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ストレスチェックの集団分析を行うと、従業員のメンタルヘルス不調のリスクや組織のストレス状態を把握できます。
しかし、集団分析の具体的なやり方が分からず実施すべきか悩んでいる企業担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ストレスチェック集団分析の具体的な方法や分析結果の開示範囲、結果別の対処方法について解説します。ストレスチェック集団分析を活用した職場環境の改善事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
ストレスチェックの集団分析とは、ストレスチェックの結果を事業場や部署ごとなど、一定の集団ごとに集計し、組織のストレス状態や傾向について分析することです。
集団分析により、集団ごとのストレス要因を的確に把握することで、改善計画の立案や施策の実行がしやすくなります。
施策の実施後は、職場環境が改善されているか定期的に評価します。施策の効果が得られていない場合は改善策の検討が必要です。
このようにPDCAサイクルを回して集団分析を行い職場環境を改善していくことで、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防げます。
【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
【関連記事】ストレスチェック制度とは?実施によって得られるメリットや導入手順を解説
ストレスチェックの集団分析は、法律では努力義務とされています。そのため、ストレスチェックの集団分析を実施していなくても罰則は科されません。
ただし、職場環境の改善は、従業員のストレスによる不調や休職などを未然に防ぐだけでなく、仕事の質の向上にもつながります。より働きやすい職場にするために、集団分析を実施するとよいでしょう。
厚生労働省の調査によると、2022年度のストレスチェック集団分析の実施率は72.2%で、そのうち80.2%の事業場が集団分析の結果を職場改善に活用しています。
(参考:厚生労働省「令和4年度労働衛生調査(実態調査)の概況」)
調査結果から、努力義務とされていながらも、多くの企業がストレスチェックの集団分析を行っていることが分かります。
【関連記事】自社に適したストレスチェックの項目数は?4つの調査票の特徴を解説
ストレスチェックの集団分析を行うメリットは、以下の2つが挙げられます。
ストレスチェックの集団分析をすれば、属性別のデータが統計的に可視化できるため、職場の課題をピンポイントで明確にできます。
高ストレスを抱える従業員が多い部署を把握できれば、メンタルヘルス不調者の発生を未然に防げます。
また、ストレスチェック集団分析は、課題だけでなく各部署の強みを明確にできる点もメリットです。それぞれの部署の強みを取り入れることで職場環境が整いやすくなり、業務の生産性向上につながります。
ストレスチェックの集団分析結果をもとに、効率的に従業員のメンタルヘルス対策ができる点もメリットです。ストレスチェック集団分析のデータを可視化できれば、共通の認識をもったうえで効果的な対策を検討できるからです。
高ストレス者が多い対象部署へ指導をすれば、離職率の低下にもつながります。
ストレスチェックの集団分析は、原則10人以上のグループ単位で集計し分析を行います。1部署や事業部が10人未満の小規模事業場は、以下のような単位ごとに分けて集計・分析が可能です。
また、ストレスチェックの集団分析を実施する際は、どの集団単位で集計および分析するのか衛生委員会などで事前に審議しましょう。
【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
【関連記事】安全衛生委員会と衛生委員会とは? それぞれの役割と開催条件について
ストレスチェック集団分析では、以下2つの判定図を用いてストレスの度合いを評価します。
評価方法について詳しく見ていきましょう。
量ーコントロール判定図では、仕事の量的負担と仕事のコントロール(裁量権)のバランスを見てストレス判定が可能です。
(出典:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票を用いた ストレスの現状把握のためのマニュアル」)
仕事の量的負担(横軸)と仕事のコントロール(縦軸)が交わる点でストレス状態を判定します。「100」の斜線部分が全国平均ラインです。判定図の右下に向かうほど高ストレス、左上に向かうほど低ストレスと判定します。
一般的に、仕事上の裁量権が大きければ満足度が高くなりやすいため、ストレスを感じにくい傾向にあります。
それに対し仕事の量的負担が大きく、かつ裁量権が小さいと高ストレスになりやすいので注意が必要です。
職場の支援判定図では、上司や同僚の支援状態の評価が可能です。支援状態は「上司の支援」の縦軸と「同僚の支援」の横軸が交わる点で判定します。
(出典:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票を用いた ストレスの現状把握のためのマニュアル」)
職場の支援判定図も量ーコントロール判定図と同様、「100」の斜線が全国平均ラインです。左下に向かうほどストレスが生じやすい環境で、支援の度合いの低さを意味します。
必要に応じて部下との面談を実施している事業所などは、上司の支援の数値が高く仕事上のストレスは少なくなりやすい傾向にあります。
一方、上司の支援の数値が低い場合は、上司の指導が不十分、もしくは上司と部下が一緒に仕事をする環境が整っていない可能性が高いです。
また、仕事で困っているときに同僚が助言してくれたり、相談に応じてくれたりする部署は、同僚支援の数値が高くなります。
同僚間の意思の疎通がうまくできていない場合や、人間関係に問題があり協力体制が整っていない場合は、数値が低くなりやすいです。
ストレスチェックの集団分析では、以下の結果を確認しておくことが重要です。
それぞれのポイントを解説します。
高ストレス者とは、ストレスチェックでストレスの度合いが高い判定結果だった人です。高ストレス者に該当する基準は、以下のとおりです。
(出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」)
上記の基準に該当しない場合でも、産業医などの専門家の知見をもとに、事業者が高ストレス者の選定基準や評価方法を決めることも可能です。
高ストレス者がいた場合は、産業医による面談指導が推奨されています。高ストレス者は、うつ病などのメンタルヘルス不調のリスクが高いためです。
面談では、当該従業員から心身の状況や勤務状況などをヒアリングし、改善に向けた指導を行います。
ただし、産業医による面談は、高ストレス判定であった従業員から面談の申し出があった場合のみ実施となり、強制はできません。
【関連記事】ストレスチェックで高ストレス者を選定する際の方法や注意点
総合健康リスクとは、現状の職場でのストレス状態が、従業員の健康にどのくらい影響があるかを示す数値です。総合健康リスクは、仕事のストレス判定図を用いて以下のように算出します。
量-コントロール判定図の値×職場の支援判定図/ 100 |
総合健康リスクの基準値(全国平均)である「100」に対して、数値が高いほど、従業員の健康リスクが高い状態です。
たとえば、総合健康リスクが120だった場合、ストレスによるメンタルヘルス不調や休職などのリスクが全国平均の1.2倍になると考えられます。
150以上の場合はすでに健康問題が表面化していることが多く、当該従業員に対して早急にカウンセリングをしたり、職場環境の改善をしたりするなどの対応が必要です。
【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
ストレスチェックの集団分析結果の開示範囲は、10人以上と10人未満で異なります。それぞれの開示範囲を解説します。
ストレスチェック集団分析結果は、従業員の同意を得なくても実施者から企業側に開示できます。通常、集団分析結果からは個人を特定できず、個人の評価に影響をおよばさないと考えられているためです。
ただし、事業場内で制限なく分析結果を共有してはならず、どの範囲まで開示をするかあらかじめ決める必要があります。ストレスチェックの実施前に、衛生委員会などで審議したうえで開示範囲を決定しましょう。
【参考】厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
10人未満の事業場は、個人が特定される可能性が高いため、ストレスチェックの集団分析結果の開示は認められていません。
ただし、個人の特定につながらない方法であれば、あらかじめ衛生委員会などで審議したうえで、10人未満の単位での集計・分析もできます。
たとえば、ストレスチェックの合計点の平均値のみを求める方法であれば、個人の特定にはつながりません。自社の実情を踏まえて、個人が特定されない方法で集団分析を行いましょう。
【参考】厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
ここでは、ストレスチェックの集団分析結果ごとの対処方法について解説します。
仕事の量的負担が多い場合、生産性に結びついていない余計な作業を削減しましょう。作業量だけでなく、仕事の進め方に問題がある場合も仕事の量的負担は増加します。
業務内容や仕事の進め方を見直し、仕事量が多いにもかかわらず仕事の量的負担の数値が低くなった場合は、作業効率がよい職場に改善したと評価できます。
仕事の量的負担に対し、仕事のコントロールの点数が低い場合は、仕事のコントロールを高めるのが有効な方法です。
仕事の進め方の自由度や裁量権が高まれば、個人の満足度も高まり、能力を発揮できる機会が増えます。また、OJTや技能研修の機会を増やすのもおすすめです。
上司や同僚の支援が低い場合は、従業員が支援を必要としたときにすぐに相談できる環境を設けることが有効です。具体的な対策方法には、部署ごとにグループを設け情報共有の機会を増やす、リーダー以外に相談できるサブリーダー職を作るなどが挙げられます。
また、社内のレイアウトによって上司や同僚の支援が低下するケースもあります。デスクの配置や作業動線などにも気を配りましょう。
ストレスチェックを効果的に活用するには、専門家のサポートが欠かせません。ストレスチェックに関する専門家には、以下などが挙げられます。
専門家のサポートを受けることで、自社に合ったストレスチェックの実施方法や分析方法が分かります。
また、専門家の助言のもと、職場環境改善の立案や施策の実施などが円滑に行えるようになります。
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ストレスチェック集団分析を活用した職場環境の改善事例を2つ紹介します。自社に活かせる部分があるか参考にしてください。
オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社では、産業保健スタッフ部門と人事部門が連携し、管理監督者主導型アプローチによる職場環境改善活動を実施しています。疲労度チェックの結果、健康リスクが高いと診断された従業員に対して必ず面談を行っています。
主に面談の対象となるのは、時間外労働時間が月40時間を超えた従業員などです。面談では、一人あたり30~45分程度かけて話を聞きます。そのため、健康状態だけでなく、従業員の労働環境を詳しく把握できる機会にもなっています。
ストレスチェックの集団分析を活用した職場環境改善には、産業医や産業保健師と管理職が一体となって進めていく必要があるといえるでしょう。
【参考】厚生労働省「オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社(東京都港区):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
カルビーポテト株式会社では、ストレスチェックの結果とコンプライアンス意識調査の結果の両方をもとに組織分析を行い、職場環境改善のグループワークにつなげています。
また、セルフケア研修やハラスメント防止研修なども実施するようになりました。職場環境改善のグループワーク後は、部署ごとに意識改革行動宣言を示し、目立つ場所に掲示し行動化につなげています。
職場環境改善のためのグループワークを行えば、従業員の意見を広く取り入れられるので、効果的な改善を目指せるでしょう。また、意識改革宣言を明確に周知し継続的な実践につなげるのも重要なポイントといえます。
【参考】厚生労働省「カルビーポテト株式会社(北海道帯広市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
ストレスチェック集団分析の実施は努力義務なので、実施しなくても罰せられません。しかし、実施すれば部署ごとの課題や強みを明確に把握でき、より効果的な職場環境改善の対策を立てられます。
従業員の健康を守り、よりよい職場環境を実現するためにストレスチェックの集団分析を実施しましょう。
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