#php if (is_mobile()) : ?> #php else : ?> #php endif; ?>
企業内でインフルエンザが流行すると、従業員の健康を保てないばかりか、業務の遂行に多大な影響を与えてしまいます。新型コロナウイルス感染症の流行も収まらない中、ウイルス感染から従業員を守ることは企業における喫緊の課題です。今回は、インフルエンザの基礎知識を簡単にまとめるとともに、企業で今すぐできるインフルエンザ対策をご紹介します。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが体内に入り込むことで起こる病気です。かぜ(感冒、風邪症候群)と症状が似ていて区別がつかないこともありますが、インフルエンザはかぜの一種ではなく、「異なる病気」です。幼児や高齢者、免疫力の低下している方、持病がある方、妊娠中の女性などがインフルエンザにかかると、肺炎などを併発し、重症化する可能性があります。また、子どもがかかると急性脳症など命に関わる合併症を起こすこともあるのです。
インフルエンザとかぜ(感冒、風邪症候群)の特徴は、以下の通りです。
インフルエンザ | かぜ(感冒、風邪症候群) | |
潜伏期 | 1〜3日程度 | 原因ウイルスによって異なる。 2〜6日程度 |
症状の始まり方 | 急激に始まる | 比較的ゆっくり |
主な症状 | 発熱(38℃以上)、 筋肉痛、関節痛、全身倦怠感 咳、くしゃみ |
鼻水、鼻つまり、のどの痛み、咳、くしゃみ |
発熱の程度 | 高い(38℃以上) | 出ても微熱(37℃台)程度 |
全身症状 (頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛) |
非常に強い | ほとんどない、あっても軽い |
上気道炎症状 (鼻水、鼻づまり、のどの痛みなど) |
全身症状のあとから出現 | 最初からみられる |
合併症 | 肺炎、脳症など | まれ |
インフルエンザウイルスの感染経路は、1.飛沫感染、2.空気感染、3.接触感染の3つがあります。効果的なウイルス対策を実施するには、感染経路の理解が役立ちます。
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型の4種類があります。このうちヒトに流行を起こすのは主にA型とB型で、この2つのウイルスによって起こる感染症を「季節性インフルエンザ」と呼びます。
最近話題の新型インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスの一種です。ウイルスの抗原性が大きく変わり、ほぼ全ての人が免疫を持っていないものを指します。鳥や豚からヒトに感染したものが多いです。
インフルエンザウイルスは毎年冬(12〜3月)に大流行を起こします。これには2つの大きな理由があります。
1.免疫力が低下する
寒さや外気の乾燥、体内水分量の低下(夏場と違い積極的に水分を取らないこと、また暖房器具による乾燥が原因)などにより、一般的に冬場は免疫力が低下しやすいことが知られています。
2.温度と湿度がウイルスにとって最適な環境となる
ウイルスは一般的に温度と湿度が低いと長く生存できます。温度16℃以下、湿度40%以下だと特にウイルスが蔓延しやすいと言われています。
インフルエンザは誰でも容易に感染し得る病気です。感染症法では発生動向調査の必要な五類感染症に指定されています。子どもは「学校保健安全法施行規則」に出席停止の基準が定められていますが、大人には法的な就業制限の義務はありません。
しかしながら、インフルエンザウイルスに感染した従業員が働き続けると、周りの人に感染が広がり、企業内で大流行を引き起こすリスクがあります。無理に出社させて社内に感染が広がると、人手不足により事業の継続が難しくなることがあります。
したがって、企業にもしっかりとしたインフルエンザ対策が必要となるのです。以下にその具体的な方法を解説します。
インフルエンザは感染力が高く、重症化リスクもある怖い感染症の一つです。従業員に罹患者が出た場合、何も手を打たなければあっという間に職場内での大量感染という事態になりかねません。感染拡大を避けるためには、普段からできる予防策の徹底に加え、最初の一人が出た時の対応が大変重要となります。
インフルエンザは予防が第一です。手洗い、咳エチケット、マスク着用、バランスの取れた食事、充実した睡眠、適度な運動など、まずは従業員個人でできる予防方法について周知し、日常生活で徹底してもらう事が大切です。
下記サイトには、厚生労働省が作成した啓発のためのポスターやパンフレットが掲載されています。必要に応じて利用すると良いでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/keihatu.html
咳エチケットとは、咳をした時に周りに飛沫を飛ばさないようにする工夫のことです。具体的には次の3つの点に気を付けましょう。
インフルエンザは年によって流行する型や時期が異なるため、最新情報を集めることが大切です。流行期になると、厚生労働省から感染状況などの公表があります。厚生労働省の下記ページに最新情報が載っていますので、定期的にチェックする習慣をつけましょう。
衛生委員会とは、職場の安全や従業員の心身の健康維持・促進のため、社内の衛生に関することを調査・審議して、その結果をまとめ、事業者に意見することで労働環境の衛生を維持・改善することを目的とした委員会です。産業医も参加しています。
そのため、衛生委員会が行う健康講話にインフルエンザの話題を入れるなど、上手に利用することをおすすめします。それぞれの企業に合ったインフルエンザ対策をあらかじめ産業医と相談しておくと、実際に感染者が発生した時の対応がスムーズです。
万が一インフルエンザ罹患者が企業内で出た場合、職場環境を適切に保つことも蔓延防止に一定の効果があります。
空調を適切することで、インフルエンザウイルスが活動しにくい環境を作ります。また、空間内にいるウイルスの総数を減らす効果もあります。
飛沫・空気感染、接触感染ともに、従業員同士の接触を減らせば、感染リスクを減らすことにつながります。
企業内に以下の感染対策アイテムを常備しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
インフルエンザワクチンの予防接種には、発症をある程度抑える効果や、重症化を予防する効果があります。特に高齢者や基礎疾患のある方など、重症化リスクのある人には効果的と考えられます。予防接種は積極的に受けるように、全ての従業員に勧めましょう。
インフルエンザワクチンの予防接種には健康保険は使えず、全額自己負担となります。保険組合や自治体によっては補助制度がありますので、賢く利用しましょう。
事前に緊急時の対応などを検討し、その内容を取りまとめた計画を、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)といいます。BCPを策定しておくことで、インフルエンザに限らず大地震や火災などの緊急時にも慌てず事業を継続できます。一般的な災害に備えるBCPとは別に、インフルエンザやコロナウイルスをはじめとした感染症の大流行(パンデミック)に備えたBCPを作成することも対策の一案です。
従業員がインフルエンザに罹患した場合の規定は、休暇や賃金の取り扱いを含め、法的に定めがない事柄が多いです。したがって、いざ発症者が出た時に混乱しないように、インフルエンザ発症時の対応策を就業規則などで事前に定め、普段から従業員に周知しておくことが重要です。
季節性インフルエンザは感染症法における五類感染症に指定されています。ただし、五類感染症は労働安全衛生法第68条及び労働安全衛生規則第61条による就業制限の対象外となっています。ちなみに新型インフルエンザは感染症法第18条に基づく就業制限が課されます。新型コロナウイルス感染症は2020年10月現在では二類感染症に指定されており、同様に感染症法第18条に基づく就業制限の対象となります。
季節性インフルエンザは就業制限がないとはいえ、労働契約法第5条では、使用者の安全配慮義務として「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。これはアルバイトスタッフ、正社員を含む全ての労働者に適用されるものです。
また労働安全衛生法第119条第1項においては、厚生労働省にて定められている感染症に罹患した労働者を強制的に就業させると、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることが定められています。
したがって、季節性か新型かにかかわらず、インフルエンザを含めた感染性疾患に罹患したスタッフをそのまま働かせることは安全配慮義務違反を含めた法律違反になる可能性が高いです。
法的に明らかな定めがないのに、罹患した従業員を働かせると法律違反になりかねないという曖昧な状況だからこそ、インフルエンザを含む感染性疾患に罹患した場合は何日休業させるか、またその際の休暇の取り扱いや賃金の支給の有無などについて、具体的に就業規則へ明記することを強くおすすめします。休暇と手当金については後の項目で解説します。
そもそもどのような場合を「インフルエンザに感染した」と見なすかについて、企業内で統一したルールが必要となります。法的な定めはないので、従業員からの口頭による申告、もしくは医師による診断書の提出としている企業が多いです。
出勤停止については、法律上、就業が禁止されている感染症以外の病気でも、会社の判断で出勤停止にできることを規定しておくと良いでしょう。出勤停止期間は、「学校保健安全法」に準じると、従業員もわかりやすいです。「学校保健安全法」に定められたインフルエンザ罹患児童の出席停止期間は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」です。この期間を経過すると、感染力が概ねなくなると考えられているためです。
インフルエンザに罹患した従業員が復帰する際、職場に治癒証明書や陰性証明書を提出させる必要はないでしょう。そもそも完全な陰性証明は医師や医療機関でも不可能です。病院に不要な負担をかけることにもなりますし、受診のために従業員の時間や体力を無駄に消費するとともに、他の疾患への罹患リスクを上げることにもなります。
季節性インフルエンザで仕事を休んだ時の休暇の取り扱いや賃金について、法律に規定はありません。だからこそ、就業規則に明記し周知徹底しておくことが極めて重要です。一人でも知らない従業員がいると、後でトラブルの元になりますので注意しましょう。
一般論として、季節性インフルエンザによる欠勤は、「私傷病」による欠勤(病気欠勤)扱いとなりますので、原則として賃金は発生しません(ノーワーク・ノーペイの原則)。なぜならインフルエンザの感染は、企業の責任ではないからです。本人が出勤したいと言っている場合でも、完治していない従業員を出勤させて感染が広がれば、他の従業員に対する安全配慮義務違反となります。
賃金などの面から従業員が自主的に有給休暇を選択する場合もありますが、企業側から無理やり有給を使わせることはできません。
インフルエンザでも制度上は「傷病手当金の申請」が可能です。傷病手当金の支給条件は以下の通りとなっています。
インフルエンザの場合は感染リスクを考慮に入れると、発熱から5日間は登校・出勤しない方が良いとされるので、休業4日目以降は傷病手当金の申請が可能となります。ただし傷病手当金は休んでいる期間について給与の支払いがない、もしくは傷病手当金の額より支給される給与が少ない場合が対象となるため、一般的には有給休暇を選択した方が金銭的には有利となります。
就業規則で出勤停止を命じた場合も、法的には賃金や休業手当を支払う必要はありません。休業手当を支払う根拠となる法律の規定(労働基準法第26条「使用者の責に帰すべき理由」及び民法第536条2項「債権者の責に帰する理由」)のいずれにも該当しないからです。
ただし、季節性インフルエンザの場合、従業員を強制的に休ませる法的根拠もありません。したがって出勤を希望する従業員を強制的に出勤停止とした場合、またインフルエンザが疑われるだけで出勤停止にした場合は会社都合(労働基準法第26条「使用者の責に帰すべき理由」)での休業という扱いになるので、賃金もしくは休業手当を支払う必要があります。従業員に有給が残っていない場合や有給取得を拒否する従業員に対しては、平均賃金の6割の休業手当を支払う義務が生じるのです。
したがって、有給を使えない(使わない)インフルエンザに罹患した従業員を強制的に5日休ませた場合、事務的には、休業開始から最初の3日間の待機期間については休業手当を会社が支払い、その後2日間については健康保険の傷病手当金を申請する、という形になります。
罹患の疑いがある場合には速やかに医療機関を受診するよう勧めます。就業規則で定めがあれば、受診を命ずることも可能です。
受診でインフルエンザ罹患が確定した場合、また受診していないものの症状や周囲の状況からインフルエンザ罹患の可能性が高い場合は、休業連絡や業務調整の必要があっても出社せず、そのまま帰宅するように指示しましょう。インフルエンザウイルスは感染力が高いものが多く、ほんの少しの時間でも感染者と同じ空間にいれば感染の可能性があるためです。
インフルエンザを発症した従業員はもちろん、そもそも発熱などで体調の悪い従業員が無理やり出社することのないような、休みやすい企業風土の構築が必要です。また、一人が休んだら仕事が回らないような業務のやり方は、働き方改革の観点から見ても問題があります。普段から業務をうまく分担する仕組みや有事の際のカバー体制などについて検討・実践しましょう。
また、症状は落ち着いたものの感染リスクの観点から出勤させたくない場合などに備えて、テレワークの選択肢が用意できるとさらに良いでしょう。
以上、簡単ですが、インフルエンザの基礎知識に加えて企業でできる実践的なインフルエンザ対策についてまとめてみました。インフルエンザ対策は、新型コロナウイルスを含めたウイルス感染症のパンデミックの際にも役に立つものが大半です。企業の持続的な発展のためにも事前の備えをしっかり行い、罹患者が出た場合にトラブルにならないように、また企業内での発生を最小限に抑えるようにしましょう。
安全衛生委員会のテーマ資料サンプル集です。 「ハラスメント」「メンタルヘルス」「業務災害」の3つのテーマについて 委員会でご利用いただける資料のサンプルをダウンロードいただけます。 効果的な議論を行うためにも、ぼんやりとテーマを決めておくのではなく テーマについて下調べし、資料を作成しておくことが大切です。 参加者の論点を揃え、具体的な話や改善策の検討につながるように準備しておくとよいでしょう。
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け