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適応障害の従業員への会社の対応|休職から復職までの手順を解説

従業員から「適応障害」の診断書を提出され、どのように対応すべきかお悩みではありませんか?

休職から復職までのプロセスを適切に進めることは、ご本人の回復だけでなく、会社の法的リスクを回避するためにも重要です。

この記事では、人事労務担当者が知っておくべき適応障害の基礎知識から、休職・復職時の具体的な対応手順、そして再発防止策までを網羅的に解説します。

適応障害とは?人事担当者が知るべき基礎知識

従業員への適切な対応を行うためには、まず適応障害について正しく理解することが第一歩です。適応障害は、特定のストレスが原因で心身に不調が生じ、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を指します。原因となるストレスが明確であり、そのストレス要因から離れると症状が改善する傾向がある点が特徴です。

適応障害の主な原因と症状

適応障害の原因は、個人を取り巻く環境における様々なストレス要因によって引き起こされます。職場においては、以下のようなものが挙げられます。

  • 業務内容の変化:異動、昇進、担当業務の変更
  • 人間関係:上司や同僚との不和、ハラスメント
  • 過重労働:長時間労働、過大な業務量や責任

症状は精神面、身体面、行動面の全てに現れる可能性があります。

  • 精神症状:気分の落ち込み、不安、イライラ、集中力の低下
  • 身体症状:不眠、頭痛、めまい、食欲不振、腹痛
  • 行動面の変化:遅刻、欠勤の増加、仕事上のミス、他者との衝突

これらのサインを見逃さず、早期に対応することが重要です。

会社の法的責任「安全配慮義務」

企業は、労働契約法第5条に基づき、従業員がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする「安全配慮義務」を負っています。職場環境が原因で従業員が適応障害を発症した場合、この義務違反を問われ、損害賠償責任を負うリスクがあります。そのため、会社としては従業員のメンタルヘルス不調に対して、組織的かつ適切な対応を行うことが法的な観点からも求められます。

従業員が適応障害と診断された際の会社の対応フロー

従業員から適応障害の診断書が提出された場合、企業は感情的にならず、定められた手順に沿って冷静に対応を進める必要があります。ここでは、休職から復職までの具体的なフローを解説します。

Step1:診断書の受理と休職手続きの開始

従業員から適応障害と診断された旨の申し出があった場合、まずは医師の診断書を提出してもらいます。診断書には、病名、必要な療養期間、就業上の配慮事項などが記載されていますので、その内容を正確に把握します。

診断書を受理したら、就業規則の休職規定に基づき、休職手続きを進めます。休職期間中の給与の有無、社会保険料の取り扱い、連絡方法などを本人に丁寧に説明し、不安を取り除くことが大切です。

また、休職中の経済的な支えとなる傷病手当金制度についても案内し、申請手続きをサポートしましょう。

Step2:休職中の連絡体制と情報共有

休職は療養に専念するための期間であり、過度な連絡は本人の負担になります。一方で、完全に連絡を絶つと孤立感を深めさせてしまう可能性もあります。そのため、事前に本人と連絡頻度(例:2週間に1回など)や方法(メール、電話など)について合意しておくことが望ましいです。

連絡内容は、事務的な連絡事項に加え、体調を気遣う言葉を添えるなど、温かみのあるコミュニケーションを心がけましょう。
また、本人の同意を得た上で、産業医や直属の上司とも状況を共有し、社内のサポート体制を整えておくことが、スムーズな復職支援につながります。

Step3:復職可否の判断

休職期間が満了に近づき、本人から復職の意向が示されたら、復職の可否を判断するプロセスに入ります。この判断は、企業が主体となって慎重に行う必要があります。

  1. 主治医の診断書:まず、本人に主治医からの「復職可能」という内容の診断書を提出してもらいます。
  2. 産業医面談:次に、産業医との面談を実施します。産業医は、主治医の診断書や本人との面談を通じて、医学的な見地から「本当に業務を遂行できる状態まで回復しているか」を評価し、会社に意見を述べます。
  3. 最終判断:企業は、主治医と産業医という二つの専門的意見を踏まえ、最終的に復職を認めるか判断します。決して主治医の診断書だけで判断せず、産業医の意見を参考にすることが重要です。

Step4:復職支援プランの作成と実行

復職が決定したら、再発を防ぎ、スムーズな職場復帰を支援するための「復職支援プラン」を作成します。このプランは、本人、上司、人事担当者、産業医が連携して策定します。

プランには、以下のような内容を盛り込むことが一般的です。

  • 試し出勤(リハビリ出勤):本格的な復帰の前に、短い時間や日数で勤務に慣れる期間を設けます。
  • 短時間勤務:復帰直後はフルタイムではなく、短い勤務時間から開始し、段階的に通常勤務へ移行させます。
  • 業務内容の制限:責任の重い業務や、ストレスの原因となった業務から一時的に外し、負担の軽い業務から担当させます。
  • 定期的な面談:復帰後も人事担当者や産業医が定期的に面談を行い、心身の状態や業務への適応状況を確認します。

適応障害の再発防止に向けた企業の取り組み

一人の従業員の復職支援にとどまらず、組織全体として適応障害を含むメンタルヘルス不調を予防する取り組みを進めることが、企業の持続的な成長には不可欠です。

職場環境の客観的な評価と改善

適応障害の原因が職場環境にある場合は、その要因を特定し、改善策を講じる必要があります。

  • 長時間労働の是正:勤怠データを分析し、特定の部署や個人に業務負荷が偏っていないか確認します。
  • ハラスメント対策:相談窓口の設置や研修の実施により、ハラスメントが起きにくい組織風土を醸成します。
  • コミュニケーションの活性化:1on1ミーティングの導入や、チーム内のコミュニケーションを促す施策を実施します。

産業医による職場巡視や、ストレスチェックの集団分析結果を活用することで、専門的かつ客観的な視点から課題を抽出し、効果的な改善策につなげることができます。

相談しやすい体制の整備

従業員がストレスや悩みを早期に相談できる環境は、メンタルヘルス不調の重症化を防ぐ上で非常に重要です。

  • 産業医面談の周知:従業員がどのような内容を、どのような手順で産業医に相談できるのかを明確にし、積極的に周知します。オンライン面談を導入することも、相談のハードルを下げる上で有効です。
  • 外部相談窓口(EAP)の導入:会社に知られずに相談したいという従業員のニーズに応えるため、外部の専門機関と契約するのも一つの方法です。匿名性が高く、心理カウンセラーなど多様な専門家に相談できます。

管理職への教育(ラインケア研修)

部下の変化に最も早く気づける立場にいるのは、直属の上司です。管理職が部下のメンタルヘルスケア(ラインケア)に関する正しい知識を持つことは、不調者の早期発見・早期対応に直結します。
ラインケア研修では、以下のような内容を取り上げることが効果的です。

  • メンタルヘルス不調の基本的な知識とサインの見つけ方
  • 部下から相談を受けた際の傾聴のスキル
  • 産業医や人事部門との連携方法

管理職が適切な知識とスキルを身につけることで、安心して相談できる職場環境が育まれ、組織全体のメンタルヘルスレベル向上につながります。

まとめ

従業員が適応障害になった際の会社の対応は、休職から復職までの一連の流れを、本人・主治医・産業医・職場と密に連携しながら、法的義務と本人の心情に配慮して丁寧に進めることが求められます。
個別の対応に留まらず、職場環境の改善や相談体制の整備、管理職への教育といった予防的な取り組みを組織全体で推進することが、従業員が健康に働き続けられる、生産性の高い企業を実現する鍵となります。
従業員のメンタルヘルス対応は、もはや福利厚生ではなく、企業の成長を支える重要な経営課題です。本記事を参考に、自社の体制を見直し、より良い職場環境づくりを進めていきましょう。

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