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男性の育児休業の取得を促進するために2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月より順次施行となります。
今回の記事では、育児・介護休業法の改正内容と改正に伴う企業対応について解説します。法令違反にならないように、未対応の企業は就業規則の見直しなどを急ぎましょう。
育児・介護休業法の主な目的は、男性の育休取得の促進です。2020年度の育休取得率は女性が81.6%であるのに対し、男性はわずか12.65%に過ぎません。ここ数年、男性の取得率は上昇傾向にありますが、状況を大きく改善するには国による強力な後押しが必要な状況です。
育児休業取得率の推移
2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
男性 | 3.16% | 5.14% | 6.16% | 7.48% | 12.65% |
女性 | 81.8% | 83.2% | 82.2% | 83.0% | 81.6% |
男性の育休取得が低調で育児への負担が女性に偏重した結果、半数近い女性が妊娠・出産を機に退職しています。少子高齢化が進み労働力として女性の活躍が期待される反面、男性の育児参加が不十分であるために、女性の就業継続が困難になっているのです。
このような状況を背景に、女性が仕事と育児を両立できる環境を目指して法改正が行われました。企業の人事担当者には、今回の改正を企業に負担を強いる規制と捉えるのではなく、人材確保の観点から積極的に推進する姿勢が望まれます。
改正点を説明する前に、育児休業についての基本事項を確認しておきましょう。
育児休業は、企業などに雇用される労働者が原則1歳未満の子供を養育するための休業です。「育児・介護休業法」では、労働者と企業(事業主)について次の通り定めています。
また、「雇用保険法」では休業中の補償として「育児休業給付」の支給が定められています。
一般的には子どもを養育する父母が対象ですが、雇用状況により次の通り対象者は限定(2022年3月31日まで)されます。
対象者が限定される理由は、育児休業や休業給付が育児休業終了後に職場へ復帰することを前提としているためです。子供の養育を行う労働者の雇用継続を支援し、仕事と育児の両立を図っています。
育児休業と混同されやすい制度が「育児休暇」です。育児休業について正しく理解するために、育児休業と育児休暇の違いについて確認します。
育児休業は、育児・介護休業法に定める国の制度であり、企業に対して強制力を持ちます。一方、育児休暇は企業が任意で設ける休暇制度です。つまり、育児休業の取得は国が認めた労働者の権利であり、育児休暇は企業が就業規則で定めなければ労働者は取得できません。
ただし、育児・介護休業法で は「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置」が企業の努力義務として定められています。休暇や労働時間の短縮により子育ての支援を企業に求めるものです。
育児休暇制度を導入していない企業は、企業の努力義務であることと従業員の定着や福利厚生の向上にも資することを考慮して、導入の検討をおすすめします。また、検討する前に、育児休業と育児休暇の相違点を理解しておきましょう。
育児休業と育児休暇の主な相違点
育児休業 | 育児休暇 | |
法律上の義務 | 義務 | 努力義務 |
取得時期 | 原則生後1年以内
(延長されることもある) |
育児休業終了後
(企業によって異なる) |
育児休業給付金の支給 | あり | なし |
給与の支給 | なし | 企業によって異なる |
社会保険料の支払い | 免除 | 必要 |
育児休業中は育児休業給付金が支給されるため、給与を支給しない企業が大半です。企業が給与を支払った場合、育児休業給付金は支給されません。育児休暇中の給与の有無は企業が任意で決めますが、「ノーワーク・ノーペイの原則」により無給とする企業が大半です。従業員の立場で見ると、育児休暇中は育児休業給付金も給与も支給されないことになります。
また、育児休暇のほかに「子の看護休暇」という制度があります。1年間に5日間を限度に子どもの看護のため休暇を取得できる制度です。従業員から看護休暇の申出があれば、企業はこれを拒むことはできません。育児休暇と異なり、看護休暇の付与は企業に対する法定義務です。
ここまで、育児休業の基本事項を確認しました。次に、2022年4月1日以降に施行される改正点について解説します。改正法は2022年4月から2023年4月にかけて順次施行されます。
まずは、2022年4月1日に施行される改正内容です。主な改正点は次の2つです。
1つ目の改正点は、育児休業の取得率を上げるために次の2点を企業に義務づけることです。
「育児休業を取得しやすい雇用環境整備」とは、具体的に次の措置を取ることです。
※2022年10月1日以降は後述の「産後パパ育休」についても育児休業と同様の対応が必要です。
企業は上記のうち、最低限1つの措置を講じなければなりません。また、複数の措置を取ることが望ましいとされていますので覚えておきましょう。
「労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」について、周知すべき事項は次の通り定められています。2022年10月1日以降は、産後パパ育休についても周知が必要です。
企業は上記事項を個別に周知し、従業員の意向(育休の取得の有無や取得時期・期間など)を確認しなければなりません。周知方法と意向確認方法は、「面談や書面交付、FAX、電子メール等のいずれか」と定められています。
どの方法を選択するにしても、企業は事前に「周知すべき事項を記載した書面」と「従業員の意向確認用の書面(従業員自身が希望を記入する形式が一般的)」を準備しましょう。口頭での意向確認も可能ですが、後日のトラブルを避けるため書面での意向確認がおすすめです。
2つ目の改正点は、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されることです。有期雇用労働者について、育児休業前の雇用期間に関する要件が撤廃されました。
2022年3月31日までの育児休業取得要件は次の通りです。
2022年4月1日以降は休業前の雇用期間を問わないため、入社後間もない有期雇用労働者も育児休業の対象になる可能性があります。企業の担当者は、育児休業対象者の確認漏れや周知・意向確認忘れがないように注意が必要です。
ただし、休業前の雇用期間が1年以内の従業員については労使協定の締結により育児休業の対象から除外できます。また、育児休業取得要件の変更や除外規定の設定に伴い、就業規則の変更が必要です。
就業規則の記載方法については、厚生労働省の規定例が参考になります。従業員に対する個別周知・意向確認書の記載例も掲載されています。
参考:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例(令和4年4月1日、10月1日施行対応版)」
2022年10月1日に施行される改正は、今回改正の目玉とも言える「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設などです。従来の育児休業とは別枠で、男性が取得できる休業制度が新設されます。
新たに創設されるのが「出生時育児休業(以下、産後パパ育休)」です。男性の育児休業取得を促進するために従来の育児休業とは別枠で設けられる休業で、従業員から申出があれば、企業は休業を拒むことはできません。
産後パパ育休の主な内容は次の通りです。
母親の産後休暇に相当する時期に取得でき、従来の育児休業とは別枠で分割取得できるため、休業取得時期について自由度が高くなります。その結果、男性が休業しやすくなることが期待されます。
また、産後パパ育休の創設に伴い、「産後パパ育休を取得しやすい雇用環境整備」と「妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」が必要です。産後パパ育休についての研修や相談窓口の設置を行うとともに、制度内容などを周知するための書面や意向確認用の書面を準備し、個別に周知・意向確認を実施しなければなりません。
なお、従来の育児休業と同様、休業中は育児休業給付金が支給され、社会保険料の支払いは免除されます。育児休業給付金が支給されるので、休業中は無給として問題ありません。
従来の育児休業についても、休業を取得しやすくするために次の改正が行われました。
従来の育児休業は分割不可、1歳以降の育休開始日は1歳または1歳半の時点に限定されていました。改正により夫婦が交代で育休を取るなど、柔軟な育休取得が可能になります。
参照:
育児・介護休業法の改正について
育児・介護休業法
雇用保険法
2022年10月1日の施行内容は、厚生労働省の下表にわかりやすくまとめられています。
産後パパ育休の創設や育児休業の分割取得についても、就業規則に反映させる必要があります。前述の厚生労働省ホームページの規定例などを参考に対応しましょう。
最後に、2023年4月1日施行の改定内容を説明します。対象となるのは、従業員数1,000人超の企業のみです。
2023年4月1日より従業員数1,000人超の企業は、育児休業の取得状況を公表する義務を課せられます。主な内容は次の通りです。
詳細については今後発表されますが、自社の育児休業取得状況を把握するとともに、公表方法をどうするか、検討しておきましょう。
派遣労働者や出向者に対する対応についても確認しておきましょう。
派遣労働者の雇用管理は、原則として労働契約を締結している派遣元が行います。そのため、育児・介護休業法の改定に伴う「育児休業を取得しやすい雇用環境整備」や「育児休業制度等に関する個別の周知・意向確認の措置」などの実施義務は、派遣元にあります。
ただし、妊娠・出産の申出などを理由とした解雇や不利益取り扱いの禁止、などの義務は、派遣元だけでなく派遣先にも課せられます。
出向者については雇用管理状況によって、出向元または出向先に雇用管理整備や個別の周知・意向確認の措置の実施義務が課せられます。移籍出向者に対しては、一般的に出向先の義務となります。
日本企業では前例が極端に少ない男性の育児休業を浸透させるには、就業規則の改定や形式的な取り組みだけでは不十分です。実効性を高めるために、企業が積極的に対応したいことを紹介します。
企業がまず対応すべきなのは、育児休業制度についてしっかり周知し、従業員の理解を促すことです。本稿では育児・介護休業法の改定について説明してきましたが、男性従業員には従来の育児休業制度ですら十分に理解されていないからです。
実効性のある具体的な取り組みとして、「イクメン企業アワード受賞企業」の取組事例を一部ご紹介します。
参考:
イクメン企業アワード2020 受賞企業の取組事例集
イクメン企業アワード2019 受賞企業の取組事例集
次に重要なのが、業務の引き継ぎや復職後の体制整備です。男性従業員で育児休業を取得しなかった理由で多いのが、「業務が繁忙で職場が人手不足だから」で す。休業後の業務が円滑に引き継がれ、復帰後の業務も明確であれば、安心して育児休業を取得できます。
「イクメン企業アワード受賞企業」では、次の取り組みを行っています
参考:
イクメン企業アワード2020 受賞企業の取組事例集
イクメン企業アワード2019 受賞企業の取組事例集
また、復帰後に仕事と育児の両立が図れるように、テレワークやコアタイムのないフレックス制度の導入など、働く時間や場所を柔軟に選べる体制づくりを行う企業も目立ちます。
男性の育休取得を促進するために育児・介護休業法が改正されました。2022年4月より順次施行されるため、企業は期日までに次の対応が必要です。
2022年4月1日
2022年10月1日
2023年4月1日
法律上の義務は上記の通りですが、従業員が働きやすい環境を整備し活気のある組織を創り上げるには、男性の育児休業率アップに向けた実効性のある企業の自主的な取り組みが重要と言えるでしょう。
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