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少子高齢化が進展するなか働き手として女性の役割が高まり、2015年8月に女性活躍推進法が国会で成立しました。同法は2019年に改正され、順次施行されています。
本記事では、2022年4月から従業員101名以上の企業に適用される女性活躍推進法の改正について解説します。対象企業は改正への対応が急がれます。
女性活躍推進法の正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。女性が個性や能力を発揮できる職場環境づくりに向けた基本原則や国・企業などの責務、企業に対する⾏動計画の策定義務などを定めています。続いて、女性活躍推進法の目的と企業に課せられた具体的な義務について確認します。
女性活躍推進法は、女性がより活躍できる環境・社会の実現を目指して制定されました。
社会における女性の役割は年々高まっており、女性の就業率はアップしましたが、厚生労働省の調査によると「正社員に占める女性の割合」は27.2%と低位です。また、管理職に占める女性の割合も「部長相当職」は8.4%、課長相当職は10.8%に過ぎません。
出産・育児に伴う女性の退職が多いことから「仕事と家庭の両立が困難」なことが女性の管理職が少ない直接的な原因ですが、これは企業が女性の社会進出を十分に支援できていない結果ともいえます。具体的には、「性別による固定的役割分担」を反映した職場慣行を一掃できない、などです。
女性活躍推進法に定める主な企業の義務は、次の2つです。
一般事業主行動計画は策定するだけでなく、実際に取り組みを行い効果検証も必要です。また、取り組み状況の社外公表を義務付けることで、企業に対する強制力を高めています。
ただし、2016年4月の施行時よりすべての企業に上記義務が課せられたわけではありません。まずは、従業員数(※)301名以上の大企業に対し次の義務が定められました。
※「常時雇用する労働者」のことでパートタイマーやアルバイトを含みます
女性活躍推進法に定める主な企業の義務
一般事業主行動計画の策定・届出 | 女性活躍に関する情報の公表 | |
2016年4月施行 | 義務付け
(数値目標1つ以上) |
義務付け
(公表する情報1つ以上) |
2020年4月改正 | 数値目標の設定方法変更
(数値目標2つ以上) |
- |
2020年6月改正 | - | 情報公表の強化
(公表する情報2つ以上) |
参考:厚生労働省「一般事業主行動計画の改正内容(令和2年4月1日施行)」
2020年4月の改正では、「一般事業主行動計画」について次の2区分からそれぞれ数値目標を定めた行動計画を策定・届出することが義務となりました。
具体的には次表の項目についてその状況を把握・課題分析し、行動計画を策定・届出・実施します。
状況把握項目
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率 ・労働者に占める女性労働者の割合 ・男女別の配置の状況 ・管理職及び男女の労働者の配置 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・男女別の職種または雇用形態の転換の実績 ・男女別の再雇用または中途採用の実績 ・男女の賃金の差異 など |
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ・男女別の育児休業取得率及び平均取得期間 ・男女別のフレックスタイム制等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績 ・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況 ・有給休暇取得率 など |
※太字は必ず把握すべき項目です。
※項目によって対象となる従業員の雇用形態などが異なります。
出典:厚生労働省「改正女性活躍推進法が施行されます!」
2020年6月改正では、「女性活躍に関する情報」について次の2区分からそれぞれ1項目以上を選択し、情報公表することが義務付けられました。
公表する情報(①②から1つ以上選択)は次の通りです。
公表する情報
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率 ・労働者に占める女性労働者の割合 ・係長級にある者に占める女性労働者の割合 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・役員に占める女性の割合 ・男女別の職種または雇用形態の転換実績 ・男女別の再雇用または中途採用の実績 |
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ・男女別の育児休業取得率 ・労働者の1月当たりの平均残業時間 ・有給休暇取得率 |
※項目によって対象となる従業員の雇用形態などが異なります。
出典:厚生労働省「改正女性活躍推進法が施行されます!」
2022年4月1日から、女性活躍推進法の対象が「従業員数101名以上300人以下の企業」に拡大されます。実際には、2016年4月施行時には「努力義務」であったものが「義務」になるのです。
ただし、従業員数301名以上の大企業に課される義務(2020年4月・6月の改正を反映)とは内容が異なります。企業が対応すべき事項は多少減りますが、拡大対象の企業担当者には相当の負担となるでしょう。
企業が対応しなかった場合の罰則は規定されていませんが、「女性の就業に積極的ではない」「女性が働きにくい職場」など企業イメージが損なわれるリスクがあります。また、求人に苦労したり、女性従業員の士気が下がったりするケースも考えられます。
対応が必要な「一般事業主行動計画の策定・届出」と「女性活躍に関する情報の公表」の内容について以下で具体的に説明しますので、未対応企業は早急に着手しましょう。
従業員数101名以上の企業が対応すべき「一般事業主⾏動計画の策定・届出」は、次の4ステップに分けられます。
それぞれについて説明します。
最初のステップは、「女性の活躍状況」を次の基礎項目に基づいて把握し課題を分析することです。
(区)の表示項目については、雇用管理区分(※)ごとに現状の把握が必要です。現状より課題を分析し、⾏動計画策定の材料として活用します。
※雇用形態(正社員・契約社員・パートタイマー)や職種(事務職・技術職・専門職)などによる従業員の区分のことです。
例えば、女性労働者の採用割合が低ければ、その原因を分析し女性の割合を高めるための行動計画に役立てるなどです。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」
次に、ステップ①の現状の把握・課題分析に基づき、自社が取り組む一般事業主行動計画を策定します。行動計画には次の項目を必ず入れなければなりません。
計画期間が終了すると実施状況を検証して行動計画を改定(または新しい計画を策定)します。
また、策定した一般事業主行動計画は、社内に周知するとともに社外に公表しなければなりません。社内へ通知する方法は次の通りです。
社外に公表する方法は次の通りです。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」
一般事業主行動計画を策定したら、都道府県労働局(雇用環境均等部)に届出します。策定から3か月以内に、郵送または持参、電子申請により届出しましょう。
届出する書類は、厚生労働省ホームページに掲載されている「一般事業主行動計画策定・変更届(様式第一号)」です。様式や記載例のほかに、「モデル行動計画」も掲載されているので下記リンクを参照して下さい。
参考:厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出等について」
最後のステップが、行動計画の実施と実施後の効果測定です。
成果を上げるには、計画に基づいて取り組みを実施するとともに、定期的に実施状況を点検し取り組み内容を見直すことが必要です。また、実施状況だけでなく数値目標の達成状況を点検・評価し目標達成に向けて改善を図りましょう。
従業員数101名以上の企業が対応すべき「⼥性の活躍に関する情報公表」は、次の2つの区分から1つ以上を選択します。
それぞれの具体的内容について説明します。
「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」については、次の8項目から選択して公表します。(区)の表示項目は雇用管理区分ごとに、(派)の表示項目は派遣労働者を含めて公表する必要があります。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」
「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」については次の7項目から選択して公表します。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」
女性活躍推進法の企業の義務は企業にとって一定の負担となりますが、義務を果たすことで得られるメリットもあります。
メリットの1つが「えるぼし認定」です。一般事業主行動計画の策定・届出を行った企業のうち実施状況が優良であるなどの一定の要件を満たした場合、申請により厚生労働大臣から認定を受けられます。なお、えるぼし認定企業のうち、上記の取組の実施状況が特に優良である等の一定の要件を満たした場合に「プラチナえるぼし」が認定されます。
認定を受けると自社の商品などに認定マークをつけられるなど、企業イメージの向上に役立つでしょう。また、公共調達(※)で加点評価を受けることができ落札しやすくなります。
※入札などにより国が工事を発注したり、商品やサービスを購入したりすることです。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定・プラチナえるぼし認定のご案内」
【関連記事】プラチナえるぼし認定とは? 女性活躍推進法に基づく認定制度を解説
最後に、厚生労働省の事例集より、すでに実施している中小企業の取り組み事例を「数値目標」「課題分析」「取り組み内容」「取組結果」に分けて紹介します。
【会社概要】
事業内容:医薬品等の研究支援業務
設立年:2010年9月8日
常用労働者数:女性59名、男性78名、計137名
平均勤続年数:女性2.6年、男性1.9年、全社2.2年
役職者における女性割合:係長71.4%、管理職31.6%、役員0%
※2017年9月時点
数値目標 | ・管理職に占める女性の割合:現行の31.6%→50%
・上位管理職の割合:11.1%→20% |
課題分析 | ・管理職の女性割合は比較的高いが、役員や部長など上位の管理職層に占める割合が低い
・女性の上位管理職の育成を積極的に行ってこなかった |
取り組み内容 | ・女性課長から上位の管理職候補をリストアップして育成
・「妊娠・出産・育児」に対応できるように福利厚生制度を充実 ・ライフイベントにかかわる休暇・休業を認め合い、助け合う風土醸成のため研修を充実 |
取組結果 | ・「えるぼし」認定取得などにより、優秀な人材の定着につながった
・会社の取り組み姿勢が伝わってライフイベントに対する不安が解消された ・お互いに助け合っていく職場風土・意識が醸成された |
参考:厚生労働省「中小企業のための女性活躍推進 -企業の取組事例集-」
【会社概要】
事業内容:大規模施設の設計・施工・管理等の総合建設業
設立年:1909年
常用労働者数:女性1,311名、男性6,395名、計7,706名
平均勤続年数:女性16.7年、男性19.0年
役職者における女性割合:管理職3.2%、役員1.5%
※2017年4月時点
数値目標 | ・女性管理職比率を引き上げる
2020年に4.5%程度、2025年に2015年の3倍である8%程度 |
課題分析 | ・技術職と営業職において女性管理職の登用が進んでいない
・女性活躍の前提となるワーク・ライフ・バランスを確保するため、メリハリある仕事ができるよう仕事の進め方の見直しが必要 ・女性活躍推進の必要性を社員に理解してもらう |
取り組み内容 | ・主任級の女性社員を対象に「女性リーダー育成研修」を実施し、管理職への意識を後押し
・マネジメント層を対象に「ダイバーシティライン長研修」を実施し、女性のキャリア形成への理解を深め、女性からの相談体制を整備 |
取組結果 | ・女性リーダー育成研修実施後、女性社員の意識が明らかに変わった
・社外研修への派遣などフォローを続け、女性の管理職登用が進んだ |
参考:厚生労働省「中小企業のための女性活躍推進 -企業の取組事例集-」
【会社概要】
事業内容:社会福祉事業(障害者支援施設の運営等)
設立年:1909年
常用労働者数:女性86名、男性59名、計145名
平均勤続年数:女性10.6年、男性10.6年
役職者における女性割合:管理職50%
※2017年3月時点
数値目標 | ・管理者が育児休業からの復帰後の職員を適切にサポートできるよう研修を行い、受講率を男女共に90%とする
・継続就業に向け、母性健康管理のパンフレットを年1回以上見直す |
課題分析 | ・妊娠・出産・子育てについて全体の相互理解をさらに進める必要がある
・妊娠・出産等に関するパンフレットを渡されただけではわかりにくい |
取り組み内容 | ・個人の問題ではなく、事業所全体のこととして子育てに取り組む
・安心して復帰できる職場にするために管理者教育を行う ・妊娠・出産対象者向けパンフレットを継続的に見直す |
取組結果 | ・新たに数名の女性を採用し、短時間勤務など柔軟な働き方に対応
・社内外から「誇れる職場だ」という言葉が聞かれるようになった |
参考:厚生労働省「中小企業のための女性活躍推進 -企業の取組事例集-
2022年4月1日から、女性活躍推進法の対象が「従業員数101名以上300人以下の企業」に拡大されます。対象企業がやるべきことは、「一般事業主⾏動計画の策定・届出」と「⼥性の活躍に関する情報公表」の2つです。
行動計画への取り組みを通じて女性がより活躍できる職場を実現することで、人材の育成・定着や組織の活性化が期待できます。今回の法改正を「働き方改革」の好機と捉え、全社的な取り組みにしましょう。
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