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事務所衛生基準規則(事務所則)は、従業員が快適に作業できる労働環境を整備するために事業者が守るべき規則です。事務所の空調や照明、トイレや休養設備などについての規定が明記されています。
近年、働きやすい職場環境への意識が高まってきたこともあり、2021年12月に事務所則の改正が実施されました。
しかし、具体的に何をしたらいいのか分からないと悩んでいる人事・労務担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、事務所則と労働安全衛生基準規則(安衛則)の改正事項と、事業者が具体的に取り組むべきことを解説します。従業員が働きやすい作業環境を実現する上で、ぜひ参考にしてください。
2021年12月に行われた事務所則と安衛則の改正によって、新たに対応が必要になったのは次の8つの事項です。
それぞれの改正ポイントと、必要とされる具体的な対応策を解説します。
【参考】厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」
事務所で従業員が作業する場所の照度の区分が3区分から2区分へと変更になりました。手元が暗いことによる目の疲れや、不適切な姿勢による健康障害の防止が目的です。
改正前 | 改正後 | ||
作業区分 | 照度基準 | 作業区分 | 照度基準 |
精密な作業 | 300ルクス以上 | 一般的な事務作業 | 300ルクス以上 |
普通の作業 | 150ルクス以上 | ||
粗な作業 | 70ルクス以上 | 付随的な事務作業(※) | 150ルクス以上 |
(出典:厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」)
改正の結果、作業場の照度は少なくとも150ルクス以上を上回らなくてはなりません。専用の照度計を用いて計測し、実際に作業を行う際に基準照度が保たれるようにしましょう。
※事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものが該当します。
トイレについては、改正によって独立個室型のトイレについての規定が追加されました。独立個室型のトイレとは、次の要件を満たすものです。
(出典:厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」)
改正の結果、従業員が10名以内の場合、独立個室型のトイレを一つ設置すれば基準を満たせるようになりました。独立個室型のトイレを設けることで、男女別々のトイレの個数を減らすことも可能です。
しかし、独立個室型のトイレの設置規定は、あくまで事務所スペースが限られる場合の例外措置と捉える必要があります。
また、男女で同じトイレを利用するため、消臭や清潔の保持、防犯のためのルールも決めておくのが望ましいでしょう。
休養室・休養所についても改正によって具体的な留意点が追加されました。
休養室・休憩所は、病気がちな人や女性が体調不良の際に利用するための設備です。改正前の安衛則における、従業員が50人以上(または女性が30人以上)の設置規定は変わりません。
上記に加えて、従業員のプライバシーと安全を確保するために、以下の留意点が示されました。
(出典:厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」)
休養室・休憩所はあくまでも一時的な利用を想定しています。専用の設備を設ける必要はありませんが、体調不良者が発生したら、すぐに休養室・休養所を使用できるようにしておきましょう。
休憩の設備とは、仕事の合間に一休みできるようなスペースを指します。休憩設備を設けるよう事業者が心がけなくてはならない点は、改正前後で変わりません。
改正後には従来の規定に加えて、オフィスの広さや労働環境に応じた休憩設備を検討する必要が生じました。具体的にどのような設備を備える必要があるのかは、衛生委員会で議題にあげて議論しましょう。
【関連記事】安全衛生委員会と衛生委員会とは? それぞれの役割と開催条件について
身体や衣服が汚れる可能性のある業務に従事する事業場では、更衣室やシャワー室を設置する必要があります。
休養室・休養所の改正内容と同じく、改正によって男女問わず利用できるようにプライバシーに配慮する必要が生じました。
上記の規定は、企業が事務所則の規定によらず自主的に設置している更衣室・シャワー室でも対応する必要があります。
事務所則の改正では、温度や空気中の一酸化炭素、二酸化炭素など、作業環境の規定について変更が加わっています。
空調設備を設置している事業場の場合、改正前の努力目標値は17度以上28度以下でした。しかしWHO(世界保健機構)が室内温度のガイドラインを変更したことに伴い、低温側が18度以上に変更されています。
また、事業者は一酸化炭素・二酸化炭素を一定の割合に保つ必要があり、改正前は測定方法として検知管方式が明記されていました。
改正後は、検知管と同等以上の性能を有すると認められた測定器が明示されています。具体的には次の方式を用いる測定器です。
【出典】厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」
事務所には、負傷者の手当てに必要な救急用具を備えておかなくてはなりません。改正に伴って備えておくべき品目の安衛則の規定が削除となりました。
従業員が怪我・病気になったときは、応急手当を行うよりも直ちに医療機関に搬送することが基本とされたためです。
また、発生する可能性のある怪我や病気は、事業場ごとに異なります。備えておくべき救急用具の品目は、産業医の意見を参考に衛生委員会などで検討する必要があるでしょう。
安衛則では、多量の汗をかく作業にあたる従業員に与えるための塩と飲料水を備えておくことが規定されています。
改正に伴って、「塩」は塩飴や塩タブレットだけでなく、塩分を含む飲料も該当することが明示されました。具体的にはスポーツドリンクや経口補水液などを、事業場の作業環境や従業員数を考慮して備えておきましょう。
事務所則の改正に関係なく、次の事項に関しては引き続き対応が求められます。
改正内容への対応に加えて既存の事項も対応できているか確認し、従業員が働きやすい職場環境を保ちましょう。
【参考】e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」
企業は従業員が作業しやすいように、事務所則に明記されている作業環境の基準を満たさなくてはなりません。
湿度や騒音についての規定は変更されていませんが、自社が対応しているかをあらためて確認しましょう。
エアコンなどの空気調和設備を設けている事業者は、室内の湿度を40~70%以下に保たなくてはなりません。
湿度の測定には0.5度目盛りの乾湿球の湿度計を使用する必要があります。室内中央部の床上75~120cm以下の位置で測定を行いましょう。
従業員に有害な恐れのある騒音・振動の伝播を防ぐために、障壁などを設けなくてはなりません。
具体的な騒音レベルは明記されていませんが、気になる場合には、厚生労働省が公表している「騒音障害防止のためのガイドライン」などを参照して対策を講じましょう。
また、騒音を発する事務用品を5台以上集中的に使用する場合には、遮音・吸音機能のある天井・壁で囲まれたスペースが必要です。
【関連記事】騒音障害防止ガイドラインとは?令和5年の改定を踏まえた最新内容
事業者は給水・排水設備を整備すると同時に、事務所内を清潔に保つための清掃を実施する必要があります。
事務所則には、従業員の飲用に用いる水やその他の飲料の供給について規定されています。
また、排水設備は汚水が漏れ出さないように、定期的な補修、清掃が必要です。清掃は日常の清掃に加えて、少なくとも半年おきに大掃除を実施しなくてはなりません。
ねずみや昆虫が発生しないように定期的に調査をして、必要に応じて措置を講じましょう。
事務所則には、違反した際の罰則は明記されていません。しかし、事務所則は労働衛生安全規則にもとづいており、違反すると6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
事務所則ならびに労働衛生安全規則は、従業員が働きやすい職場環境を作るための基準となる規則です。法律を守るためだけでなく、職場の生産性を上げるためにも事務所則に沿った職場づくりを意識しましょう。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
新型コロナウイルスの流行によって、自宅でのテレワークや事務所以外の場所でのリモートワークが急速に普及しました。テレワーク環境に事務所則は適用されないものの、事務所同等の作業環境になるよう従業員に助言・指導しなくてはなりません。
テレワークの作業環境において配慮が必要となる設備と環境整備のポイントは、下表の通りです。
設備 | 環境整備のポイント |
部屋 | ・作業を行うのに十分な空間を確保する
・転倒しないように整理・整頓した状態にする |
窓 | ・空気の入れ替えをする
・PC画面に日が差す場合には、ブラインドやカーテンを設ける |
照明 | 作業に支障がない明るさにする |
室温・湿度 | 冷暖房を利用し、作業に適した温度・湿度に調節する |
机・椅子・PC | 目・肩・腕・腰に負担がかからず、無理のない姿勢で作業ができるツールを使用する |
(参考:厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」)
事業者は、従業員の自宅の作業環境について状況の報告を求め、必要な場合にはサテライトオフィスの活用も検討しましょう。
事務所則・安衛則改正により、作業場の照度やトイレの規定など、複数の項目が変更されています。改正前の内容に関しても引き続き対応が必須です。
事務所則に違反した場合には、安衛則にもとづいて罰則が課される可能性もあるので注意しましょう。
ガイドラインを参考に環境の整備に取り組み、働きやすい職場づくりのきっかけにしてください。
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