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従業員のメンタルヘルス対策は、現代企業にとって避けて通れない重要な経営課題です。人事労務担当者として、「従業員の不調にどう対応すればいいのか」「ストレスチェック後の職場環境改善がうまく進まない」「専門知識に自信がなく、産業医との連携に不安がある」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。
これらの課題を解決するためには、メンタルヘルスに関する体系的で信頼性の高い知識が不可欠です。専門資格を取得することで、従業員や管理職からの信頼性が向上し、具体的な対策を自信を持って推進できるようになります。
この記事では、数あるメンタルヘルス関連資格の中から、特に企業の人事労務担当者の実務に役立つ資格を8つ厳選し、国家資格と民間資格に分けて徹底比較します。それぞれの資格の特徴から、貴社の課題に合わせた選び方、取得後の具体的な活かし方まで詳しく解説します。
目次
近年、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性はますます高まっています。法改正によるストレスチェックの義務化や、ハラスメント対策の強化など、企業に求められる責任は増大しており、その中心的な役割を担うのが人事労務担当者です。
資格取得を通じて専門知識を身につけることは、単なるスキルアップに留まらず、企業と従業員双方を守るための重要な投資となります。ここでは、資格取得がもたらす具体的なメリットを3つの視点から解説します。
メンタルヘルスは非常にデリケートな問題であり、従業員が不調について相談するには、相手への高い信頼感が不可欠です。資格という客観的な証明があることで、人事労務担当者が専門的な知識を持って対応してくれるという安心感を与え、相談しやすい環境の醸成に繋がります。
また、管理職に対してラインケア研修などを実施する際にも、資格保有者からの説明は説得力を持ち、全社的な取り組みへの協力を得やすくなります。
企業には、従業員に対する「安全配慮義務」があり、メンタルヘルス不調を放置することは法的リスクに繋がりかねません。資格学習の過程で、労働安全衛生法などの関連法規や、判例に基づいた企業の責任範囲について体系的に学ぶことができます。
これにより、ストレスチェック制度の適切な運用、休職・復職支援の正しい手順、ハラスメント発生時の対応など、法令を遵守したリスクの低い労務管理が可能になります。
産業医や保健師、外部のEAP(従業員支援プログラム)機関といった専門家と連携する場面は少なくありません。資格取得を通じて専門用語や基本的な考え方を身につけることで、彼らからの助言を正確に理解し、より具体的で実効性の高い施策を共に検討できるようになります。
例えば、産業医からの「職場環境改善に関する助言」に対し、人事労務担当者が具体的な改善計画を立案・実行するなど、専門家とのパートナーシップを強化し、組織全体の健康経営を推進する原動力となります。
メンタルヘルス関連資格は多岐にわたるため、自社の課題やご自身の役割に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。ここでは、人事労務担当者が直面しがちな3つの目的別に、資格選びのポイントを解説します。
「これから本格的に対策を始めたい」「ストレスチェック制度を形骸化させたくない」という企業の人事労務担当者には、職場のメンタルヘルスケアに関する全体像を体系的に学べる資格がおすすめです。
【選ぶべき資格のポイント】
・企業の法的責任や役割について学べる
・セルフケア、ラインケア、事業場内産業保健スタッフ等の役割を包括的に理解できる
・社内規程の整備や研修の企画・立案に役立つ知識が得られる
【代表的な資格】
・メンタルヘルス・マネジメント®検定Ⅰ種(マスターコース)
「従業員からの相談にうまく対応できない」「休職者との面談で何を話せばいいかわからない」といった悩みを持つ担当者には、カウンセリングの基礎的なスキルや傾聴技法を学べる資格が適しています。
【選ぶべき資格のポイント】
・傾聴やコミュニケーションの技法を実践的に学べる
・相談者の心理的負担を軽減し、信頼関係を築くスキルが身につく
・面談を通じて従業員が自ら問題解決できるよう支援する手法を習得できる
【代表的な資格】
・産業カウンセラー
・キャリアコンサルタント
「人事労務のプロフェッショナルとしてキャリアアップしたい」「より高度な専門知識を身につけ、企業の経営層に提言したい」という意欲のある方には、国家資格などのより専門性が高く、社会的信頼性のある資格が目標となります。
【選ぶべき資格のポイント】
・心理学や福祉に関する高度な専門知識と技術が求められる
・医療・福祉機関との連携など、より幅広い視野での対応力が身につく
・取得難易度は高いが、キャリアにおける大きな強みとなる
【代表的な資格】
・公認心理師
・精神保健福祉士
・社会保険労務士
国家資格は、法律に基づいて国が認定する資格であり、高い専門性と社会的信頼性が特徴です。取得には実務経験や指定科目の履修が必要な場合が多く、難易度は高めですが、人事労務の専門家としてキャリアを築く上で大きな武器となります。
心理職における初の国家資格で、保健医療、福祉、教育など幅広い分野で心理に関する支援を行います。
【特徴】
名称独占資格であり、「公認心理師」でなければその名称を名乗れません。心理アセスメント(査定)やカウンセリングに関する高度な専門知識・技術の証明となります。
【人事労務での活かし方】
従業員の心理状態を専門的視点から評価し、より適切な対応策を立案できます。産業医や精神科医との連携において、橋渡し役として極めて重要な役割を果たせます。ハラスメント事案のヒアリングなど、高度な心理的配慮が求められる場面で専門性を発揮します。
【取得のポイント】
受験資格を得るには、大学・大学院で指定科目を履修する必要があるなど、ハードルは高いです。これから大学進学を考える社会人や、既に心理学系の学部を卒業している方がキャリアチェンジを目指す場合に選択肢となります。
精神科ソーシャルワーカー(PSW)とも呼ばれ、精神的な障がいを持つ人々の社会復帰や自立を支援する専門職の国家資格です。
【特徴】
精神保健福祉分野における相談援助の専門家です。医療機関だけでなく、企業の障害者雇用やメンタルヘルス不調者の職場復帰支援(リワーク支援)の場面で活躍が期待されます。
【人事労務での活かし方】
メンタルヘルス不調により休職した従業員の職場復帰プランの作成や、復帰後のフォローアップにおいて、医療機関や行政サービスと連携しながら専門的なサポートを提供できます。障害者雇用枠での採用や、精神障がいを持つ従業員の定着支援においても中心的な役割を担えます。
【取得のポイント】
福祉系の大学で指定科目を履修するか、一般大学卒業後に養成施設で学ぶことで受験資格を得られます。労務管理の中でも、特に休職・復職支援や障害者雇用に深く関わる担当者におすすめです。
個人の適性や職業経験に応じて職業設計を行い、能力開発を支援する専門家の国家資格です。
【特徴】
キャリア形成の支援が主目的ですが、その過程でメンタルヘルスの問題に触れることも多く、カウンセリングスキルが求められます。従業員のキャリア不安や人間関係の悩みに寄り添う視点は、メンタルヘルス不調の予防に直結します。
【人事労務での活かし方】
定期的なキャリア面談を通じて、従業員のモチベーション低下やストレスの兆候を早期に発見できます。育児や介護との両立、異動や昇進に伴う悩みなど、ライフステージの変化に合わせた支援を行うことで、エンゲージメントの向上と離職防止に貢献します。
【取得のポイント】
厚生労働大臣が認定する講習を修了する、もしくは3年以上の実務経験があれば受験資格が得られるため、社会人が目指しやすい国家資格の一つです。
民間資格は、学歴や実務経験を問われずに受験できるものが多く、比較的短期間で取得を目指せるのが魅力です。企業のメンタルヘルス対策に特化した実践的な内容が多く、人事労務担当者の実務に直接活かしやすい知識を効率的に学べます。
大阪商工会議所が主催する、職場でのメンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を問う検定です。企業のメンタルヘルス対策において最も知名度が高く、多くの企業で推奨されています。
【特徴】
対象者別に3つのコースが設定されており、目的に合わせて学習できます。
・Ⅰ種(マスターコース):人事労務担当者、経営層向け。社内のメンタルヘルスケア体制の構築、研修の企画・実施など、企業全体の仕組みづくりに必要な知識を学びます。
・Ⅱ種(ラインケアコース):管理職向け。部下の不調に早期に気づき、相談対応や職場環境改善を行うための知識を学びます。
・Ⅲ種(セルフケアコース):一般社員向け。自身のストレスに気づき、対処するための知識を学びます。
【人事労務での活かし方】
人事労務担当者であれば、まずはⅠ種の取得を目指すのが最もおすすめです。ストレスチェック制度の運用、職場復帰支援プログラムの策定、ハラスメント対策の推進など、検定で得た知識を直接業務に反映できます。また、管理職向けにⅡ種の内容をベースとした研修を実施することも有効です。
【取得のポイント】
受験資格はなく誰でも受験可能です。特にⅡ種とⅢ種は合格率も比較的高く、学習しやすい内容です。Ⅰ種は難易度が上がりますが、その分、人事としての専門性を明確に示すことができます。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する資格で、働く人が抱える問題を自らの力で解決できるよう支援する専門家です。
【特徴】
傾聴を中心としたカウンセリング技法を体系的に学びます。理論だけでなく、ロールプレイングなどの実践的なトレーニングを通じて、コミュニケーションスキルを徹底的に磨くことができます。
【人事労務での活かし方】
従業員との1on1ミーティングや休職・復職者面談において、相手が安心して話せる関係性を築き、本質的な課題を引き出すスキルが身につきます。「聴くプロ」としてのスキルは、あらゆる人事労務業務の質を高めます。
【取得のポイント】
資格試験の受験には、協会が実施する養成講座の修了が必要です。費用と時間はかかりますが、同じ志を持つ仲間と共に実践的に学べる貴重な機会となります。
特定非営利活動法人EAPメンタルヘルスカウンセリング協会(EMCA)が認定する資格です。EAP(従業員支援プログラム)の視点に基づき、個人の問題解決だけでなく、組織の生産性向上に貢献することを目指します。
【特徴】
カウンセリングスキルに加え、コンサルテーション(組織への提言)やマネジメントスキルも学びます。従業員のメンタルヘルス問題を、経営的な視点から捉え、解決策を考える点に特色があります。
【人事労務での活かし方】
ストレスチェックの集団分析結果から組織の課題を特定し、具体的な職場環境改善策を経営層に提言する際に役立ちます。個人のカウンセリングに留まらず、組織全体をより健康にするための働きかけが可能になります。
【取得のポイント】
認定講座の受講と試験合格が必要です。経営的な視点を取り入れたい、より戦略的な人事を目指す担当者におすすめです。
一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)が認定する資格で、主に福祉・介護・医療分野でのストレスケアを想定していますが、その知識は一般企業でも応用可能です。
【特徴】
ストレスの原因やメカニズム、カウンセリングの基礎理論などを学びます。特に、ストレスに起因する心身の反応について詳しく学ぶため、従業員の不調のサインに気づきやすくなります。
【人事労務での活かし方】
従業員のストレス状態を正しく理解し、過重労働や人間関係のトラブルといったストレス要因を特定する際に役立ちます。衛生委員会での議論や、職場環境改善の取り組みに科学的な根拠を提供できます。
【取得のポイント】
認定教育機関での講座受講が必須です。心理学の初学者でも取り組みやすいカリキュラムが特徴です。
中央労働災害防止協会(中災防)が実施する研修を修了することで得られる資格です。事業場における心理相談担当者の養成を目的としています。
【特徴】
ストレスチェック制度における「相談窓口担当者」を養成することに重点が置かれています。相談対応の基本、プライバシー保護、専門機関へのリファー(紹介)の仕方など、実践的な内容を短期間で学びます。
【人事労務での活かし方】
ストレスチェック実施後の相談窓口として、法的に求められる役割を適切に果たせるようになります。高ストレス者への面談勧奨や、相談内容に応じた適切な専門家への橋渡しをスムーズに行えます。
【取得のポイント】
数日間の研修に参加することで資格を得られます。まずは手始めに、相談担当者としての基礎を固めたいという場合に最適な資格です。
資格は取得して終わりではありません。学んだ知識を日々の業務に活かし、組織に貢献してこそ価値が生まれます。ここでは、資格取得後のアクションプランを3つのステップで紹介します。
まずは、学んだ知識を基に自社の現状を客観的に評価しましょう。
これらの点検を通じて課題を洗い出し、資格で得た知識を盛り込んだ規程の改定や、新たな体制の構築を上長や経営層に提案しましょう。
メンタルヘルス対策は、人事労務担当者だけでは成り立ちません。全社的な取り組みにするためには、管理職や従業員の理解と協力が不可欠です。
メンタルヘルス・マネジメント®検定のⅡ種(ラインケア)やⅢ種(セルフケア)の内容を参考に、社内研修を企画・実施しましょう。資格保有者として研修講師を務めることで、自身の知識が深まるとともに、社内での専門家としてのポジションを確立できます。
労働安全衛生法に基づき設置される衛生委員会は、職場環境改善の要です。ストレスチェックの集団分析結果や、従業員からの相談内容などを(個人が特定されない形で)議題として取り上げ、具体的な改善策を議論しましょう。
資格取得者は、産業医と他の委員との橋渡し役となり、専門的知見に基づいた議論をリードすることが期待されます。小さな改善でも成功体験を積み重ねることが、全社的な健康経営文化の醸成に繋がります。
本記事では、企業の人事労務担当者が実務で役立つメンタルヘルス関連資格を、国家資格と民間資格に分けて8つ紹介しました。
従業員の心の健康を守り、いきいきと働ける職場を作ることは、企業の持続的な成長の基盤となります。この記事が、貴社に最適な資格を見つけ、メンタルヘルス対策を力強く推進するための一助となれば幸いです。
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