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コラボヘルスとは、保険者と事業者が連携して、健康保険組合に加入する従業員や家族の健康作りをサポートする考え方です。
しかし「なぜコラボヘルスが注目されているのか分からない」「推進するには、どのような手順で進めればよいのか」などの疑問をもっている人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、コラボヘルスが注目されている理由やメリット、推進手順を詳しく説明します。コラボヘルスを導入している企業事例も紹介しているので、ぜひ自社で取り組む際の参考にしてください。
コラボヘルスとは、健康保険組合などの保険者と事業者が連携して加入者(従業員・家族)の病気予防や健康づくりをサポートする考え方です。
保険者と事業者は、従業員の健康維持・増進のためにそれぞれ以下のような役割を担っています。
保険者 | 加入者の健康情報を活用した保健事業の展開 |
事業者 | 労働安全衛生法などをもとにした職場環境の維持・改善 |
しかし従業員の健康作りは、保険者と事業者が別々に取り組むだけでは十分ではありません。
保険者が蓄積したデータを事業者に提供し、事業者が提供されたデータをもとに健康経営に取り組むことで、従業員がより健康・快適に働けることが期待できます。
【参考】厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
コラボヘルスが注目されている理由には、以下の3点があげられます。
それぞれの内容を説明します。
コラボヘルスが注目されている理由の一つに、労働者の平均年齢の上昇と生産年齢人口の減少が挙げられます。
厚生労働省の「令和5年版 労働経済の分析」によると、一般労働者の平均年齢は年々上昇しており、2022年には43歳に達しています。
また総務省の調べでは、生産年齢人口は1995年の8,716万人がピークで、それ以降は減少が続いている状況です。2050年には、5,275万人になると見込まれています。
労働者の価値が高まっているなかで、企業は従業員を資産と捉え、健康に積極的に投資する必要があるでしょう。
保険者は医療費の増大を抑えるために、加入者の健康を維持するための取り組みが重要です。
このような背景から、事業者・保険者が連携していっそうの健康維持に取り組む必要があるといえます。
【参考】
厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」
総務省「令和4年版 情報通信白書」
特定健康診断および特定保険指導制度が導入されたことで、コラボヘルスが注目され始めています。事業者と保険者の両方が、従業員の健康診断に関与する機会が生じたためです。
特定健康診断とは、生活習慣病の予防のために行われるメタボリックシンドロームに着目した健診です。現役時代の健康状態が高齢になってからの医療費に影響をおよぼすことから、健康リスクを早期に発見して対応するために整備されました。
保険者は、公的医療保険に加入する40~74歳全員への特定健診、および必要に応じた特定保険指導が義務になっています。結果として、従来の事業者による労働安全衛生法上の健康診断に加えて、保険者も加入者の検診に関与する体制になりました。
このため、事業者と保険者が健診結果を共有し、効果的に従業員の健康維持につなげる取り組みが注目されているのです。
【参考】厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導 | e-ヘルスネット」
コラボヘルスが注目されている理由には、保険者が加入者のデータを活用するためのインフラが整えられてきたことも挙げられます。データを活用することで、保険者が保険者機能を発揮しやすくなってきました。
保険者機能は、大きく分けて以下の6つです。
(出典:厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」)
近年ではレセプト(診療報酬明細書)が電子化され、データとして管理できるようになってきています。電子化された健診データとレセプトの情報を分析・活用することで、加入者の健康状態をより詳細に把握できるようになりました。
事業者は保険者から提供されたデータを活用して、効果的な健康維持の取り組みにつなげられます。
コラボヘルスを推進するメリットは、以下の3つが挙げられます。
それぞれのメリットを解説します。
コラボヘルスの推進により医療費の削減が見込めます。厚生労働省の調べによると、国民医療費は令和3年に約45兆円にも上り、平成元年の約19兆円と比べて2倍以上に増加しています。
保険料は従業員と事業者が折半しているため、医療費の増加は事業者にとっても大きな負担です。
コラボヘルスを推進し、従業員の病気を予防して健康増進に努めれば、事業者が支払う保険料の削減につながります。
【参考】厚生労働省「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」
企業のブランドイメージ向上につながることも、コラボヘルスを推進するメリットの一つです。
コラボヘルスを推進するにあたって、事業者は健康経営に取り組むことになります。福利厚生や制度、組織体制が整えられている企業は、従業員を大切にしている印象を与えるでしょう。
経済産業省によって健康経営優良法人認定制度が設けられているように、健康経営に取り組む企業は社会的に高い評価を得られます。従業員を大切にしている企業というイメージが定着すれば、優秀な人材の確保にもつながります。
【関連記事】【5分でわかる】健康経営優良法人の認定基準と申請方法について
事業者と保険者がコラボヘルスを推進することは、企業の生産性向上にもつながります。働きやすい職場環境を作ることで、従業員が健康を維持し本来のパフォーマンスを発揮して働けるためです。
従業員の高齢化によって、病気や体調不良による生産性の低下が懸念されています。しかし、事業者と保険者が連携して健康課題に取り組むことで、従業員が長期間働き続ける可能性が高くなるでしょう。
コラボヘルスに取り組むことは、企業の業績向上のためにも重要といえます。
厚生労働省のガイドラインで推奨されている、コラボヘルスの推進手順は以下のとおりです。
それぞれの手順を説明します。
【参考】厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
まずは、企業・健康保険組合・従業員それぞれにおける、現状と課題を把握します。
▼課題の例
企業の課題 | ・平均年齢の上昇
・生産年齢人口の減少 |
健康保険組合の課題 | ・厳しい財政運営 |
従業員の課題 | ・健診意義の理解不足
・健康や医療に関する誤った認識 |
コラボヘルスが注目される以前、事業者は従業員の病気予防・健康づくりにかかわらないのが主流でした。
しかし現在は、従業員の課題を企業・保険者が把握し、連携して解決することが求められています。相互の課題を踏まえた施策の実施が、成果につなげる大きなポイントです。
現状と課題を把握できたら、推進するための体制を整えます。経営者を中心にして、人事部や総務、健康管理室や保険者が横断的に推進できる体制を構築しましょう。
コラボヘルスで成果を上げるには、関係者に必要な情報を行きわたらせる「情報報告型」だけでなく、機動力の高い「課題解決型」の体制も構築する必要があります。
課題解決型の推進体制にするうえでのポイントは、以下の2つです。
自社の問題解決にもっとも効果的な体制を構築しましょう。
コラボヘルスの効果を上げるためには、事業者と保険者が両者の役割分担を見直し、連携しながら推進することが重要です。
企業の健康経営と、保険者による健康維持のための取り組みには、密接な関係があります。役割分担を見なおすことで、両者が保有している人的資源や資本を適正化できます。
まずは、保険者の義務となっている特定検診・特定保健指導が適切に実施されるようにすることが重要です。加入者のプライバシーや安全・安心に十分配慮し、保険者・事業者間で情報を共有しましょう。
従業員の健康事情を把握しやすくするために、健康白書を作成します。健康白書とは、健診データから従業員の健康状態や生活習慣の特性を可視化したものです。
健康白書には、以下のような内容を記載します。
項目 | 内容 |
医療費 | ・一人あたりの医療費の業態平均と全業態平均との比較
・年代別の疾病分類別医療費 |
健康状態 | ・メタボリックシンドローム該当者の割合
・生活習慣病を引き起こす原因となる高血圧や脂質異常、高血糖の人の割合 |
生活習慣 | ・喫煙・運動・食事・飲酒・睡眠の習慣年代別比較
・喫煙本数や喫煙年数のアンケート結果 ・睡眠時間のアンケート結果 |
健康に関する人事データ | ・残業時間・睡眠習慣・食習慣の関係
・有給休暇の取得理由のうち、病気による休暇の割合 |
その他 | ・労働生産性につながる項目(コミュニケーションの頻度、モチベーションなど)に関するアンケート結果
・メンタル不調者の性別および年代別の割合 |
対策を考える際は、業態平均・性別・年代・事業所・エリア・職種などのジャンルごとに分析すると効率的です。事業者・保険者が優先して取り組むべき健康課題を特定でき、有効な対策がとりやすくなります。
継続的にコラボヘルスを推進するためには、事業者と保険者が共通の目標を設定し、PDCAサイクルを回していく必要があります。
PDCAサイクルの各段階でやるべきことは、以下のとおりです。
Plan | 健康課題に応じた実施計画を立てる |
Do | 実施計画に沿って健康維持のための取り組みを実施する |
Check | データをもとに施策内容を振り返り評価する |
Action | 改善点を計画に反映し、再び取り組みを実施する |
目標を定める計画(Plan)の段階で、以下の内容を決めておくとよいでしょう。
単年で想定の結果が出ないからといってすぐに廃止するのではなく、PDCAサイクルを回して、中長期での改善を見込んで実施しましょう。
コラボヘルスを導入している企業事例を3つ紹介します。自社で推進する際の参考にしてください。
【参考】厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
花王株式会社は、健康白書や医療費統計をもとに従業員の健康状態を可視化してPDCAサイクルを回し、健康づくりの取り組みを実施しています。
特定健診・特定保健指導は35歳以上を対象とし、フォローも含めて事業者が行っており、受診率は約100%に達しています。
また、健康づくりに関するイベントに参加すると「健康マイル」が貯まり、グッズなどと交換できる「健康マイレージ」を実施しているのも特徴です。従業員一人ひとりの健康づくりの意識を高めるための後押しをしています。
【参考】
花王株式会社「花王グループ健康経営のご紹介」
花王株式会社「花王グループ健康宣言」
SCSK株式会社は、経営トップが率先して健康経営を推進しています。「働きやすい、やりがいのある会社」を目標に掲げ、さまざまな施策を展開しています。
なかでも重点的に取り組んでいるのは、残業時間を削減しつつ、削減した残業代を特別ボーナスとして支給する「スマートワークチャレンジ」です。経営トップからの働き方改革に対するメッセージをイントラネットで公開し、本気度を伝えて業務効率化の動機づけを図りました。
取り組み開始前の2011年の残業時間は27時間でしたが、2015年には18時間にまで減少しています。取り組みを開始してからの営業利益は増加し、働き方改革の成果が目に見えて現れる形となりました。
YKK株式会社は、健康推進協議会を設置し「健康推進基本方針」にもとづいてグループ全体の健康づくりを推進しています。
事業者と健康保険組合が共同で取り組むテーマに「メタボ対策の推進」と「データヘルス計画と健康情報活用」を掲げています。重点的に取り組んでいるのは、保険者の健康データの活用です。
健康保健組合は、各種の健診やレセプトデータの活用に加えて、保健事業の効果測定のための「健康度調査」を実施しています。調査回答率は99.2%と高く、結果分析で得られた健康課題を踏まえた実施計画を策定・推進しています。
2016年度からは、健康に良い習慣を実践している人にポイントを付与し、商品と交換できるインセンティブ付与事業を開始し、従業員の生活習慣に対する改善意識向上を図っています。
昨今、労働者の平均年齢の上昇、生産年齢人口の減少に伴い、一人ひとりの健康に投資する必要が生じています。その中で、コラボヘルスは大きな注目を集めています。
コラボヘルスを推進する際は、事業者・保険者・従業員の現状と課題を把握し、効果を上げるための体制・役割分担を構築しましょう。
また、健康白書の作成によって把握した健康課題に対して共通の目標や評価指標を設定し、PDCAサイクルによって改善することも重要です。コラボヘルスを推進し、企業価値や生産性向上につなげましょう。
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