員が多い場合には、従業員50人未満の企業にとって努力義務とされているストレスチェックや医師による健康管理などの実施、産業医の選任を検討してみましょう。従業員の人数を問わず、自社の課題に基づいた産業保健対応を行うことが、安全配慮義務を果たす第一歩です。
従業員50人未満の企業には産業医の選任義務はありませんが、定期的に労働衛生環境や従業員を見てほしい場合、選任することをおすすめします。単発依頼の際は地域産業保険センターを、単発あるいは非常勤の産業医を探すのであれば産業医紹介会社を活用してみましょう。
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