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自社に適したストレスチェックの項目数は?4つの調査票の特徴を解説

自社でストレスチェックを導入する場合、「どの項目数の調査票が自社にとって適切であるかが分からない」と疑問を抱える人事労務担当者の方もいるのではないでしょうか。

本項目では、自社に適したストレスチェックの調査票の選び方や特徴を解説します。ストレスチェックで確認すべき領域についても詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、ストレスに関する調査票を用いて、従業員自身が普段の業務の中で感じているストレスの状態を、客観的に調べるための簡易な検査です。

ストレスチェックの結果に応じて、自己管理を促したり、職場環境を改善したりすることでメンタルヘルス不調を予防する目的があります。

労働安全衛生法により、常時50人以上の従業員を雇用する事業場は、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。また、50人未満の事業場でのストレスチェックの実施は努力義務であり、罰則は設けられていません。

【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法」

【関連記事】ストレスチェックの実施者・実施事務従事者の違いとは?役割や要件を解説

ストレスチェックで確認すべき3領域

労働安全衛生規則では「心理的な負担を把握するための検査」として、ストレスチェックで実施すべき以下の3領域が定められています。

  • 仕事のストレス要因
  • 心身のストレス反応
  • 周囲のサポート

それぞれの領域について詳しく解説します。

【参考】
厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

仕事のストレス要因

仕事のストレス要因は、職場における従業員のストレス要因について回答を求める項目です。質問は労働時間や仕事量、人間関係でのストレスがあるかどうかを判定する内容です。

心身のストレス反応

心身のストレス反応の項目では、従業員がストレスによる心身の不調について自覚があるかを判定します。質問内容は食欲や睡眠に関する内容、不安がないかなどです。

回答内容を通じて、ストレスがかかったときに心と身体のどちらで反応が出やすいのか傾向を掴めるため、より適切に対処できます。

周囲のサポート

周囲のサポートは、当該従業員が職場で他の従業員からサポートを受けられているか回答を求める項目です。具体的には、同僚や上司以外にも家族に相談できるか、頼りになると思っているかを問われる内容が盛り込まれています。

ストレスチェックの調査票は4種類

ストレスチェックの調査票は、以下の4種類です。

  • 57項目版
  • 23項目版
  • 80項目版
  • 120項目版

それぞれの調査票の特徴を詳しく解説します。

57項目版|厚生労働省が推奨する調査票

ストレスチェックの調査票4種類のうち、57項目版は厚生労働省が推奨しており、多くの事業所が利用している調査票です。57項目版の調査票は、厚生労働省のサイトからダウンロード可能です。

57項目版の回答所要時間は10分程度なため、回答が集まりやすい傾向にあります。80項目版と比べると職場環境に対する項目は少なく、従業員個人のストレス状況を把握する項目に焦点が当てられています

また、多くの事業場で利用されているため、統計情報を集めやすい点も特徴の一つです。57項目版は厚生労働省が配布している「トレスチェック実施プログラム」でも実施と分析ができます。

57項目版の調査票の利用が向いている事業場は、以下のとおりです。

  • 新規にストレスチェックを始める事業場
  • 統計情報をもとに同業他社と比較したい事業場
  • 開発の手間なくWebシステムでストレスチェックを実施したい事業場

【参考】
厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
厚生労働省「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムダウンロードサイト」

23項目版|57項目版の省略版

23項目版の調査票は、厚生労働省が推奨している57項目版から一部の項目を省略した調査票です。

回答の所要時間は5分程度しかかかりません。しかし、従業員個人のストレスに関する項目が少ないため、ストレス状況を十分に把握できない点がデメリットとして挙げられます。

たとえば、57項目版の周囲のサポートの項目は「上司」「同僚」「配偶者、家族、友人等」の3つです。一方、23項目版は「上司」「同僚」の2項目に省略されています。

そのため、23項目版はストレスチェックが努力義務として課せられている従業員50人未満の事業所で、試験的に利用する場合に向いているといえるでしょう。

23項目版を入手したい場合は、以下のサイトからダウンロード可能です。

【参考】厚生労働省「実施者向けストレスチェック関連情報」

80項目版|57項目版に推奨尺度セット短縮版を追加

80項目版は、57項目版の内容に働きがい(ワークエンゲージメント)やハラスメント、上司のマネジメント、人事評価に関する23項目が追加されたものです(新版推奨尺度セット短縮版)。

職場環境に関する直接的な質問が充実しているため、より詳しく集団分析できます

ただし、80項目版は無償のWebシステムが提供されていません。そのため、集団分析を適切に行うためには、自社で分析できる環境を用意するか、外注で依頼する必要があります。

以上の特徴を踏まえると、80項目版の利用に向いている事業場は、以下のとおりです。

  • 80項目版の情報を集計・分析できる事業場
  • メンタルヘルス改善の予算に余力がある事業場

80項目版を使用する場合は、以下のサイトからダウンロードできます。

【参考】厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(80 項目版)」

【関連記事】ストレスチェックの集団分析の方法とは?分析結果別の対処方法も解説

120項目版|57項目版に推奨尺度セット標準版を追加

120項目版は、57項目版に新版推奨尺度セット標準版の63項目を追加したものです。80項目版では一つの尺度に対して1〜2項目で構成されていますが、120項目版は2〜5項目で構成されています。

そのため、80項目より精度の高いストレスチェックが期待できます。しかし、法律の義務としてのストレスチェックで120項目版はあまり使われていません

【参考】厚生労働省「新職業性ストレス簡易調査票について」

自社に合わせた調査票の選び方

自社に合ったストレスチェックの調査票を選ぶときのチェックポイントは、以下の2点です。

  • どの項目に重点をおいてストレスチェックを実施するか
  • ストレス対策をどの程度実施できるか

それぞれの内容について解説していきます。

どの項目に重点をおいてストレスチェックを実施するか

どのようなことに重点をおいてストレスチェックを実施したいのかを明確にしましょう。たとえば、以下のような選び方が考えられます。

調査票の種類 重点をおきたい内容例
23項目版 ・ストレスチェックの実施率を上げたい

・試験運用したい

57項目版 ・標準的なストレスチェックを実施したい

・23項目版よりも詳細なデータを分析したい

80項目版 ・職場環境改善のための原因追求がしたい
120項目版

ストレスチェックの調査票の様式は指定されていないため、労働安全衛生規則で定められた3領域を網羅していれば、自社で必要な項目を追加できます。ただし、追加するときは、従業員が回答する負担や産業医の指導内容を考慮しましょう。

ストレス対策をどの程度実施できるか

ストレスチェックの実施後に、どこまでの対応ができるか考慮が必要です。

たとえば、ストレスチェックを80項目版で実施しても、その結果を職場環境改善に反映できなければ、効果を感じにくくなります。

調査票を選ぶときは、自社のメンタルヘルス対策の取り組み内容を整理し、適切な項目版を使用しましょう。

【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」

ストレスチェックに含めてはいけない項目

ストレスチェックに項目を追加するときに、含めてはいけない項目は以下のとおりです。

  • 性格検査の項目
  • うつ病検査の項目
  • 希死念慮についての項目

それぞれの内容について解説します。

性格検査の項目

ストレスチェックの項目に「性格検査」「適性検査」を含めるべきではありません。ストレスチェックの趣旨から外れることや、人事評価に影響することが懸念されるとストレスチェックを実施率が下がることがあります。

うつ病検査の項目

ストレスチェックは、うつ病などの精神疾患に関する項目を含めないようにしましょう。ストレスチェックは精神疾患を発見するための検査ではありません。主に職場環境が従業員に与えるストレスについて確認する項目のみを盛り込みます

希死念慮についての項目

「希死念慮」「自傷行為」の項目はストレスチェックに含めるべきではありません。これらは、背景情報を含めて評価する必要があります。

ストレスチェック実施者が従業員の希死念慮や自傷行為を知った場合は、従業員の安全を確保するための対応を取らなければなりません。たとえば、相談機関の情報提供が必要です。

ストレスチェック後に必要な措置

ストレスチェック実施後は、以下の措置をとる必要があります。

  • 労働基準監督署へ報告書を提出
  • 医師による面接指導を実施
  • 必要に応じた就業措置を検討

それぞれの内容について詳しく解説します。

【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」

労働基準監督署へ報告書を提出

常時50人以上の従業員を雇用する事業者には、ストレスチェックの結果を労働基準監督署に報告することが義務付けられています。

報告書の様式は、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」(様式第6号の3)です。報告書は以下の厚生労働省のサイトから作成できるので、活用するとよいでしょう。

【参考】厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」

医師による面接指導を実施

「高ストレス」と判定を受けた従業員が面接指導を希望する場合は、申し出から1ヶ月以内に医師による面接指導を実施しなければなりません

ストレスチェックの結果は、基本的に事業者へは伝えられず、本人のみに通知されます。しかし、面接指導を受ける場合はストレスチェックの結果を事業者に提供する必要があります。

そのため、面接指導を受ける従業員に対し、あらかじめ「ストレスチェックの結果を事業者に提供すること」に関しての同意が必要です。

多くの場合、面接指導は産業医が実施し、産業医による面接指導では、ストレスチェックの回答内容を当該従業員からより詳細に聴取します。

聴取した内容から、当該従業員を取り巻く職場環境に問題がないか、メンタルヘルス疾患に陥っていないかを確認し従業員に助言、および事業者へ職場環境の改善を提案します。

【関連記事】産業医面談とは?実施が必要となる基準や話す内容を紹介

必要に応じた就業措置を検討

産業医による面接指導後、事業者は産業医から意見を聴取し、必要に応じた就業措置の検討が必要です。このとき、措置の内容によって高ストレス者が有利あるいは不利な状況にならないよう注意しましょう

事業者は当該従業員に対して、解雇や不当な配置転換などをしてはなりません。一方で、特定の従業員に対して有利な扱いが継続すると、他の従業員が業務をカバーする状況が長期化する可能性があります。

周囲の従業員のストレス状況が悪化するなどの影響も考慮した上で、措置を検討することが重要です。

適切な項目でストレスチェックを行い、メンタルヘルス不調者を早期に発見しよう

ストレスチェックの調査票は、57項目版・23項目版・80項目版・120項目版の4種類です。調査票を選ぶときは、自社で重点をおきたい内容を踏まえてどこまで対策ができるかを検討しましょう。

また、調査票の項目はカスタマイズが可能ですが、項目に含めてはいけない項目があるので追加するときは精査が必要です。

自社にとって適切な項目でストレスチェックを実施し、メンタルヘルス不調を患う従業員を早期に発見しましょう。

三橋 利晴 (みつはし としはる)

産業医・労働衛生コンサルタント

岡山大学にて産業衛生・疫学・予防医学の実務や研究を行う。 平行して2008年からは嘱託産業医として様々な業種の事業所を担当。 大学病院では疫学や研究倫理の観点から院内の臨床研究支援を行う。

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